エージェントブログAGENT BLOG

菅野 洋充(宅建士・リフォームスタイリスト)

社会に必要とされ人に役立つ企業を目指します

4.9

18

このエージェントに相談する

最終更新日:2020年3月19日
公開日:2020年3月7日

株価暴落で悲しむ人たち

菅野です。

新型コロナウイルス感染症COVID-19の影響で、株価はダダ下がりです。

昨年12月から今年1月中旬にかけては、日経平均株価は24000円前後を推移していました。

しかし、連休明けの2月25日に暴落した株価は、フリーフォールスライダーのごとく、勢いを増して下がっていきました。

3月6日の終値日経平均株価は 20749.75円 と、このままでは遅かれ早かれ20000円を割り込むのではないかと予想される流れとなっております

 

このまま下がったままとなるか、また上げ潮局面へと回復するかは、政府の政策にかかっていると思われます。

巷の見方として、昨年の消費税増税が現状に拍車をかけている、というのはみな頷けるかと思います。

金融緩和は限界まで行っており、これ以上は無理でしょう。

そうなると、やはり財政出動をしなければ、日本はオリンピックを待たずに不況の闇に包み込まれるのではないかと思われます。

また、コロナウイルス対策でいろいろな緊急政策を政府は行っていますが、そのどれもが経済に対してプラスになるものとは言い切れません。

 

例えば、近隣諸国からの入国制限については、確実に不動産市況に悪影響を与えております。

国内不動産需要の一端は、外国人が支えていたことは間違いありません。

 

また、いろいろな集会、催し物の自粛要請についても、ある部分致し方ないと感じる面はあれど、大きな催物であればあるほど、中止したときの打撃は大きく、関わった企業や関係者の損害は計り知れないものとなっているでしょう。

(私がファンだという意味で同情的になっていることもありますが)椎名林檎さんのバンド「東京事変」のライブ開催強行について、私は支持したいです。

その向こう側に、たくさんの涙を飲んでいるアーティストや関係者、ファンがいることを知ってほしいと思いました。

 

新型コロナウイルスの流行が治まるまでの辛抱ではあろうと思います。

しかしながら、過度な自粛行為は経済を冷やし、コロナウイルス以上の悪影響を皆に与えることとなります。

幸いにも、日本の医療は状況を見る限り非常に優秀で、他国に比べて死亡率も高くなく、流行スピードも抑えられているように感じます。

世界中がパニックとなっている今、私たち日本人くらいは冷静に対応し、乗り切っていきたいものです。

(2020年3月19日「COVID-19」は感染症の名前とのご指摘をいただきました。ウイルス自体の名称は「SARS-CoV-2」とのことです。お詫びして訂正いたします。)

カテゴリー:

最終更新日:2020年3月19日
公開日:2020年2月21日

菅野です。

新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の猛威がすぐそこまで迫ってきています。

今(令和2年2月21日)現在で、日本の感染者数は93人、ダイヤモンドプリンセス号の感染者が621人とのこと。

感染者は全国で同時多発的に増えていて、北海道や福岡の感染者は感染経路が確認できない人もいるとのことです。

しばらくは感染者は級数的に増加していくように思えて非常に恐怖を感じます。

 

この騒動の影響は不動産業界にも及んできています。

 

1.住設機器等の中国からの輸入ストップによるリフォーム、建築の完成の遅延

 

住設機器メーカーTOTOは以下のお知らせを自社ウェブサイトに掲示しています。

【お知らせ】弊社商品納期に関するご案内

トイレ、システムキッチン、洗面化粧台の部品供給が遅延していて、納品遅れが生じているそうです。

これに伴い、他の住設機器メーカーに注文が流れて業界全体が納期遅延を起こしているとのことらしいです。

今はまだ在庫でなんとかしのげる部分もあるかもしれませんが、今後、新築一戸建ての完成や水回りリフォームなどの期間が大幅に延びていく可能性があります。

もしかすると中小零細の建売業者のなかに、完成遅延に伴う引渡の延期により資金回収がままならず、倒産するような業者が出てくるかもしれません。

 

2.外国人の入国減少により、不動産需要の低下

 

中国人富裕層の日本の不動産への投資志向は大分冷めてきているようではありましたが、昨年までは依然、都心タワーマンションなどを購入する向きがあるようでした。しかし中国人富裕層はCOVID-19の流行に伴い他国へ移動していくのではないかと予想されます。

不動産というものの性格上、暴落するという可能性はありませんが、おそらく徐々に売りが増えて需要が低下し、価格は下がっていく可能性があります。

すでに、昨年の消費税増税の影響は、景気にかなり大きく打撃を与えており、新築マンションの価格はバブル期を超えたとのことですが、販売は苦戦を極めていると聞きます。

COVID-19騒動はこれに拍車をかけるのではないかと思われます。

 

3.他人と対面することを避けるため、購入・売却を検討するお客様が減少する

 

先日、弊社営業担当が他社の専任物件を問い合せて、見学希望を入れたのですが、売主側より「コロナウイルスの感染が怖いので、案内は断ってほしい」と言われたいう返答で案内を断られました。

私は「囲い込み」では?とも思ったのですが、今の状況をみるとあながち嘘とも言い切れないとも思いました。

今後はこういった売主様は増えそうです。しばらく売却や購入を検討するお客様も減るかもしれません。

 

日本政府からは「不要不急の会合については必要性を考えろ」(要は自粛しろ)という方針が出され、いろいろな催し物や会議、果ては宴会まで自粛せよという風潮です。

(弊社でも、しばらく繁華街での飲酒はしないようにと皆に通達しています。)

致し方ないという考え方もありますが、これが続けば消費は低迷し、景気はどんどん悪くなっていくでしょう。

 

昨年までは、秋葉原はたくさんの外国人でにぎわっていましたが、ここ一カ月ほどはかなり人が少ないように感じます。

 

景気悪化は肌で感じられるレベルです。

新型コロナウイルス対策はもちろんですが、速やかな景気対策を政府に望みます。

(2020年3月19日:お読みいただいた方より「COVID-19」は感染症名であるというご指摘をいただきました。新型コロナウイルスのウイルス自体の名称は「SARS-CoV-2」とのことです。お詫びして訂正いたします。)

 

 

カテゴリー:

公開日:2020年2月15日

菅野です。

毎回、不正について書くのはつらいことで、不動産業界とはかくも黒いところなのかと惨憺たる思いとなります。

今回は投資マンションのローン不正についてです。

 

投資用マンション融資書類改ざん、金融庁も調査視野に

2月13日の日経の記事ですが、押し売り物件の年収エビデンス偽造に気付かなかった?ってことらしいです。

アルヒ、アプラスはこういう偽装をするような悪質な業者の案件は受け、弊社のようにまっとうにやっている業者からたまにお願いする、割とお客様の内容も物件も悪くない投資案件を受け付けないんですよ。

彼らは提携業者重視なので、逆に言えば悪徳業者と業務提携していたってことですよ。

結局、スルガ銀行と同じってことですよね。

アルヒ、投資用マンション融資から撤退 書類改ざん関与は否定

アルヒは投資系融資から撤退するそうですが、市場のせいにするなと言いたいです。

 

この日経に書かれている件を詳しく取材した内容が、楽待の不動産投資新聞に出ています。

アルヒ・アプラスずさん融資、ブローカーに騙された28歳女性

被害者女性は顔出しをしてまで、酷い実情を訴えています。

とにかくひどいので、見てください。

 

また、悪徳不動産ブローカーのインタビューをYouTubeに流しているインフルエンサーがいました。(閲覧注意)

 

これは本当かどうかわかりませんが、内容があまりにひどいので見るのを推奨しません。

(私は吐きそうになりました。反吐が出る、というのを実感したのは初めてかもしれません。)

リンクを張っていてなんですが、自己責任でご覧ください。

 

業界としてこんな奴らを許してはいけないし、こういう行為が行えないように法規制の強化も必要と感じます。

こんな奴らが蔓延るなら、不動産販売も特商法の適用になっちゃうんじゃないかなあ。

そもそも宅建業って免許がなければ行えないのです。

無免許ブローカーどもをどんどん摘発していっていただきたいと切に願います。

非常に危機感を感じます。

カテゴリー:

公開日:2020年2月10日

菅野です。

前回は住宅ローンの投資への不正利用について書きました。

今回はもっとヤバい、住宅ローン減税の不正利用についてです。

 

確定申告で不正見つかり数千万円の追徴課税…給与を低く記載、住宅ローン控除手続きで嘘

これはBusiness Journalで元国税局職員お笑い芸人「さんきゅう倉田」さんが書いた記事です。

こちらに住宅ローン減税を不正に利用した手口が書かれています。

 

(以下引用)

・住宅ローン控除を受けるために、居住の事実がないのに住民票上の異動を繰り返した

 Fは、住宅ローン控除の条件である「自己の居住用」に該当しないにもかかわらず、控除を受けるため、購入した不動産の所在地に住んでいるかのように装い、控除の適用を受けた。しかも、複数の不動産に合わせて住民票上の異動を繰り返した。

 Fは、住民票異動時には購入した家に住むつもりだった、(住んでいないと)控除の適用ができないことを知らなかった、確定申告時の税務相談で控除の適用ができると言われた、などと主張したが、「偽りその他不正の行為」とされた。

(引用終わり)

 

この手口も昔から行われていますが、住宅ローンの不正利用と違い、住宅ローン減税の不正利用は「脱税」という、れっきとした犯罪です。

脱税は「故意犯」です。下手な言い訳は通用しません。

税務署から不動産業者に取引についての調査が入ることもあります。

もし、業者がこういった方法を指南した事実があれば、幇助となり同罪です。

 

(昔、住宅ローンの投資への不正利用のため、住民票を動かさず所有者の表札を賃借人と並べて出し、金融機関からくる書類を転送する封筒まで用意していた大家と賃貸管理会社がありましたが、私はバカだなあと思っていました。身内に金融機関の取り立て部署にいた者がいるので聞きましたが、これははっきり言ってバレバレだそうです。)

 

彼ら国税局は、必ず最後まで調べて脱税を暴きます。

脱税すると過少申告加算税、重加算税の賦課に加えて、悪質だと判断されれば刑事犯として起訴され、有罪となると10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処せられる場合もあります。

 

脱税は必ずバレます。

住宅ローン減税の不正は、絶対にやめましょう。

 

カテゴリー:

公開日:2020年2月7日

菅野です。

以前、このような記事を書きました。

住宅ローンの不正利用(フラット35を利用した不正融資)について

基本的に住宅ローンを投資に利用することは出来ないのですが、やっている人はかなり多くいたようです。

 

このフラット35を利用した投資を持ち掛け、詐欺まがいに買わせる悪徳業者が多数、横行していたようです。

今年2月4日の日経の記事です。

住宅機構、一括返済を要求 「フラット35」不正で

記事には、悪徳業者の不正(というよりほとんど詐欺)の手口が以下のように書かれています。

 

 

(以下、記事引用)

不動産業者から問題ないと言われ、フラット35を使って投資目的で東京・足立のマンションを約1800万円で買った埼玉県の20代男性は、契約時に計900万円強の架空のリフォームや家具購入の融資契約も結ばされた。信販大手2社への融資申込書には男性のものではない印鑑が押されていたという。

所有者から物件を借りて転貸するサブリース業者による家賃保証額も一方的に切り下げられているという。代理人を務める東京八丁堀法律事務所(東京・港)の白石紘一弁護士は「一貫して業者グループにだまされており非常に悪質。契約の無効を主張するほか、業者グループの不法行為責任も追及する」と話す。

(以上、引用終わり)

 

 

こちらは、2月5日のダイヤモンド不動産研究所の記事です。

フラット35を投資目的で不正利用した人の末路は? 一括返済できないと競売後に借金が残るケースも

この記事に、この不正がどのように広まったかを探るヒントがありました。

 

(以下、記事引用)

2009年に施行された、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(返済猶予法)後に、返済が苦しくなったときには賃貸住宅に回して、賃料で返済することを認める措置が実施されたことがある。
この法律は2013年に期限切れになっているが、現在も、返済が苦しい場合には、機構は個別に返済相談に応じている。

(以上、引用終わり)

 

リーマンショック後の時限立法だったいわゆる「中小企業金融円滑化法」が、実はこのフラット不正が広がる始まりだったようです。

この記事にもあるように、この法律は2013年に期限切れとなっているのですが、皆そのままやっちゃっていた、というよりエスカレートしていった、というのが今回の事件の概要かなと思っています。

 

おおっぴらには言わないものの、昔から住宅ローンを利用して買った物件を賃貸に回すということは普通に行われていました。

よくある不正で、しかもかなりしっかり調べないとわからないし、転勤留守宅の賃貸(リロケーション)なんてことも「やむを得ない事情」ということで黙認されていたんです。

しかし、昨今ではあからさまに「フラット35を利用した資産運用」などと吹聴する輩が出てきて、挙句の果てには悪徳不動産業者がさも当然のように不正利用し、被害を受ける人たちがたくさん出てきたものだから、このたび規制というか厳格運用されるに至ったわけです。

 

この規制により迷惑するのは、普通に正しくやってきた人たちになります。

新たにマイホームを買おうとする人、そしてそれを売る普通の不動産業者です。

おそらく、今後はフラット35の申込手続きは煩雑化し、審査期間は長くなるでしょう。

まじめにやってきている人たちが迷惑を被るんです。本当に、許せません。

(許せないのは悪徳業者です。)

 

一括返済を求められている人で、悪徳業者の被害にあっている方はきちんと弁護士さんに相談し、業者に損害賠償請求すべきだと思います。

ただ、昨今の風潮で自分からフラット不正に手を出した方たちは、然るべき報いを受けるのは致し方ないのかな、と思います。

 

 

カテゴリー:

最終更新日:2020年10月2日
公開日:2020年2月1日

菅野です。

前回は改正民法の条文を確認し、結果として今まで以上に、売主の物件に関する(買主への)告知義務の度合いが強くなるのではないか、ということを述べました。

前回のブログはこちらです。

民法改正と不動産売買(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ)その2

不動産業者は、売主を保護するために法的な制限事項をもれなく確認し、また周辺環境や土地のリスク要因など様々な懸念事項を重要事項説明へ「容認事項」として記載することが求められます。これは今までもそうなのですが、より細かく、事態の可能性を説明し、買主に容認を求めることが必要となります。
また、買主の購入目的を明らかにし、契約に盛り込んだりすることも必要となってくるはずです。

 

例えば、古家付きの土地を更地にせず引き渡す場合の条文として

売主は土地上の建物を取り壊さず買主に引き渡すが、本売買契約は土地を売り渡すものであって、建物については買主の責任と負担にて取り壊すものとし、売主は建物について一切の担保責任を負わないものとする。

とかは有効と考えられます。

 

さらに、売主は自分の物件に対して、正確な状態の把握が必要となってきます。
建物を売る場合、売主が自身で細かいチェックを行い、不具合や故障、損耗などがある箇所をすべて把握することが出来ればそれに越したことはないのですが、一般の方となりますと、なかなか難しいことです。

そうなりますと、状態を把握をするために「住宅診断」を売る前に行う、ということがリスク回避に非常に有効になるものと思われます。
今後は、販売前に住宅診断の結果を確認のうえ、修理すべきところがあれば修理をするか、さもなくば値段を下げるかを選んで売っていくという方向性になるように思われます。
古い物件であれば住宅診断を行わず、今までのように「契約不適合免責」(改正前は”瑕疵担保免責”)という契約も可能ですが、売主が知っていた契約不適合は免責されません。

住居であれば、明らかに住むことに支障のある不具合・瑕疵は「気づいていたはずだ」と責任を問われる可能性があり、目立った不具合や瑕疵は契約時に説明してかつ買主に容認してもらうプロセスをつくることが非常に重要です。(今回の法改正の趣旨として、ただ説明するだけででは買主が容認したとはいえず、契約不適合責任は免れないとされています。)

 

「住宅診断」はもともと、資産購入に対するデューデリジェンスの意味合いとして、買主が自分の依頼した「既存住宅状況調査技術者(住宅診断士など)」にて行うのが良い、とされています。
しかし、民法改正後は売主が自身を守るため、リスクを回避するために住宅診断を行うことが増えていきそうです。

 

カテゴリー:

最終更新日:2020年10月2日
公開日:2020年1月27日

菅野です。

前回のブログの続きになります。

前回はこちら

民法改正と不動産売買(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ)その1

前回は現行法についてのおさらいをしましたが、それでは改正民法条文はどうなっているかというと、

 

 

(買主の追完請求権)
第562条  引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2  前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

(買主の代金減額請求権)
第563条  前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2  前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一  履行の追完が不能であるとき。
二  売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三  契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四  前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3  第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

 

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条  前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

 

(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第565条  前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

 

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条  売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

 

(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)
第570条  買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。

 

 

と、格段にボリュームアップしていて、かつ理解しやすい文章になっています。

今回の改正では、買主側の権利として「追完請求権」「代金減額請求権」というものが法律上明文化されました。

 

「追完請求権」についてですが、引渡しを受けたものが契約で定めた内容に満たない場合に、それを満たすよう請求できるという権利です。

ただ売主には、不相当な負担を買主に与えない限り、買主の求める方法と違う別の方法で追完する権利があります。

 

そして、「代金減額請求権」ですが、追完を売主が行わなかったら買主は代金の減額を請求できるという権利です。

契約内容を満たさないものを引き渡したのだから満額払わんよ、ということですので理にはかなっていますよね。

 

そして、もちろん損害賠償請求権や解除権もあります。

「モノ」だけでなく借地権などの権利の売買についてもこの法は準用されます。

契約不適合責任の期間については、契約不適合を知ったときから1年以内と、瑕疵担保責任と同じですね。

最後の570条は、もともとの「瑕疵担保責任」の条文566条の内容を踏襲していますが、新たに「契約の内容に適合しない」という文言が加わっています。

 

今回の改正はこの「契約の内容に適合しない」という部分が非常に重要となります。

契約の内容として「これだけの品物だから、この値段です」という説明の明示が必要となってくるので、それなりに高いものである不動産については、今まで以上に細かい現状の告知がなされなければなりません。

そのために「物件状況報告書(告知書)」「設備表」が非常に重要になってきます。

いわゆる「瑕疵担保免責」についても、不具合や懸念事項を事細かに記載してかつ責任を負わない旨の記載が必要になってくる可能性があります。

 

最後に、「契約不適合責任」についても「瑕疵担保責任」と同様、「任意規定(任意法規)」となります。

契約書(および、重要事項説明書)にて売主・買主の責任についてのバランスを取り回しできるのは仲介する不動産業者ですので、法改正後は一層、仲介業者が重要な任務を負うことになります。

 

最後になりますが一応、条文中にある415条(損害賠償)541条・542条(解除)についても書いておきます。

 

(債務不履行による損害賠償)
第415条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2  前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一  債務の履行が不能であるとき。
二  債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三  債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(催告による解除)
第541条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

(催告によらない解除)

第542条  次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一  債務の全部の履行が不能であるとき。
二  債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三  債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四  契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五  前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2  次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一  債務の一部の履行が不能であるとき。
二  債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

 

(解除権についても不動産売買に関係が深く、ここもけっこう変わっているので、後日確認しようかなと思います。)

 

いちおう、その3も書きました。

契約不適合責任となることにより、売主はより一層、売り物の状態の把握が必要となり、注意を払わなくてはならないようになります。

続きはこちらです。

売主が住宅診断を受けることの意義(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ)その3

カテゴリー:

最終更新日:2020年10月2日
公開日:2020年1月25日

 

菅野です。

今年の4月に改正民法が施行されます。

4月1日を境に、不動産の売買契約書の条文も改正民法に合わせた新しいものに刷新されます。

 

今回の改正民法で不動産に関わる改正内容を以下にまとめます。

1.瑕疵担保責任から契約不適合責任へ変更

2.個人根保証について極度額設定の義務化

3.賃貸借契約更新後に新民法の適用

4.賃借人の修繕権の制定

5.賃借物の一部滅失等による賃料の減額

6.原状回復について通常損耗、経年変化に対する賃借人の責任免除

7.敷金返還の明文化

 

ほとんどが賃貸借に関する事項となっているようですが、今回は売買に影響のある事項として

「瑕疵担保責任から契約不適合責任へ」

変わってどのような影響があるのか?を確認しました。

 

現行民法の「瑕疵担保責任」に係る条文は以下の通りです。

 

第566条
  1. 売買の目的物が地上権、永小作権地役権留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
  2. 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
  3. 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

 

第570条

売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

 

わかりにくいんですが、要約すると

「売買契約した(買った)ものに隠れた瑕疵があり、契約した目的が達成できない場合には買主は契約の解除をすることができ、契約解除できない場合には損害賠償請求のみ可能」

という内容です。

ここであれっ?と思った方は売買経験がある方ですかね。

売買契約書に書かれている内容とはちょっと違うんですね。

個人同士の売買契約書ですと弊社の場合

 

売主は、買主に対し、建物の専有部分における隠れたる瑕疵につき以下のものに限り責任を負い、それ以外の建物の瑕疵および土地の瑕疵ならびに共用部分に原因がある瑕疵について、責任を負いません。
(1) 雨漏り
(2) シロアリの害
(3) 給排水管の故障
なお、買主は、売主に対し、本物件について、前記瑕疵を発見したとき、すみやかにその瑕疵を通知して、修復に急を要する場合を除き売主に立会う機会を与えなければなりません。
2 売主は、買主に対し、前項の瑕疵について、引渡完了日から3ヶ月以内に請求を受けたものにかぎり、責任を負います。なお、責任の範囲は、修復にかぎるものとし、買主は、売主に対し、前項の瑕疵について、修復の請求以外、本契約の無効ないしは解除を主張し、または損害賠償の請求をすることはできません。
3 売主は、買主に対し、本契約締結時に第1項の瑕疵の存在を知らなくても、本条の責任を負いますが、買主が本契約締結時に第1項の瑕疵の存在を知っていたときは、売主は本条の責任を負いません。

 

こんな感じで、契約解除も損害賠償もできません。

これじゃ買主に不利じゃん、と思う方もいらっしゃるかと思いますが、個人同士の不動産売買は基本的に中古物件で、築年数がある程度経ち売主が使用したものを売買するわけですから、程度の差こそあれ瑕疵はあるものだと考えるべきものとなります。

また、民法の条文をそのまま適用すると、

「買主が瑕疵を知った日から1年以内」

に契約解除または損害賠償請求すればよいということになり、いつまで経っても売主は気の休まる日が訪れません。

ですので、この条文については「任意規定(任意法規)」という扱いとされ、契約書にて期間や適用内容について取り決めができるようになっています。

(「任意規定」の反対は「強行規定(強行法規)」と呼ばれます。この法規については、契約で変更することはできません。例えば「消費者契約法」であるとか「宅地建物取引業法」などで、業者が消費者などに不利な契約を結ぶことはできません。)

 

以上が現行の「瑕疵担保責任」に関する考え方となります。

これが「契約不適合責任」になるとどう変わるのか?

 

続きはこちら

民法改正と不動産売買(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ)その2

カテゴリー:

公開日:2020年1月18日

新築戸建

菅野です。

現在のお仕事として、営業担当から上がってくる契約書雛形を確認する作業をしています。

説明漏れや不備、間違いがないかを確認していまして、非常に大変です。

法令の改正などを日々確認、勉強する毎日です。

 

その中でも、昨年6月から施行した改正建築基準法に則った新築戸建てが昨年後半からちらほらと見受けられています。

都内や近郊都市部の新築戸建てに最も影響があった法改正が

「準防火地域の耐火建築物等、準耐火建築物への建ぺい率の緩和」です。

改正前は、防火地域の耐火建築物にのみ10%緩和があったのを、緩和対象を準防火地域にまで広げ、かつ準耐火建築物まで緩和適用しました。

そのため、昨年7月以降の建築確認をうけた新築一戸建てで、建ぺい率10%緩和しているものをよく見かけます。

都内は準防火地域以上の住宅地がほとんどですので、改正建築基準法が適用されている新築住宅は、昨年前半までに建築確認を受けたものより大きくなっているというわけです。

 

東京カンテイのレポートによると、昨年12月の小規模戸建て住宅の戸あたり価格は、首都圏で値下がり傾向にあるそうです。

2019年12月 首都圏の新築小規模一戸建て平均価格は-0.8%の4,485万円 首都圏は反転下落

値下がりし、かつ広くなるのであればお得感ありますね。

今年の春は買い時かもしれません。

カテゴリー:

公開日:2019年11月11日

菅野です!

 

 

全宅ツイのグルさんの開会宣言で、今年も「クソ物件オブザイヤー」の季節がやってまいりました。

 

 

ということで、今回の全宅ツイ本のご紹介は

「クソ物件オブザイヤー」です!

 

クソ物件オブザイヤー

こんなファニーな題名ではありますが、中身は実は社会派です。

 

「地面師詐欺」「(『かぼちゃの馬車』から始まった)スルガ銀行問題」「南青山児童相談所建設反対運動」「文京区マンション建築確認取り消し」他、大きく話題になった不動産に関する事件について詳しく、しかもわかりやすく切り込んでいます。

結果的に、不動産に関する諸問題への解説として素晴らしく、また不動産についての理解を深める良書となっています。

不動産について興味をもっているのなら、一読すべきおすすめの本です。

 

でもやっぱり、「コニファーコート成城学園前Ⅱ」のインパクトはすごいですね。

(オーナーさん、売却依頼、お待ちしてます!)

今年の「クソ物件オブザイヤー2019」も、非常に楽しみです!

カテゴリー:

アーカイブ