菅野 洋充(宅建士・リフォームスタイリスト)
社会に必要とされ人に役立つ企業を目指します
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公開日:2023年11月22日
REDSの宅建士・宅建マイスターの菅野洋充です。
旧耐震基準のマンションは都内のけっこう便利なところに多く存在します。リノベーション済みで、室内もきれいで、しかも新耐震基準のマンションより安くお求めになりやすい物件として、多く販売されています。今回は、そんな旧耐震基準のマンションを購入するときに確認しておきたいことを2つ、お伝えしようと思います。
「旧耐震基準建築のマンション」とはどのようなマンションを指すのでしょうか。これは1981(昭和56)年の建築基準法改正前の耐震基準で建築されたマンションのことを指します。詳しくいうと、昭和56年5月31日以前に新築工事に着手した建物のことを指し、これは建築確認の確認済証交付年月日がその日以前かどうかで判断します。この情報は、重要事項説明書に必ず記載されています。購入検討の際に、古めのマンションは確認しておくとよいでしょう。
旧耐震基準と新耐震基準の違いは以下のとおりです。
・旧耐震基準は、震度5強程度の地震でも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準
・新耐震基準は、震度6強~7程度の地震でも倒壊しないような構造基準
阪神淡路大震災や東日本大震災などの大地震を経験すると、旧耐震基準の心もとなさが分かるかと思います。
阪神淡路大震災の際に、旧耐震基準の建物が倒壊したにもかかわらず同じ地区の新耐震基準の建物が倒壊しなかったことで、耐震基準というものの重要性が世間一般に認識されました。その後、「耐震改修促進法」という法律が制定され、耐震診断がさまざまな旧耐震基準の建築物に義務付けられることとなりました。
マンションについては全てが耐震診断の義務を負っているわけではなく、地震災害時に通行を確保すべき道路のうち、特に重要な道路(特定緊急輸送道路)沿いの、その道路幅員のおおむね2分の1以上の高さの建物が対象となっています。
ズバリ、旧耐震基準で建築されたマンションは耐震性能が新耐震基準マンションに比べ低いため、耐震診断を行い、耐震補強することが必要です。耐震診断を行わずに耐震補強をすることはほぼないため、まずは耐震診断を行っているかを確認しましょう。さらに、耐震診断の結果を見て、どのような補強が行われている(もしくは行う予定がある)かも確認しましょう。
耐震補強がなされているマンションは、耐震基準適合証明の発行を受けることで新耐震基準のマンションと同様に住宅ローン減税などさまざまな税金の優遇措置を受けることができます。耐震基準適合証明は建築士さんに依頼することで発行が可能です。
耐震診断結果を見るときには、まず「Is値」に注目してください。
Is値(Seismic Index of Structure)は「(構造)耐震指標」と呼ばれる建物の耐震性の指標で、この値が0.6以上であれば耐震性能を満たすとされています(ちなみに文科省で定める学校の耐震指標は0.7以上となっています)。Is値が0.3未満の場合、大規模な地震で倒壊や崩壊する危険性が高いとされており、購入検討には十分な注意が必要です。
また、q値という水平方向の力に対する耐力指標にも注目してください。こちらの値が1.0以上でないと、倒壊や崩壊の危険性があるとされています。
旧耐震基準のマンションは建築後40年以上を経過しており、給排水管の劣化が進んでいる場合が多々あります。配管の更新工事がされているか否かというのは、生活のクオリティを大きく左右します。更新がされていない場合、水道からさびが出たり、あちこちで漏水が起こったりする懸念があります。室内がいくらきれいにリフォームされていても、漏水が起こったら一大事ですね。
ここで重要なのは「実際に共用部配管の更新を行っているか」ということです。〝磁石で水を活性〟うんぬんというような装置を付けてお茶を濁しているマンションは問題外ですし、非常に古い建物の場合、配管を躯体に埋め込んであって、そもそも配管の更新ができない構造のものもあります。そういったマンションは避けたほうがいいかもしれません。
旧耐震基準のまま耐震診断や耐震補強を行わないマンション、築後40年以上経過していて給排水管の更新を行っていないマンションは、管理組合の財務状況が厳しかったり、管理組合のガバナンスが機能していなかったりするため、購入を検討する際に注意が必要です。
また、旧耐震基準のマンションに住宅ローンの貸し出しを行わない銀行も昨今はあります。旧耐震基準のマンションに限ったことではありませんが、マンションの維持管理に最低限必要な修繕工事を行っているかどうかというのは、その後のマンションの資産価値に大きな影響を与えます。適切にマンションを維持管理しているかの判断基準としても、旧耐震マンションについては耐震診断・耐震補強の有無や給排水管の更新の有無を確認したうえで、購入のご判断をなされることをお勧めします。