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菅野 洋充(宅建士・リフォームスタイリスト)

社会に必要とされ人に役立つ企業を目指します

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最終更新日:2024年5月1日
公開日:2024年4月23日

REDS不動産流通システム、宅建士・宅建マイスターの菅野洋充です。今回は昨今、世間をにぎわせている「クルド人問題」で揺れる埼玉県川口市で見られる事象について考えてみます。

転入超過

埼玉県で人口が減った原因とは

先日、埼玉県の人口統計が出ました。埼玉県は人口が減っているようです。統計をみると、実は“自然増減”の「自然減」つまり出生者数に比べ死亡者数が多いことが原因とわかります。これは、いわゆる「少子高齢化」の影響であると考えられます。

「自然減」が多いのに対し、“社会増減”をみると埼玉県は転入超過で、他県から流入が比較的たくさんあることがわかります。「転入超過」つまり転出より転入の多い市区町村ランキング(さいたま市は区で分けてみます)は以下のとおりです。

1位:川口市
2位:さいたま市大宮区
3位:さいたま市緑区
4位:・さいたま市西区と朝霞市(同数)

※上記データの出典は、埼玉県ホームページ「埼玉県推計人口」より

「クルド人問題」渦中の川口市に転入者が多い理由

川口市は現在、いわゆる「クルド人問題」が世間で騒がれていますが、それでも転入超過(出ていく方より引っ越してくる方が多い)です。その理由はどのようなものでしょうか。主な理由を4つ考えてみました。

東京都内に通勤しやすい

川口市は荒川を挟んで東京都の足立区や北区に隣接しており、地理的に東京都心に近い位置にあります。市内には京浜東北線や、東京メトロ南北線に直通する埼玉高速鉄道が通っているため、東京都心へのアクセスが非常に便利です。これらの鉄道路線を利用することで、多くの職場や商業施設、文化施設へスムーズに移動できるため、通勤や日常の買い物、レジャーにも困りません。

このように〝ほぼほぼ東京〟にもかかわらず、川口市は東京都内の地域と比較して家賃や不動産価格がかなり安い傾向にあります。特に東京の中心部の高い家賃や不動産価格から逃れたいと考えている人々にとって、川口市は魅力的な選択肢です。そのため、都心からのアクセスが良好な一方で生活コストを抑えたいと考える人々が、移住を検討するケースが多く見られます。

このような利点により、川口市は東京都心に近接しながらも、より手頃な生活コストで生活できる場所として、多くの人に選ばれています。その結果、住宅需要が増加し、さまざまな居住地域や商業施設が発展しているのです。

市内に職場がある

川口市は、工業が盛んな地域として知られています。この市の用途地域に指定されている工業地域は約364.8ha、準工業地域は約1014.2ha、工業専用地域は約30haで、合計で約1409haにもなります。川口市全体の面積が61.97k㎡(6197ha)なので、市の約22%が工業関連の用途地域であることになります。

さらに、川口市は東京都に隣接しており、首都高や外環自動車道などの自動車交通網が発達しています。このため、倉庫や流通センターが多く設置され、就業機会が豊富です。日中の就業人口が増えることで、飲食業をはじめとしたサービス業も発展し、市内の経済活動がさらに活発になるという好循環が生まれています。

このような状況から、川口市は工業に加え、物流やサービス業が集まるビジネスの中心地としても機能しているのです。

外国人コミュニティが多い

川口市は外国籍居住者の割合が非常に高いことで知られています。川口市には多様な国籍のコミュニティが存在し、それぞれの文化や歴史が色濃く反映されています。

映画『キューポラのある街』で朝鮮帰国事業に関連するシーンが描かれていたように、川口市には歴史的に韓国・朝鮮系のコミュニティが根づいていました。その後、蕨駅近くの芝園団地で中国人コミュニティが発展、定着し、西川口駅西口は現在では「ガチ中華」で有名な街となりました。

最近ではクルド人と地元住民の軋轢が表面化しています。クルド人の国籍はトルコですが、川口市の外国人住民数をみると、多い順に以下のようになっています。

1位:中国 24193人
2位:ベトナム 4916人
3位:フィリピン 2892人
4位:韓国・朝鮮 2861人
5位:ネパール 1509人
6位:トルコ 1197人

※上記データの出典は、川口市ホームページ「川口市統計書」より

人数でみるとトルコ籍の人は中国籍の20分の1しかいないのですが、ちょっと悪目立ちしてしまっているというところかと思います。

ただ、ひとついえるのは、言葉の通じない外国で、同胞の人たちが集まるコミュニティというのは非常に重要だということです。言葉の壁や文化の違いを一緒になって乗り越え、支援し合える環境があることで、新しい国での生活が格段に楽になります。コミュニティが存在することで、新たに移住してくる人々が集まりやすくなるという好循環も生まれます。

今後も川口市は、外国人(特にアジア系の人たち)にとって故郷のような安心感を提供できる特別な場所でありつづけると思います。

交通利便性のよさ

川口市内には、JR京浜東北線・JR武蔵野線・埼玉高速鉄道という3路線の駅が計8か所(川口駅、西川口駅、東川口駅、川口元郷駅、南鳩ヶ谷駅、鳩ヶ谷駅、新井宿駅、戸塚安行駅)あります。また、市内にはありませんが、隣接して利用可能な駅として蕨駅、東浦和駅、南浦和駅があります。

京浜東北線・埼玉高速鉄道は南北の移動、武蔵野線は東西の移動を担っており、東京や埼玉北部だけでなく、東京市部や千葉方面にもつながっていて各方面からの移動も容易です。

また、市内の道路網も充実しており、首都高や外環自動車道が整備されたことにより都内だけでなく東北・常磐・関越方面への自動車移動の利便性も兼ね備えています。移動がしやすいことは、周囲の市町村だけでなく少し離れたところの住民も引っ越しを考えやすくなります。

川口市に人口流入が起こる原因を考えてきましたが、仕事、交通、コミュニティが地域発展に必要不可欠であることを示唆していると思います。人口が減っている自治体は、上記の3つについて、現状で足りないところがないか確認し直すことで、発展への道筋が探れるかもしれません。

 

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