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菅野 洋充(宅建士・リフォームスタイリスト)

社会に必要とされ人に役立つ企業を目指します

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このエージェントに相談する

公開日:2022年10月11日

菅野です。

今、不動産投資家界隈で大変な話題となっている「限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地」を読みました。

 

千葉県北東部に、家が疎らにしか建っていないような小規模分譲地が、無数に存在するそうです。

これは多くがバブル期前の1970年代に造成されていて、それは投機目的購入者を狙ったものが多く、インフラがお粗末だったり未整備だったり管理不十分で使用できなかったりするそうです。

そういった分譲地は「限界ニュータウン」もしくは「限界分譲地」と呼ばれ、地域や自治体はその問題に目をそむけているというのです。

著者の吉川祐介さんは、結婚を機にそういった限界分譲地、限界ニュータウンに移住、実態を目の当たりにし、問題点を挙げたブログを開設したそう。

そのブログを見つけた出版社「太郎次郎社エディタス」が、自費出版ではなく商業出版を勧めたそうで、見つけた編集者さんはものすごい目の付け所だったな、と思います。

著者はその宣伝となればと今年の2月よりYouTubeチャンネルを始めたところ大変な人気となっていて、どの動画も10万回以上の再生数となり、最も多い再生数の動画は100万回に迫る勢いというブームとなっています。

私も実は、YouTubeで吉川さんの動画がおすすめに出てきたため見たところ、一気に引き込まれてしまった口です。

こちらの本も、9月30日の発売直後、Amazonで販売ランキングがジャンル1位となり、私も遅ればせながら購入し拝読しました。

 

このテーマですが、不動産業者はあまり触りたくないものだろうと思うのです。

そもそも、限界分譲地の不動産というのは価格が非常に低く(0円物件なんてものもあるそうですが)、不動産業は取り扱う物件価格が手数料を左右するという仕組みが法で定められているため、仲介では全く商売にならないのです。

文中にあった限界分譲地を扱う地元業者さんのおっしゃるとおり「ここには儲け話などない」のです。

しかし、分譲当時の不動産業者は田畑としても利用されていない二束三文の土地を買い取り、造成して濡れ手に粟だったわけです。

この問題の最初の原因は、昔の不動産業者の乱開発なわけで、本当はどこかで誰か(不動産にかかわる者)がこのけじめをつけないといけないと思うのです。

 

吉川さんはもともとライターでもなく、別のお仕事をされていたそうですが、筆力があり読ませます。

YouTubeでもそうですが、わかりやすい語り口で人を納得させる力があるように思われます。

構成としては、「限界ニュータウン」「限界分譲地」の現状、このようになった歴史と筆者がこの問題に関わるようになった経緯、問題点の洗い出しと解決につながるかもしれない管理がうまくいっているケースの紹介、という流れになっていて、先に希望を感じる終わり方でした。この構成もうまいですよね。

 

ただ、吉川さんの提言として「自己責任」という言葉を使っていわば自由主義的な方向性が解決につながるのでは、ということを述べられていますが、ここに関しては正直なところ、私としては異論ありです。

 

この問題の原因の一つとして「強すぎる所有権」というのがあります。

私は共産主義者ではないので所有権自体を否定するものではありませんが、日本の不動産の所有権というのは権利に付随する責任や義務があまりにも軽いのではないか、と考えています。

法人が所有している不動産の権利関係があまりにも入り組み塩漬けになっているというケースを、直近の吉川さんのYouTube動画で紹介されていますが、これは本来であれば法人が倒産や解散した後に精算すべき権利が放置されている、というケースです。

それ以外にもこの限界分譲地の問題にとどまらず、ゴミ屋敷問題や大都市の空き家問題、朽廃しかけた区分所有建物の行政代執行による取壊しなどの都市問題は、不動産の所有権やその処分にかかる問題です。

登記をするような一定以上の規模の現物については(これは動産不動産問わずなのですが)所有することに付随する義務、最後の処分までの責任を明確にして、所有者がいなくなった場合の処分をもっと効率的に行えるよう法で定める必要がある、と考えます。

不要な不動産、いわゆる「負動産」については、実は「ゴミ問題」に近いアプローチが必要なのではないかと考えます。

そして不動産については、所有者責任を善管注意義務に準ずるような重いものにすべきだと考えます。

それに併せて、不動産を管理できない所有者が国に土地等を比較的容易に納められるような仕組みも作るべきだと思います。

結局のところ、不動産は自由主義、市場主義的に所有者が管理するもの、という考え方は人口減少社会では行き詰まってきていて、個々人が管理できない不動産は国全体の問題として社会でしっかり管理すべきで、ある程度の権利制限もやむなしではないか、と私は考えます。

 

とても不動産屋の意見ではないな、とも思っておりますが、皆様はどのようにお考えになりますか?

最近の世界情勢も踏まえると、国土の保全に関わるような大きな問題のような気がしております。

田舎の土地

※画像はイメージです。

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最終更新日:2022年9月15日
公開日:2022年9月8日

菅野です。1ドルが144円99銭まで円安になったというニュースが入りました。

東京外為市場は144円台前半 日経平均、一時500円超高(時事通信)

 

円安ドル高ということはそのものズバリで、円よりドルのほうが価値があがる、逆にいうとドルより円の価値が下がる、ということになります。

この円安が実感できる端的なお話を見つけました。

丸亀製麺で3000円! インスタントで1000円!
海外旅行はかなり大変かもしれませんね!

でも、この状況を逆手にとって、輸出事業は今後増収増益となることが予想されます。

 

また、円安は不動産の売却のチャンスでもあります。

価格相場は過去最高水準となりつつある日本国内の不動産ですが、この為替の状況を見るとまだまだ、海外からは割安感があるようです。REDSでは国際事業として、LeadingREという海外不動産ネットワークに加入し、国内不動産の販売情報を海外に発信しています。

以前は、インバウンド需要といえば東アジアのお客様が多かったのですが、この円安ドル高で英語圏の購入検討者も非常に増えてきています。

いま不動産の売却を検討する場合、ドル経済圏からの需要を外すのは非常にもったいないことです。
海外顧客の需要にも対応できるREDSのご利用をぜひ検討されることをおすすめします。

 

円安

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公開日:2022年5月17日

 菅野です。

いわゆる「キラキラネーム」について、法で一定の基準が定まる模様です。

 

 

 

こちらは、戸籍に「ふりがな」を記載することについての法整備に関して、法制審議会が3つの案を出したという記事です。

こちらの記事のほうがその案についてはわかりやすいですね。

 

容認へ、と書いていますがそのようには思えない内容です。

1,権利の乱用や公序良俗に反する場合を除く

2,音訓読みか慣用で読めるか、字義との関連がある

3,音訓読みか慣用で読めるか、あるいはそのいずれでなくても、字義との関連があるか、正当な理由がある

読売の記事では2が一番厳しいとのことですが、3の命名の「正当な理由」ってかなり難しいですよね(笑)

 

 

以前「悪魔ちゃん騒動」というのがあって、自身の子に「悪魔」と名付けた親がわざわざマスコミに公表し、バッシングを受けたという事件でした。

いろいな意見があると思いますので、私の見解は割愛させていただきますが、その後もいろいろと特異な命名が某掲示板で話題となっていたこともありました。

そのころは「キラキラネーム」とは言わずに「DQN(ドキュン)ネーム」と言われていたのですが、いまだにその時代の掲示板ページがどうやらあるようです。

(リンクは掲載しません)

ちなみに「DQN」というのは、インターネットスラングで「非常識な人」(非常に柔らかい表現ですが)という意味です。

実際に、酷いというか凄い名前がたくさんあるようです。

子に親は選べないとはいいますが、実際にそういった名前でいじめにあったり、コンプレックスを持ったりしてつらい思いをする方もいると聞きますし、改名なされた方もいらっしゃるそうです。

ある程度の基準のようなものは、もしかすると必要なのかもしれません。

 

 

 

ところで、戸籍に「ふりがな」がないということを皆様はご存じでしたでしょうか。

相続を経験するなどしないと、なかなか戸籍というものには触れることは少ないと思います。

実際、どのように管理されているかというと、昔の戸籍については「画像」で管理されているようです。

これは、そのまま活字に起こすことが難しい文字が多数、使用されているからです。

現代でも「辺」という字は「異体字」が数多く存在していて、当社でも売買契約書を作成する場合等に非常に気を使います。

「邊」や「邉」の仲間たちはUnicodeではどこまで包摂されるのか/帰ってきた?Unicode刑事〔デカ〕リターンズ

 

また、かなりご年配のかたで「変体仮名」という文字を使用した名前を見かけることがあります。

これは読めない!

変体仮名 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウィキペディアの記事の下の方に例があり、「高野切の変体仮名の例」を見ると

どう見ても「さ」なのに「き」

どう見ても「け」なのに「つ」

どう見ても「そ」なのに「は」

どう見ても「わ」なのに「り」

 

分かるかーーーー!!!

 

相続がらみで古い戸籍を見る機会があり、この変体仮名が使用されていてなんと読んだらいいのか全く分からないことがありました。

この変体仮名は登記簿にもそのまま記載されていて、古い保存登記の所有者名にこの変体仮名があった場合

「所有者見つからんぞ、これ」

という感じです。(大体、明治大正のひと)

 

まあそんな感じで、漢字や変体仮名など様々な字で戸籍を管理するのは、デジタルだと非常に厳しいため、ふりがなをつけて五十音で管理するのが簡単だ、ということになったわけです。

戸籍のふりがなの義務化については、伝統だなんだと言わずに、速やかに行っていただきたいものですね。

 

戸籍謄本

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公開日:2022年2月17日

菅野です。

本日のFNNのニュースで、郵便の合理化について流れてきました。

手紙・はがき 翌日配達廃止 木曜投函で4日後の月曜に

私の印象としては「まだ翌日配達してくれていたんだ」という感じです。

一部には「サービスの後退」などという方もいらっしゃるようですが、郵便料金って実際安いですよね。

はがきは63円、定型封筒で84円~94円ですよ。

この金額で翌日配達なんて、そりゃ赤字になりますって。

運送料って、だいたい人件費ですから、これだけ安いってことは給料も安くせにゃならんということです。

それは良くない、って言いたい。

 

急いでるならレターパック使えばいいんですからね。

ポスト投函翌日配達のレターパックライトが360円。

でも、総武線で秋葉原と新宿間往復で340円ですから、この金額で全国だいたい翌日に着くなんてのは明らかに安すぎです。

宅急便だとタイムサービス使って東京から北海道まで1700円かかるんですよ。

レターパックはたしかに便利ですが、これも民業圧迫の最たるものですよ。

 

郵便というのは「ユニバーサルサービス」として全国一律のサービス提供が義務付けられています。

でも、民営化したのだから、少なくとも赤字にならないような合理化は必要なはず。

このサービスを維持するなら、おそらく再度国営化しないともたないはず。

と思ったらこんな記事を見つけました。

「郵便局」赤字転落で蠢く「再国営化」の大愚策
 フォーサイト-新潮社ニュースマガジン

こういう中途半端な半官半民な状態の企業の赤字は、有耶無耶になって大体、税金で処理されていくと相場が決まっているものです。

全国一律のサービスはお願いしたいと思いますが、せめて採算性については民間企業なのだからきちんと考えるべき、と思います。

63円切手

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最終更新日:2021年12月24日
公開日:2021年12月23日

菅野です。

こちらは先月の不動産流通研究所の記事です。

 

 

どれくらい増えたのかは記事をご参照いただければと思いますが、アンケートに回答したすべての大手不動産会社で前年比増となり、投資家向けの仲介をしている三菱地所リアルエステートサービス㈱を除き取扱高も前年比増となっています。

これは、記事中にもありますが昨年後半から今年の前半にかけて購入検討されるお客様が非常に多かったという実感があります。

コロナ禍で、広い物件へ引っ越したいという希望や、テレワークの普及により郊外へ引っ越したいという需要が多くございました。

一方で、まだ感染の危険を感じる時期でもあったため、売却を控えようと考える売却検討のお客様も多く、在庫不足から価格が高騰していったという傾向もございました。

 

ところで2021年後半から2022年にかけての見込みですが、現状、売却物件の在庫不足は解消に向かっているように感じられます。

また、今年前半の好調さを見て買取再販業者がかなり強気の仕入れを行っている様子が見受けられ、価格は更に上がっていくように思われます。

 

ただ、住宅ローン減税の縮小や、インフレ懸念による金利上昇、日銀のテーパリングなどの懸念があり、来年の住宅市況は厳しい方向に進んでいくのではないか、と予想されます。

既に小規模の投資不動産販売についてはかなり厳しい市況で、諸々の融資不正による金融の締め付けが影響して、融資がなかなか引けないという状況も相まって在庫過剰となっており、価格下落圧力が非常に強まっています。

もしご自宅の売却を検討されるのであれば、タイミングとして価格の頂点は来年春先となりそうですが、そこを越えるとかなり厳しい販売状況になるのではないかと懸念しています。

いま売却を検討している方は、なんとしても来年春には売り切ってしまう努力をされたほうがよろしいかと思います。

 

「バブル崩壊」という言葉を最近は、めっきり聞かなくなってきました。

 

さすがに二の轍は踏まないだろう、と思いたいところですが、

本当に、大丈夫なのでしょうか…

家と電卓

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公開日:2021年11月29日

菅野です。

日経の会員限定ですが、以下のような記事がありました。

 

中古住宅、データは伏魔殿 不動産IDに既得権の壁 

 

内容をご確認いただければと思いますが、ものすごくざっくりまとめると

「不動産取引の透明化について、様々な施策や案が出てきたが、全部不動産業界の反対でつぶされている」

というものでした。

 

だいたいあってる。

 

不動産取引の透明化について政府から「不動産ID」というものでいろいろな情報を紐づけよう、という案が出ています。

不動産IDで出来そうなこととして記事中で挙げられているのが

・重要事項説明に必要な固定資産税額、都市計画、道路や水道管の状況を簡単に取得できる

・物件検索サイトに掲載された成約済みの「おとり物件」を自動的に判別して排除できる

・成約価格や建物の修繕履歴等を利用して価格査定が高精度で可能になる

のだそうです。

1つ目は、不動産の調査が楽ちんになります。わざわざ現地の管轄の役所に出向く必要もなくなるということです。

2つ目は、意図的なおとり広告が排除でき、業者にとっても勝手に成約物件を削除してもらえるのは非常に便利です。

3つ目なんか、実現したら不動産鑑定士なんか要らなくなってしまいますね!

 

でも、取引の透明化、というのは難しい部分も非常に大きいです。

記事中にもあるのですが、不動産価格について日本では個人のプライバシーという考え方があり、取引価格を公表するのは不動産業界にとどまらず広く反対があるのではないかと予想されます。

不動産取引についてのデータ連携というのは、「個人情報保護」という、進撃の巨人のウォール・マリアのような大きな壁があり、なかなか一筋縄ではいかないのです。

とにかく日本の法律の建付けは個人の権利というものを重くおいているので、有事法制の議論なんかもそうですが、個人の権利の制限に関しては世間が非常に厳しく反応します。

その個人の権利の中に「プライバシー権」というものもあり、少し戻りますが不動産の取引価格の公表は「プライバシー権の侵害」となる可能性が大きいわけです。

 

公共の福祉と個人の尊重というものは二律背反しやすく、政治でも「自由主義」と「社会主義」とは本来、対立する命題なわけです。

(しかしながら日本ではリベラルというと、どちらかといえば社会主義・共産主義的思考の方が多いように見え、矛盾を感じてしまいますが)

不動産の取引というものが「公的」なものであるという認識が欧米のように広まっていけば、そういった透明化は進むかもしれません。

でも正直なところ、私も自分の家をいくらで買って、いくらで売れたかというのを公表されたくはありません。

一人一人の考え方を変えていくということは、なかなか難しいかな、とも思うのです。

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公開日:2021年8月20日

菅野です。

オリンピック開催前にこんなブログを書きました。

オリンピックと不況

本日、日経平均は一時2万7000円を割り込み、今年の最安値を更新しました。

 

今年の大発会は2万7000円を大きく超えて始まり、2月には一時3万円超えとなった株価ですが、天井を過ぎたのでしょうか。

今年の上半期(1月から6月)は、企業の倒産件数がバブル期に次ぐ低水準だったそうです。

政府や自治体の企業や商店に対する支援金や給付金、緊急貸付などの資金繰り支援が功を奏した形です。

 

しかし、オリンピックも無観客での開催となり、期待したインバウンドの経済効果については全く望めませんでした。

それに加えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が深刻となり、株価はオリンピック期間中もパッとしませんでした。

 

また、オリンピックの開催は人々に誤ったメッセージを送ってしまったようです。

個々いろいろな思いはあるでしょうが、人々は街に繰り出し、人流が増えたことによる感染拡大であることは恐らく間違いないでしょう。

今まで我慢していた飲食店の一部が我慢しきれず営業再開し、そこで飲んで騒いでいる人たちに感染が進んでいるようにも見えます。

また、夏休みで塾でのクラスターが発生し、子供から大人への家庭内感染が増えているとのこと。

家庭内感染からの自宅療養で、お母さんが亡くなる痛々しい事態も報道されました。

 

若年者は重症化しにくいということが、若者の警戒感の薄さに繋がっていることは否めません。

そして感染力の強いデルタ株にウイルスが置き換わったそばから、致死性の強いラムダ株が確認されたそうです。

ワクチンもやっと1回目を打ち終わったかと思いきや、3回目のブースター接種が必要ではないか、などという報道もあり、感染の終息は先行き不透明です。

 

今秋には任期満了に伴う衆院選挙が開かれる模様です。

これを越えたあたりで、日銀のマネーサプライも一服するのではないかと予想します。

今年の春は、売り惜しみ、売り控えによる供給減で不動産の価格高騰が起きましたが、この後は暴落はしないまでも、価格高騰は落ち着くように思われます。

自民党さんは選挙前までは、とにかく景気減速をしないよう頑張るとおもわれますので、引っ越しや資産の売却を検討されている方は、できれば選挙前にお売りになることをお勧めします。

選挙後にこのままの景気維持ができるかどうかは、分かりません。

国の予算は2年続けて国債頼りの100兆円超です。

日銀が買い込んだETFは8月には37兆2千億円となりました。これは東証上場株時価総額の5%にあたります。

コロナ対策でいろいろ無理をしている財政は、どこかで緊縮に向かう可能性が高いです。

そうなると景気は急激に減速するでしょう。

でも、今までが強いカンフル剤を打ち続けて仕事をしていたようなものですから、必ずどこかにツケが来ます。

その時に厳しい痛手を自分たちが負わないよう、注意深く経済状況を見ていくしかない、と思います。

 

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公開日:2021年8月7日

菅野です。

無観客ながらも盛り上がっているオリンピックですが、今週末で終わります。

お盆休みをとられる方々はこの夏、いかがお過ごしになるのでしょうか。

7月後半より、新型コロナウイルス感染症covid-19の感染拡大が深刻な状況となっています。

8月5日には、東京都の新規感染者数はとうとう、5000人を超える事態となりました。

しかしながら、本日、池袋・渋谷・横浜の各営業所を臨店した際に、どの駅周辺もかなりの人出があり、あまり危機感は感じられていない様子に見えました。

 

注目するデータに「一日の死者数」があります。

現在、感染者数はウナギのぼりとなっていますが、一日の死亡者数は7月初旬からほぼ横ばいとなっています。

NHK 新型コロナウイルス特設サイト

これは、重症化しやすい高齢者へのワクチン接種が進み、若い方へのワクチン接種も始まっていることが影響していると考えられます。

ただ、現在流行している「デルタ株」と呼ばれる種は非常に感染力が強く、ワクチンを接種していても罹患するとのこと。

ワクチンは重症化を防ぐ効果はあるものの、蔓延を防ぐ効果は無いとのデータが示されているようです。

ですので感染拡大防止のために、マスク着用、手洗い、三密の回避は、引き続き必要となるものと思われます。

 

ただ、死者数の拡大がみられない現状をみれば、今までと同じようにやみくもに恐れ、とにかく自粛、営業停止などという状況ではないと考えます。

そろそろ「withコロナ」「新しい生活様式」を真剣に考え、今まで一方的に悪者とされてきた飲食店について、きちんと対策を講じているところに関しては通常営業を認めていくべきである、と考えます。

そういったことを行っていくのに必要不可欠なのは「ワクチン接種」であることでしょう。

NHKのデータによると、日本のワクチンを1回以上接種した人の割合は45.93%、接種完了した人の割合は32.86%とのことです。(2021年8月7日現在)

菅総理が7月30日に会見で述べた「8月末には2回接種完了した人の割合が4割を超えるように取り組む」という目標は、現在の状況をみればおそらく達成できるでしょう。

これはあくまでも通過点として、より多くの人にワクチンを接種してもらい、できるだけ早く国民の皆さんが「withコロナ」の生活を送れるように政府や自治体の方々には頑張っていただきたいと思います。

 

また、埼玉県では

彩の国「新しい生活様式」安心宣言飲食店+(プラス)認証制度

という、一定基準の感染防止措置を講じている飲食店への認証制度を始めました。

これは東京都の「感染防止徹底宣言ステッカー」と違い、県職員が実際に店舗を視察確認した上での認証である、ということです。

もちろん、認証後に感染防止対策がおざなりとなる懸念はなくはないのですが、やはり保健所から営業許可を受けるときのように、県職員にて基準がクリアされているか確認がなされているというのは大変心強いもので、ただ自分でチェックして簡単に発行できる虹の紙とは訳が違います。

東京都でこれを行うのは難しいだろう、と思われる方もいるかもしれませんが、皆の自主性に頼った現状がこの感染拡大であることを考えれば、一定基準を公で決めてクリアした店舗は営業を認める、というやり方のほうが現状に副った方法ではないかと思います。

実際、飲食店は、食品衛生法により保健所長から営業許可を受けて営業しています。

この食品衛生法に新型コロナ特措法を絡めたり、もしくは許可要件となる施設基準を感染拡大防止に沿った形で追加することもできるのではないでしょうか。

飲食店側も一律営業自粛より、やれることをやって営業再開できることを望んでいるはずです。

 

「withコロナ」「新しい生活様式」が市民生活に深く浸透することにより、以前に近い形での経済活動が復活してくるものと思われます。

「K字」から「J字」回復となるにはやはり「ワクチン」「withコロナ」が重要であると思います。

 

私は、ランチについては毎日、必ずお店で食べるようにしています。

本当に申し訳ないのですが、出来るのはそんなことしかないのです。

この苦境のなか、頑張って歯を食いしばって営業継続しているすべての飲食店の皆さんにエールを送りたいです。

今年の年末は昨年のような寂しい年末にしてはいけない、と思います。

 

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公開日:2021年7月12日

菅野です。

7月3日に熱海市の伊豆山で大規模な土砂崩れが発生し、本日現在でもまだ行方不明者の捜索が続いています。

静岡県の副知事は事故後に記者会見で、崩落した箇所は「盛土(もりど)」がなされていて、その工法が不適切であったという見解を述べました。

今日は、「盛土」について調べていこうと思います。

 

盛土ってなに?

「盛土」というのは文字通り、土の無いところに土を盛って、土地を平らにすることです。

これに対して盛り上がっている土を削って、土地を平らにすることを「切土(きりど)」といいます。

盛土工事と切土工事

盛土は、もともと土の無いところに土を盛るわけですから、盛り上がったところではなく凹んだところに行われます。

今回の熱海伊豆山の盛土は、「沢」の部分であったと言われています。

「沢」というは、以下引用です。

山地斜面を刻み込んでいる小さな谷で、尾根に対する語。普段は多少湿っている程度で、雨が降ったときだけ水流がみられる。地方によってはかなり大きな谷でも沢とよぶことがある。恒常的に水が流れていても沢とよぶ場合があり、沢、谷、川などはそれほど厳密に区別して用いられていない。谷川岳の一ノ倉沢、マチガ沢、北穂高岳の涸沢(からさわ)などのように登山ルートとして稜線(りょうせん)沿いのコースよりも有名になっている所もある。水面や湿地を沢とよぶこともあり、沼沢地という場合がこれに相当する。(コトバンク)

引用終わり

沢というのは、谷のようにへこんだ水が流れやすい場所で、今回の崩落場所はその沢の上に土を盛っていたということのようです。

 

 

土砂崩れの原因は?

理由についてですが、当社REDSもホームインスペクションでお世話になっている「ジャパンホームシールド株式会社」さんからプレスリリースがでています。

 

熱海伊豆山地区土砂災害 緊急調査報告~地形地質情報と地理情報システムを活用した考察と提言~ (PDF注意)

 

こちらには、今回の土砂崩れの原因について、地盤調査のエキスパートとしての見解と考察が書かれています。

盛土というのは、そこにあった土ではない為、従前からあった土との境目が滑りやすくなります。

もともと伊豆山付近は火山灰質の土地で崩落しやすい地質であり、その上に土砂を盛っていたため、大量の雨が降ったことで盛った土が重くなり、もともとの土が支えきれずに一気に崩落したようだというのです。

そして、盛土をする際には、水を含んで重くなることを防ぐための排水設備を備えておくべきところ、その排水能力が足りなかったのではないかと指摘しています。

静岡県副知事も会見時に排水施設の不備について述べていました。

盛土工事の施工に問題があったのではないか?という疑念が浮かんできます。

 

 

法規制はないの?

「盛土」「切土」にかかわる法律として代表的なのは「宅地造成等規制法」です。

この法律は「宅地造成工事規制区域」について定められています。

この地域に該当する場所で次のような工事を行う際には都道府県知事の許可が必要となります。

 

1,切土で、高さ2mを超える崖(30度以上の斜面)を生じさせる工事

2.盛土で、高さ1mを超える崖(同上)を生じさせる工事

3.切土と盛土を同時に行うときは、盛土が1m以下でも切土と合わせて高さ2mを超える崖を生じさせる工事

4.盛土切土関係なく、宅地造成面積が500㎡を超える工事

 

今回、崩落があった場所も「宅地造成工事規制区域」でした。

おそらくですが、県知事の許可を得て工事はされているはずです。

完了検査などは適正に行われていたのかが気になります。

 

私たちはどのように気を付けるべきか

今、住まわれている場所がどういった土地かを調べるには、以下のサイトが便利です。

ハザードマップポータルサイト

こちらの「重ねるハザードマップ」の左側「すべての情報から選択」内の「土地の特徴・成り立ち」というところに、土地ができた経緯が書かれています。

「地形分類(自然地形)」では、もともと水を埋め立てた場所とか、沢や谷を埋めた場所というのがわかります。

「地形分類(人口地形)」というところでは、盛土地・埋立地か切土地かというのが色分けされています。

また、国交省の以下のページ

大規模盛土造成地マップの公表状況について

では、各自治体で大規模盛土造成工事がどこで行われたかを調査したマップへのリンクがあります。

これは2018年北海道胆振東部地震で、私の故郷札幌市の清田区里塚地区が大規模な液状化現象を起こし、その原因が盛土による宅地造成工事の不備が原因とみなされたことが発端で、国交省が各自治体に緊急に調査公表を指示し、作成されたものです。

里塚地区の被害状況を綴った北海道文化放送(uhb)さんの記事です。

なぜ液状化現象が起きたのか?北海道胆振東部自身で被害を受けた里塚地区の戦い

里塚地区は液状化現象を起こす40年も前に造成された宅地ですが、それだけ経っても地盤は締め固められることはなく、地震で大きな被害を生んでいます。

盛土がすべて危ない、ということではないのですが、まずは自身の居住地がこの大規模盛土造成地に該当するか確認してみてはいかがでしょうか。

 

そして、これから購入を検討される方も、以上のマップを確認して、今、検討している場所がどれくらい安全か、危険かを確認するのが良いと思います。

武蔵野台地は地盤が良いといいますが、実際には谷を埋めた盛土造成地かもしれません。

単純に東京の西側だから安全、とは言い切れないのです。ご参考になさってみてください。

 

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公開日:2021年6月28日

菅野です。

五輪カラーテープアート

今回は、オリンピックと景気について考えます。

日本では今まで、3回オリンピックが開かれています。

 

・1964年東京オリンピック

・1972年札幌オリンピック

・1998年長野オリンピック

 

実は、3回とも、その後に不況が訪れています。

 

1964年はオリンピック不況ともいわれ、過剰投資による製造業の倒産が相次ぎました。

1972年札幌オリンピックの後は「オイルショック」です。私の母もトイレットペーパーを買いにいったそうです。

オイルショックは、第四次中東戦争をきっかけにアラブ諸国が原油価格を引き上げたことでインフレが加速、「狂乱物価」と言われるような年23%の物価上昇が起こり、戦後初のマイナス成長となったという、インフレ不況(スタグフレーション)です。

この事態を見ていた官僚や政治家が「羹に懲りて膾を吹く」ような政策を行ったせいで、バブル崩壊からの平成デフレ不況につながったというのは、大変皮肉なものです。

そして、その平成不況の真っ只中で開催されたのが、1998年長野オリンピックです。

前年の1997年には「アジア通貨危機」が起こって韓国がデフォルトしそうになり、IMFと日本政府が動いてデフォルトを回避したのが、ちょうど開催直前の1月末で、すでに景気はよろしくなかったのです。しかし、その後ITバブルで一瞬景気が良くなったように見せかけてのIT株大暴落で、さらに日本経済はダメージを受け、暗いデフレへと続いていくことなります。

 

今回はどうなるのでしょうか。

2021年の株価は年初来からずっと25000円以上をキープし、バブル期以来の高値が続いています。

この株価を支えているのはなんなのでしょう?

恐らく、日銀ではないかと思います。

黒田総裁はなりふり構わずETFの買い入れを進めてきていましたが、株価が大きく下がった4月20日、日銀はETFの買い入れを行わなかったようです。

翌日さらに下がってやっと買い入れを行ったようですが、今、黒田さんは出口をどのようにするかを考えているのではないかと思われます。

オリンピック後、長く続いた金融緩和が静かに終わる、そんな雰囲気がそこはかとなく感じられます。

 

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