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公開日:2025年5月11日  藤ノ木 裕

2025年4月の建築基準法改正で大幅縮小された「4号特例」。その影響は?

REDSエージェント、宅建士の藤ノ木裕です。2025年4月、建築基準法における重要な改正が施行され、これまで小規模な木造建築物に適用されてきた「4号特例」が大幅に縮小されました。

この改正は、建築物の安全性向上と省エネルギー化の推進を目的としており、住宅業界をはじめとする建築に関わる全ての関係者に大きな影響を与えることが予想されます。その背景や具体的な変更点、影響、今後の展望について説明します。

建築基準法改正

(写真はイメージです)

4号特例とは

4号特例とは、建築基準法第6条第1項第4号に該当する小規模な建築物(主に木造2階建て以下で延べ面積500㎡以下の住宅など)を対象に、建築確認申請時の構造計算適合性判定や構造図書の提出を「原則として不要」とする特例措置でした。

この特例は、設計者の負担軽減、手続きの簡略化、そして迅速な住宅供給を目的として、1983年の建築基準法改正時に導入されました。

具体的に4号特例が適用される建築物は、以下の全ての要件を満たすものでした。

  • 構造:木造
  • 階数:2階以下
  • 延べ面積:500㎡以下
  • 高さ:13m以下
  • 軒高:9m以下

これらの建築物は、建築士が設計を行うことを前提に構造に関する詳細な審査が省略され、比較的簡略な手続きで建築確認を得ることができました。

法改正の背景と目的

今回の4号特例の縮小に至った背景には、主に以下の要因があります。

建築物の安全性への懸念

近年、大規模な地震や台風などの自然災害が頻発する中で、4号特例によって構造計算が省略された木造住宅の安全性に対する懸念が高まっていました。特に、現行の壁量計算のみでは、複雑な形状や重量のある屋根を持つ建物など、構造的にもろい住宅が建てられる可能性が指摘されていました。

省エネルギー基準適合義務化との整合性

2025年4月には、建築物省エネ法が改正され、原則として全ての新築住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられます。省エネ性能を高めると断熱材の追加などにより建物重量が増加する傾向があり、従来の4号特例の枠組みでは、十分な構造安全性を確保できない懸念がありました。

建築確認・検査体制の強化

過去の建築物の構造偽装問題などを踏まえ、建築確認・検査体制の強化が求められています。このため小規模な建築物についても、より詳細な審査を行う必要性があるとの共通認識ができてきました。

住宅の品質向上への要求

消費者の住宅に対する品質要求は高まっており、構造的な安全性をより明確に担保できる仕組みを構築する必要が生じてきました。こうした背景を踏まえ、国土交通省は、建築物の安全性と省エネルギー性能の向上を図るため、4号特例の縮小を決定しました。

法改正の具体的な内容

2025年4月に施行された改正建築基準法では、4号特例の対象範囲が大幅に縮小され、建築物の分類が以下のように変更されます。

【新2号建築物】

  • 階数が2以上
  • 延べ面積が200㎡を超える平屋建て
  • 高さ10mを超えるもの
  • 軒の高さが7mを超えるもの
  • その他、構造が複雑なもの(具体的な基準は今後告示予定)

法改正による影響

今回の4号特例の縮小は、建築業界のさまざまな方面に影響を及ぼすと考えられます。

設計者への影響

・設計業務の増加と期間の長期化:構造関係の図書作成や確認申請の手続きが増えるため、設計業務の負担が増加し、設計期間が長期化する可能性があります。

・構造知識の必要性の高まり:これまで構造計算を外部に委託していた設計事務所や、構造設計の経験が少ない設計者にとっては、構造に関する知識やスキルの新たな習得が不可欠となります。

・設計費用の増加:設計業務の増加に伴い、設計費用が上昇する可能性があります。

工務店・建設業者への影響

・確認申請期間の長期化:審査期間が長くなることで、着工までの期間が延びる可能性があります。

・コスト増加の可能性:設計費用の増加や構造強化のための材料費増加などが、建築コストの上昇につながる可能性があります。

・新たな知識・技術の習得:改正後の基準に対応するため、新たな知識や施工技術の習得が必要となる場合があります。

消費者への影響

・住宅価格の上昇:上記のコスト増加の要因により、新築住宅の価格が上昇する可能性があります。

・住宅の安全性向上:より詳細な構造審査が行われることで、住宅の耐震性や耐久性が向上し、より安全で安心な住まいが提供されることが期待されます。

・住宅取得期間の長期化:確認申請期間の長期化により、住宅取得までの期間が延びる可能性があります。

行政への影響

・審査体制の強化:確認申請件数の増加と審査内容の高度化に対応するため、建築行政機関は審査体制の強化が必要となります。

・審査期間の長期化:審査項目の増加により、審査期間が長期化する可能性があります。

今後の展望と課題

4号特例の縮小は、日本の住宅の安全性向上にとって重要な一歩となることが期待されます。しかし、円滑な制度移行と実効性を確保するためには、いくつかの課題に取り組む必要があります。

・設計者・施工者への支援:特に中小規模の設計事務所や工務店に対して、構造設計に関する知識や技術の習得を支援するための研修制度や情報提供を充実させる必要があります。

・構造計算ソフトウェアの普及:構造計算を効率的に行うためのソフトウェアの開発や普及を促進し、設計者の負担を軽減する必要があります。

・消費者への丁寧な情報提供:住宅価格の上昇や取得期間の長期化など、これまでよりデメリットが増えることについて、消費者への影響を丁寧に説明し、理解を得る必要があります。

・行政の審査体制の強化:増加する確認申請に対応できるよう、建築行政機関は審査体制の強化を図る必要があります。

・制度の段階的な移行と見直し:急激な制度変更は混乱を招く可能性があるため、段階的な移行期間を設け、施行後の状況を注視しながら、必要に応じて制度の見直しを行うことが重要です。

まとめ

2025年4月に施行される建築基準法4号特例の縮小は、日本の住宅の安全性と品質を向上させるための重要な改正であり、建築業界全体でこの変化を理解し、適切に対応していくことが求められます。

設計者、施工者、そして行政が連携し、新たな制度の下で、より安全で安心な住まいづくりを推進していくことが、今後の日本の建築における重要な課題といえるでしょう。消費者も、住宅の安全性に対する意識を高め、改正の内容を理解しておくことが重要となります。

 

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藤ノ木 裕
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