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藤ノ木 裕(宅建士・リフォームスタイリスト)

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公開日:2023年10月18日

REDSエージェント、宅建士の藤ノ木です。今回は、高さ制限や届出などの点で不動産とは切っても切れない関係にある景観法についてお話したいと思います。

景観法

景観法とは

景観法とは、日本の都市、農山漁村などにおける良好な景観の形成を促進するために制定された法律です。直接に景観を規制する訳ではなく、地方自治体の景観に関する計画や条例、それに基づいて地域住民が締結する景観協定に実効性・法的強制力をもたせることを目指しています。

具体的には、以下のような内容が含まれています。

●地方公共団体が景観計画を策定し、その中で特別な配慮が必要な地域を指定します。
●指定された地域では、建築物の建設や改築、樹木の伐採などが行われる際には、事前に地方公共団体の許可が必要となります。
●地方公共団体は、その地域の特性や条件に応じて、建築物の形状や色彩、樹木の種類や配置など、景観に関する具体的な基準を定めます。

これらにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境創造及び個性的で活力ある地域社会実現を図り、国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的としています。

景観法の制定の経緯

景観法は以下のような経緯で制定されました。

日本では高度成長期以降、全国どこへ行っても地域全体の調和や美観、伝統を軽視した住宅やビル、工場、護岸などの建築物・構造物が次々に建てられ、街並みや自然景観から調和や地域ごとの特色が失われていきました。一部の地方自治体では地域住民の要望に応え、景観条例を定めていましたが、法令に基づかない自主条例のため強制力がなく、建築確認の際に従う必要はないものでした。

1990年代頃から、ようやく国土交通省も自らが発注する公共工事において景観に対する配慮・調和を重視するようになりました。併せて「美しい国づくり政策大綱」を策定し(2003年7月)、景観法が2004年6月に公布され現在に至ります。

景観法があることによるメリットについて

景観法があることによるメリットは主に以下の5点です。

(1)地域の特性を保護として、地域の自然や歴史、文化等と人々の生活や経済活動との調和を図り、地域の個性や特色を引き立てることで、良好な景観の形成を促進します。
(2)美しい国土の形成として、美しく風格のある国土の形成を目指しています。これにより、都市や地域が持つ美観を保つことができます。
(3)豊かな生活環境の創造として、潤いのある豊かな生活環境創造を目指しています。これにより、住民が快適に生活することができます。
(4)地域社会の活性化として、個性的で活力ある地域社会実現を図ります。これにより、地域社会が活性化し、地域経済が発展することが期待されます。
(5)国民生活の向上として、国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目指しています。

国内での景観法の取り扱いについて

富良野

日本国内では、景観法の運用については各地方自治体が自主的に行っており、その厳格さは自治体により異なります。

具体的な自治体としては、北海道では以下のような例があります。

釧路市、北見市、千歳市、伊達市、富良野市、長沼町、栗山町、東神楽町、上富良野町、清里町、洞爺湖町、平取町、弟子屈町などは、景観行政団体となり統合条例を制定しています。一方で登別市や滝上町などは景観行政団体にならず、景観法を利用せずに自主条例を制定しています。これらの自治体ではそれぞれ独自の方法で景観を保全し、都市や地域の特性を維持しようとしています。

これらの自治体では、景観法と同様に、地域や都市の特性を維持し、良好な景観を形成することを目指しています。ただし、それぞれの自治体がどの程度厳格に法律を適用しているかは具体的な事例やデータに基づいて評価する必要があります。

海外での景観法の取り扱いについて

日本以外の国でも景観法に類似した法律や制度が存在します。

イギリスでは個々の開発行為に対してディベロップメントプラン(Development Plan)と呼ばれる指標に基づいて規制が行われます。具体的な規制の例として、建造物の高さ規制が挙げられます。イギリスでは1930年代から都市を象徴する建造物をさまざまな所から眺めることができるように対象物と眺望点の高さ規制を行っています。

イタリアでは、文化財の保護に関する法律(1909年)がありましたが、この保護対象が景観を形成するもの(歴史的・芸術的価値を有する公園・庭園、眺望の美)にまで拡大されたことが景観規制の始まりといえます。1939年には、景観保全の重要な法律とされる文化財保護法(1939年法律第1089号)自然美保護法(同第1497号)が制定されました。

最後になりますが、景観について注目して見てみると、普段とはまた違った視点で街を楽しむことができると思います。古い街並みを訪れた際には、どういったところがいつもと違うのか見比べてみると面白いと思います。

 

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