堀 茂勝(宅建士・リフォームスタイリスト)
購入は煽らず、売却は囲い込みせず、寄り添います。
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公開日:2024年11月30日
皆様こんにちは。
首都圏一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント。【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)でございます。
先日2024年11月5日に、ビジネスを効率化する『不動産ID』について、「いよいよ来月試行がはじまる」との報道がありました。
これを機会に、日本での土地の所在の表現、『住所』の表し方について、イロハからおさらいしたうえで、これから利用が始まる『不動産ID』に迫ってみようと思います。
(画像はイメージです)
『不動産ID』とは、「土地や建物など不動産ごとに17ケタの数字を割り振って住所を識別する方法」とのことで、ビジネスを効率化するための官民の取り組みです。
国土交通省が、民間企業や行政など300以上の社・団体が参加する協議会を昨年2023年に立ち上げており、それがいよいよ、社会実装にむけて動き出すそうなのです。
詳しくは、このブログの最後のほうで取り上げてみようと思います。
不動産IDの前に、日本の「住所」の表現の仕方と、その問題点について、解説してみましょう。そもそも『不動産ID』って、まだ聞きなれない言葉ですね。新聞でも「きょうのことば」で解説をしています。
たとえば住所(その建物)をあらわすのに「1丁目2-3」や「一丁目2番3号」や「1-2-3」と、漢字「一、二、三」を使ったり、ローマ数字を使ったり、「2番」ではなく「2番地」を使ったり、さらには同じ数字でも、全角を使ったり、半角を使ったり。それをデータ処理の際に別の場所と認識してしまう可能性も否めません。
さらに、同じ場所(土地)を指すのに『地番』と『住居表示』という2つの表現方法があり、郵便の住所と登記上の地番で表記が異なることも情報共有の障害になっていたり、同じ場所なのに、異なるものとして認識されてしまう事もあったりします。
そのために起こっている「非効率」な状況を可決するための取り組みが『不動産ID』という仕組みです。
(以上、引用)
不動産IDは、これからの取り組みですが、そのお話を進める前に、現在使われている日本の「住所」について、あらためておさらいしてみましょう。
日本の住所は、『地番』を使うエリアと『住居表示』を使うエリアがあります。不動産業界では当たり前の話なのですが、不動産を購入する際に、最初に戸惑うポイントとして、この『地番』と『住居表示』があります。
ちなみに、全国どこでも所有権が登記されている土地であれば必ず『地番』は存在していますが、その土地に『住居表示』がない場所は、いたるところに存在します。それが最初に混乱しやすいポイントになっています。
『地番』は、土地の位置を特定するための番号です。これは土地の登記のために使用され、法務局が管理しており、主に不動産取引や土地所有権の確認に使用され、登記簿謄本に記載されます。
たとえば弊社、株式会社不動産流通システム【REDS】の新宿営業所が入っている「新宿ビルディング」について調べてみましょう。
このビルの「住所(住居表示)」は「新宿区西新宿1-8-1」です。
それに対して、この「新宿ビルディング」の敷地について不動産登記で使う所在の『地番』はどうなっているのか、調べてみましょう。
地番を確認するためには、法務局が発行している「地図」、これを一般の地図と区別するために「公図」と呼びますが、この「公図」を見て、その場所の『地番』を知ることができるのです。
公図「新宿区西新宿一丁目 8番7」
「新宿ビルディング」の「公図」で確認しますと、「新宿区西新宿一丁目8番7、8番8」になっております。
ちなみに『住居表示』の「西新宿1-8-1」とおなじ数字の地番「西新宿一丁目8番1」を探しますと、上記公図の青丸の場所、つまり「新宿郵便局」の東側の「大高ビル」の場所であり、「新宿ビルディング」とはまったく違った場所を指してしまいます。混乱しやすいですね。
『地番』は、権利が登記された「土地」ごとに番号を振る仕組みですので、土地を小分けに分割して、それぞれに権利を登記する「分筆(ぶんぴつ)」をおこなうと、あらたな番号『地番』が振られます(逆に複数に小分けされていた土地を、一つの大きな土地にまとめて登記することを『合筆(ごうひつ)』と呼び、『地番』はひとつになってしまいます)。
ちなみに土地の「筆(ふで)」というのは、不動産登記に関して、土地を区別するための基本単位を言います。具体的には、土地を1筆、2筆と数えるように、登記上で1つの土地として区別されている単位を「筆」と呼びます。
ある場所の近隣について、いろいろな場所で「分筆」されたりすると、位置関係がバラバラのところに飛び飛びにあらたな番号が追加されていきますので、場所と番号に一連性がなくなってしまい、住所から場所を特定するのに非常に苦労します。
このように『地番』は土地の区画ごとに付けられるもので、住所として利用するには不便な場合があります。そのため、日常生活での住所としては、別のシステムである『住居表示』が用いられるようになりました。
『住居表示』は、上記で説明しました『地番』を利用した場合には場所の特定が困難で日常的な使いづらさを克服するために、住居をわかりやすくするために導入された制度で、1962年の住居表示法に基づいて設定されています。
この『住居表示』は自治体が管理しており、法務局が管理する地番とは別のシステムです。自治体によって「住居」ごとに、その地理的な位置関係に対して原則として整然と番地が振られていきますので、一般生活上における位置の特定に対して、非常に役立ちます。
この『住居表示』を行うことにより、建物の場所がわかりやすいため、郵便や宅配便、消防や救急といった公共サービスがスムーズに提供できるという利点があります。
『住居表示』が実施されるエリアでは、建物に「○○町1丁目1番1号」などのような形で表示されるようになり、自治体から下記のような住所のプレート(町名板と住居番号表示板)が発行されます。
しかし『住居表示』は、先に記載しておりますとおり、日本のすべてのエリアで実施されているというわけではありません。1962年に利用を開始して以降エリアごとに「このエリアは『住居表示』を実施しますよ!」とお知らせがあって順次実施していっているわけでして、まだまだ「未実施」のエリアが多く存在しています。
たとえば「東京都新宿区」では、区のホームページによりますと「面積比で76.60%、89町丁の町で住居表示を行っており、未実施の地域は、63町丁となります。」(2024年11月14日現在)とのことで、下記の地図で「黄色」のエリアは「住居表示 実施地区」で、「うす紫色」のエリアは「未実施地区」となります。
「新宿区」のように大都会でも、まだ未実施の地区があり、そのエリアでは「●丁目●番●号」という『住居表示』の利用ができておりません。
たとえば未実施地区にある「新宿区立鶴巻小学校」の住所は、GoogleMapで検索してみますと、「東京都新宿区早稲田鶴巻町140−140」となっており、『地番』をそのまま「住所」として利用していることがわかります。
そもそも『不動産ID』って、まだ聞きなれない言葉ですね。新聞でも「きょうのことば」で解説をしています。
2024年11月5日(火)日本経済新聞 朝刊「きょうのことば」
これまで説明してきましたように、同じ場所(土地)を指すのに『地番』と『住居表示』という2つの表現方法があり、それにより郵便の「住所」と登記上の『地番』とで表記が異なることがあることもわかりました。
その結果、情報共有の障害になっていたり、同じ場所なのに、異なるものとして認識されてしまったりすることもあります。
そこで国土交通省が、官民の関係者による協力を通して、土地や建物ごとに17ケタの識別番号を割り振って、住所を数字で表現することを目指したのが不動産IDです。
たとえば宅配業者が窓口で荷物を受けつけた際に、データベースを活用して記載された住所を不動産IDの番号に置き換えることで、その後は送付先に届けるまで住所を番号で管理することができるようになります。
データベースで住所と不動産IDの番号を突き合わせる時点で、まず住所が実在するかどうかが分かり、宅配業者の営業所間での確認作業を減らせます。それにより住所の誤読や送り先の建物の間違いなど誤配を少なくできる効果も見込め、今後、増える可能性がある外国人労働者にとっても、漢字やかなが交じった表記よりも数字だけのほうが理解しやすく、宅配や郵送の場面での手間や労力、人材やコストを省けるように期待されています。
不動産IDの仕組みはさらに、物件の所在地、敷地の広さ、建物の構造、築年数などに加えて、登記情報、権利関係や過去の売買取引履歴、管理状況、法的制限、災害リスク情報など、物件全般に関するデータやさまざまな情報を紐づけ、デジタルプラットフォーム上で管理することを目指しているようです。
【第3回不動産IDルール検討会】不動産IDの中長期も含めた活用方法及びメリット(抜粋)
この不動産IDを利用することで、不動産取引の透明性や効率性が向上して、情報の継続性や信頼性が保たれるようになることも期待されています。
この『不動産ID』が進んでいくことで、不動産流通の透明化も進んでいくことにより、不動産業界全体が『正直不動産』な業界になっていけるように見守っていきたいと思います。
それではまた、次回のブログをご期待くださいませ。
【REDS】宅建マイスター:堀 茂勝
<参考リンク・文献>
公開日:2024年10月22日
皆様こんにちは。
首都圏一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント。【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)でございます。
不動産の購入を検討するにあたっては、いろいろ「落とし穴」に気を付けなくてはなりません。
今回も、宅建マイスター認定試験を実施している、公益社団法人不動産流通推進センターが発行している『不動産仲介トラブル事例集』に掲載された事例を参考に取り上げて、そこからお話を広げて、わたくしなりに解説してみたいと思います。
今回は、上記「トラブル事例集」の事例2に掲載されている「2項道路を路地状部分と思い込み」について、意外と気づかない「落とし穴」について取り上げてみようと思います。
(画像はイメージです)
あなたは、下記の販売図面の土地を検討しているとしましょう。
前面道路はやや狭く、セットバックが必要ですが、きれいな整形地であり、一見、なにも落とし穴がありそうには見えないかもしれませんね。
しかし、これを見てこの土地を購入したお客様から、「この土地の横の通路は『2項道路』だったために、建築の対象にできる有効な土地面積が10㎡も減少する土地だったゾ! いったいどうなっているんだ!!」と怒鳴り込んでくる事態になってしまったという、悲しい事例です。
住宅地図を見てみますと……。
この土地の南西側のお宅との間には、奥のお宅につながる通路状の記載があるのがわかります。
公図はどうなっているのか、確認してみましょう。
公図を見ますと、対象地「247-7」の南西側の通路は、「247-6」の敷地と「247-5」の敷地が、それぞれ旗竿状の敷地として存在しています。
このような旗竿状の敷地を「敷地延長地」などとも呼びます。
わたくしが担当させていただきました「敷地延長地」のなかにも、今回取り上げている事例と非常によく似た、2宅の旗竿敷地の通路が隣接している物件が、「東京都練馬区」でしたので、ご参考までに写真を掲載いたします。
このように、奥の住宅の通路になっている部分について、単なる「敷地」の一部を通路として使っているものなのか、それとも建築基準法に定められた「道路」とされているのかによって、その通路の両側の土地に建物を建てる場合に影響が及ぶことになってしまうのです。
『不動産仲介トラブル事例集』に掲載されています詳細情報によりますと、
「現地にて一見すると敷地延長地と誤認しやすい形状の南西側の隣地について、公図上(資料③参照)でも単独所有の旗竿地の形状であったことから、路地状敷地と思い込み…」
というように、仲介担当者の思い込みにより調査をしなかったことで、悲劇を生んでしまいました。
この土地の売買についておこなわれた重要事項説明では、下記のように記載されていました。
上記のように、「北西側」の道路のみが「接道の状況」に記載しております。「敷地と道路との関係図」を見てみますと……。
上記のように北西側の通路は「隣地通路」とのみ記載されております。
今回の事例では、調査を怠っておりましたが、本来おこなうべき調査として、「建築基準法道路種別」の確認があります。
前掲した敷地延長の写真の、わたくしが担当させていただきました物件は、「東京都練馬区」の物件でしたので、こちらの物件について「建築基準法道路種別」の確認をしてみましょう。
これを調べるのに、市役所や区役所などに出向いて調査しないと確認できないことがまだまだありますが、「練馬区」では、Webサイトの、練馬の地図「地図情報ねりまっぷ|建築基準法による道路等(試験公開)」で、ご自宅で簡単に確認できます。
「地図情報ねりまっぷ|建築基準法による道路等(試験公開)」
上記の中央部の赤丸で囲った部分が、わたくしが担当した「敷地延長」の土地の通路部分ですが、色が塗ってありません。しかし、その左上に青丸で囲った通路は、赤い線で塗られています。
道路に塗られた色について凡例を見てみましょう。
上記の中央部の赤丸で囲った部分は白色の線です。「◎道路種別」の凡例を見ますと、「表示なし」に該当します。つまり単なる「敷地延長」の土地の通路部分であり、「道路」として取り扱っていません。
しかし、その左上に青丸で囲った通路は、赤色の線で塗られています。「◎道路種別」の凡例を見ますと、「法第412条第2項の道路(私道)」となっており、道路に該当していることがわかります。
「道路」として取り扱っていない通路であれば、セットバックは必要ありません。
しかし「道路」であれば、もしも幅員(道路の幅)が4m未満である場合には、そこに隣接した土地に新たに建物を建てる場合には、道路幅を4m確保できるよう、原則としては「セットバック」が必要であり、敷地の一部のセットバック部分は、建築対象の土地としては利用できません。
今回の事例では、「セットバック」が必要であったことが判明し、建築の対象にできる有効な土地面積が10㎡も減少する土地であったとのことなのです。
お隣の敷地の通路に隣接している土地を購入する場合には、このような「落とし穴」がございます。
「建築基準法道路種別」のチェックは基本的な調査ですので、今回のような見落としをする宅建士はかなり希少であると思われますが、最近はWebで、ご自身でも簡単に調べることができる自治体が増えております。
ぜひご自身でもチェックしてみることをお勧めいたします。
家族の幸せのための「不動産の購入」ですから、このようなストレスで不幸にならないように、気をつけましょう!
【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝
<参考リンク・文献>
公開日:2024年9月13日
皆様こんにちは。
首都圏一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント。【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)でございます。
今回は、2024年8月29日(木)の日本経済新聞の朝刊に掲載されました、「不動産囲い込み、処分の対象に」「仲介業者が他社に紹介せず」「国交省、透明性向上狙う」という記事をもとに、「囲い込み」そして「両手仲介」について解説いたしましょう。
(写真はイメージです)
記事の内容を箇条書きに整理します。
―という内容でした。
不動産の売買が初めての方は「両手仲介」や「囲い込み」という言葉に、馴染みのない方もいらっしゃいますので、あらためてご説明させていただきます。
1つの物件の不動産売買取引において、1社の不動産会社が、売主と買主の双方の仲介を行い、その両方から仲介手数料を受領することは、不動産業界では俗に、「両手」や「両手仲介」と呼ばれています。不動産会社にとってこの形態は、最も多くの収入が得られるため、相当数の不動産会社がこれを目指しているのが現状です。
ただし、不動産を「より高く売りたい」と思う売主と、「より安く買いたい」と思う買主の要望は相反しています(これを「利益相反」といいます)。相反した利益を不動産会社が同時にかなえることは、構造的に困難なことです。
不動産会社が、より収益の多い「両手仲介」を執拗(しつよう)に目指すために、売主から売却の依頼を受けた不動産物件を、他の不動産会社に取り扱わせないようにする行為のことを、不動産会社では、「囲い込み」(不動産・物件の囲い込み)といいます。
それでは、どんな業者がこれらをおこなっているのか解説します。見分け方のひとつとしては、不動産仲介業者の売買仲介実績を見てみることです。それとなく想像をつけることができます。
「株式会社不動産流通システム」HP
「不動産用語の解説:両手仲介と不動産の囲い込み」のページより
上記の表で、赤で囲まれた弊社【REDS】の行を見てください。
弊社REDSでは法律で決められた上限の手数料(3%+6万円+消費税)に対して、必ず割引または無料にしておりますので、この低い手数料率になっています。
それに対して、ほとんどの業者は手数料率が4%台で、なかには5%超の大手不動産会社さんもあります。
たとえば、上記の表で3行目の不動産業者様の場合、
と、弊社より低い額ですが、
と、法定上限の3%よりかなり高い%になっています。
片手仲介では、法定上限の手数料は3%+6万円+消費税ですが、両手仲介で法定上限の手数料を両方からいただくと、最大で6%+12万円+消費税になります。
両手仲介をおこなっている比率が多ければ多いほど「手数料率」は3%を超えてより高くなっていることが想像できます。
ただし「両手仲介」の比率が多いからといって、かならずしも「囲い込み」をしていることにはなりません。その点は注意が必要です。
さて、弊社【REDS】では、不動産仲介の仕組みから、囲い込み業者の見分け方を徹底解説するセミナーを定期的に開催しております。
次回開催は下記となりますので、不動産売却をご検討の方はぜひご参加くださいませ。
セミナー告知(参加費無料、限定4組)
2024年9月22日(日)14:00~15:00
以前に開催したセミナーも、YouTubeにてご覧いただけます。
YouTube話題のドラマ「正直不動産」不動産考証REDS代表取締役 深谷十三が語る、
「知らないと損する不動産売却に潜む恐ろしい話」Vo.2
仲介手数料の仕組みと「囲い込み」
今回のブログは以上となります。また次回をお楽しみに。
【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝
<参考リンク・文献>
公開日:2024年8月3日
皆様こんにちは。
首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)です。
不動産の購入を検討するにあたっては、いろいろ「落とし穴」に気を付けなくてはなりません。今回も、宅建マイスター認定試験を実施している、公益社団法人不動産流通推進センターが発行している『不動産仲介トラブル事例集』に掲載された事例を参考に取り上げて、そこからお話を広げて、わたくしなりに解説してみたいと思います。
今回は、まずは上記「トラブル事例集」の事例5に掲載されている「地中埋設物」について、意外と気づかない「落とし穴」について取り上げてみようと思います。
あなたは、下記の販売図面の土地を検討しているとしましょう。
一件、なにも落とし穴がありそうなようには見えないかもしれませんね。実際に現地を見てみると……。
特に不審な点も見当たりませんね。
「不動産仲介トラブル事例集」に掲載されている詳細情報によりますと、
「この契約では、契約不適合責任の通知期間は引渡し後3か月とする特約が付されていました」…(略)…「引渡しを4か月を経過して」…(略)…「建設会社が杭打ち作業にかかったところ、旧建物のものと思われるコンクリートガラや鉄骨等が大量に残存していることが判明しました」「このままでは工事が進められない!」…(略)…「売主Xの告知説明義務違反及び仲介会社の調査説明義務違反であるとして、(撤去費用及び工事遅延を理由とする)損害賠償を求めてきました」
という事例です。
このケースでは、「旧建物の解体及び整地を、売主が自ら解体業者に依頼しておこなっておりましたので、解体工事の遂行状況を確認して埋設物の残置を把握(認識)できる立場にいたにもかかわらず、埋設物の残置を認識せずに「物件状況確認書」の作成において土地の正確な状況を告知説明する義務を怠った点が問題になりました」
そして仲介会社については、解体業者の発注に関わっておらず、「残置物の存在を認識する事は不可能であり、調査説明義務を怠ったとは言えない状況でした」と記載されています。
実はわたくし「マイスターエージェント堀」は、以前「新築戸建ての建売分譲」を主な業務としている企業で、土地の仕入れから販売までを担当していました。
その企業では、土地を購入(仕入れ)して建物があれば解体し、宅地造成(平坦地でなければコンクリート擁壁などの工事をして、道路や水路、上下水道、ガスや電気を配して戸建てが建てられる宅地をつくる)をして、新築を建てるという一連の業務に携わってきました。
その業務の中で「地中埋設物」が出てきてしまったというケースは、決して珍しいことではありませんでした。つまり、結構な頻度で出てきてしまうのです。
長期間、駐車場として利用されていた平坦地などは、特に「危険な香りがプンプン」します。なぜならその前に建っていた建物が解体されたのが昔であればあるほど、現在の売主(所有者)の前の代に行われていたりしますので、その時の状況を売主は知らず、大昔の解体時に「屋根瓦」や「建物の基礎を壊したガラ」を(おそらく処分費用をケチって)その場所に埋めてしまっている可能性が、少なからずあるからです。
私が仕入れを担当して分譲地を造った際も、以前の基礎がまるまる地中に埋まっていたり、瓦を割ったようなガラが大量に出てきたりしたこともあり、すべてその撤去費用は「売主」様にご負担いただきました。
「更地」の危険性を述べてきましたが、「現況、古屋あり」の場合についても注意点があります。
その「古屋」がずいぶん古い建物である場合(しかも床下を覗かせていただいて見てみたら、昔よく見かけた「布基礎」の物件であった場合など「地盤改良」がされていない場合は特に)その建物の下に埋設物がある可能性を疑う必要があります。
今の古屋は、解体時にきちんと処分してもらうとしても、その古屋が建つ前の大昔に、その前の建物の解体時に、そのガラを埋めてしまって、その上に基礎を築いて建物を建ててしまった……などという可能性が、ないとは言えないのです。
「埋設物」のリスクを軽減するためには、買主が購入後に古屋を解体する場合はもちろん、「現況古屋アリだが、売主による更地渡し」の場合も、建物解体時に基礎を壊したうえに、土地を少し深くさらってもらって、ガラなどの「埋設物」が見つからないかチェックしてもらうようお勧めします。
解体時に、土地を少し深くさらって「ガラ」が出なかったとしても、そこで安心してはいけません。地盤改良のために、「柱状改良」をおこなう数mぐらい、もしくは「小口径鋼管杭工法」をおこなう場合で、10m以上の深さまで地盤改良をしようとしたときに、「埋設物」に当たってしまうこともあります。
地盤補強工法
ジオテック株式会社HPより
必ず「契約不適合責任の通知期間」の間に、必ず「地盤調査」をおこなって、もしも瑕疵(契約不適合)があった場合には、売主負担で解消してもらわなければなりません。これを過ぎてしまうと、購入者が自己負担でおこなう必要がありえます。
「契約不適合責任の通知期間」を1か月や3か月に設定している売買契約のケースを見かけます。
しかし、私が最近担当しているお客様のケースでは、請負契約から基礎着工まで4か月以上かかるケースがあり、地盤調査の予定も4か月後のため、何も指示をしないと地盤調査で埋設物が発見できても、売主に負担してもらえなくなってしまいます。
このタイミングは建築会社によって全く異なります(以前担当したお客様のケースでは、かなり人気の建設会社を選んだ結果、請負契約から着工まで1年待ちのケースさえありました)。
この場合、基礎の設計ができる前であっても、少しコストは高くなりますが、土地の引き渡しを受けた後すみやかに土地の範囲をまんべんなく地盤調査しておくことが必要になります。
SWS試験
(スクリューウエイト貫入試験。旧 スウェーデン式サウンディング試験)
株式会社サムシングHPより
解体する古屋が、柱状改良や鋼管杭工法の上に建っていた場合、それが埋設されたままでは新たな新築戸建てを建築する際の支障になるケースもあります。
古屋の建築時の地盤改良の情報を入手して、新たな戸建てを建てる建築会社と、「埋設したまま」で工事を進めるのか、一部加工が必要なのか、すべて撤去が必要なのかを、よく打ち合わせる必要があります。できれば土地の契約前に、相談をしておくほうが、精神的なストレスや時間のロスも少なくできると思いますので、確認が必要ですね。
家族の幸せのための「新居」の建築ですから、「埋設物」のストレスで不幸にならないように、気をつけましょう!
【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝
<参考リンク・文献>
公開日:2024年6月25日
皆様こんにちは。
首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)です。
不動産の購入を検討するにあたっては、いろいろ「落とし穴」に気を付けなくてはなりません。そこで、宅建マイスター認定試験を実施している、公益社団法人不動産流通推進センターが発行している『不動産仲介トラブル事例集』に掲載された事例を参考に取り上げて、私なりに解説してみたいと思います。
今回は「位置指定道路」について、意外と気づかない「落とし穴」について取り上げてみようと思います。
あなたは、下記の販売図面の土地を検討しているといたしましょう。
一件、なにも落とし穴がありそうなようには見えないかもしれませんね。実際に現地を見てみると……。
特に不審な点も見当たりませんね。
道路の幅員は、現在では本来は最低4m以上が必要ですが、「2項道路」といわれる幅員4mを欠けてしまっている道路(道路と見なすことにされた道)も、特に都内ではよく見かけます。でもここは、現地の写真を見ても、道路幅がチョッとゆったりしている道路ですね。販売図面を見ると道路幅は5.4mあるようです。
幅員が4mしかない道路にくらべて、5.4mあれば、車庫入れの苦手なママでも、車の出し入れは心配なさそうですね。
今回の販売図面には「位置指定道路」と記載されております。
一般の方にはなじみのない「位置指定道路」という言葉ですが、簡単にいいますと、個人が所有している私有地を「(建築基準法上の)道路」として行政が認定して「指定」した「私道」のことです。
実際によく見かける販売図面では、「42条1項5号」と記載してあるケースが多いと思います。たとえば世田谷区では、下記のページのような記載がされています。
<世田谷区HP「建築基準法で定める道路について」>
さて、上の現地写真を見て、これが一般によくいう「公道」なのか、それとも「(多くは私道の)位置指定道路」なのか、見分けがつきにくいかもしれませんね。さて、なにを見れば、「位置指定道路」かどうか、わかるのでしょうか。
以前は、わざわざ役所に行って「建築基準法道路種別の図面を見せてください!」と言って見せてもらわないとわからなかったのですが、首都圏のほとんどの自治体では、インターネットのマップ情報によって、ご自宅で簡単に確認できるようになってきています。
たとえば世田谷区では、「せたがやi Map」で、簡単に確認ができるようになっています。
<せたがやi Map テーマ:位置指定道路>
上記のマップに薄オレンジ色に塗られている道路、「凡例」で「1項5号」と書かれているのが「位置指定道路」です。意外とアチコチにありますね。
この「位置指定道路」について詳しく知りたければ、役所に行って「指定道路台帳」を見せてもらって、写しをもらってくることができます。
さきほどの販売図面の道路について「指定道路台帳」が下記のようです。
ちなみに、この場所についての住宅地図を見ると、下記のようになっています。
整然とした街並みで、いかにも住みやすそうな土地にしか見えませんね。
この土地に、どんな落とし穴があるのでしょうか。
今回の物件の落とし穴は、「販売図面」にも「指定道路台帳」にも「幅員5.4m」となっているのに、現地を測ってみると、現況の幅員は「約4.9m」しかなかったことです。
街並みが整然としているように見えましたし、ゆったりした道路のように見えましたが、しかし「位置指定」の許可を受けた図面よりも、現況の幅員が約50cm足りなかったのです。
今回のケースでは、足りなかった50cmの幅を、道路の両側がそれぞれ約25cm(0.25m)後退して道路幅を確保する必要があります。つまり販売図面の土地のうち前面道路から約0.25mの範囲は、建物を新築する際に建築確認を取得する際の「敷地面積」に含めることができないのです。
販売図面によると、道路に接道している距離は約14.0mと記載されています。
接道幅約14.0m×後退距離約0.25m=約3.5㎡!
なんと、有効面積が約1坪も減ってしまう事態です!!
現地の写真を見ても、ゆったりした道路にしか見えませんでした。この道路幅が5.4mあるのか、約4.9mしかないのかは、ちょっと見ただけではわかりません。こんなことにならないように、現地を確認する際には、きちんと測ってみることが必要ですね。
【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝
<参考リンク・文献>
公開日:2024年5月17日
皆様こんにちは。
首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)です。
今回は、首都圏の中古マンションの販売動向について取り上げて、解説してみたいと思います。
「公益財団法人 東日本不動産流通機構」
「月例速報マーケットウォッチ2024年3月度サマリーレポート」より
「レインズ(REINS)」を運用している「公益財団法人 東日本不動産流通機構」の「月例速報マーケットウォッチ2024年3月度サマリーレポート」のデータを読み解いてみましょう。
レポートによると首都圏の中古マンションは成約件数が前年比で10カ月にわたって増加しており、3月の成約件数は3810件と、前年比プラス10.7%の2ケタ増となりました。
成約件数だけでなく販売中の物件数在庫件数も、前年比でなんと26カ月、2年超ものあいだ、連続で増加し続けています。
件数について、推移をグラフ化したものが下記になります。
「公益財団法人 東日本不動産流通機構」
「月例速報マーケットウォッチ2024年3月度サマリーレポート」より
まず、赤色の棒グラフが成約件数。ほぼ横ばいで推移しながら、今年に入り若干右肩上がりの傾向が見て取れます。赤色の折れ線グラフが成約前年同月比ですが、2023年の6月ごろから前年同月比プラスに転じてから直近でかなり右肩上がりを維持しているのが分かります。
次に、背景に薄い紺色に塗られたグラフが在庫件数。若干右肩上がりながらほぼ横ばいで推移しています。紺色の折れ線グラフが在庫前年同月比ですが、右肩下がりながらも、まだ前年同月比でプラスを維持しています。
同じく、前出の「3月度サマリーレポート」より、価格についても見ていきましょう。
レポートによると、成約㎡単価は前年比で2020年5月から47カ月連続で上昇しており、3月は8.7%上昇しています。
一方、成約価格は前年比で2020年6月から46カ月連続で上昇しており、3月は前年同月比8.6%上昇しました。
価格について、推移をグラフ化したものが下記になります。
「公益財団法人 東日本不動産流通機構」
「月例速報マーケットウォッチ2024年3月度サマリーレポート」より
赤色の棒グラフが成約㎡単価で、若干右肩上がりの傾向が見て取れます。赤色の折れ線グラフが成約前年同月比で、約2年間いずれも前年度プラス、しかも若干右肩上がりに推移しているのが分かります。
薄い紺色に塗られた棒グラフが在庫㎡単価ですが、若干右肩下がりで推移しております。紺色の折れ線グラフが在庫前年同月比ですが、こちらは約2年間右肩下がりを続けており、昨年9月ごろからマイナスに入り、その後さらに下げ続けているのが分かります。
首都圏それぞれのエリアについて、推移を表したのが下記になります。
「公益財団法人 東日本不動産流通機構」
「月例速報マーケットウォッチ2024年3月度サマリーレポート」より
例えば東京都区部(23区内)は昨年6月以降、成約件数も成約㎡単価も、ずっと黒色(プラス)で推移していますが、周辺の埼玉・千葉・神奈川では上下している様子がうかがえます。
コロナ禍で「リモートワーク」が増加し、その後に鎮静化して以降のオフィス環境の変化などにより、住居に対する考え方が多様化するなか、同じ首都圏でもエリアごとに傾向が若干異なっている様子が見て取れます。
とはいえ、東京都区部(23区内)は、いずれも「赤の上昇矢印↑」(件数+10%以上、㎡単価+3%以上)と、やはりコアエリアは上昇の傾向が強いようですね。
5月5日の日本経済新聞朝刊に、下記の記事が掲載されておりました。
日経新聞記事
(2024年5月5日朝刊)より
こちらは、「築10年程度の中古マンションの平均希望売り出し価格が、新築分譲時の価格の約3倍になった」(東京カンテイが近く公表)と報じる記事です。
わたくしも、日ごろ都心の中古マンションにお客様をご案内する際に、事前に分譲時価格を調べることがありますが、現在の販売価格が分譲時の数倍になっている物件に意外とよく出合うので、この報道は実感があります。
本来は、「モノ」は使えば劣化しますので、使用期間が長くなればなるほど売却価格は下がってしまうのが常識的な考え方です。しかし、こと「都心の不動産」の場合については、「建物」の評価減よりも「土地・場所」の評価上昇のほうが上回ってしまうために、「長く使ったものでも高く売れる」という現象が起こってしまうのでしょう。
下記の表によると、「新御茶ノ水」駅や、「六本木一丁目」駅の周辺では、約2.5倍超にもなっているようです。
日経新聞記事
(2024年5月5日朝刊)より
でも、このエリアの「新築マンション」の購入はあまりに競争率が高くて、まるで宝くじに当たるような確率。そこで、築浅中古マンションにも人気が集まっているのが実情のようです。
この傾向は、ますます高まっていくのかもしれませんね。
【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝
<参考文献>
公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ2024」
日経新聞記事「都心の中古マンション価格、新築時の最大3倍 円安で海外勢には割安感」(2024年5月5日朝刊)
公開日:2024年4月9日
皆様こんにちは。首都圏一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント、【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)でございます。
最近では夫婦の共働きが増えていることもあり、住宅ローンを夫婦で借りるケースも増えてきましたが、この夫婦で住宅ローンを借りるパターンには大きく分けて3つあります。
収入合算と呼ばれる「連帯保証型」、そして「連帯債務型」、共同借入である「ペアローン」です。このうち「ペアローン」は、ご存じのようにご夫婦などの複数の借り手が共同でローンを組む仕組みですが、つい最近、新しい団信を組み込んだ商品も出てきました。今回はその「新しいペアローン」について解説します。
まず、ペアローンのメリットから解説します。
一人では買えない高価格帯の都心住宅の購入が実現! ペアローンを利用することで、単独で借りられる額よりも高い金額を借りることができます。複数の借り手が共同で保証するため、金融機関はより多くの資金を提供する可能性があります。
複数の借り手が返済を分担するため、個々の負担も当然ながら軽減されます。経済的な負担を分散することで、月々の返済額が低く抑えられる場合があり、そのぶん可処分所得が増えるかもしれません。
ペアローンでは、複数の借り手の信用履歴や収入情報が考慮されるため、審査の際に有利になる場合があります。片方の借り手の信用履歴が弱い場合でも、もう一方が強力な信用履歴を持っていれば、単独でローンを組むよりも有利な金利や条件で融資を受けられる可能性があります。
ペアローンを組むことで、共同で資産を所有することができます。例えば、共同で不動産を購入した場合、所有権は共同名義となります。これにより、資産の利益や負債が公平に分配されることになります。
メリットがあれば当然デメリットもあります。デメリットについてもしっかりと知っておいてくださいネ。
ペアローンでは、複数の借り手が共同で責任を負います。したがって、どちらか一方の借り手が返済を怠った場合、もう一方がその負債を引き受ける必要があります。信頼関係がある場合は問題ありませんが、関係が悪化するとトラブルの原因となります。
ペアローンでは、複数の借り手が共同で信用リスクを負います。したがって、どちらか一方の信用履歴に問題がある場合、もう一方もその影響を受ける可能性があります。これは、将来的な借り入れや金融取引に影響を与える可能性があります。
ペアローンでは、複数の借り手の個人情報が共有されます。これにより、ペアローンを組んでいる人どうしの人間関係が悪化すると、プライバシーの侵害や情報漏洩のリスクが増大する可能性があります。信頼できる金融機関や専門家を選択することが重要です。
ペアローンで購入した共同資産(不動産など)の所有権を分割する際には、そもそも手続きが複雑になる場合があります。また、片方の借り手が不動産を売却したい場合や、関係が悪化した場合、所有権の分割や売却手続きが困難になる可能性があります。
最近たまに見かけるケースとしては、夫婦で共有していた自宅について、離婚して自宅を出て行ったパートナーが、所有していた自宅の自分の持ち分を、勝手に第三者に売却してしまうケースです。自宅に住み続けている人にとってみると、知らない第三者や法人が、その自宅の所有権を持って、権利を主張し始める可能性もあります。
その新たな所有者が、何を意図して「持ち分」を購入したのか……。場合によっては残りの持ち分についても安く買い叩いて入手しようとする悪徳業者でないことを祈るばかりです。
以上のメリットとデメリットを踏まえ、ペアローンを組む際にはどんなことに注意すればいいのでしょうか。
ペアローンを組む前に、共同借入者との信頼関係をしっかり確立して、将来的なリスクや問題に備えましょう。協力的な関係を築くことで、トラブルを最小限に抑えることができます。結婚相手であっても、デメリットを乗り越えられるか、しっかり話し合うことが大切です。
ペアローンを組む際には、将来的なシナリオに備えて計画を立てておくことも必要といえます。
ペアローンは、借り手どうしの協力関係や信頼関係がある場合に有益な選択肢ですが、万が一の返済遅延や関係の悪化、共同資産の分割などのリスクに対処するための対策も、強い愛情と信頼関係があるうちだからこそ、そのタイミングで考えておくことが、その後の「山あり谷あり」の夫婦の人生を円満に乗り越えていくためには非常に大事なことではないかと思うのです。
2024年3月14日の日経新聞に、「ペアローン」の記事が掲載されました。
2024年3月14日 日経新聞 朝刊
PayPay銀行やりそな銀行は加入者が死亡やがんなどで返済ができなくなった場合に、配偶者のローンも含めて残高をゼロにする団体信用生命保険(団信)を導入した、新しい「ペアローン」を2024年に導入するとのことです。
従来の団信では片方が死亡や病気などで返済が難しくなった場合、保険が適用されるのは働けなくなった人だけです。配偶者のローン残債は残ります。共働きの場合は、債務が残る配偶者も子育てなどのため転職や時短勤務で給与水準を下げなければならないケースも多く、返済負担が実質的に大きくなることがあります。
首都圏、特に都内では、ひとりの収入で住宅購入ができるのは、現実的にはほんの一握りの高収入の方だけです。
「子は鎹(かすがい)」と言いますが、「ペアローンで買った住宅」も、きちんと愛情と信頼関係を維持し続けることができれば「鎹(かすがい)」になり得ます。ぜひ上手に使って、幸せな家族の生活の場所を生み出してくださいネ。
【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝
<参考文献>
日経新聞記事「住宅ペアローン、死亡時返済ゼロ りそなやPayPay銀が団信、配偶者分も保障」(2024年3月14日朝刊)
公開日:2024年3月2日
皆様こんにちは。
首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のエージェント、【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)でございます。
新居選びにあたって、すでにご希望のエリアが決まっていらっしゃる方はよろしいのですが、まだこれから……という方も結構いらっしゃいます。
そこで、今回は「街選び」にお役立ちいただけるような情報をお伝えします。
弊社不動産流通システム【REDS】では、エリアで担当を分けておりませんので、東京・千葉・埼玉・神奈川の首都圏1都3県のすべての物件を、担当したエージェントスタッフがワンストップでお取扱いさせていただいています。
わたくしも今年に入ってからだけでも「東京湾岸エリアのタワマン」から、「小平市の低層マンション」「蒲田のエキチカマンション」「松戸市の矢切の渡し近くの戸建」「台東区根津のマンション」「多摩永山エリアのマンション」「亀戸のマンション」「町田市金森の新築戸建」「横浜市青葉区の戸建」など、いろいろな街での物件を、ご案内させていただいております。
それぞれの街に、それぞれの雰囲気があり、まったく生活環境が異なっていますので、それぞれ良いところもあれば、難点なところもございます。そこに住む方の嗜好や考え方によっても、その街の住み心地は変わります。
まだエリアを決めずにお住まい探しを始めていらっしゃる方の中には、いくつ物件を見学しても、なかなか絞り込めない方がいらっしゃいます。そのような場合は、やみくもに広範囲なエリアで物件を見学するのをやめて、まずは「街選び」をしてみて、エリアを絞って探してみてはいかがでしょうか。
さて、街選びをするにあたっては、まずそれぞれの街の人気度を参考にするといいでしょう。
不動産情報サイトのSUUMOでは、毎年『住みたい街ランキング』を発表しており、『首都圏版 住みたい自治体ランキング2023』によると1~50位は下記のようになっております。
【住みたい街ランキング】
1位 東京都港区
2位 東京都世田谷区
3位 東京都渋谷区
4位 東京都目黒区
5位 東京都新宿区
6位 東京都文京区
7位 東京都品川区
8位 東京都千代田区
9位 東京都中央区
10位 神奈川県鎌倉市
11位 東京都杉並区
12位 埼玉県さいたま市大宮区
13位 千葉県船橋市
14位 東京都中野区
15位 埼玉県さいたま市浦和区
16位 神奈川県横浜市中区
17位 神奈川県横浜市西区
18位 東京都武蔵野市
19位 千葉県浦安市
20位 東京都豊島区
21位 神奈川県藤沢市
22位 東京都練馬区
23位 東京都大田区
24位 茨城県つくば市
25位 神奈川県横浜市港北区
26位 埼玉県川越市
27位 東京都江東区
28位 千葉県市川市
29位 東京都立川市
30位 千葉県流山市
31位 千葉県柏市
32位 神奈川県横浜市神奈川区
33位 神奈川県横浜市青葉区
34位 埼玉県川口市
35位 茨城県水戸市
36位 東京都台東区
37位 東京都江戸川区
38位 千葉県千葉市美浜区
39位 千葉県千葉市中央区
40位 東京都墨田区
41位 神奈川県横浜市都筑区
42位 東京都北区
43位 神奈川県横浜市鶴見区
44位 千葉県松戸市
45位 東京都三鷹市
45位 神奈川県川崎市中原区
47位 東京都板橋区
48位 神奈川県海老名市
49位 埼玉県所沢市
49位 東京都八王子市
参考:SUUMO住みたい街ランキング2023 首都圏版 ~住みたい自治体1位は?~
さらにエリアを絞って街選びをするにあたっては、SUUMOの『首都圏版 住みたい街(駅)ランキング2023』も、より参考になります。
【住みたい街(駅)ランキング】
1~50位は下記のようになっております。
1位 横浜(JR京浜東北線)
2位 吉祥寺(JR中央線)
3位 大宮(JR京浜東北線)
4位 恵比寿(JR山手線)
5位 新宿(JR山手線)
6位 目黒(JR山手線)
7位 池袋(JR山手線)
8位 鎌倉(江ノ島電鉄線)
9位 渋谷(JR山手線)
9位 東京(JR山手線)
11位 品川(JR山手線)
12位 浦和(JR京浜東北線)
13位 中目黒(東急東横線)
14位 武蔵小杉(東急東横線)
15位 表参道(東京メトロ銀座線)
16位 流山おおたかの森(つくばエクスプレス)
17位 舞浜(JR京葉線)
18位 船橋(JR総武線)
19位 立川(JR中央線)
20位 桜木町(JR京浜東北線)
21位 中野(JR中央線)
22位 さいたま新都心(JR京浜東北線)
23位 二子玉川(東急田園都市線)
24位 自由が丘(東急東横線)
25位 柏(JR常磐線)
26位 みなとみらい(みなとみらい線)
27位 有楽町(JR山手線)
28位 北千住(東京メトロ日比谷線)
29位 つくば(つくばエクスプレス)
30位 所沢(西武池袋線)
31位 和光市(東武東上線)
32位 千葉(JR総武線)
32位 海老名(小田急小田原線)
34位 川越(東武東上線)
35位 藤沢(JR東海道本線)
36位 三軒茶屋(東急田園都市線)
37位 たまプラーザ(東急田園都市線)
38位 新浦安(JR京葉線)
39位 三鷹(JR中央線)
40位 荻窪(JR中央線)
41位 代々木上原(東京メトロ千代田線)
42位 川口(JR京浜東北線)
43位 上野(JR山手線)
44位 川崎(JR京浜東北線)
45位 下北沢(小田急線)
46位 浦安(東京メトロ東西線)
47位 守谷(つくばエクスプレス線)
48位 赤羽(JR京浜東北線)
49位 秋葉原(JR山手線)
50位 豊洲(東京メトロ有楽町線)
横浜は、6年連続トップとのことです。
大宮(3位)、鎌倉(8位)、浦和(12位)、武蔵小杉(14位)、そして流山おおたかの森(つくばエクスプレス)(16位)と、ディズニーリゾートのある舞浜(17位)より上位になっていて、これらの首都圏からはずれた街が健闘しているのが面白いところです。
参考:SUUMO住みたい街ランキング2023 首都圏版 ~住みたい街(駅)1位は?~
SUUMOには、もうひとつ面白いランキングが掲載されています。『穴場だと思う街、住みたい沿線ランキング』です。
【穴場だと思う街(駅)ランキング】
1位 北千住(東京メトロ日比谷線)
2位 大宮(JR京浜東北線)
3位 和光市(東武東上線)
4位 所沢(西武池袋線)
5位 練馬(西武池袋線)
6位 流山おおたかの森(つくばエクスプレス)
7位 赤羽(JR京浜東北線)
7位 川口(JR京浜東北線)
9位 守谷(つくばエクスプレス)
10位 立川(JR中央線)※
※複数路線が乗り入れている駅の代表的な沿線は、回答時に選択された路線のうち最も多い得点を獲得した路線を表示
1位の「北千住」は6年連続らしく、2位の「大宮」は「和光市」と入れ替わり、去年3位だった「川口」は7位にランクダウンとのこと。また「立川」は37位から大きくアップして今回トップ10入りしたようです。
【住みたい沿線ランキング】
1位 JR山手線
2位 東急東横線
3位 JR京浜東北線
4位 JR中央線
5位 東京メトロ丸ノ内線
6位 東急田園都市線
7位 東京メトロ銀座線
8位 東京メトロ日比谷線
9位 小田急線
10位 JR常磐線
沿線の人気は、「JR山手線」が1位ですが、私鉄では「東急東横線(2位)」「東急田園都市線(6位)」と、東急線が強く、「小田急線(9位)」が続いて入っています。
参考:SUUMO住みたい街ランキング2023 首都圏版 ~その他(穴場だと思う街、住みたい沿線)のランキング~
SUUMO住みたい街ランキング2023 首都圏版
これらのランキングを参考にして、気になる「街」を歩いてみるなどして、「街選び」を楽しんでみてください。そのうえで、そのエリアにある物件を探すことで、より具体的な生活イメージがつくのではと思います。ぜひ試してみてくださいネ。
【REDS】宅建マイスター:堀茂勝
公開日:2024年1月25日
皆様こんにちは。
首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント、宅建士・宅建マイスターの堀茂勝(ほり しげかつ)でございます。
今回は、不動産の共有持ち分の決め方についてのお話です。
ご夫婦で不動産を購入した場合、それぞれ「持ち分」を登記することになるのですが、この持ち分、どのように決めたらいいか悩む方も多いようです。
「住宅ローンを組むのは俺だけど、俺が稼いで家を持てたのも、払っていけるのも、家内の内助の功があってこそ。だから、持ち分は半分ずつにしたい!」というお客様も、実際いらっしゃいました。
すごく優しいご主人様の、この奥様への愛情、感動です。
でも、そのとおり1/2ずつの持ち分で登記してしまった場合には、奥様が実際に費用を負担していないにもかかわらず、持ち分を持たせてあげた分は「ご主人様から奥様への贈与」という扱いになってしまうことはご存じでしょうか。
贈与税の申告期限は、「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで」です。この間にきちんと「贈与の申告」までおこなっていれば問題はないのですが、それを知らずに「贈与の申告」をしないままでいると、期限内に手続きを済ませなければ、本来の納付額だけでなく延滞税や加算税などの多大なペナルティさえも課せられてしまいますので、注意が必要ですネ。
持ち分を決めるのに参考にしていただくために、まず簡単な表を用意してみました。
この表は「購入にかかった費用」を支払うにあたって、それぞれの共有者が「いくらずつ、出資したのか」を明確にするものです。
持ち分についての基本的な考え方は、それぞれの出資者が「出資した金額」を分子、「購入にかかった総額」を分母にして比率を出したものが、それぞれの「持ち分」になるという考え方です。
実際に下記の例について、表に入力してみましょう。
今回、物件の売買代金は5,000万円であったとします。これを購入するのに必要な取得費用(登記費用や仲介手数料など)は400万円とします。これを足したのが「購入費用(C)」で、5,400万円かかったことになります。この5,400万円を支払うために、それぞれの出資額は下記のとおりでした。
ご主人(共有者①)は、自分で貯めた預貯金から200万円を出し、ご主人様名義の住宅ローンを4,500万円組みましたので、ご主人の出資額は4,700万円となりました。
そして奥様(共有者②)は、独身時代から貯めた預貯金から200万円を出し、自分の親から住宅購入のために500万円の贈与があり、これを支払いにあてましたので、奥様の出資額は700万円となりました。
この状況を、上記の表に埋めていったのが、下記の表です。
これにより、
・ご主人様の持ち分は、「5400分の4700」
・奥様の持ち分は、「5400分の700」
とするのが妥当そうであることがわかります。
案分して「54分の47」と、「54分の7」としてもかまわないですが、算数・数学ではありませんので、あとあとのわかりやすさでは、そのまま「5400分の4700」で登記するのがよさそうです。
ペアローンの場合、それぞれの借入額がはっきりしている場合は、上記の表にそれぞれの借入額を入力すればよろしいのですが、「連帯債務型」などで、借り入れが1本化している場合はどのようにすればいいのでしょうか。
簡単に言いますと、その「借入額」を「収入合算額のうちの、それぞれの収入額の比率」をかけたものを、それぞれの「借入額」として入力します。
たとえば4,500万円の連帯債務の住宅ローンについて、「ご主人年収600万円、奥様年収300万円収入合算は900万円」であれば、
・ご主人様の借入額は「4,500×(600÷900)=3,000万円」
・奥様の借入額は「4,500×(300÷900)=1,500万円」
と割り振ることになるわけです。
詳しくは
住宅ローンの連帯債務の持分割合の決め方は? シミュレーション付き解説
を参考にしてみてください。
購入時に必要な取得費用(登記費用や仲介手数料など)と書きましたが、実際に「取得費用」に入れることができるのは限られています。「購入後」の入居や居住にかかる費用は対象外になるものが多いので、注意が必要です。
・移転登記費用
・保存登記費用
・表題登記費用
・契約書印紙代(個人)
・建物建築請負代金
・建物取得費用
・土地・建物購入代金
・土地造成費用
・住宅ローン事務手数料
・住宅ローン保証料
・仲介手数料
・不動産取得税
・固定資産税清算金
・引っ越し代金
・火災保険料
・家具家電カーテン等
・インターネットCATV加入料
・住宅ローン金利
・つなぎローン事務手数料
・つなぎローン金利
・管理費・修繕積立金
(参考文献:知らなきゃ損する住まいの税金 第21版 まちの専門家グループ(株)ラックコンサルタント著)
なお、今回のブログの記載の内容については、おおまかな原則的な考え方を説明しているものですので、個別のケースについては、必ず税務署や税理士のアドバイスを受けていただくことが必要になります。
納税の申告漏れに、くれぐれもご注意くださいませネ。
最終更新日:2023年12月18日
公開日:2023年12月17日
皆様こんにちは。
首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のエージェント、宅建士・宅建マイスターの堀茂勝(ほり しげかつ)でございます。
今回のブログがいきつくところは、途方もない空想の未来のお話です。私の頭の中で、とりとめもなく勝手に創り出す、いわば『SFの世界』の中で「不動産売買の未来」を「想像」…「創造」してみるという試みです。
真面目に読んでいただいても、毒にも薬にもならない、まったく役に立ちそうもないブログですので、「お役立ちブログ」をお望みの方は、読み飛ばしていただくことをオススメします。
未来を語る前に、現在弊社REDSが主戦場にしてきている、『過去』と『現代』における「日本」の「不動産の売買」について触れてみましょう。
「中古戸建」や「中古マンション」を購入したい場合、20~30年ほど前の時代では「不動産屋さん」に行って、店頭に貼りだされた「物件情報パネル」を見て探していました。
(店頭の物件情報パネル)
「もっといい情報はないかなぁ」とおもむろに店内に入ると、「所在エリア」や「物件種別」ごとに整理して「物件情報カード」が大量に重ねて立ててストックしている箱がいくつもあるなかで、自分の希望に合いそうな箱の中のカードを、昔のLPレコードを掘り出すような手つきで次から次へ1枚1枚見て探します。
気になるカードがあったら、店員さんに伝えて、その物件が販売中かどうか調べてもらって見学に行く……といったシチュエーションで、街じゅう「住宅○○館」といった類(たぐい)のお店が、どんどん増えていった時代でもありました。
(物件情報カード探し)
この手法は現代でも、賃貸物件を扱っている駅前の不動産屋さんなどでは、まだ見かけることがありますが、ほとんどは廃れました。時代が進み、物件情報探しの主流は「物件情報カード」から、安価な雑誌やフリーペーパー(無料配布本)による「住宅情報雑誌」に、その役目が移っていきました。
(物件情報誌で物件探し)
そしてスマホやPCの普及が進んだ現代では、SUUMOやアットホーム、HOME’S、Yahoo不動産などの「不動産情報広告ポータルサイト」で検索して物件を探すのが主流になりました。
さらに本格的に物件探しを始めている方の多くは、能動的に物件情報を探しに行かなくても、自分の好みの条件をマイページに登録しておけば、条件に合う新着物件情報が、自動的にメールやLINEで通知してくれるようになりました。
民間の大手情報企業が、競争し合いながらそれぞれ切磋琢磨して使い勝手を競っている「物件情報ポータルサイト」の機能は、日進月歩で使い勝手がよくなっていき、ますます「自分好みの情報を見つけやすく」なって進化を続けています。
それに対して(業界の裏側的なお話で恐縮ですが)、皆様もおそらくご存じの、不動産のプロだけが利用できる「宅建業者専用の物件データベース(レインズ)」は、およそ現代のITデータシステムの進歩からすると、信じられないくらい「顧客の物件選びに対するサービスとしては、後ろ向きともいえるくらいの貧弱な検索機能」しかなく、まして物件探しのお客様のご希望条件を登録しておいて、新着情報を収集しやすくする機能もまさに貧弱なものであります。
さらに2021年に新システムに移行した際には、用意されていない機能を「自前のシステム」でデータを加工して、お客様向けサービスの向上を指向していた業者に対し、セキュリティー強化の優先を理由に、あえてそのような親切ができなくするよう、使い勝手をより殺すシステム改訂でした。
つまり、物件探しをしているお客様のことをトコトン考えながら収益につなげるために進化しているのが「民間のポータルサイト」であるのに対して、セキュリティー重視の下、法の下により、必要十分な情報の安定流通を使命とし、「不動産業界」の秩序や、業界内の既存の大きな力を持つ方面への配慮など、気を使いながら運用・制御をし続けているように見える、その結果、使い勝手が悪化しているのが「宅建業者専用のテータベース」というのが、わたくしなりの捉え方です。
このような業務環境である現状の日本において、従来は「不動産屋さんに行かないと、まともな情報が得られない」という時代は過去のものとなり、「ネットのポータルサイトなどで探すのが、一番早くて、しかも自分好み」という時代になっています。
(ネットで検索、物件探し)
我々REDSにお問い合わせいただくお客様のほとんども、ポータルサイトの機能を使って、物件をある程度、抽出し終えたうえで、その次のアクションとして、問い合わせていらっしゃっています。改めて整理すると、現代の「不動産売買の売買」においては、物件探しは「不動産会社」に頼る必要が希薄になり、「ネット検索」のウエイトが、より進化していく時代になってきたといえるでしょう。
このような「ネットで物件情報を入手できる」現代において、お客様が宅建業者に望むことは何でしょう。ネットの情報は、あくまで「売る側」に立った「広告」の情報でしかなく、「購入側」にとって肝心な「デメリットになる情報」までもが、すべて網羅して掲載されているわけではございません。
そこで不動産仲介会社、たとえは弊社REDSに対しては、下記のようなことを期待して、お問い合せを頂いているお客様が、圧倒的に多数になってきています。
●現在の販売状況の確認
●より詳細な情報の提供
●価格の相談や交渉
●諸費用、特に仲介手数料がいくらになるのか
●住宅ローンなどに関する情報提供
●現地見学の手配
●購入を前提とした調査やリスクの確認
●売買を前提とした重要事項説明、そして売買契約締結~決済、お引き渡しまでのフォロー
つまり、「現実に不動産を手にするため」には、専門的なプロフェッショナルの知識と経験を有した者によるお手伝いが必要であり、そのステップにおいて、より高品質かつ低価格な業務の提供を求めていらっしゃるのです。
(専門知識と経験を持った宅建士によるお手伝い)
「『物件選び』や『物件探し』は不動産屋さんでおこなう時代」ではなく、
「『物件選び』や『物件探し』は、ネットで、『見学から購入まで』は、REDSでおこなう時代」に
現代は移行されてきているのです。
現代の世の中では『価格破壊』や『業態の変換』が、当初は革命のように次々と起き、それが多くの業界では「あたりまえ」になってきております。
その一例が「コンビニ」や「100均」、スーパー化した「ドラッグストア」であり、流通、小売販売、運輸、サービス、そして生産や農業・漁業なども、多くの業界にわたってこの「価格破壊」の嵐は吹き荒れて広がり続けています。
しかしそのなかで、長年従来の営業スタイルからあまり脱却していないのが「不動産業界」。そこで、この「高品質でかつ低価格な提供」という「価格破壊」を不動産業界で実現し、より進化を続けているのがREDSです。ここまでが「現代」に至る、いままでの経緯のお話でした。
改めて申し上げますが、ここからは私の頭の中で、とりとめもなく勝手に創り出す、途方もない空想の未来のお話になります。
(空想のSFの世界)
占い師でも学者でもありませんので、あらゆる条件を考慮して「未来を占う(予想する)」ということではございません。あらかじめご容赦くださいませ。
まず「不動産売買の未来」について言及する前に、20年後、30年後にはどのような技術革新がおこって、世の中が変わっていくのかを想像してみます。
あまりに話を広げすぎると、空想とはいえブログの限界を超えてしまいますので、今年のトレンドである「注目のテクノロジー」を取り上げて、その未来について触れ、それによって「不動産売買の未来」がどのような進化がありえるのかを、想像してみます。
「未来をつくるテクノロジー」として、今年特に注目されたモノのうち、特に下記のキーテクノロジーについて焦点を当てて考えてみたいと思います。
●生成AI
●量子コンピューター
●核融合発電
●宇宙旅行
このうち、今回のブログでは最初の2つに絞って触れてみます。
こちらは、すでに説明は不要かもしれません。「ChatGPT」はじめ、今年は加速度的に利用がすすみ、対象は文字列から画像や動画にまで利用範囲が拡大進化しつつあります。
将棋の世界では、将棋AIの利用が当たり前になっていますが、おそらく不動産が扱う「物件情報の処理」や「業務進捗状況の処理」などについても、おそらく20~30年の間にAIが相当な影響を及ぼしていくと思われます。
そのようなAIが、さらに進化を遂げつつある「生成AI」とは、新しいコンテンツを「生成」するAI技術です。日経新聞の記事によりますと、生成AIの市場規模は2023年で約200億ドルと1年で倍増したものがさらに急拡大し、2027年には1210億ドル(約17兆円)に達する可能性があると、ボストン・コンサルティング・グループが予測したことを報じています。
出典:「生成AIとは 27年に17兆円市場の試算」日本経済新聞2023年8月4日2:00
量子コンピューターは、まだ一般的ななじみは薄いような気がしますが、その影響力の大きさから、「新しい産業革命が起きる」とさえ言われています。理化学研究所も日本製ハードウエアによる実機を稼働させるなど、2023年は日本にとって「量子コンピューター元年」となりました(NIKKEI Tech Foresight)。
莫大(ばくだい)な計算を行わせる場合には、従来のパソコンの延長にあるスパコンでも、多くの時間と電力エネルギーを要するのに対して、量子コンピューターでは瞬時にしかもエネルギーの消費も少なく計算できるようです。
「2019年にはグーグルが最先端のスパコンで約1万年かかる問題を、量子コンピューターが3分20秒で解いたと発表しました」と報じています(日経新聞の特設サイト内のコラムから)。
20~30年たてば、この「量子コンピューター」の活用は当たり前になっているかもしれません。現在使っている一般的なコンピューターみたいに、何にでも使えるモノではなさそうですが、得意な計算分野をスパコンに代わって担わせるような使い方になっていきそうです。
出典:特設サイト「分かる教えたくなる量子コンピューター」日本経済新聞2021年7月5日更新
出典:「国産量子コンピューターの衝撃、日本発の産業革命へ」NIKKEI Tech Foresight
不動産の売買では、いろいろな情報を扱っています。
●物件個別の情報(値段・広さ・構造・場所・形・色・素材・築年数など)
●周辺物件情報
●売れ行き情報や過去の事例
●物件の場所について、隣地や隣接する道路、河川、上下水ガスなどのインフラ情報
●かかわる法律や条令、都市計画などの情報
●購入する方の年齢・性別・家族構成・職業・お勤め先などの情報
●街の情報(人口構成、年齢、近隣施設、ハザード関連)
●注文建築に関する情報
●建築材料や資材に関する情報
●登記や法務に関する情報
●住宅ローンや、その審査に必要な情報
●火災保険などの情報
●家具、家電などの情報
●メンテナンスや修繕の情報
言えばきりがないくらいの数と量があります。これらがすべてデータであり処理が可能な情報の材料で量子コンピューターや生成AIのエサになるものばかりです。
現代では、これらについて、熟練の「不動産営業スタッフ(弊社では宅建士のエージェント)が調べて、整理し、わかりやすく加工し、必要なタイミングで説明したり、紙面やメールやLINEなどで、お伝えしたりお渡ししたりしています。しかしアウトプットする量と質や精度などは属人的。すべてそのスタッフの知識や経験、熟練度や性格、そしてセンスなどで左右されます。
あるスタッフが「あのお客様の好みからすると、おそらくこのような物件がよろしいのでは……」というのは、頭脳に入ったあらゆる情報のなかで「オススメ物件」を探し出したり、ひねり出したりする作業ですが、これらについても量子コンピューターと生成AIがどんどん取って代わって、よりセンスのいい提案を導き出してくれるようになっているのではと想像します。
20年、30年とたつ間に進化し、より使いやすくなっている量子コンピューターや生成AI、そしてロボットやドローンが連携して、前述の雑多で膨大な情報を放り込むとどうなるでしょう。
購入希望者の通勤経路や嗜好や趣味、よくお気に入りのお店や友人の住所、通っているジムなど、あらゆる追加情報も学習に使って、生成AIによって、おススメできる間取や条件、周辺環境なども導き出し、その傾向から物件データや地図データ、統計データなどをもとにその方におススメの物件を紹介。それだけでなく、街や駅、間取り、注文住宅のプラン、資金計画などを導き出して用意し、その方がほしいときにほしい情報が即座に取り出せるようになっている……。未来は、そんな不動産の選び方になっていそうです。
物件見学についても、実際の現物を見るのは、購入を決定した物件の「最終確認のときだけ」で、それまでは「バーチャル内見」で済ませるのがフツーになっていそうです。
どの物件も、希望者がいつでも「バーチャル内見」ができるように、売却準備の際に、室内や室外の隅々までマイクロドローンを飛ばして、自動で3次元測量と撮影をおこなっています。その情報をもとに、遠く離れた海外の方でも、バーチャル内見できるようになっているので、ほぼ現物を見るのと同じ感覚で、空間を移動しながら見て回れます。
しかも、多くの方のほとんどは、好きなときに好きな場所で好きな時間にできます。たとえば自宅で、就寝前のほんの30分の間に、家族と一緒に、「バーチャル内見」で昼間の様子や、朝の様子、夜の様子や通勤経路を実際に歩いてみる様子を再現した3Dの空間で確認できるようになっているでしょう。
ほんの30~40年前は、現在私が使っている小さなスマホで、あらゆる場所の映像を見ることができるなんて、誰も信じないSFの世界の中のお話でした。
ですから、あながち、さきほどの空想の話は、間違ってはいないと思うのですが、いかがでしょう。
【REDS】宅建マイスター:堀 茂勝