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堀 茂勝(宅建士・リフォームスタイリスト)

購入は煽らず、売却は囲い込みせず、寄り添います。

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最終更新日:2023年9月4日
公開日:2023年9月3日

皆様こんにちは。

首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のエージェント、【宅建士】【宅建マイスター】の堀茂勝(ほり しげかつ)でございます。

今回のテーマは「プロパンガス」。「LPガス」とも呼ばれます。

プロパンガス

「プロパンガス」と「LPガス」は違うの?

「液化石油ガス」の略称が「LPガス」ですが、「家庭用LPガス」の主成分として「プロパン」が多く含まれていることから、家庭用では「プロパンガス」の名称が一般的に使われているようですので、LPガスとプロパンガスは通常、同じものを指します。

しかし、LPガスの成分は100%プロパンではなく、ほかにもブタンなど、いくつかの異なる成分が混ざっているそうです。ちなみに工業用LPガスの場合は「ブタン」が主成分だそうです。

プロパンガス、LPガスのほかに「都市ガス」というものがありますが、これはLPガスとは成分が異なり、メタンを主とする天然ガスです。石油が原料ではありません。

疑問

ガス漏れしたら溜まるのは床?天井!? 覚えておこう!

空気と比べてプロパンは約1.5倍、ブタンは約2倍の重さのため、万が一漏れた場合には、プロパンガスは低い場所に溜まります。一方、都市ガス(天然ガス)は空気よりも比重が軽く、高いところに溜まります。

このため、ガス漏れ探知機も、プロパン用は床に近い低い場所に取り付けられているのに対し、都市ガス用は天井近くに取り付けられます。ガス漏れで逃げるときは、「プロパン」は立って逃げて、「都市ガス」は這って逃げましょう!?

ガス漏れ

大震災後にクローズアップされたのは「災害に強いプロパン」でした。都市ガスに比べて復旧が早く、「プロパンの家」だけが、冬の災害時に暖房や料理にすぐ利用できたものです。

プロパンって高いイメージがあるけれど、ホント!?

同じ量の単価でプロパンと都市ガスを比較すると、プロパンのほうが、かなり高価なイメージがあるかもしれません。

しかし、実は同じ量を燃やして出せる熱の量は、プロパンの方が都市ガスに対して約2.2倍もあるのです。

プロパンガス:約2万4,000Kcal/㎥
都市ガス:約1万1,000Kcal/㎥

たとえば同じお湯の量のお風呂を沸かす場合、プロパンガスの方が約半分のガスで沸かせるのですから、そのぶんオトク。それも加味して考えると、プロパンと都市ガスの値段差は、さほど大きな開きがなくなってきます。

おもしろいのはプロパンの価格は「自由料金制度」であることです。プロパンの料金は、昔から各販売店が独自の計算で勝手に自由に料金を決めてきたというわけで、なるべく安価でガスを提供しようという良心的な販売店がある一方で、必要以上に高い料金を設定することも簡単にできてしまいます。これがプロパンガスの料金幅が大きい主な理由です。

プロパンをお使いでしたら、ぜひ供給会社を比較して選択すべきです。

中華料理店が、あえて「プロパンガス」を使うワケとは

都市ガスが使えるエリアなのに、あえてプロパンを使っている中華料理店を見かけますが、その理由は、もうお分かりでしょう。

強力な火力で短時間でシャキッと仕上げる中華料理には「熱量が高いコンロが使える」のがとても大事だからです。

中華料理店

そのうえ、大量のガスを使いますので、価格交渉で単価を下げてもらったり、供給会社を比較して選んだりできるのも、大きな要因です。

なぜアパートが、あえて「プロパンガス」を使うワケ。「闇」。

都市ガスが使えるエリアなのに、あえてプロパンを使っているアパートや新築戸建を見かけますが、その理由は多少異なります。

その理由は「建築にかかる設備費用の一部をガス会社に肩代わりしてもらえるから」。

新築戸建がプロパン利用だった場合、ガスコンロや給湯器の設備費用はガス会社が負担しているケースがほとんどで、購入者はその設備については十数年の間「借りている」という形態をとっていたりします。

「ガス会社」は、購入者が支払うガス料金の中に「設備費用」の回収コストも上乗せして請求していますので、より割高な料金を払っていることになります。もっと安いガス会社に切り替えようとしたら、設備を利用した年数に応じて、費用の一括払いを請求されたりしますので、注意が必要です。

しかし、もともと新築購入時のコストが抑えられていて、購入価格がその分お安くなっていたと考えれば、多少は納得できるかもしれません。

アパート

アパート建築の場合も似たような話になりますが、こちらは「メリットを享受するオーナー」と「ワリを食う賃貸人」という図になります。

そのツケは、アパート利用者に

アパート建築時に、ガス会社に給湯器やガスコンロなどの設備機器をガス会社に提供させることはよく行われています。「都市ガス供給済エリア」なのに「プロパン」利用のアパートばかりなのはこのせいですね。

かかったコストは、ガス会社が「賃貸人」に請求するガス料金に当然、上乗せされますが、賃貸人には「ガス会社」を選択する自由はありません。そこに住んだら、いわれたままの料金を支払うことになります。

「プロパン」の料金には、ガス以外の設備費用も請求されていることも!?

ガス機器だけならまだしも、冷暖房機やインターホンなど、ガスに直接関係のない設備まで提供させて、建築費を安くすませるオーナーもいます。そのツケはどんどん利用者である「賃貸人」に回ります。

LPガスの商慣行イメージ
23年7月25日付 日経新聞朝刊より

プロパンが「自由料金設定」であるとはいえ、そんなこと、いつまでもあっていいものではありません。この長年の商慣習に、とうとうメスが入るときがきたようです。

とうとう「プロパン」料金の「闇」にメス!? 2023年7月、経産省が規制をかけた!

とうとう経済産業省は、都市ガスのない地域に多い液化石油(LP)ガスの料金に、ガス利用と直接関係ない設備の費用を上乗せすることを禁止し、罰則規定も設けました。これは、毎月のガス代の高騰につながっているとの指摘があり、不透明な商慣行の是正につなげることになります。

とはいえ、一気に是正されるかというと、そうはいかないようです。規制を始めたガス会社を所管している経産省に対し、ガス会社に設備提供を要求している建設業者やオーナーを所管している国交省は、強制力のない「通知」といった対応程度と温度差があり、規制に後ろ向きのようです。

この不透明な商習慣のツケは、ガス会社でも建設会社でもオーナーでもなく、入居者が払わされる。縦割り行政の弊害が、残念ながらここにも見て取れます。

参考:2023年7月25日 日経新聞朝刊
参考:2023年8月8日 日経新聞朝刊

 

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