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井原 直樹(宅建士・リフォームスタイリスト)

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公開日:2024年5月7日

REDSエージェント、宅建士・宅建マイスターの井原直樹です。

3月18、19日に行われた日銀の金融政策決定会合において、大規模金融緩和策の変更が可決されました。この決定の内容には、金融緩和策の柱だったマイナス金利政策が解除されることが含まれており、日本に〝金利のある世界〟が復活することに対し、注目が集まっています。

特に注目を集めているのが、「住宅ローンの変動金利が上昇するのではないか」という点でした。ところが、4月の住宅ローン変動金利は、ほとんどの金融機関で「変化なし」という結果でした。むしろ、キャンペーンで金利を引き下げたところもありました。

とはいえ、長年の超低金利を受け、現在の住宅ローンは変動金利タイプが主流ですので、「いつから金利が上がるのか」を不安に感じている人も多いのではないでしょうか。私も自宅のローンは変動で組んでおりますので、全く他人事ではありません。

住宅ローンの変動金利がいつから上がるのか、マイナス金利解除が生活にどう影響するのかといった点を考えてみたいと思います。

マイナス金利解除

そもそもマイナス金利政策とは

マイナス金利とは、金融機関が日銀に預けている「預金の一部」で、預けている側の金融機関が金利を支払う仕組みです。

金融機関が日銀に資金を預けたままにしておくと金利を支払わなければならなくすることで、金融機関が企業への貸し出しや投資に資金を回すように促し、経済活性化とデフレ脱却を目指しました。2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」として導入されました。

マイナス金利がついていたのは「預金のほんの一部」だけ

マイナス金利がついていたのは、金融機関が持つ日銀の当座預金のごく一部です。大まかに言うと、2015年における日銀預金の平均残高を上回った部分にマイナス金利が課され、下回った部分にゼロあるいはプラスの金利が課される仕組みです。

そのため、すべての金融機関がマイナス金利の影響があったわけではなく、また、企業への貸し出しや投資の促進を狙った日銀の意図に反して、多くの余剰資金は国債や外国債へ回ったようですので、もともと市場・経済への影響は限定的だったのではとの意見もあります。

そのため、「マイナス金利解除!」と聞くと戦々恐々としてしまいますが、それほどのインパクトはなかったようです。

とはいえ17年ぶり利上げ決定は大きなニュース、ただし当面は緩和を維持

マイナス金利政策が2016年にスタートして以来、日本は長らく〝金利のない世界〟とやゆされてきましたから、金利が復活することになるのは大きなニュースです。今回の金融政策決定会合で決定したのは、政策金利を従来のマイナス0.1%から0〜0.1%に引き上げるということです。

同時に、日銀が国債を購入することで長期金利を低く抑え込むYCC(イールドカーブ・コントロール)が撤廃され、金融市場への資金大量供給のために実施してきたETF(上場投資信託)・REIT(不動産投資信託)の新規買い入れも終了となりました。

ETFの買い入れ

日銀が最後にETFを買い入れたのは2023年10月で、2024年に入ってからは、株価大幅安の場面でも買い入れを行わなかったことから、すでに市場参加者からは終了するものと思われていました。

そのため、株価への影響はほぼないと言われており、むしろ市場機能の健全化として海外投資家には好感され、株高の一助となっているようです。

また余談ですが、これまでに買い入れた時価総額74兆円ものETFを、国民へ分配すべきなんて声も上がっています。夢がありますね。

今回金利が上がるのは「無担保コールレート」で住宅ローン金利ではありません

日銀が金融政策でコントロールするのは住宅ローン金利ではなく、無担保コールレートと呼ばれる金利です。

これは金融機関どうしが超短期で貸し借りを行うときの金利水準を表し、日銀がこのレートを操作することで、結果的に金融機関が利用者に貸し出す金利にも影響を与えられるという仕組みです。

住宅ローン金利(変動)の決まり方

では住宅ローン金利はどのように決まるのでしょうか。以下は一般的な事例です。

  1. 無担保コールレートを参考にして、各金融機関が「短期プライムレート」を独自に決定する。
  2. 住宅ローン金利は「短期プライムレート」に連動する。

具体的には、三菱UFJ銀行ではマイナス金利解除を受けて、このような決定をしました。

  • 普通預金金利は引き上げ
  • 短期プライムレートは据え置き

他行も同様の対応を取るとみられ、短期金利は当面これまでと同じ水準で推移すると予想されます。もちろん、今後さらに無担保コールレートが利上げされれば、短期プライムレートが上昇する可能性があります。

一方で、住信SBIネット銀行や、楽天銀行など、タイムリーに金利を上げてきている銀行もあれば、短期プライムレートに連動していない住宅ローンもありますので注意が必要です。

今後も利上げ継続なら、支払額はいつから上がる?

いざ、銀行が短期プライムレートを上げて、住宅ローン金利も上げるとなった場合は、一般的にはこちらの日程で支払額が上がります。

  1. 金融機関の住宅ローン金利が4月1日と10月1日に決まる。
  2. 4月に金利を上げる決定があった場合は最短で7月の支払額から、10月の場合は1月分から適用される。

※毎月金利を見直す金融機関もありますので、しっかり確認しましょう。

救済措置としての「5年ルール」と「125%ルール」

多くの金融機関では、救済措置として「5年ルール」や「125%ルール」を設けています。

●5年ルール:借入当初5年間は金利が上昇しても毎月の支払額が変わらないというルール。支払額が変わらないというだけで、返済額の元金/利息の内訳では、しっかり利息分が増えておりますので、5年間は金利が上がらないということではありません。

●125%ルール:金利が見直されたときでも、従来の毎月返済額から125%までしか返済を増額しないというものです。

異次元の利上げが継続された場合は、5年&125%ルール下において利息が払いきれず、当初の借入年数を経過しても、未払いの利息が残る「未払い利息」が生じることもあります。その際は、借入れ年数を延長して支払うことになります。

マイナス金利解除で暮らしへの影響は?

マイナス金利解除によって、住宅ローン金利の上昇以外にも、主に3つの事象が考えられます。

1.賃貸物件の家賃が上がる可能性:融資を受けて賃貸住宅を運営しているオーナーの場合、金利が上昇するコストアップのため、賃料値上げとなることも考えられます。

2.中期的には不動産価格の値下げ要因に:住宅ローン金利が実際に上昇することで、借入金額の上限も抑えられます。仮に、これまでは1億円の融資が受けられたのに、9,000万円までとなると、自ずと相場も下落していきます。

値下げ要因と聞くと「待った方がいいかな?」と思いますが、住宅ローン金利が上がっているので、支払額は変わりません。ならば、年齢の若いうちにローン返済をスタートしたほうが将来的に有利でしょう。

3.預貯金につく利息が増える可能性:これは微々たるものですので、いずれにしても他の運用に回したほうがいいでしょう。

金利上昇局面での家探しのポイント

マイナス金利解除によって、金利が上昇する中で、家探しは何に注意すればいいのでしょうか。その答えは、「金利が上昇しても家計が耐えられる予算」を設定することです。

住居費を抑えておけば、結果的に金利が上がらなくても、余裕をもって老後への備えもできるはずです。

どこまでの金利上昇を見込んでおけばいいか正解はありませんが、許容度をご自身で把握しておけば、繰り上げ返済や返済バッファ貯蓄の準備などもできると思います。

しっかり、リスクを把握したうえで、予算を決めていきましょう!

 

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