私のルーティンな仕事は、東京23区と川崎市などで販売されている新築マンションの現地を見て回り、物件ごとの資産価値評価をレポートにまとめることである。このレポートづくりを始めたのは約10年前。そのときに初めて、完成したタワーマンションを間近に見ることになってしまった。

 

タワーマンション

(写真はイメージです)

 

なんと醜悪な建造物だ!

 

私はそれまで新築マンションの広告を作っていたので、タワマンを視界に入れる機会はいくらでもあった。しかし、それは何となしに風景の一部として見ていたに過ぎなかった。資産価値を測るために建物の様子や周りの環境を確認する意図で見るのとは、目に映る光景がまるで違っており、思わずこうつぶやいてしまった。

 

「何と醜悪な建造物だ!」
建物の近くに寄ると、その存在感の大きさに圧倒される。建物を見上げると圧迫される感じがする。

 

そのときには、外観を黒いガラスウォールで覆うデザインの物件が多かった。これが古くから人が暮らしていた山手線内のエリアに忽然と現れて、周囲を圧するようにそびえ立っているのだ。どうひいき目に見ても、街並みには溶け込んではいない。何物件か見て回るうちに、頭がクラクラした。吐き気さえ催していた。私はその醜悪さに圧倒されたのだ。

 

ところが、街の人たちは平然としている。タワマンを見上げる人もいたが、それで気分を害しているようには見えなかった。周辺の住人にとってはタワマンは日常の風景になってしまっていた。タワマンは作れば売れる。これはマンション業界の公然とした常識であった。今もそのセオリーは生きている。しかし、それでよいのだろうか。

 

でもタワマン住まいは「ステイタス」が多数派

 

実際、タワマンに住みたがる人は多い。また、タワマンに住んでいることがステイタスであると考える人や、カッコイイと感じる人も多い。全体から見ればタワマンを肯定的にとらえる人の方が多数派ではないか。だから、タワマンは今後も大量に市場に供給される。

 

そういう現実を眺めても、私の中に宿った違和感は拭いきれなかった。私の今の職業は住宅ジャーナリストである。書いたものを世に問う機会があるので、折に触れてこのタワマンに対する違和感を表明してきた。そして、いろいろと調べてみた。そうするうちに、いろいろなことが分かってきた。

 

最も新鮮だったのは、ヨーロッパ人はほとんど高層住宅に住んでいない、という平凡な事実だった。イギリスのチャールズ皇太子は超高層建築嫌いで知られており、そのことをはっきりと言明している、というエピソードも知った。ああいう建造物を醜悪だと思える感覚を私はイギリスの皇太子と共有しているのだ、と思うと少しばかり嬉しくなった。

 

そうするうちに、私の周囲では祖父母の代くらいから東京に住んでいて、資産のある方はひとりもタワマンに住んでいない、という現実にも気づいた。彼らはマンションに住んでいても、山の手住宅地のひっそりとした佇まいの物件を選んでいることが多い。こんなありきたりな現実も、改めて確認するとやはり新鮮だった。

 

タワマンに住む人たちの正体

 

私のところには、マンションの購入相談にやってくる人も多い。中にはタワマンに住んでいたり、その購入を検討したりしている人もいる。当たり前だが、そういう人に向かってタワマンを批判するようなことは申し上げない。これは好悪の感情であり、むやみにそれを他人の判断に影響させてはいけないと考えている。

 

そこで気づいたのだが、湾岸のタワマンを購入して住んでいるのは東京生まれではない人が多い。そして、それなりの成功者だ。当たり前だが湾岸エリアといえどもタワマンは高額である。サラリーマンならメガバンクの行員クラスでないと、自分の収入だけでは購入できない。

 

さらに、不動産業界の関係者から気になる話を聞いた。「湾岸のタワマンは中華系の外国人が多く買っている」というのだ。

 

日本人には埋立地の荒涼とした風景を嫌う人が一定の割合で存在するが、中華系外国人はそういったアレルギーが一切ないということだった。実際、私のところにやってきた香港や中国のメディア関係者の何人かに確認したところ、全員が埋立地のタワマンに住むことに一切の抵抗感を持っていなかった。むしろ憧れている、という感じであった。

 

あるとき、タワマンへの違和感を担当の編集者に話す機会があった。私よりもひと回り以上も若い彼女は、私と同じ感覚を抱き始めていた。彼女と拙著の次作について打ち合わせているときに、やはりタワマンの話題で盛り上がり、自然と「次はタワマンでいきましょう」となってしまった。

 

彼女は取材先をさまざま手配してくれた。タワマンや超高層建築に嫌悪感を持つ市民グループや、あるいはそれを許認可する行政への取材が進んだ。そこで、私や彼女の感覚は決して少数派ではないことが分かってきた。日本人にも、ああいう建造物にひどく違和感を持つ人は一定数いるのだ。そんな人々がいずれも淑女紳士で良識的な考えをお持ちだったので、私はなお嬉しかった。

 

彼女と調べていくうちに、さらにいろいろなことが分かってきた。
中学受験の指導を専門とするベテランの家庭教師は、タワマンの上層階に住む子供は成績が伸びにくい、ということに気づいた。潜在能力があるはずなのに、普通の子が理解している自然現象についての経験値が足りないことが原因ではないかと推測していた。

 

また、ある医療関係者はタワマンに住む子供ほど近視になりやすい、ということに気づいた。こちらは外出する機会が減って、ゲームの時間が長くなるからではないかと指摘している。

 

新著『限界のタワーマンション』がタワマン議論の契機になれば

 

取材を進めていくうちに、タワマンの持つ致命的な欠陥も浮き彫りになってきた。

 

それは、普通のマンションに比べて維持管理のコストがかなり高い、ということだ。最初の大規模修繕までが約2倍。次の大規模修繕までは推定3倍。その次の大規模修繕になると・・・これは、現状ではよく分からない。

 

さらに、タワマンはタワマンであるがゆえに、大規模修繕で手を抜けない、という宿命を背負っていることも判明した。我々日本人はタワマンという住形態でどれほど長く人が住めるのか、という壮大な実験をしているといえる。そして、その実験の結果では、かなり悲惨な現実を目の当たりにすることになる可能性が高い。

 

日本人は造形だけでなく健康や子育ての面から考えて、タワマンというものに対して、もっと懐疑的になるべきではないか。そういう書物ができあがった。『限界のタワーマンション』(集英社新書)だ。令和元年6月17日から販売される。これまで肯定一色だったタワマンに関する議論に一石を投じることになれば、なお嬉しい。

 

最後に申し上げておくが、マンションのデベロッパーは、売れるからタワマンを開発して販売しているに過ぎない。彼らの責任は最長10年。雨漏りや給排水管の故障があれば、10年間は瑕疵担保責任期間だから無償で対応してくれる。しかし、それ以降は何が起ころうとも百パーセント、そのタワマンの区分所有者(購入者)の責に帰せられる。

 

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昭和、平成時代を経て日本のマンションは大きな転換期を迎えています。人生のうちで大きな買い物となるマンション選びにおいては、常に最善の選択をしたいものですが、そのためには変化に即して考え方や行動を変えていかなければなりません。長年にわたりマンションを取り巻くさまざまな業界の最前線をウオッチしてきた住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がこれまでの常識はどの時点からどのように変わってきたのか、そしてこれからどう変わっていくのか、マンション購入を考えているみなさまにとって有益かつ目からウロコのお話満載で語っていきます。

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榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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