サラリーマンの間で「夢のマイホーム」という言葉が出始めたのは、昭和の高度経済成長期だったとされています。「職場まで片道2時間の郊外でもいいから、一戸建てに住みたい」という思いが戦後の日本経済を活性化させていたのは今は昔ですが、住宅を購入することが一生に一度あるかないか、というのは令和の今も同じことかもしれません。

 

昨今は新築に比べて中古住宅の需要が伸びています。新築住宅の価格が上がりすぎて庶民には手が届きにくい存在になってしまったことや、昨今のリフォームやリノベーションの流行、DIYしたいというニーズがあるからです。上手に購入できればお得な中古住宅ですが、安いということで飛びついてしまうと大きな失敗をしてしまう可能性も高いといえます。

 

今回は中古住宅を購入する際の注意点について解説します。

 

不動産購入

(写真はイメージです)

 

注意点1:築年数

 

建物は築年数が古いほど、価値がどんどんなくなっていきます。戸建ては築20年以上たつと、価値がなくなるともいわれています。逆にいえば、古い家はとても安く購入ができるということです。

 

しかし、古い物件はいざ購入しようとしても「住宅ローンが通らない」というケースがよくあります。住宅ローンは土地と建物を担保とするため、担保とする建物に価値がないのなら銀行側もお金を貸せないというわけです。

 

一つの目安として、新耐震基準の適用が始まった昭和56(1981)年6月1日より後に建築確認を取得した建物であるかどうかという点で判断することが有益です。銀行もこの新耐震基準の建物であるかを気にします。

 

注意点2:構造に欠陥

 

リフォームやリノベーションが前提なら確かに古くて安い建物は魅力的です。しかし、特に木造の古い建物を購入する際には注意が必要です。

 

古い木造住宅には雨漏りや建物の傾き、シロアリ、排水管の不具合などの欠陥はつきものです。個人の方から購入する際(一般の仲介)、購入後に発覚した不具合については免責になる特約を結ぶケースがあります。「古い建物を買うのだから、当然劣化していますよ。わかったうえで買ってくださいね。私は責任持ちませんよ。そのかわり安いですよ」ということです。

 

内覧の際、ドアの開きや天井のシミやクロスの浮き、床下のにおい、排水のにおいなど目に見える部分のチェックに注意がいきがちで、それは仕方のないことですが、事前にリフォーム業者の見積もりを取ることをおすすめします。

 

注意点3:接道義務

 

中古戸建てを探していると、周辺の相場と比べて極端に安い物件がたまにあります。そのような物件がお得かというと実はそうでもありません。

 

建築基準法43条で、「建物の敷地は、『建築基準法上の道路(幅員4m以上の道路)』に2メートル以上接していなければならない」というものがあります。これを接道義務と呼び、違反している状態になっていると、今ある建物を取り壊した後に、建物を新築することができません。

 

接道義務が規定されているのは、火災が起きたときに消防車や救急車といった緊急車両が、建物の近くで消火活動や救助活動をスムーズに行えるようにするためです。木造建築の多い日本ならではの法規制ともいえます。

 

・道路に接していない場合
・道路に接していても、その道路が4メートルの幅がない場合
・道路と土地が接している幅が2メートルに満たない場合

 

このうちどれか1つでも該当していると、再建築不可であり、資産価値が低いため周辺の相場と比べて極端に安い価格がついています。「リノベーションをするし再建築も必要ないので問題ない」という考え方もありますが、火災や災害で物件が滅失した場合、その土地には家は建てられないのです。

 

また、将来住まなくなったり、亡くなって相続が発生したりした際に、相続人が不動産を簡単に売却できないのです。このような接道義務を果たしていない物件については、購入時より価値が大きく下回り、処分に困った挙句、二束三文で売却するか、あるいは反対にお金を出してまで引き取ってもらうということが現実に起きています。

 

注意点4:違法建築・増築

 

中古戸建てを購入するときは、増築されていないかも確認しましょう。物件情報に「増築あり」などと記載されていたら要注意です。

 

家を建築・増築するときは役所に必ず建築確認を受けなければなりません。また当初は建築確認どおりに建築・増築しようとしていても、予定より大きくしてしまったら、それは違法建築になります。また、家を新築する際は建築確認を受けた人でも、増築のときは建築確認を怠る人もいます。

 

このような家は違法建築物であり、役所が撤去工事を命じる可能性もあります。このように増築をしていて当初の建築確認と異なる床面積の建物については、銀行のローンが出にくいのが現実です。

 

注意点5:初期費用・税制優遇

 

中古物件を購入する際には初期費用が新築より高くなるケースがあります。

 

新築建物の場合、売主が多くの場合不動産業者であり、不動産仲介業者を間に入れずに直接購入することで不動産の仲介手数料(ほとんどの仲介会社が物件価格の3%プラス6万円としている)を支払う必要がないからです。

 

反対に中古不動産の場合は、不動産業者が所有している物件もあれば、個人で所有されているケースもあり、個人所有の場合には必ず仲介手数料を支払うことになります。不動産業者が直接売主となっている場合は本来、仲介手数料はかからないものですが、間に仲介会社を挟んでいると、支払いを求められることがあります。

 

また、不動産を購入するにあたってさまざまな税金がかかってきます。税金に対する優遇措置があるのですが、築年数が古いほど受けることが難しくなります。登録免許税、不動産取得税、住宅ローン控除などは、原則として木造は築後20年以内、鉄筋コンクリート造などでは25年以内でなければこれらの優遇措置を受けることができません。

 

しかし、条件しだいでこれらの築年数を超えていても優遇措置を受けることができるケースもありますので、不動産会社に相談してください。

 

価値のない中古物件を買ってはいけない

 

以上、今回は中古不動産を購入することについて主な注意点5点について解説しました。

 

程度のいい中古物件は非常にお得感があり、確かに魅力的です。しかし、「安いから」とか「リノベーションやDIYが流行っているから」といって安易に飛びつくのは注意が必要です。

 

不動産にかぎらず流通に乗らないものに価値はないと筆者は考えています。購入する際には、いずれ自分が住まなくなったときに売却したり貸したりできる不動産を購入するべきだと思います。

 

 

坂井田啓介(宅地建物取引士、行政書士)
司法書士事務所に勤務後、行政書士として独立開業。数多くの不動産取引を担当。その後、外資系生命保険会社に勤務。不動産売買契約や重要事項説明のリーガルチェック、不動産を含むトータルの資産形成のコンサルティングを行う。