マンション売却において、売り出しから成約までの期間は多くの場合、半年以内となっています。なぜ半年以内に売れるのでしょうか? 実はこの答えの中に、効率良くマンションを売却するためのヒントが隠されているのです。
この記事では、多くのマンションが半年以内に売れる理由と、マンション売却を効率よく成約するためのポイントを解説します。現在マンション売却を検討している方、マンション売却中で成約に至っていない売主の方も、ぜひ参考にしてください。
(写真はイメージです)
マンションが半年以内に売れていく理由
マンション購入を希望する潜在顧客は3カ月で一巡
例えばある売主甲さんが、A駅から徒歩8分、築9年のBマンションを3,800万円で売り出したとしましょう。一方で「A駅から徒歩10分以内」「築10年以内で3LDK、3,000万円以内」という条件でマンションを探している買主乙さんがいたとします。Bマンションの価格は3,800万円ですから、乙さんは手が届きません。
この3,800万円というのが、Bマンションの査定時に提示された適正価格通りであれば、甲さんは「乙さんは少し高望みだったのだな」と判断して次の購入希望者を待てば良いでしょう。しかし適正価格が3,000万円だったとしたら、甲さんは貴重な販売チャンスを逃した、という残念な結果に終わったことになります。
不動産会社の現場では日々、こうした葛藤の中、購入希望者への物件紹介が行われています。
仮にA駅の徒歩圏でマンションを探している人(潜在顧客)が10人いたとして、売りに出たマンションの情報が潜在顧客全員に届く期間は、1カ月もかかりません。旅行や出張でマンション探しを中断するケースを想定しても、業者が通常の宣伝活動を行っていれば、2カ月もあれば物件情報に触れていない潜在顧客はいなくなります。
物件情報に触れた10人全員が、上記の乙さんのように「自分の条件とは合わない」と判断したら、その後はもうBマンションは購入候補とはなりません。たとえ100人の潜在顧客がいたとしても、条件が合わなければ、成約はまずありえないのです。内覧にすら至らないでしょう。
そうしているうちに潜在顧客はライバル物件に目を向け始め、他の物件を購入し、または相場の安い他地域に条件を変更するなど、徐々にBマンションを検討する潜在顧客ではなくなっていきます。これが潜在顧客の一巡です。
全ての潜在顧客に情報が行き渡るのに2カ月、内覧するなどして購入を検討して結論を出すのに1カ月と考えると、当初売りに出した価格での販売は、3カ月でサイクルが終了します。
マンション売却において、「業者が適正価格を提示し、その価格で売り出せば、多くのケースで3カ月以内に売れる」とされているのは、こうしたサイクルが1つの要因です。
マンション売却では3カ月がひとつの区切り
潜在顧客のサイクルも、また売主と不動産会社で締結する「媒介契約」の期限も3カ月です。その間に売れなかった場合は、多くの不動産会社がこのタイミング(3カ月後)で価格を含めた条件の見直しを提案します。
そこで価格変更に応じたならば、次の3カ月は新価格での1サイクルです。当然ですが、最初に売りに出した時期と比べると潜在顧客の数は減っています。新たに購入を検討し始めた潜在顧客を加えても、最初の3カ月より状況は厳しくなっているといえるでしょう。
それでも売値を適正価格に近付けたのですから、内覧などの購入に向けた潜在顧客のアプローチは増えていきます。そして売り買いの条件が一致すれば、めでたく成約となるわけです。
マンション売却は半年を経過すると困難に
しかし、必ずしも事がうまく運ぶとは限りません。2回目のサイクルでも売れなかったとすると、状況はさらに悪化すると言わざるを得ません。「あの物件はもう半年も売りに出ているけど、売れない。何か問題があるんだな」と、潜在顧客が抱くイメージが悪くなってしまうからです。
不動産会社も、長期在庫となった物件は、積極的に紹介しようという気持ちを保てなくなってしまいます。「そんなことを言わずに頑張ってよ!」と売主サイドからは苦情も言いたくなりますが、他の物件を紹介した方が購入される可能性が高いとなれば、残念ながら営業マンからも見放された状態となってしまうのです。
こうなると負のスパイラルです。根本的に条件を見直して新たな売却サイクルに臨むか、マンション売却を中止する以外に方策はなくなってしまいます。
適正価格でも売れない? 解決すべき価格以外の理由
もちろん、売出価格を業者が提示した適正価格にしたのに売れない、というケースもあります。その場合の売れない理由は、例えば「室内の状態が悪すぎる」「内覧時の売主の印象が良くない」「業者が適切に販売活動を行っていない」といったものです。
室内が汚く、荷物や家具が乱雑であると、「手入れが行き届いていない」「改修費がかさみそうだ」との印象を内覧者に与え、購入を見送られるケースが多くなってしまいます。
内覧時の売主の対応が良くないのも、購入に至らない理由の1つです。聞かれてもいないのにセールスポイントを説明するのは、「何か、早く売りたい事情でもあるのかな?」と勘繰る内覧者が多くなり、逆にあまりにも無愛想だと、「この売主からは買いたくないな」となりやすいのです。
そして最悪なのは、業者が適切な販売活動を行っていないケースです。これでは売れるわけがないのですが、実際はこういう業者も少なくありません。マンションの売り方や効果的な広告方法を知らず、販売活動が的外れなものになってしまうのです。
マンション売却を半年以内で効率よく成約するには
マンション売却では適正な価格設定が最も重要
まずは適正価格で販売すること、それこそがマンション売却成功への一番の近道です。根拠のある査定で提示された適正価格ならば、多くの物件は3カ月以内に売れていきます。
そこで重要になるのが査定額が妥当かどうか。業者の中には、到底売れるはずのない高値を提示し、売却依頼をもらって後から価格を変更させようとする業者もいるからです。
マンション売却をするとき、相場からかけ離れた高値では、いくら販売活動を行っても成果には結び付きません。そして、高値の査定で売主を「釣る」ような業者は、そもそも販売活動は行わず、売れずに売主が弱った頃を見はからって価格を下げようと提案してくるので、その間の販売期間が無駄となってしまうのです。
査定額を見極めるには、複数の業者に査定を依頼し、極端な高値や安値提示の業者を避ける必要があります。売却依頼は、平均的な査定額を提示した業者の中から、連絡や報告がしっかりしている業者を選ぶようにしましょう。
また、適正価格より高い価格でチャレンジする場合は、上乗せ金額は適正価格の10%以内に収め、その期間は最初の1サイクル、3カ月以内までとしておきましょう。
「長期間売れずにいる高値物件」との印象を潜在顧客に与えてしまうと、マンション売却はますます難しくなります。マンション売却で効率よく成約するためには、3カ月を経過したら適正価格付近に金額を移し、積極的に宣伝活動をしてもらうのが正解です。
適正価格で売れないなら価格以外の問題点の解決を
室内状況に問題があるケースでも、経年なりの劣化であれば、劣化を見越した価格付けとなっているので改めてのリフォームなどは必要ありません。
しかし、片付けや掃除が行き届いていない場合は別です。「乱雑な部屋だな」と内覧者に感じさせただけでも、その悪印象は物件全体のイメージとして残ってしまうものなのです。できる範囲で構わないので、室内は小ぎれいにして、購入者に明るい印象を与えるように努めましょう。
内覧時の対応については、不動産会社の担当者に相談してみてください。購入希望者が感じる不安や疑問は、担当者は基本的に全て認識しているものです。アドバイスしてくれるので、単刀直入に聞いてみるのが一番です。
それでも売れないとなると、後はもう業者のスキル以外に原因はありません。売れずに半年を迎えてしまう前に、依頼先を変更しましょう。もう一度複数の会社に査定を依頼し、査定額が妥当かどうかを見極めて、最良だと思える業者に依頼するのです。
まとめ
マンション売却の成約は、多くの場合は3カ月、遅くとも半年以内に完了するものです。売れ残らないよう、査定時によく業者を見定めて、適正価格での売り出しを心がけましょう。
どんなに古いマンションでも、交通の便が悪いマンションでも、売れない物件はありません。マンション売却の成否は、第一に売出価格、次いで室内状況が価格に見合っているか、そして売主を含めた売却側の内覧者への対応が影響します。
売れない場合はどこに問題があるのか、不動産会社の担当者と相談して対策を講じましょう。マンション売却では、潜在顧客や内覧者にいかに魅力的な物件だと感じてもらうかが、何よりも重要です。
伊東博史(宅地建物取引士)
大手不動産仲介会社で売買仲介に約10年間の勤務。のべ30年以上にわたり、大手と中小、賃貸と売買と、多角的に不動産業務に携わる。現職では売買と賃貸仲介と管理、不動産投資や相続のアドバイスを行う。
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