エージェントブログAGENT BLOG

有馬 春志(宅建士・リフォームスタイリスト)

安全かつ安心して取引できる環境を提供。

公開日:2023年11月7日

REDSエージェント、宅建士の有馬です。

委託を受けて不動産などの資産の形成、運用、保全を行なうことをアセットマネジメントといいます。投資家やオーナーに代わって不動産の総合的な資産管理を行い、その価値を最大化することが主な業務です。

その際に重要なのは、投資目的に沿ってリスクとリターンをコントロールすることであり、投資内容や投資先の分散、投資期間の設定など工夫が求められます。不動産を組み込んだアセットマネジメントにおいては、投資不動産の選定や売買だけでなく、不動産の収益性を左右する賃料の設定、テナントの選定などの業務にも関与します。

今回はアセットマネジメントについて解説します。

アセットマネジメント

アセットマネジメント8つの業務

アセットマネジメントの業務は以下の8つに集約されます。

1.運用計画

以下の3つの主要項目からなる運用計画書を年1回作成し、オーナーに提出します。

①ビル運営に関わる全ての収入(賃料、共益費、取立て水光熱費等)・支出(建物管理費、修繕費、水光熱費、公租公課など)を推計し、1年間から5年間程度の月次・年次のキャッシュフロー、営業純利益などを算出
②マーケットリサーチ(情報収集)を行い、営業戦略を立て、戦略に沿って募集条件(募集単価、契約形態、契約期間など)や緩和条件(時期の見極め、下限値、フリーレントなど)を織り込んだリーシング戦略を立案
③予防保全(建物の価値を維持するために、計画的に行うメンテナンス。エレベーターや消防設備、給排水、空調、電気設備などを含む定期点検が中心)計画、事後保全(定期点検に含まれる設備や外壁、共有部分の故障などが発生した際に都度行う修理・改修)計画、予防保全の一環としての長期修繕計画の立案

2.運用報告

運用計画書に基づいて運用した結果を3カ月から半年ごとに、以下の内容を含む運用報告書を作成し、オーナーに報告します。

①キャッシュフロー・営業純利益等の実績
②賃貸借契約の一覧(レントロール)
③予防保全・事後保全・長期修繕計画の実施一覧
④管理費・工事費等の支払明細
⑤テナント要望や事故苦情・トラブル等の内容、定期的に必要な検査の実施状況と問題点の有無、諸官庁からの要請事項や対応状況

3.資金管理

以下の内容を含みながら資金の入出力を管理し、結果をキャッシュフロー表に反映し、オーナーに報告します。

①テナントへの賃料等の請求・精算
②請求書の取りまとめ、資金移動・支払事務
③利益の配当・出資金の払戻

4.テナント管理

テナントとの契約関係を維持することを目的に、以下のような業務を行います。

①入居時・賃貸借契約更新時の賃貸条件の交渉、契約手続
②賃料等入金期日の管理、入金明細作成
③賃料延滞時の督促・回収
④要望・苦情への対処
⑤内装工事等の内容審査・工事立会い
⑥退去時の原状回復等の手続、敷金・諸経費などの精算

5.リーシング管理

リーシング管理とは運用計画で立てたリーシング戦略に基づいて、以下のような業務を行うことです。

①リーシング活動のコントロール:引き合い状況・マーケット状況により臨機応変にリーシング活動のコントロールを行うことが重要
②賃貸仲介専門業者と親密な関係を築く:リーシングにおいては、賃貸仲介専門業者が大きな役割を果たすため、賃貸仲介専門業者と親密な関係を築くことが重要
③条件交渉:テナントからの契約賃料、フリーレント、レントホリデー、ステップアップ賃料、契約期間等の付帯条件交渉の対応

6.商業施設運営

商業施設の場合、テナントの売上に連動して賃料が変動する形態の契約が行われる場合も多いため、テナントの売上増加を目的に、以下のような業務を行います。

①販促(プロモーション)活動
②テナント管理(売上管理、売上向上のための各種サポート・指導、テナントミックスなど)
③施設管理(施設の改装・大規模修繕・日常管理)
④飲食、物販などの出店業者へのダイレクトアプローチ

7.建物運営管理

建物を快適に安全に利用するために維持・管理することを目的に、以下のような業務を行います。

①建物、設備の管理・保守点検:昇降機設備、電気設備、冷暖房設備、空調・換気設備、給排水・衛生設備、消防用設備
②保安警備:常駐警備、巡回警備、機械警備
③清掃業務:清潔さを保つ日常清掃、日常清掃では網羅しきれない特殊な汚れや箇所に対する定期清掃

8.建物修繕管理

現物資産である以上、建物は必ず劣化します。そこで「1.運用計画」で立てた予防保全計画、事後保全計画、長期修繕計画に基づいて、建物を維持・管理し資産価値を守ります。

 

カテゴリー:

公開日:2023年10月4日

REDSエージェント、宅建士の有馬です。

「地盤調査」についてご存じでしょうか。地盤調査とは、建築物の基礎などの設計・施工や、根切り工事の施工をする前に、地盤の性質を把握するために行う調査のことです。

建築物の基礎は、建物に作用する荷重および外力を安全に地盤に伝え、地盤の沈下または変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならないとされています。地盤調査は、この条件を満たしているかを確認するために必要な調査です。

今回はこの地盤調査について詳しく解説します。

地盤調査

地盤調査の事項と方法

地盤調査の調査事項は、成層状態、層の強度、圧縮性、透水性、地下水の状況などで、調査によって、地盤の許容応力度や基礎杭の許容支持力、地盤液状化の可能性などが明らかになります。

調査方法は、ボーリング調査、貫入試験、載荷試験、物理探査などがあります。ボーリング調査や貫入試験は、地面を掘って調査することです。載荷試験は、対象地盤に設置した円形載荷板に荷重をかけ、載荷板の荷重と沈下量の関係から、対象地盤を求める試験です。物理探査は、弾性波や電流などさまざまな物理現象を利用し、非破壊で地盤内部を可視化して調べます。

戸建てを建てる場合の一般的な地盤調査は、貫入試験により得られた地盤調査データから地盤改良工事の必要性について判断します。

地盤改良工事が必要かどうかの2条件

一般的に、地盤改良工事が必要かどうかは、以下の2つの条件から判断されることが多く見られます。

1.地耐力(地面が建物を支える強さ)が軟弱地盤と判断された場合

2.敷地とその周辺が埋め立て地や盛り土で造成された土地、過去に陥没があった土地、液状化や不同沈下(地盤のゆがみで建物が地中に沈み傾く)の可能性がある土地など、総合的な周辺情報により地盤の強化を要すると判断された場合

つまり、地盤調査の結果と敷地周辺に関する情報を総合的に見て、地盤改良工事が必要か判断します。

信じられないかもしれませんが、昔は地盤調査をしなくとも住宅を建築できました。そのため、不同沈下が起こるなどして欠陥住宅の増加が社会問題になりました。

このような問題を解決するために2000(平成12)年に建築基準法が改正され、「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」も制定されました。この法律の適用により、現在では戸建てを建築するには地盤調査がほぼ不可欠になっています。

地盤改良工事の工法

地盤改良工事の工法

地盤改良工事には、表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管杭工法などがあります。それぞれ解説します。

表層改良工法

表層改良工法とは、セメントを使用して地表周辺を固める地盤改良工事のことで、地盤の軟弱な部分が地表から2メートルまでの浅い場合に用いられる工法です。表層部の軟弱地盤部分を掘削し、セメント系固化材を土に混ぜて十分に締め固めて強度を高めます。

表層改良工法のメリットは、改良深度が浅い場合は比較的リーズナブルで、小型の重機でも施工が可能な点です。また、地中にコンクリートや石などが混入していても施工できる点もあります。

注意点は、勾配のきつい土地では施工が難しい場合があることです。また、地盤改良面よりも地下水位が高い場合は対応できません。施工者のスキルに依存しやすく、実績を積んでいないと仕上がりの強度に影響する点も気を付けたいポイントです。

柱状改良工法

柱状改良工法とは、円柱状に地盤を固めた改良杭によって建物を支える地盤改良工事のことで、軟弱地盤の深さが地中2~8メートルの場合に用いられる工法です。地中に直径60センチほどの穴をあけ、良好な地盤まで掘ります。地盤を掘る過程で水を混ぜたセメントを注入して土と混ぜて撹拌し、円柱状の固い地盤を築くことで強化する仕組みです。

柱状改良工法もまた、比較的リーズナブルで住宅の地盤改良工法として多く採用されています。また、支持層(強固な地盤)がなくても施工できる場合があるといった点もメリットです。

特定の地盤(有機質土など)では、セメントが固まらないといった固化不良が発生することがあります。また、施工後は地盤の原状復帰が難しい点は要注意です。将来的に土地を売りたい場合、価格の低下につながる可能性もあります。改良体撤去にはかなりの費用がかかるためです。また、狭小地や高低差のある土地では搬入不可となる場合もあるため注意が必要です。

小口径鋼管杭工法

小口径鋼管杭工法とは鋼管で地中から建物を支える地盤改良工事のことで、地中30メートルまでの地盤補強が可能です。地中深くにある固い地盤に鋼管の杭を打って、建物を安定させます。工事にかかる日数も1~2日程度のため、短い期間で工事を終わらせたいという方にもおすすめです。また、小口径鋼管杭工法は狭小な土地など、重機を搬入しにくい場所での工事にも適しています。

小口径鋼管杭工法のメリットは、施工後の地盤強度が他に比べて高い点です。また、3階建てなどの重量のある建物にも対応できます。もうひとつ重要なメリットは、柱状改良より小さい重機でも施工できる点です。

小口径鋼管杭工法は、支持層がなければ施工できません。また、場合によっては工事中の騒音や振動が大きい点もデメリットです。工事に入る前は、近所への配慮は欠かせません。同じ条件で工事した場合、柱状改良工法より高額になる傾向があります。さらに、圧密沈下の大きい場所(新しい盛土造成地など)では、建物は沈下せず周囲の地盤が下がり、杭の抜け上がりが起こることがあります。

 

カテゴリー:

最終更新日:2023年9月4日
公開日:2023年9月1日

REDSエージェント、宅建士の有馬です。土地の所有権を考えた場合、お隣やお向かいなど水平方向の境界は厳密に決められていますが、上空や地下の境界はあまり気にしていない方も多いのではないでしょうか。所有する土地の上下に何かあった場合の所有権は、法律ではどのように定められているのか、解説します。

塀と空

土地の所有権、上下のどこまで?

民法第207条には「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と記載されています。土地の上下にも所有権があることは分かるものの、それがどこまで及ぶのか具体的な範囲は書かれていません。どうやら民法第207条においては、上空何メートル、地下何メートルといった土地所有権の範囲に関する厳密な決まりはないようです。

しかし、「厳密な決まりがない」=「上空も地下もすべて自分のもの」というわけではありません。「法令の制限内において」という文言です。つまり、この条文のほかにも土地所有権の範囲に関する法律が存在し、それによって制限を受ける場合があるということです。

空中権は建築基準法や景観法で制限

土地の上空を使用する権利「空中権(空間地上権)」に関係する法律には、「建築基準法」「景観法」などがあります。これらの法律には、それぞれどんな制限があるのでしょうか?

建物を作る際に適用される「建築基準法」では、第一種、第二種低層住居専用地域での建築物の高さの上限を10メートルまたは12メートルまでと定めています(一部の例外を除く)。これは低層住宅専用地域の住環境をよくするための法律で、どちらの高さになるかは都市計画により規定されます。

「景観法」は、都市や農山漁村の美しい景観を守るための法律です。この法律により「景観地区」に指定された地域では、建築物の高さの最高限度または最低限度が制限されます。制限の内容は地区ごとに異なりますので、景観地区で建物を建築する際は各市町村区へ確認する必要があります。

空中権の2つの意味

空中権には2つの意味があります。

空中権1:土地の上空の空間の一部を使用する権利

契約により設定する空間の上下の範囲を定めて土地を独占的に使用する権利をいい、その法的な形式によって「区分地上権」または「区分地上権に準ずる地役権」に分かれます。

区分地上権による空中権は、工作物(例えば空中電線)を所有する目的で上下の限られた空間を排他独占的に使用する権利する権利のことです。また、区分地上権に準ずる地役権による空中権は、自己の土地(例えば電柱の設置場所)の便益のために他人の土地の空中を使用する(例えば電線を設置する)権利のことです。

いずれも、民法上の物件として認められています。

自宅の敷地内を電線が横切るとなると、たとえ現時点で影響がなくても、電波障害や電線が切れたらどうしようと、不安に思うかもしれません。電線が通っているのが近隣の方の電線である場合、電力会社に頼んで位置をずらしてもらうか、または先方と話をして敷地の上空を貸し借りする契約を交わすか、どちらかの対処方法で改善することになります。

電力会社が管理する送電線などが通る場合は、その前に企業側が承認を求めてくるケースが多いようです。承認すると企業からは費用が支払われますが、提示された条件に納得できない場合は拒否することもできます。

少し話はそれますが、以前は届かなかった隣家の木の枝が、すくすく伸びて我が家の敷地に入ってくると気になります。しかし、たとえ邪魔でも木は隣家の所有物ですので、こちらの判断で勝手に切ることはできません。こんな時は、隣家の方にお願いして切断してもらうのが最善策です。もしも「面倒だからそちらで切ってほしい」などと言われた場合には、後のトラブルを避けるために必ず「同意書」を書いてもらいましょう。

また、「切ったら枯れてしまう」などの理由で応じてもらえない時は、紐などで枝先をくくって逆方向に誘導するという方法など、対処方法を提案してはどうでしょうか。いずれにしろ、普段から隣家と交流して信頼関係を築いておくことが重要になりそうです。

空中権2:未利用の容積率を移転する権利

都市計画で定められた容積率(建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の限度)のうち、未使用のものを他の土地に移転する権利をいいます。

一定の条件のもとで容積率を割増しする方法(実質的に容積率が移転される)としては、「特定街区」「一団地の総合的設計」「高度利用地区」「連担建築物設計」などの制度はありますが、連坦建築物設計を除いて移転対象建物が隣接していなければならないほか、既存建物の未利用容積率を移転することはできません。

もっと広範囲で容積率を移転できる制度としては、「特例容積率適用地区制度」があります。これは、都市計画で一定の区域を定め、その区域内の建築敷地の指定容積率の一部を複数の建築敷地間で移転することを認める制度です。

現在、東京都千代田区の一部が「大手町・丸の内・有楽町地区特例容積率適用地区」(都心部の高度利用を図るために、他の敷地で未利用となっている容積率を、離れた土地に移転して活用しようとする地区です)として指定され、東京駅の駅舎敷地で未使用となっている容積率(東京駅は復元改修後、それ以上容積率を使用しないで保存される)を、その周辺の新築ビル(東京ビルディング、新丸ビル、丸の内パークビル、八重洲側の南北グラントウキョウビルなど)に移転して、本来の容積率以上の高層ビル化を実現しています。

容積率の移転は建築確認によって認められるもので、当事者が空中権を直接に取引する制度が確立しているわけではありませんが、容積を移転する敷地に対して移転先の敷地所有者が地役権を設定し、移転敷地所有者にその対価を支払うという方法が取られています。

 

カテゴリー:

公開日:2023年7月27日

REDSエージェント、宅建士の有馬です。弊社REDSは不動産売買専門の仲介会社です。このため、賃貸物件は扱っていないのですが、お客様の中には賃貸物件から分譲マンションや戸建ての購入を検討される方がいらっしゃいます。そんなお客様に向けて、住み替え元の賃貸物件の原状回復について解説します。

原状回復

原状回復とは

原状回復とは、ある事実がなかったとしたら本来存在したであろう状態に戻すことをいいます。

例えば、契約が解除された場合には、一般に契約締結以前の状態に戻さなければならないとされます(原状回復義務を負う)。また、損害賠償の方法として、金銭で補償するのではなく、損害が発生する以前の状態に戻す方法(原状回復による賠償)が認められる場合があります。

賃貸の部屋を借りる際に支払う敷金や保証金、本来はキレイに住んでいれば退去時に戻ってくるのですが、部屋の状態によっては一部は戻ってこないこともあり、トラブルになることもあります。

原状回復義務とは? 入居者はどこまで負担しなければならないの?

賃貸物件の入居者には「善管注意義務」という義務が民法で定められています。入居者は賃貸物件の部屋を管理する立場にあるため、常識の範囲内で注意をしながら賃貸物件を管理しなければいけないとされています。

この善管注意義務が、原状回復の費用負担にもかかわってくる場合があります。たとえば、キッチンの掃除を疎かにして発生した油汚れ、エアコンの水漏れに気づいていながら大家さんに報告せず、壁にカビが発生した場合などは「善管注意義務違反」となり、修繕費用の負担が発生することとなります。

このルールに則ると、日差しで色あせたフローリングの張り替えは大家の負担になりますが、不注意で窓を開けたまま外出してしまい、その間に降った雨で床が変色した場合は入居者の負担になります。壁にポスターやカレンダーなどを貼った際に、画びょうやピンの跡ができた場合や、日照によってポスターの貼ってあった部分とほかとのクロスの色が変わったため、クロスを張り替える場合は大家の負担になります。一方、クギやネジを使って壁に棚を設置したため穴ができた場合は、入居者の負担になります。

「原状回復」と「現状回復」と「原状復帰」

入居者が負担するべき原状回復費用が敷金より多ければ差額を請求され、反対に少なければ残金が返金されます。「原状回復」に代わって「現状回復」という言葉が使われている場合があります。読み方は同じですが、まったく別の意味になるので注意しましょう。

原状とは、元来の状態という意味です。一方、現状とは「今現在の状態」という意味なので、「現状回復」=「今の状態に回復する」ということになります。本来の「元の状態に戻す」という意味とはまったく異なってしまうので、現状回復は誤った言葉です。

原状回復と似た言葉に「原状復帰」というワードもあります。元来の状態に復帰させるという意味の原状復帰は、基本的に原状回復と同じ意味です。しかし細かく見ると、元来の状態に戻す行為自体のことを原状復帰と呼び、こちらは主に建設業界の中で使われることが多い言葉です。

原状回復をめぐって起こりがちなトラブル

不注意や過失でできた傷や汚れは入居者が支払わなければいけない。原状回復の費用相場は、部屋の広さや修繕を行う業者、住んだ年数や修復内容によって違ってきますが、家賃の3ヶ月分程度が一般的だといわれています。

賃貸物件を出ていく際は、原状回復が理由で大家さんと入居者の間にトラブルが起こるケースがあります。よくあるトラブル事例を紹介します。

・下地にまでダメージが及んでいないほどの小さい壁の穴でも、壁紙の交換費用を要求された
・5年住んでいた賃貸物件の退去時に高額なハウスクリーニング費用を求められた
・原状回復不要なはずなのに、敷金が返却されない

このほかにも「この汚れは入居前からあった」「ただの日焼けだから経年劣化である」など、入居者の言い分が大家さんに理解されず、入居者の不注意による傷や汚れとしてカウントされることもあります。

通常使用なら経年劣化はOK

借家契約では、退去時の原状回復義務を特約にしていることが多いですが、「本来存在したであろう状態」にまで戻せばよく、借りた当時の状態にする必要はないとされています。つまり、契約に定められた使用方法に従って通常の使用をしていれば、経年劣化があってもそのまま返還すればよいことになります。

国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、賃借人が負担すべき原状回復費用は「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」の範囲に限るとしています。

また、東京都の「(賃貸住宅紛争防止条例、東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例、いわゆる東京ルール)」(2004年10月施行)では、重要事項説明の際に、借主に対して退去時の通常損耗などの復旧は貸主が行なうことが基本であること、入居期間中の必要な修繕は貸主が行なうことが基本であること、契約で借主の負担としている具体的な事項などを書面で説明しなければならないとしています。

この東京ルールは非常に分かりやすくまとめられていて、若者の間でもSNSなどで認知が広がっています。ぜひご覧ください。

 

カテゴリー:

最終更新日:2023年7月1日
公開日:2023年4月30日

売買や請負において、契約に基づいて引き渡された目的物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合していないことを契約不適合と言います。
たとえば、土地の地目が異なっていれば種類が不適合になります。建物の耐震強度が不足していれば品質の不適合となります。また、受け取った品物の個数が違えば数量の不適合となります。
目的物が不動産の場合には、品質に関する不適合の判断が問題となります。「住み心地」のような品質は評価が難しいし、耐震性、耐火性などは設計や工事記録を精査しないとわかりません。あるいは、既存住宅などについては経年的な品質の劣化をも考慮しなければなりません。住宅性能評価や住宅インスペクションを実施することは、契約不適合に対応するためにも有効です。
また、不動産売買において契約表示面積と実測面積のあいだに過不足があったときには、契約において実測面積を基礎に代金額を定めるとの合意がある場合に契約不適合となります。
契約不適合の場合には、買主・注文者は、売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修や代替物等の引渡し請求)、代金減額請求、報酬減額請求、損害賠償請求、又は契約解除権の行使をすることができます。

 

カテゴリー:

最終更新日:2023年7月1日
公開日:2023年4月23日

「契約上の過失」とは、いまだ契約が成立していないものの、その交渉の過程において相手方に損害を発生させた場合に、不法行為として、相手方に対し、その損害を賠償するべき責任が生じることを言います。

契約に当たって、調査・報告、配慮、注意などの義務を怠ったことにより、契約が不成立または無効となって不測の損害を与えたときに、民法で規定する信義則に違反したとして、損害賠償の責任を負うことになります。この考え方は、判例によって確立しており、損害賠償の範囲は、契約が有効なものと信じたことにより被った損害(現地検分の費用、銀行融資の利息、改修などに要した追加費用など)とされます。
例えば、売主に調査・告知義務違反があり損害を与えた場合(例えば、隣地の高層マンション計画の不告知によって生じた日照障害)、契約の準備段階で注意義務違反があり契約締結に至らなかった場合(例えば、相手に誤信を与えて取引予定の建物が改修されたが契約締結に至らなかった場合に、誤信を与えないようにする注意を怠ったとされたケース)などがその例になります。

 

カテゴリー:

最終更新日:2023年6月26日
公開日:2023年4月16日

商品やサービスの表示や景品類の提供に関して、一般消費者による自主的、合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限・禁止する法律。正式名は「不当景品類及び不当表示防止法」で、1962年に制定されました。

景品表示法によって禁止される「不当な表示」および制限・禁止される「景品類」は、告示によって明示され、それに反する行為に対しては、措置命令、課徴金納付命令などが課せられます。また、不特定かつ多数の一般消費者に対して優良誤認・有利誤認を与える行為については、適格消費者団体がその停止・予防等を求めることができます。

景品表示法は、不動産取引に対しても適用されます。特に、不動産広告は、誤認を招く恐れが大きいため、景品表示法に基づいて、政府の認定を受けた「不動産の表示に関する公正競争規約」(不動産公正取引協議会連合会)が定められています。

この公正競争規約は、不動産の取引に附随して不当な景品類を提供する行為の制限を実施することにより、不動産業における不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的としています。

景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示で「不動産のおとり広告に関する表示」があり顧客を誘引する手段として行う次のような表示を不当表示として規定しています。

(1)取引の申出に係る不動産が存在しないため、実際には取引することができない不動産についての表示(例:実在しない住所・地番を掲載した物件)

(2)取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示(例:売約済みの物件)

(3)取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引する意思がない不動産についての表示(例:希望者に他の物件を勧めるなど当該物件の取引に応じない場合)

事業者が、「不動産のおとり広告に関する表示」に規定されている不当表示を行っていると認められた場合は、消費者庁長官は当該事業者に対し、措置命令などの措置を行うことになります。

 

カテゴリー:

最終更新日:2023年7月1日
公開日:2023年4月9日

時間とともに品質が低下することで雨風・湿気・温度変化・日照などによる品質の低下だけでなく、通常の方法で使い続けることによる摩滅、汚れ等の損耗も経年劣化です。
不動産の賃貸借契約解除の際に賃借人が負担すべきとされる原状回復は、賃借人の故意・過失等による劣化の回復であって、経年劣化による損耗の回復は含まれません。たとえば、国土交通省が示す「原状回復ガイドライン」では、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡などの通常の住まい方で発生するものや、フローリングの色落ち、網入りガラスの亀裂などの建物の構造により発生するものの回復は、賃貸人の負担となるとしています。通常の生活で傷がついてしまうことはありますが、もしかしたら、経年劣化が原因かもしれません。経年劣化に関する正しい知識があれば、退去時に高額な費用を請求されても対応することが可能です。

 

カテゴリー:

公開日:2023年4月2日

土壌の汚染状態が基準に適合していない土地であって、土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じる恐れがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行なわれた区域を含む)を形質変更時要届出区域と言います。土壌汚染状況調査の結果によって都道府県知事が指定しますが、指定する区域には、一般の区域のほか、埋立地管理区域、埋立地特例区域、自然由来特例区域の種別があります。指定は公示され、台帳に記載して公衆の閲覧に供されます。

この区域内では、土地の形質変更をしようとする場合には、都道府県知事に計画の届け出が必要です。このとき、計画が適切でない場合には、計画の変更が命じられます。この制限は、宅地建物取引の営業における重要事項説明の対象とされています。

 

カテゴリー:

公開日:2023年3月26日

景観行政団体が策定する良好な景観の形成に関する計画のことです。景観計画は、都市、農山漁村その他市街地または集落地域と、これと一体となって景観を形成している区域について定められます。この景観計画が定められた区域のことを「景観計画区域」と言います。
景観計画では、景観計画の区域(景観計画区域)、良好な景観の形成に関する方針、良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項その他が定められます。
特に行為の制限に関する事項については、

1.建築物または工作物の形態または色彩その他の意匠の制限
2.建築物または工作物の高さの最高限度または最低限度
3.壁面の位置の制限または建築物の敷地面積の最低限度
4.その他第16条第1項の届出を要する行為ごとの良好な景観の形成のための制限

などの制限のうちで必要なものを定めることができます。

 

カテゴリー: