菊池 弘之(宅建士・リフォームスタイリスト)
この仕事が好きです。
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公開日:2024年12月2日
こんにちは。REDSエージェント、宅建士・宅建マイスターの菊池弘之です。今回は借地権のついた物件購入にあたってのチェックポイントをまとめてみたいと思います。
(写真はイメージです)
借地権物件のメリットを5つ紹介します。
土地を購入するのに比べ、借地権で土地を借りる場合は初期費用が少なくて済みます。土地を購入するには多額の資金が必要ですが、借地であれば初期費用の負担が軽減されるため、他の資金を建物や事業に活用しやすくなります。
土地を所有すると、固定資産税や都市計画税などの税金が課されますが、借地の場合は借主に土地の所有権がないため、これらの税負担がかかりません。これにより、固定資産税負担が軽減され、毎年の固定資産税のコストが抑えられます。
一般的に、借地契約は20〜50年など長期間で契約され、再契約も可能です。そのため、安定して土地を利用し続けることができます。事業用の借地などでは、長期的な事業計画が立てやすくなります。
土地の所有権を持たないため、相続時の資産評価が低く抑えられることがあります。また、土地の売買や相続にかかる手続きが発生しないため、資産管理も比較的容易です。
私のお客様でも、実際に相続税対策として借地権のアパートを購入された方がいらっしゃいました。投資用物件では、購入価格が抑えられるので、所有権の物件に比べて利回りが高くなるというのも特徴です。
土地を購入する場合、高額なエリアには手が届かないこともありますが、借地であれば手が届きやすくなるため、立地の選択肢が広がります。
都心では借地の物件も多くありますので、借地の物件に目を向けるだけで、一気に検討できる物件の幅が広がります。
一方、借地権物件にはデメリットもあります。5つ紹介します。
借地契約に基づき、毎月(または年単位で)地代を地主に支払う必要があります。地代は契約によって変動することもあり、経済状況や土地の評価額によって増額される可能性もあるため、費用が予測しづらくなります。
借地に建物を建てる際、建物の種類や構造、利用目的に関して地主の許可が必要です。また、借地契約の更新や建物の増改築を行う際にも、地主の同意を得る必要があり、自由に建物を設計・管理するのが難しくなる場合があります。
一般的には、非堅固の建物の建築のみを許可しているケースが多く、その場合は木造住宅の建築目的のみに限られます。
借地権の更新時には更新料が必要になることがあり、地主との再契約や更新の際に契約料の負担が発生します。また、第三者への譲渡に際しても、譲渡承諾料もしくは名義書換料という名目で費用がかかります。これは相続税評価額をもとに一定の割合で計算しますが、その土地の賃貸借契約の内容によって金額はさまざまです。
借地権は土地所有権と比べて資産価値が低いため、担保価値も低くなり、金融機関からの融資が制限される場合があります。また、借地権を売却する際も、土地そのものを所有している場合より売却が難しくなることがあります。
借地権といっても2種類あり、初回の借地契約がいつ締結されたかどうかによって、旧法の借地権が適用になるか、新法(借地借家法)が適用になるかが決まってきます。以下、解説します。
旧法借地権とは、1992年に施行された「借地借家法」以前の旧借地法に基づいて成立した借地権のことです。旧借地法は、地主よりも借地人(借主)の権利を強く保護する内容になっていたため、旧法借地権にはいくつかの特徴的なポイントがあります。
1.契約期間が長い
旧法借地権では、契約期間は通常30年(事業用などの特別な場合は短期契約もありますが、基本は長期間)です。また、更新時には20年の更新が可能となり、さらにその後の更新も可能です。
2.契約更新が容易で、借地権の強い継続性がある
借地人には契約更新の権利が認められており、地主が更新を拒否するには正当な理由が必要です。そのため、ほとんどのケースで借地権は自動的に更新され、借地人は長期間にわたり土地を使用し続けられます。
3.建物のある限り継続できる
旧法借地権の契約更新には建物が存在することが条件とされており、建物が存続している限り契約の更新を拒むのは難しくなっています。このため、建物が老朽化しても、建て替えを行うことで長期間にわたり利用を継続することが可能です。
4.借地権の譲渡や相続が容易
旧法借地権は借地人の財産権として認められているため、第三者への譲渡や相続が可能です。地主の承諾があれば、借地権を第三者に売却することもでき、その際には譲渡承諾料が発生します。
5.借地権の存続が地主よりも優先される場合がある
旧借地法に基づく契約は、地主が変わった場合でも借地権が保護され、通常どおり存続します。そのため、新たに土地を購入した人も旧法借地権を尊重しなければなりません。
新法借地権とは、1992年に施行された「借地借家法」に基づく新しい借地権の総称で、借地借家法の改正によって旧法借地権よりも柔軟に運用できるようになっています。新法借地権には、一般的な「普通借地権」と、地主が土地を返してもらいやすくなる「定期借地権」が含まれます。
1.普通借地権
2.定期借地権
3.借地権の譲渡や相続が可能
新法借地権のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
新法借地権は、旧法借地権に比べて借地の利用方法が柔軟になり、地主にとっても借地人にとってもメリットがある契約形態です。特に、長期間の安定した借地を求める場合には「普通借地権」、一定の期間のみの利用を希望する場合には「定期借地権」といった使い分けができるため、双方のニーズに合った土地活用が可能になっています。
新法借地権の中でも、タワーマンションなどの大規模マンションに利用されることが多い「定期借地権」について解説していきます。
1992年の借地借家法で導入された借地権の一種で、契約期間が定められており、期間満了後は更新せずに土地を地主に返還することが基本とされています。これは、従来の借地権(旧法借地権)のように長期にわたる更新が認められる借地契約とは異なり、土地の使用期間をあらかじめ決めることで地主が土地を確実に返却してもらえる仕組みです。
1.一般定期借地権
2.事業用定期借地権
3.建物譲渡特約付借地権
●メリット(地主側)
●メリット(借地人側)
●デメリット
定期借地権は、商業施設や事業用のオフィスビル、マンション開発などでよく利用されます。また、居住用としても、住宅ローンが取りやすくなりつつあるため、マンションなどの開発にも活用されています。
有名なマンションでいうと、
などがあり、優れた立地にもかかわらず定期借地権を利用しているため周辺相場より割安で、人気を博しています。
1992年以降に施行された新しい借地借家法では、契約期間や契約更新に関する規定が変更され、特に「定期借地権」など、地主の立場がある程度保護されるようになっています。
そのため、新法の借地権は、旧法の借地権に比べて更新や契約内容が柔軟で、地主が土地を返してもらいやすくなっていますが、旧法借地権はそのままの規定が引き継がれ、更新や存続が保護されるケースが多いです。
借地権の特徴を認識しておくことで、選択肢の幅が広がるかと思います。
地主が誰かによっても賃貸借契約の内容が大きく変わりますので、検討する際には不動産会社の担当者に詳しい説明を求めることが大切です。