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公開日:2025年7月25日  菅野 洋充

大型案件の建て替えや改修、再開発が次々と延期や中止に! 建築費の高騰で不動産価格もさらに高騰へ

株式会社不動産流通システム【REDS】の宅建士・宅建マイスターの菅野です。

今回は、昨今の開発、再開発や大型物件の建て替えなどが次々と延期、中止となっていることや不動産価格が高騰していく理由について、考えてみます。

不動産価格

(画像はイメージです)

中野サンプラザの取り壊し、再開発計画が事実上の白紙に

中野駅前の「中野サンプラザ」を取り壊して再開発する計画が、昨年(2024年)10月に認可申請の取り下げという事態となり、大騒ぎとなりました。経緯については以下の中野区のページに概要があります。

【中野駅新北口駅前エリア(区役所・サンプラザ地区)再整備について】

もともと本件再開発事業は2021年に野村不動産が代表事業者となり、共同事業者として東急不動産、住友商事、ヒューリック、JR東日本が名を連ねていたようですが、その中のヒューリックが2024年4月に撤退したところから急激に事態が暗転していきます。

こちらは、中野区議の加藤拓麻さんが書いた記事です。

【新・中野サンプラザ再開発ストップの衝撃:中野区政に与えるインパクト/アゴラ】

計画が白紙となったのは、野村不動産から再三にわたる工事費の値上げや、都市計画や建物に関する見直しを求められたことから、コンペを行ったときの計画から大きく予算や事業内容が変わってしまったためです。

この計画変更や値上げは、当初の計画では採算がとれないほど、工事費の見積もりが2021年当初より大幅に上がってしまったために、分譲マンション部分の床面積を増やすようツインタワーにするなどを提案してきたようです。ただ、コンペの提案とかけ離れているため、区は難色を示し、計画変更は認められず協定の解除に至ったという流れのようです。

私たち宅建業者としては、マンションなどの取引にかかわることができる床面積が増えるのは歓迎できますが、それであれば最初から提案すべきだったということなのかもしれません。

ただ、こういった時間のかかる再開発案件は、市況が変わればある程度柔軟な対応が必要であるともいえるのではないでしょうか。今回の計画白紙化が中野区の財政に大きく影響があることを、中野区議の加藤さんは先ほどの記事でこう述べています。

もし新サンプラザプロジェクトがご破算になった場合、衝撃は転出補償金だけではなく、以下のことが想定される。

  • 転出補償金400億円がなければ、新区役所の建設費用のために借金した116億円の返済が滞ると年1億円程度の追加利払いが発生する可能性がある。また残りを貯金し、今後の学校建設・区民活動センター等の整備費用に充てる計画が崩れる。
  • 中野サンプラザを管理所有する株式会社まちづくり中野21(同社の株は中野区が100%所有)は、現在40億円の借金をしており、借入金利子や固定資産税等で毎月3,000万円程度の経費が必要で、施工事業者へ早期の受け渡しできなければ、補填し続ける必要がある。
  • 旧中野区役所庁舎の閉鎖管理に伴う維持管理経費等による負担増。
  • 中野駅新北口から新サンプラザへつながるはずの駅前広場の接続先がなくなる。
  • 中野駅新北口駅前に完成予定のバスターミナル、タクシープールにつながる地下道路は新サンプラザの下を通す予定であったために大きな計画の変更が求められる。

この「転出補償金」というのは中野サンプラザから中野区が立ち退くための立退料のことで、400億円の収入を見込んでいました。しかし結果的に白紙となったため、それが受け取れないだけでなく、年間1億円の利払いと中野サンプラザ保有会社の経費月3,000万円の負担が中野区にのしかかってくることになりました。

好調のつくばエクスプレス沿線でも開発から撤退の声が

つくばエクスプレス「六町駅」の駅前土地開発について、事業者選定された「東神開発株式会社」から足立区へ撤退の申し入れがあったことがニュースになりました。

東神開発は、流山おおたかの森S.C.を開発した高島屋系列のデベロッパーで、今回の事業者選定時には、六町駅前に高島屋が入ると話題になりました。しかし、昨年3月に計画期間の延伸の申し出があり、その後再延期と事業計画変更、要件緩和についての打診、協議が行われ、最終的に建設中止が決まったとのことです。

こちらも建築費の高騰による採算悪化が原因とされており、足立区から今後の方針の説明が8月開催の住民説明会でなされるとのことで注目が集まっています。近隣には7月に「ららテラス北綾瀬」が開業しており、競合のおそれも遠因かもしれません。

この計画は、駅前駐輪場として利用中の土地に建築予定だっため、近くに駐輪場を新設したらしいのですが、計画中止となった今、地元では「単に駐輪場が増えただけ」と愚痴る声も聞こえてきているそうです。

【六町駅前区有地事業撤退の申し入れに関する説明会/足立区ホームページ】

関東各地の建て替え・再開発計画の中止、延期案件

上記以外で話題になった延期、中止案件としては以下の例があります。

  • 五反田TOCの建て替え延期
  • 津田沼駅南口地区再開発(これも野村不動産です)
  • 渋谷スクランブルスクエア(旧東急百貨店東横店跡)
  • 新宿駅西南口地区開発事業
  • 目黒区民センター建て替えの中止
  • 浦和美園駅、順天堂大学病院新設工事の中止

新宿駅西南口開発事業については、2024年12月着工予定だったはずが、施工者が決まらず2025年7月現在、完成時期が「未定」となっています。こちらは京王電鉄とJR東日本の共同事業で、先に西新宿一丁目交差点南側に37階建てのビルを建てた後、京王百貨店とルミネ1新宿の建て替えを行う計画で、もともとは2040年完成予定でしたが、着工すら目途がたたない状況のようです。

以上の延期、中止については、建築資材の高騰や人手不足による人件費の高騰などで建築費自体が各事業者の予想をはるかに超える値上がりとなっていることが原因です。

建築費の高騰、事業の延期・中止がもたらす不動産価格への影響

バブル期を超える不動産価格水準となった昨今ですが、上記のような事態が今後も続くと以下のような影響が考えられます。

供給減少による価格押し上げ圧力(特に新築物件)

新築マンション・新築戸建ての供給が細る(特に都市部では供給不足が深刻化する)と、完成在庫が限られ、プレミアムが付きやすくなります(供給抑制が新築価格を下支え、または上昇させる要因になる)。

そして、東京都心での再開発中止・延期により、高層分譲マンションの供給数が減少するため、中古マンションへの需要シフトと、中古物件の価格が上昇へ進むことになります。

「古い物件の建て替え困難化」が市場の二極化を加速

建て替え予定だった物件が老朽化のまま放置されると、資産価値が目減りしていきます。特に、旧耐震マンションや築古アパートなどでは、修繕維持でしのぐしかなくなるのですが、住民間の合意が困難で再開発不成立などということになると、〝負動産〟化してしまいかねません。

その結果、「建て替えできない物件 vs. 建て替え可能 or 完了済物件」の評価格差が拡大し、立地がよくても再開発未定の築古物件は、資産性に疑念をもたれ売却価格にマイナスの影響をもたらします。

デベロッパーの販売戦略が高価格帯志向にシフト

背景として、高騰する建築費を吸収するには高価格帯の物件販売が有利となるため、中低所得者層向けの住宅は採算が合いづらく、分譲市場の高額化が進行します。

結果として、実需層との価格乖離が広がり、購買層が絞られ、高額新築の価格が天井感を帯びていきます。そうなると高額物件が買えない層の中古市場へのシフトが起き、中古物件の価格も高騰することになります。

地域別・物件種別で影響は異なる

  • 都市部の新築・高層マンション:建築費高騰→供給減→価格維持 or 上昇
  • 郊外の低価格新築戸建:コスト割れで供給困難→空白が生まれる
  • 都市部中古マンション:新築価格上昇につられて値上がり傾向
  • 建て替えできない物件:建て替え期待が剥落→価格下落 or 停滞
  • テナント系開発用地:開発見送り→長期保有 or 一時凍結

中長期の視点:都市の更新が滞るリスク

再開発の停滞はインフラ更新や街の活性化の遅れにつながり、長期的には地域の地力(ブランド・居住価値)低下を招くことにつながります。

まとめると

  • 新築供給が減るため価格は高止まり、もしくはさらに上昇へ
  • 再開発期待の築古が「負動産化」するリスク増
  • 市場の二極化・格差拡大が進む
  • 地域力の低下や社会的コスト(老朽化建物の残存)も将来の課題

となり、行き過ぎた建築コストの上昇による工事の停滞は、あまり良い状況とならないように思われます。

最後に

2022東京オリンピックとコロナ禍明けの日本は、バブル期に迫るインフレの時代となっています。「適度なインフレ」というのはどの程度の物価上昇なのか分かりませんが、東京一極集中や人手不足などは政策によってある程度の緩和が可能と思われます。

政府の皆様にはそういった部分の政策もしっかり行っていただきたいと切に願っております。

 

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菅野 洋充
(宅建士・リフォームスタイリスト)

社会に必要とされ人に役立つ企業を目指します

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※2025年11月09日現在 本社・首都圏営業所の数値

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    3 週間前

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    1 か月前

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    1 か月前

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    1 か月前

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    1 か月前

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    内見までのスピーディーな段取り、ローンについての知識等全てにおいて満足することばかりでした。

    初めてのマイホームということで不安な中、担当の下山さんはとても親身に接して下さり、気持ち良くお引き渡しの日を迎えることができました。

    仕事や育児で物件契約に向けて取れる時間が限られてる中、要所要所を押さえつつしっかりとしたご対応が有り難かったです。
    ありがとうございました。

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