REDS不動産流通システム、宅建士、宅建マイスターの菅野です。
東京都内の新築戸建ての価格が大きく上昇しています。土地価格だけでなく、建築資材、人件費、物流費なども上昇しているため、23区内で一定の広さがある新築戸建てを購入しようとすると、予算面のハードルは高くなっています。
そこで、少しエリアを広げて探してみると、「東京23区に隣接しているのに、ずいぶん安いな」と思う地域があります。

(写真はイメージです)
八潮市・三郷市・松戸市はなぜ安い?
その代表格が、埼玉県八潮市、三郷市、千葉県松戸市です。いずれも東京23区に直接隣接しています。八潮市は足立区、三郷市は葛飾区、松戸市も葛飾区に接しています。
それでも新築戸建てを検索すると、東京23区内はもちろん、同じ埼玉県の和光市、朝霞市、戸田市などと比べて、比較的購入しやすい価格帯の物件が見つかることがあります。
「安いのには、何か理由があるのでは?」と思ってしまいますよね。
もちろん理由はあります。ただ、「安い=住みにくい場所」という単純な話ではありません。むしろ、価格が抑えられている理由を理解し、自分の暮らし方にとって大きな問題にならないのであれば、東京近郊で一戸建てを購入する際の有力な選択肢になり得ます。
今回は、八潮市、三郷市、松戸市の新築一戸建てがなぜ比較的安いのか、実際に購入する場合のメリットと注意点を考えてみたいと思います。
新築一戸建ての価格は何で決まる? 土地価格が大きなポイント
新築戸建ての販売価格を大まかに分けると、〈土地代+建物代+造成費など+建売会社の経費・利益〉となります。
このうち建物については、同じような仕様の建売住宅であれば、東京都だから建築費が2倍になり、埼玉県だから半分になる、などということはありません。つまり、地域によって販売価格に大きな差が出る主な要因の一つが土地価格です。
そして土地価格は、単純に「東京から何km離れているか」だけでは決まりません。駅までの距離、都心までの所要時間、街のイメージ、商業施設、学校、道路、災害リスク、周辺環境、そして地域内の土地供給量など、さまざまな要素によって変わります。
八潮市、三郷市、松戸市には、この「土地を比較的安く仕入れられる場所」が残っているエリアがあります。ここが大きなポイントです。
八潮市の新築一戸建てが比較的安い理由|駅距離・住工混在・水害リスク
八潮市の大きな特徴は、東京都足立区に隣接している一方、市内の鉄道駅がつくばエクスプレスの八潮駅のみであることです(一部には東武スカイツリーライン草加駅が最寄りとなる地域もあります)。
八潮駅から秋葉原駅まではTXで直通のため、電車に乗ってからの都心アクセスは良好です。
問題は、「駅までどうやって行くのか」です。
市内には八潮駅から徒歩30分以上かかる地域もあります。したがって「東京都に隣接している」という地理的な近さと、「駅に近い」という不動産としての利便性が必ずしも一致しません。
一般に駅から離れるほど土地価格は下がりますので、建売会社としては土地を比較的安く仕入れることができます。これが、八潮市で比較的手頃な新築戸建てが見つかる理由の一つです。
工場・倉庫と住宅が混在するエリアは平日にも現地確認を
もうひとつ八潮らしい特徴が、住宅地の中に工場、倉庫、事業所などが見られることです。八潮市の都市計画では「住工共存地域」「工業系地域」などが位置付けられ、住宅と工業系土地利用が混在する地域について、住環境との調和を図る方針が示されています(八潮市公式サイト)。
実際に現地を歩いてみると、「ここは住宅街だな」と思っていたら、突然大きな工場や倉庫が出てくる、という場所があります。準工業地域や工業地域にも住宅は建てられますので、建売住宅が販売されていることも珍しくありません。
こうした土地利用の特徴が土地価格に反映され、その分、戸建ての価格が抑えられるケースもあります。
工場といっても、住宅への影響がほとんどない事業所もあります。そのため、八潮市で戸建てを購入するときは用途地域だけで判断せず、できれば平日の日中にも現地を確認することをおすすめします。トラックの出入り、騒音、振動、臭気などは、日曜日に見学しただけではわからない場合があるからです。
八潮市では水害リスクをハザードマップで確認
八潮市で不動産を購入するなら、水害リスクの確認は欠かせません。八潮市は洪水・地震ハザードマップを公開しており、河川氾濫などを想定した浸水区域を確認できます(八潮市公式サイト)。
八潮市だけの話ではありませんが、中川低地にある地域で不動産を購入する場合には、洪水、内水、液状化などについて確認する必要があります。ただし、「ハザードマップに色が付いているから買ってはいけない」ということでもありません。
東京東部から埼玉東部、千葉北西部には同様の低地が広く存在します。重要なのは、購入を検討する土地について、想定浸水深、避難場所、建物の高さ、地盤調査結果、地盤改良の有無などを個別に確認することです。
八潮市で新築戸建てを買うメリット
八潮市のメリットは、東京に近い立地でありながら、土地付き一戸建てを比較的抑えた価格で検討できる点です。
また、TXを利用しやすい場所なら、秋葉原方面への通勤にも便利です。駅から少し離れていても、自転車やバス、自動車を中心とした生活で問題がない方なら、駅近の利便性より土地や建物の広さを優先する考え方もできます。
つまり八潮は、「駅からの距離・災害リスク・住工混在といった条件を確認したうえで、東京隣接の立地を比較的抑えた価格で検討できる街」と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
三郷市の新築一戸建てが比較的安い理由|土地供給と駅距離がポイント
三郷市も東京23区に隣接しています。ところが三郷市は八潮とは少し事情が違います。市内にはTXの三郷中央駅、JR武蔵野線の三郷駅、新三郷駅があります。それでも市域が比較的広いため、駅徒歩圏から離れた住宅地も多くあります。
三郷市で比較的手頃な新築戸建てが見つかる理由のひとつが、建売住宅を供給できる土地が比較的多いことだと思います。建売会社にとっては、30坪の土地に1棟ずつ建てるより、大きな土地をまとめて取得し、10棟、20棟と分譲するほうが効率化しやすくなります。
道路を新設し、その両側に複数の一戸建てが並ぶ分譲地を見たことがある方も多いでしょう。いわゆる開発分譲です。土地の仕入れ、造成、設計、建築資材などをまとめることで、一棟当たりのコストを抑えることができます。
国土交通省の2026年地価公示の鑑定評価書などを見ると、三郷市内でも駅からの距離などによって土地・新築戸建ての価格水準に差が見られます。物件を比較する際は、市全体の相場だけでなく、駅徒歩圏かバス便かといった立地条件まで確認することが大切です(国土交通省「地価公示」、不動産情報ライブラリ)。
三郷市も水害ハザードマップの確認が重要
三郷市も中川、江戸川などに囲まれた低地です。三郷市は想定最大規模降雨を前提とした水害ハザードマップを公開しており、中川についても48時間総雨量596mmを前提とした洪水ハザードマップを公表しています。(三郷市公式サイト)
「安くて広い新築が見つかった!」と価格と間取りだけで決めず、ハザードマップも必ず確認してください。三郷市で物件を検討するうえで、重要な確認ポイントです。
三郷市で新築一戸建てを買うメリット
一方、三郷市は、車を利用する家庭にとって生活しやすいエリアが多いことも魅力です。駅徒歩にこだわらなければ、比較的広い土地、駐車スペース、ゆとりのある間取りを予算内に入れやすくなります。
つまり三郷は、「駅徒歩だけにこだわらず、家や敷地の広さを優先する」という選択がしやすい街です。
都内で狭小3階建てを購入するのか、三郷で2階建て・駐車場付きの住宅を購入するのか。どちらが正解ということではなく、通勤手段や家族構成など、生活スタイルに合うかどうかが大切です。
松戸市の新築一戸建て|「松戸は安い」と一括りにできない理由
最後に松戸市です。実は、この3市の中で特にエリアごとの差を見ておきたいのが松戸市です。
というのも、松戸市は市域が広いからです。松戸駅周辺、新松戸、北小金、馬橋、北松戸、東松戸、八柱、常盤平、五香などでは、同じ松戸市でも住宅市場がかなり違います。JR常磐線、武蔵野線、京成松戸線、北総線、東武野田線など複数の鉄道路線が利用できるため、「松戸市の一戸建て相場はいくら」「松戸市の一戸建て相場はいくら」と一つの数字だけで表すのは難しいでしょう。
松戸駅徒歩圏の土地と、市の東部・北部などの駅から離れた土地が同じ価格になるわけがありません。このため松戸市に安い新築一戸建てが多く見える最大の理由は、市域が広く、比較的価格を抑えた住宅地も含まれているからと考えるのがよいでしょう。
松戸市は場所によって水害・土砂災害など確認点が異なる
ここも八潮、三郷との違いです。八潮・三郷は低地という特徴が比較的わかりやすいのですが、松戸は低地だけではありません。
市内には高低差があり、場所によって確認すべきリスクが変わります。松戸市の内水ハザードマップには浸水想定だけでなく土砂災害警戒区域等も表示され、市も別途、土砂災害ハザードマップを公表しています。(松戸市)
つまり、低地では浸水リスク、高低差のある場所では崖や擁壁などを確認する。少し単純化した言い方ですが、松戸市で一戸建てを見る際は、場所ごとに異なるリスクを確認する意識を持っておくとよいでしょう。
特に古くからの住宅地では、擁壁が現在の基準に適合しているか、検査済証等があるか、隣地との高低差はどうなっているか、といった確認が必要になる場合があります。
松戸市で新築一戸建てを買うメリット
松戸の大きなメリットは、やはり選択肢の多さでしょう。
「東京への通勤を優先する」
「駅徒歩を優先する」
「土地の広さを優先する」
「予算を抑える」
「常磐線がいい」
「武蔵野線でも構わない」
と条件を変えていくと、同じ市内で探し続けることができます。これは八潮市や三郷市とは異なる、松戸市ならではの選択肢の多さといえます。
一方で注意したいのは、同じ「松戸市」でも、駅・路線・周辺環境などによって不動産の価格や将来の売却条件が異なるということです。価格だけで決めるのではなく、「なぜこの場所は安いのか」を個別に調べることが、松戸市では特に重要だと思います。
安い理由が自分にとって問題でなければ、有力な選択肢になる
ここまで八潮市、三郷市、松戸市について見てきました。大まかに整理します。
- 八潮市=「駅が一つ+低地+住工混在」
- 三郷市=「駅から離れた地域+低地+土地供給量の多さ」
- 松戸市=「広い市域+駅・路線による価格差+土地条件の多様性」
ここで私が不動産を購入するときに大切だと思うのが、「安い理由を調べる」ということです。
「不動産に掘り出し物はない」、とよく言われます。確かに、特段の理由もなく1,000万円安い物件というのは、そうそうありません。ただし、「安い理由はあるけれど、その理由が自分の暮らしには大きく影響しない」という物件はあります。
こうした物件は、実際にあります。
- 駅徒歩25分だから安い。でも、夫婦とも車通勤なので駅をほとんど使わない。
- 近くに工場があるから安い。でも、現地を平日に確認したら騒音や臭気はほとんど気にならなかった。
- ハザードマップに色が付いている。でも、想定されるリスクを理解したうえで、建物や保険、避難方法まで考えて購入する。
こうした場合には、一般にデメリットと見られやすい条件が自分の生活には大きな支障にならず、その分、住宅購入費を抑えられることがあります。
逆に、「安いから」だけで購入し、住み始めてから毎朝駅まで30分歩くことが負担になったり、トラックの音が気になったり、大雨のたびに不安を感じたりするのであれば、価格が安くても満足度の高い買い物とはいえないでしょう。
不動産の価格差は、ある意味で「どの条件を優先し、どの条件なら受け入れられるか」が反映されたものだと思います。
東京23区に隣接しながら、比較的手頃な新築戸建てが残っている八潮市、三郷市、松戸市。価格が安いという理由だけで、必要以上に不安になることはありません。
ただ、「なぜ安いのか?」。これは必ず確認してください。そして、その理由が自分たちの生活にとって大きな問題ではないのであれば、その物件は有力な選択肢になるかもしれません。
不動産は、多くの人が希望する条件をすべて満たそうとすると、価格も高くなりやすいものです。自分には必要のない価値にはお金を払わず、自分に必要な価値にはきちんとお金を払う。住宅価格が上昇している今だからこそ、そうした自分たちの優先順位に合った物件選びが重要になっているのではないでしょうか。
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