不動産流通システムREDSの宅建士、宅建マイスターの菅野です。
2025年1月28日に発生した、八潮市中央1丁目の六差路で起きた道路陥没事故の件を引き続き追っています。

(画像はイメージです)
被害運転手さんとの涙の対面
5月2日に落下したキャビン内にいた方を下水管内から救出し亡くなられていることを確認、14日に千葉県八街市の74歳男性であると特定されたとのことです。そして16日にトラックのキャビンが引き上げられました。
遺体が発見されたときに運転手の方が勤務されていた会社からのコメント、遺族からのコメントは、とても痛ましいものでした。
以下、埼玉県警察より発表された、会社の代表者様からのコメントです。
本年1月に発生した八潮市道路陥没事故(本件事故)の被害者であるトラックドライバーが勤務する会社の代表者です。この場をお借りしまして被害者遺族様と共にコメントさせて頂きます。
本件事故に関しましては、被害者であるトラックドライバーを救助するため、関係各署へ通報してくださった方、消防隊などが到着するまで交通整理などをして頂いた方、排水自粛などの不便を余儀なくされた近隣住民様、120万世帯にものぼる下水道排水関連地域の住民の皆様、企業様、店舗経営者様がいらっしゃいます。
このように被害者救済活動に、直接・間接に多大なる御協力を頂いたすべての方に対し、心より謹んで感謝申し上げます。このようなご協力を報道で目にするにつけ、涙が止まりませんでした。加えまして、温かい励ましの言葉を頂いた関連企業様、ご友人・知人の皆様、本当に有難うございました。それらの言葉に我々がどれだけ勇気づけられたことかわかりません。被害者遺族様、並びに弊社を代表して、心よりお礼申し上げます。
トラックドライバーは必ずきっと生きて帰って来てくれると信じて、我々一同、希望を捨てず今に至りました。しかし、残念ながら大変無念な結果となってしまいました。被害者のトラックドライバーは、仕事に真面目で、とても温厚な方でした。おっちょこちょいな部分もありましたが、それも含め憎めない素直なお人柄であり、運転はその性格のまま、とても優しい運転をされていました。会社の事にも気にかけて仕事をしてくれる、会社にとって大変貴重かつ余人をもって代えがたい人物でした。
ご高齢にもかかわらずムードメーカー的存在で、帰社すると事務所内も自然と笑顔に包まれたものでした。20年以上も働いてくれたのですが、体が動く限り働きたいとの本人の強い要望もあり、会社は将来的にも出来る限り雇用を継続していくつもりでおりました。本件事故は突然にやってきました。被害者のような良い方が何故このような悲惨な事故に巻き込まれなければならないのか、心の整理がつきませんでした。自分を責めることもありました。
しかし、時が戻る訳はなく、あの日から被害者は帰ってきません。被害者遺族様も我々従業員一同も、被害者ドライバーのことを哀傷しきっております。もう2度と同じ思いはしたくありません。関係各署の、皆様には、本件事故の原因の特定・改善にご尽力いただき、2度と同じ事が起こらないように、世の中の人が公道を安心して走行できるようにしていただきたいと思います。
<ご遺族様一同より弊社がお預かりしたコメント>
事故から3か月以上が経ち、ようやく父が救出されました。道路陥没事故に巻き込まれるなんて、想像すらしていない出来事でした。落下した車内に取り残された父は、心の強い人だったので、恐怖や苦痛と戦って、力尽きるまで生きて帰りたいと思っていたはずです。それを想うと体が震え、胸が締め付けられる想いです。
体が大きく、何かと頼れる父でした。少し頑固なところもありましたが、いつも笑顔で、とても優しく温厚な性格の父。私たちにとって、かけがえのない存在でした。孫が生まれ愛情を注ぎ、ひ孫が生まれ更に沢山の愛情を注ぎ、これからの成長をとても楽しみにしていました。みんなが大好きな父が突如として居なくなってしまった事実を、未だに信じることも、受け止める事も出来ません。まだまだ時間が必要です。今は父の為に、私たちが出来る事を精一杯やり、前に進んで行かなければならないと思っています。
以上
最後になりますが、本件事故によって、被害者を失ったご遺族様はもちろん、弊社においても、本件事故により心身面・事菜の継続面等において甚大なる影響が生じております。私は被害者の名誉を守るのはもちろんのこと、現在働いて頂いている従業員を守る事も使命であり責務だと考えております。これまでも、ご遺族様や弊社は、報道機関の皆様に対し実名報道を一切控えていただくよう、強く要請しておりました。
しかし、遺憾ながら、個人名や会社名を特定した、あるいは特定しうるような報道がなされ、それによってご遺族様等の傷ついたお気持ちにさらなる二次被害が生じることとなっております。今後は、被害者遺族様及び弊社において、本件事故に関する発表や取材への対応を行うことはございません。被害者遺族様や弊社を特定しうるような報道をすることや、当方らへの取材行為は控えていただきますよう、強くお願い申し上げます。
会社代表 被害者遺族様一同
復旧工事費は誰が負担するのか
心から哀悼の意を表します。
そして、救出して終わりではなく、これから復旧工事を行っていかなければなりません。
5月23日に深谷市のホテルで行われた市長との会議で、埼玉県の大野知事は復旧費用が300億円規模になるとの見通しを明らかにし、財源は「受益者負担で良いのか議論が必要だ」と述べたそうです。
この受益者負担というのは、もちろん「下水道料金を値上げしてそれを財源とする」という意味と思われます。
ところで、今回の事故は八潮市の公共下水道ではなく、埼玉県の流域下水道が壊れたことによる事故です。実はこの流域下水道の「維持管理負担金」というものがあり、これはその流域下水道を利用する市町村が負担しています。
流域下水道の維持管理負担金の改定について
今回の事故はその「流域下水道の維持管理負担金」を大きく上げることによって徴収するのが正しいやり方と思われますが、それはそっくりそのまま各市町の下水道事業の支出となるため、結果的には公共下水道料金の値上げにつながるものと思われます。また、一時的に多額の費用が必要となるため、県債や企業債などの発行による金利負担分も下水道料金に上乗せされる可能性があります。
同様の事故防止のために負担増はやむなし
公共下水道事業というのは、基本的には独立採算で行われており、ほぼどこも赤字です。埼玉県下水道公社の場合、設備投資にかかる費用(令和5年度で約213億円)については半分の費用(約101億円)が国庫補助金によるものとなっており、現在の下水道料金では正直なところ賄えないという状況です。
高度成長時代に整備された下水道は早急に更新が必要ですので、このような事故を防ぐために、各個人の負担が大きくなることは致し方ないことかと存じます。
自分や家族が普通に道を通っていて、目の前にいきなり開いた穴に落ちて命をなくす可能性がある、ということが今回の事故によって目の当たりとされたわけです。運転手さんの犠牲を無にしないよう、この機会に下水道だけでなく橋などのインフラ更新事業を速やかに進めていくべきである、と私は思います。
この記事を執筆した
エージェントプロフィール
菅野 洋充
(宅建士・リフォームスタイリスト)
社会に必要とされ人に役立つ企業を目指します
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