皆様こんにちは。首都圏一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント、【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)です。
今回発生した熊本地震で住宅が被災し、暮らしていた家に住み続けることが難しくなった人たちに対し、倒壊した住宅の庭先などに「インスタントハウス」と呼ばれる即席住宅を設置する取り組みが進められているようです。今回は、災害時の新しい住まいの形として注目されるこの取り組みについて解説します。

(写真はイメージです)
熊本被災地に届けられた〝即席住宅〟
このブログの原稿を書いている本日2026年8月27日の日経新聞の夕刊に「熊本被災地に即席住宅」という記事が掲載されました。
今回の日経新聞の記事で紹介されたインスタントハウスは、いわゆる一般的なプレハブ型の仮設住宅とは大きく異なります。ゲルのような丸みを帯びた外観で、設営開始からわずか数時間で完成。エアコンも設置でき、避難所や車中泊よりもプライバシーを確保しやすい「もう一つの住まい」として活用されています。
熊本県氷川町では、倒壊した住宅の庭先などに設置され、被災者が自宅のあった場所から離れずに生活を続けられることが大きな特徴となっています。熊本市でも8月27日現在、被災者に対して市営住宅を一時提供するなど、住まいを失われた方々への支援が行われています。こうした既存の支援と並んで、短時間で設置できるインスタントハウスが注目されているようです。
私のブログでは、2025年10月に「〝動く不動産〟トレーラーハウス」、同12月には「3Dプリンター住宅」を取り上げましたが、今回の「インスタントハウス」も、新たな特徴を持った選択肢になるかもしれません。
【仕組み】インスタントハウスはなぜわずか「数時間」で完成するのか?
普通の住宅なら何カ月もかかる建築を、なぜインスタントハウスは数時間でできるのでしょうか。その秘密は、木材や鉄骨で柱を組み立てる従来の工法ではなく、「空気で形をつくり、その内側から断熱材を吹き付ける」という独特の工法にあります。
基本的な設営工程はシンプルな3ステップ
まず、設置場所にドーム型のテント生地を広げ、地面にしっかり固定します。続いて内部に送風してテント生地を大きく膨らませ、住宅の外形をつくります。
次に、膨らんだテントの内部から、硬質ウレタン材を吹き付けます。ウレタンが固まることで、単なるテントではなく、断熱性を持った丈夫なドーム状の空間になります。
最後に、必要な開口部や窓、扉などを整えて完成です。
つまり「柱を建てる→壁を貼る→屋根を載せる」という一般住宅とは、そもそも建て方が違います。LIFULL ArchiTechの公式サイトでは、基本的な設営工程を「膨らませる」「吹き付ける」「完成」の3段階で紹介しています。地盤や天候などによって変わりますが、標準的な設営時間は約6時間程度のようです。
【広さと性能】インスタントハウスのサイズ展開と耐震・耐風性能
現在の標準的なインスタントハウスには、主に43、50、60というサイズがあるようです。
- 「43サイズ」は直径約4.3m、高さ約4.0mで、床面積は約14.5㎡(約8.6帖)
- 「50サイズ」は直径約5.0m、高さ約4.3mで、約19.6㎡(約11.8帖)
- 「60サイズ」は直径約6.0m、高さ約4.8mで、約28.2㎡(約17帖)
例えば50サイズなら、ワンルームのような使い方だけでなく、家具を置いて複数人で過ごすことも可能な広さだそうです。
また、公式仕様では、周囲を適切に固定した場合、風速80m/s程度を想定した耐風性能や、震度6強の地震に対して崩壊しない耐震性能、そして耐雪性能は、耐雪仕様の場合で60cm以下(通常仕様で40cm以下)の性能が示されているそうです(ただし、設置条件や固定方法によって性能が変わるため、「どこに置いても大丈夫」という意味ではありません)。
【価格・費用】気になるインスタントハウスの建築コストとラインナップ
インスタントハウスの大きな魅力のひとつが、一般的な住宅と比較して初期費用を抑えやすいことだと言えそうです。
2026年現在、公式系の価格情報では、標準設営費を含む「シンプル」タイプで、
- 43サイズ: 約224万4,000円(税込)
- 50サイズ: 約308万円(税込)
- 60サイズ: 約435万6,000円(税込)
となっています。
より意匠性などを高めた「ベーシック」タイプでは、
- 43サイズが約247万5,000円(税込)
- 50サイズが約327万8,000円(税込)
- 60サイズが約495万円(税込)
もちろん、これだけ払えば普通の住宅のようにすべてが整うというわけではないようです。扉、窓、エアコン下地、ウッドデッキ、耐雪仕様などを追加すれば費用は上がります。また、現地調査や設置条件によって別途費用が発生する場合もあります。
個人向けの小型商品「インスタントハウス パーソナル」という、税込79万4,200円(本体+送料込み)という商品も用意されています。これは「もっと小振りな、コンパクトなものを!」という要望に適していて、庭先の離れ・ワークブース・簡易な体験宿泊など、ミニマムな空間需要に応えつつ、移設性と断熱性を両立しており、直径約1.8m、高さ約2.7m、面積約2.5㎡。素材は外壁ポリエステル/内壁ウレタンだそうです。
ただし、これは一時滞在用の「軽微な工作物」であり、常設の居住・倉庫・事務所として使用することはできません。設置可否は地盤・搬入経路・固定方式の条件確認が前提になるそうです。
【開発の背景】名古屋工業大学の研究から誕生! 製造元「LIFULL ArchiTech」の思いとは
インスタントハウスの原点となる開発は、名古屋工業大学の北川啓介教授らによる研究だそうです。東日本大震災をきっかけに、被災地で「仮設住宅が完成するまでの期間をどうするか」という問題に着目して、短時間で設置できる住空間の研究が進められたようです。
その技術を社会に実装する役割を担っているのが、名古屋工業大学発の企業「LIFULL ArchiTech」で、商品の製造元になっています。
「LIFULL ArchiTech」は、単にインスタントハウスを販売する会社というだけでなく、建築技術を活用して、災害、空き家、地域活性化、宿泊施設などの社会課題を解決することを目指しているようです。
【応用展開1】災害対応だけじゃない! 日本の「空き家問題」解決への活用
同社「LIFULL ArchiTech」は、名古屋工業大学や南知多町とともに、インスタントハウスの施工技術を応用して、老朽化した空き家の耐震性や断熱性を高める実証事業にも取り組んでいます。
つまり、この技術は「災害時の簡易住宅」だけでなく、日本の空き家問題にも応用できる可能性があるのです。
【応用展開2】都心の“駅近高架下”スペースを活用した新しい街づくり
また、都心での新たな活用方法も、すでに実践段階になっていました。
それは、「roobby-fit不動前(ルービー不動前)」。東急目黒線「不動前」駅徒歩1分の、東急線のガード下にある施設です。ぜひリンク先を見てください!
約20㎡の「ダンス・ヨガ・音楽スタジオ」として利用可能な、大型鏡・防音・リノリウム・wifi・スピーカーが完備された、レンタルスタジオのようです。この施設は、東急株式会社(以下、東急)が「『憧れの趣味の部屋』のシェア」をコンセプトに展開している機能特化型個室シェア事業で、インスタントハウスを開発・提供する「LIFULL ArchiTech」が連携して、2024年1月17日からテストオープンしている施設のようです。
東急株式会社のニュースリリースを引きます。
「鉄道の高架下は駅に近接した優れた立地条件にもかかわらず、工事を行う際の制約が多く、建築コストが嵩むことなどがハードルとなり未活用の土地も多くあります」
「さらに高架下が活用されていないことで起こる不法投棄などが、一部の地域において社会課題となっています」
「LIFULL ArchiTechが新たに開発した新型インスタントハウス・パージ型の重機を使わず分解・組み立て・移設でき、狭いスペースでも柔軟に設置や移動が可能で、一連作業が約3日間で完了できるという特徴を生かし、長らく未活用であった目黒線不動前駅周辺の高架下に新たな賑わいをもたらします」
「今回の連携は、高架下の有効活用と環境改善を目指す東急と、キャンプ施設などだけでなく都心部の遊休スペースの新たな活用を提案するLIFULL ArchiTechの意図が一致したことにより、生まれました」
いままでの工法では困難だったスペースの活用が、「インスタントハウス」のノウハウで実現できた、素晴らしい事例だと思いました。
【購入・設置の注意点】法的には「住宅」ではなく「軽微な工作物」扱い?
この注意点は、インスタントハウスの購入を考える人にとって、非常に重要なポイントです。インスタントハウスは一般的な住宅とは法的な位置づけが異なるようなのです。現在の商品説明では「軽微な工作物」とされ、通常の住宅のように居住用建築物として使うことを前提とした商品ではありません。
したがって、「土地さえあればインスタントハウスを置いて今日から住宅として暮らせる」と考えるのは危険です。実際の設置にあたっては、土地の状況、用途、固定方法、自治体の判断などを確認する必要があるそうです。特に「建築確認が不要だから、どこにでも置ける」という単純な話ではありません。
購入前に必ず販売会社や自治体に確認することが重要だそうです。
まとめ|「家は時間をかけて建てる」常識を変える新しい住まいの可能性
インスタントハウスの最大の魅力は、「住宅をつくる時間」を劇的に短縮できることです。熊本地震のような大規模災害では、住宅を失った人にとって「仮設住宅が完成するまで」の時間そのものが大きな負担になります。そんな空白期間を埋め、できるだけ住み慣れた地域で生活を続けられる可能性を持つのがインスタントハウスのようです。
一方で、一般的な住宅と同じものではありません。法的位置づけ、設置場所、耐候条件、設備、断熱、ライフラインなど、確認すべき点もあるでしょう。それでも、数時間で空間をつくり、必要な場所へ届けるという発想は、災害大国・日本にとって非常に大きな意味を持っていると思います。
そして、災害だけでなく空き家や地域活性化などへ用途を広げている点にも注目です。「家は何カ月もかけて、数千万円をかけて建てるもの」。そんな従来の常識に対して、インスタントハウスは「もっと早く、もっと自由に空間をつくる」という新しい選択肢を示しています。
今後、南海トラフ巨大地震など大規模災害への備えが求められるなかで、インスタントハウスが日本の「災害後の住まい」を変える存在になるのか。その動向に、わたくしも注目していこうと思います。

それではまた、次回のブログをお楽しみに…。
【REDS】 マイスターエージェント:堀 茂勝 でした。
参考リンク・文献
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