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公開日:2024年8月3日

戸建て建築のために買った土地から地中埋設物が出てきたら……『不動産仲介トラブル事例集』より

皆様こんにちは。

首都圏1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産取引について、必ず「仲介手数料が無料」または「仲介手数料が割引」になることで注目の、不動産流通システム【REDS】のマイスターエージェント【宅建士】【宅建マイスター】の堀 茂勝(ほり しげかつ)です。

不動産の購入を検討するにあたっては、いろいろ「落とし穴」に気を付けなくてはなりません。今回も、宅建マイスター認定試験を実施している、公益社団法人不動産流通推進センターが発行している『不動産仲介トラブル事例集』に掲載された事例を参考に取り上げて、そこからお話を広げて、わたくしなりに解説してみたいと思います。

不動産仲介トラブル事例集_表紙

今回は、まずは上記「トラブル事例集」の事例5に掲載されている「地中埋設物」について、意外と気づかない「落とし穴」について取り上げてみようと思います。

地中埋設物

きれいな四角の土地。しかも更地。なのに落とし穴?!

あなたは、下記の販売図面の土地を検討しているとしましょう。

トラブル事例集_1

一件、なにも落とし穴がありそうなようには見えないかもしれませんね。実際に現地を見てみると……。

トラブル事例集_2

特に不審な点も見当たりませんね。

「不動産仲介トラブル事例集」に掲載されている詳細情報によりますと、

「この契約では、契約不適合責任の通知期間は引渡し後3か月とする特約が付されていました」…(略)…「引渡しを4か月を経過して」…(略)…「建設会社が杭打ち作業にかかったところ、旧建物のものと思われるコンクリートガラや鉄骨等が大量に残存していることが判明しました」「このままでは工事が進められない!」…(略)…「売主Xの告知説明義務違反及び仲介会社の調査説明義務違反であるとして、(撤去費用及び工事遅延を理由とする)損害賠償を求めてきました」

という事例です。

このケースでは、「旧建物の解体及び整地を、売主が自ら解体業者に依頼しておこなっておりましたので、解体工事の遂行状況を確認して埋設物の残置を把握(認識)できる立場にいたにもかかわらず、埋設物の残置を認識せずに「物件状況確認書」の作成において土地の正確な状況を告知説明する義務を怠った点が問題になりました」

そして仲介会社については、解体業者の発注に関わっておらず、「残置物の存在を認識する事は不可能であり、調査説明義務を怠ったとは言えない状況でした」と記載されています。

「地中埋設物」って、そんなにあるの?

実はわたくし「マイスターエージェント堀」は、以前「新築戸建ての建売分譲」を主な業務としている企業で、土地の仕入れから販売までを担当していました。

その企業では、土地を購入(仕入れ)して建物があれば解体し、宅地造成(平坦地でなければコンクリート擁壁などの工事をして、道路や水路、上下水道、ガスや電気を配して戸建てが建てられる宅地をつくる)をして、新築を建てるという一連の業務に携わってきました。

その業務の中で「地中埋設物」が出てきてしまったというケースは、決して珍しいことではありませんでした。つまり、結構な頻度で出てきてしまうのです。

長期間、駐車場として利用されていた平坦地などは、特に「危険な香りがプンプン」します。なぜならその前に建っていた建物が解体されたのが昔であればあるほど、現在の売主(所有者)の前の代に行われていたりしますので、その時の状況を売主は知らず、大昔の解体時に「屋根瓦」や「建物の基礎を壊したガラ」を(おそらく処分費用をケチって)その場所に埋めてしまっている可能性が、少なからずあるからです。

私が仕入れを担当して分譲地を造った際も、以前の基礎がまるまる地中に埋まっていたり、瓦を割ったようなガラが大量に出てきたりしたこともあり、すべてその撤去費用は「売主」様にご負担いただきました。

「更地」ではなく、「現況、古屋あり」の場合の注意点は?

「更地」の危険性を述べてきましたが、「現況、古屋あり」の場合についても注意点があります。

その「古屋」がずいぶん古い建物である場合(しかも床下を覗かせていただいて見てみたら、昔よく見かけた「布基礎」の物件であった場合など「地盤改良」がされていない場合は特に)その建物の下に埋設物がある可能性を疑う必要があります。

今の古屋は、解体時にきちんと処分してもらうとしても、その古屋が建つ前の大昔に、その前の建物の解体時に、そのガラを埋めてしまって、その上に基礎を築いて建物を建ててしまった……などという可能性が、ないとは言えないのです。

「埋設物」のリスクを軽減するためには、買主が購入後に古屋を解体する場合はもちろん、「現況古屋アリだが、売主による更地渡し」の場合も、建物解体時に基礎を壊したうえに、土地を少し深くさらってもらって、ガラなどの「埋設物」が見つからないかチェックしてもらうようお勧めします。

引渡し後、なるべく早く「地盤調査」をしてもらおう!

解体時に、土地を少し深くさらって「ガラ」が出なかったとしても、そこで安心してはいけません。地盤改良のために、「柱状改良」をおこなう数mぐらい、もしくは「小口径鋼管杭工法」をおこなう場合で、10m以上の深さまで地盤改良をしようとしたときに、「埋設物」に当たってしまうこともあります。

地盤改良方法(ジオテック株式会社HPより)

地盤補強工法
ジオテック株式会社HPより

必ず「契約不適合責任の通知期間」の間に、必ず「地盤調査」をおこなって、もしも瑕疵(契約不適合)があった場合には、売主負担で解消してもらわなければなりません。これを過ぎてしまうと、購入者が自己負担でおこなう必要がありえます。

「ええっ、3か月の通知期間では足りない!?」……建築会社の落とし穴

「契約不適合責任の通知期間」を1か月や3か月に設定している売買契約のケースを見かけます。

しかし、私が最近担当しているお客様のケースでは、請負契約から基礎着工まで4か月以上かかるケースがあり、地盤調査の予定も4か月後のため、何も指示をしないと地盤調査で埋設物が発見できても、売主に負担してもらえなくなってしまいます。

このタイミングは建築会社によって全く異なります(以前担当したお客様のケースでは、かなり人気の建設会社を選んだ結果、請負契約から着工まで1年待ちのケースさえありました)。

この場合、基礎の設計ができる前であっても、少しコストは高くなりますが、土地の引き渡しを受けた後すみやかに土地の範囲をまんべんなく地盤調査しておくことが必要になります。

スクリューウエイト貫入試験(旧 スウェーデン式サウンディング試験)

SWS試験
(スクリューウエイト貫入試験。旧 スウェーデン式サウンディング試験)
株式会社サムシングHPより

「古屋も、地盤改良(柱状改良や鋼管杭工法)を使っていた!落とし穴

解体する古屋が、柱状改良や鋼管杭工法の上に建っていた場合、それが埋設されたままでは新たな新築戸建てを建築する際の支障になるケースもあります。

古屋の建築時の地盤改良の情報を入手して、新たな戸建てを建てる建築会社と、「埋設したまま」で工事を進めるのか、一部加工が必要なのか、すべて撤去が必要なのかを、よく打ち合わせる必要があります。できれば土地の契約前に、相談をしておくほうが、精神的なストレスや時間のロスも少なくできると思いますので、確認が必要ですね。

家族の幸せのための「新居」の建築ですから、「埋設物」のストレスで不幸にならないように、気をつけましょう!

 

【REDS】 宅建マイスター:堀 茂勝

<参考リンク・文献>

 

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堀 茂勝
(宅建士・リフォームスタイリスト)

購入は煽らず、売却は囲い込みせず、寄り添います。

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