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公開日:2023年12月21日

民法改正で瑕疵担保責任に置き換わった「契約不適合責任」を徹底解説!

こんにちは。仲介手数料が必ず割引・最大無料の「不動産流通システム」、REDSエージェント、宅建士の戸村です。

民法改正が相次いでいます。宅建士である私たちにとっても新しい改正を確認し、それまでの法令との違いを理解するのに苦労するものです。今回ご説明する「契約不適合責任」は以前「瑕疵担保責任」と言われていました。2年近くたってようやく馴染んできた「契約不適合責任」は、以前と何が変わったのか。注意すべき点は何かを解説します。

契約不適合責任

契約不適合責任とは

2020年4月1日に改正民法が施行されました。これまでの「瑕疵担保責任」に変わって登場したのが、「契約不適合責任」です。不動産売買時の「契約不適合責任」とは、売買契約の履行において「契約内容と異なるものを売却したとき」に生じます。「契約」に「適合」しない責任を問われるので、文字どおりの意味合いとなります。

これまでの「瑕疵担保責任」では、その責任の対象が「隠れた瑕疵(=キズ)」に限定されていました。
隠れた瑕疵とは、買主が要求されるような注意力を働かせたにもかかわらず発見できなかった瑕疵のことです。こういった場合によく例として挙げられるのが雨漏りですが、買主が一見しても雨漏りする住宅であることがわからないような場合に、雨漏りは「隠れた瑕疵」に該当すると考えられます。

しかし、買主がその瑕疵が「隠れた瑕疵」であることを証明することは困難であり、「隠れた瑕疵」に該当するかどうかがしばしば問題となっていました。それをシンプルに、「契約書に記載されていた内容と違う場合は責任がある」としたのです。

つまり、「雨漏りはしない」と契約書に記載があり、売主・買主双方その認識で売買が成立したにもかかわらず、引渡後の保証期間内に雨漏りが発生した場合は、「契約不適合責任」に該当します。その場合、買主は売主に責任を追及できます。売主は責任を問われるリスクを減らすために、売買する予定の物件について状況をよく認識しておくことが必要になりました。

契約不適合責任で買主が持てる権利

契約不適合責任が発生した場合、購入した側は下記の請求をする権利を認められています。

●追完請求
●代金減額請求
●損害賠償請求
●契約解除

追完請求

追完請求とは、例えばリンゴ10個の売買予定だったのに8個しかもらっていない場合、「契約書どおり10個になるよう追加で2個ください」といった請求ですが、不動産の場合、種類や品質・数量などでは表せない場合も多くあります。数字では示せないので難しい場合もありますが、「雨漏りしないと言っていたのに雨漏りした」ということであれば、「雨漏りしないように(修補)請求する」という内容になります。

ただ、たとえ契約書に雨漏りについての記載がなかったとしても、その物件で雨漏りが発生した場合、そもそも住むことを前提として契約がなされている=契約内容とは異なる(住むための用を満たさない)ものを売った=契約不適合責任を負うことになりますので、ご注意ください。

最近の契約書は「物件状況報告書」などの説明の中に「雨漏り」について記載する箇所がありますので実際は「記載がない」ということはあまりないと思いますが。

代金減額請求

上記の追完請求を売主側が実行しない(できない)場合、買主は代金減額請求をすることができます。名前のとおり、売買価格を減額する請求です。

先の「追完請求」を例にすると、「追完請求」で「雨漏りを直してください」といった要望を修繕に必要と思われる期間を定めて売主に伝えます。そこで直してくれなかった場合、買主側が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完(修補)がないときに認められるものです。

つまり、いきなり減額請求ができる訳ではなく、まずは追完請求を行って、さらに「催告」をして、それでも直してもらえないときであれば「代金を減額してください」と請求できます。明らかに直せないものなど、追完の補修が不可能である場合は、催告なしで買主は直ちに代金減額請求することもできます。

つまり、代金減額請求権は、直せるものは直してもらい、「直さない」「直せない」場合に使える請求になります。

損害賠償請求

損害賠償請求とは、契約不適合によって生じた損害について金銭の支払を請求することです。履行の追完や代金減額請求をした場合であっても、これらと併せて損害賠償請求を行うことができます。ただ、特約で損害賠償請求はできないとされている場合もあります。できるとされている契約書でも範囲の限定が求められる可能性があるのです。

損害賠償が請求できる範囲は「信頼利益(契約が不成立・無効になった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害を指す)」も、「履行利益(契約が履行されたならば債権者が得られたであろう利益を失った損害を指す)」も含みます。

「信頼利益」は不動産売却の場合では、例えば登記費用などの契約締結のための準備費用が該当します。「履行利益」は不動産売却の場合では、例えば転売利益や営業利益などが該当します。どこまで、という範囲を決めるのが難しいものでもあるため(社会情勢や個人の特性にも左右される内容であるため)、特約で規制することが多いように思われます。

契約解除

契約の解除とは、契約をなかったことにすることです。債務の全部の履行が不能であるなど一定の場合を除き、原則として先に履行の催告をし、一定期間内に履行がないときに解除をすることができるとされています。

ただし、債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除をすることができません。解除にも「催告解除(修補するよう要求したが対応してくれなかった)」と「無催告解除(契約の履行が期待できないと明らかなとき)」があります。

最後に

「契約不適合責任」は、従来の「瑕疵担保責任」より明確にわかりやすくなったと実務を通しても感じます。ポイントは、「物件の状況をよく理解し」「契約書に記載する」です。契約書に記載があれば(それが一般に整合性のとれるものであれば)、それを元に話し合いができます。また、売主・買主、双方にとって納得しやすい形になると思われます。

売主は物件状況を理解し、仲介会社に伝え、仲介会社はそれを買主に伝え、かつ契約書に明記すること、そして買主は記載事項を理解して購入すること。

それが基本であり、トラブル回避のための上策です。「こんなはずじゃなかった」とならないよう、物件について理解を深めましょう。

 

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この記事を執筆した
エージェントプロフィール

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戸村 麻衣子
(宅建士・リフォームスタイリスト)

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