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公開日:2024年3月13日  坂爪 潤

道路脇に小さく立っている「境界標」はなぜ震災復興で重要なのか?

REDS宅建士・宅建マイスターの坂爪です。

2024年元旦16時過ぎ、石川県能登地方で地震が発生し、大きな被害が出ました。平成以降で地震による直接の死者が100名以上となった大地震は以下のとおりです。

  • 北海道南西沖地震
  • 阪神・淡路大震災
  • 東日本大震災
  • 令和6年能登半島地震

地震などの災害が発生しますと建物や構造物が倒壊します。不動産のプロの視点から見ますと、復興において問題となるのは「境界」です。今回はこの「境界」について解説します。

境界標

境界とはなにか

まずは基礎知識として「境界」とは何かというと、土地に関して「筆」の境目のことです。具体的な例を挙げますとAさん宅とBさん宅の境目、Aさん宅と道路との境目、これが境界です。

この境界を明示する役目を担うコンクリートや石、プラスチック、木の杭、金属のプレート、鋲などを「境界標」と呼びます。普段は意識することは少ないと思いますが、道路際に目を転じて街中を歩いていると道路と敷地との境目などにさまざまな種類の境界標が立っているのが分かります。

災害によって生じる境界にまつわる諸問題

災害と境界の問題は、土砂崩れや津波など実際の災害により境界標が物理的になくなってしまうケースのほか、災害後の瓦礫撤去などの際に境界標が一緒に撤去されてしまうケースがあります。

先にも申し上げたとおり、境界標は「Aさん宅とBさん宅の境目」「道路との境目」を明示するものですので、コレがなくなってしまっては、災害復興がままなりません。例えば災害で壊れてしまった我が家を再建築しようとしても、自分の家の敷地がどこからどこまでだったのか正確に分からないということになります。

この状態で自分勝手に再建築すれば将来トラブルになることは目に見えています。

特に地価の高い市街地では数平米でも高価な土地であるケースがありますし、接道要件といって一定の幅が道路に面していない土地には建物が建築できないなどのルールもありますので、〝早い者勝ち〟とばかりに再建築されてしまっては困ったことになります。

境界復旧はとにかくマンパワー!

それでは実際にどのように災害で不明確になった境界を復旧していくのか。それは、とにかくありったけの資料や現況を確認しながら行政の担当者や土地家屋調査士さん達が少しずつ境界を確認して復旧していくほかありません。とにかくマンパワーです。

具体的には法務局にある地積測量図や直近で測量の履歴があればGPSの座標、また現地で崩れてしまった壁や塀の基礎部分などを参考に復旧します。

能登半島の地震では海面が隆起して漁港が利用不可能になる事態も発生しました。今回のような超大型の地震災害では地割れや地殻変動による移動なども起こります。

そのため法務省の民事局からは下記の発表がありました。

◆「法務省民事局 令和6年(2024年)能登半島地震による地殻変動に伴う地図等証明書上の座標値表示への影響について」

令和6年(2024年)能登半島地震による大きな地殻変動が確認された地域では、基準点(電子基準点、三角点、水準点)の経緯度や標高の値が大きく変化したことにより、現在、国土地理院において該当する基準点の測量成果の公表を停止しています。また、上記基準点の変化により、令和6年能登半島地震の発生前に作成された登記所備付地図、地積測量図等に表示されている筆界点、図郭等の座標値が、現在の土地の筆界点等の座標値と異なる可能性があります。そのため、令和6年1月22日から、地図証明書(現在の地図であり、公共座標を有するものに限る。)において、当該証明書の情報が令和6年能登半島地震の発生前の情報であることを付記する運用を実施しますので、お知らせします。なお、地積測量図については、上記付記がされていませんので、作成年月日を確認の上、その取扱いに御留意いただくようお願いします。

つまり基準とすべき座標などもずれてしまっている可能性があるので復旧の当てにならないから少し待ってというわけです。

この発表を見るだけでも復興には大変な手間と時間がかかることが想像されます。

さらに以下は能登半島地震後に国交省から業界団体あてに出された文章です。

◆「令和6年能登半島地震の災害復旧における境界標識の保存について」

標記地震による被災地域において、今後、がれきの除去や倒壊家屋の撤去等の復旧作業が見込まれるところですが、当該作業に伴い土地の境界を示す境界石、コンクリート杭、金属鋲等の境界標識が破壊されるおそれがあります。これらの境界標識は、今後における各種復興作業を実施するに当たっても、土地の位置、境界を確認するために極めて重要な役割を果たすものであり、その重要性に鑑み、災害復旧作業地域においても可能な限り保存されるよう配慮する必要があります。法務省民事局民事第二課から、この趣旨を踏まえ、関係作業機関等へ下記につき周知を図るよう依頼がありましたので、共有差し上げます。

【周知内容】
倒壊・滅失した建物の敷地の整理を行う場合には、土地に境界石、コンクリート杭、金属鋲などが埋設されていないかどうか注意してください。これらは、土地の境界を示す「境界標識」の可能性があります。

境界標識は、土地の境界を特定するために役立つもので、紛争の予防・解決の決め手となることが多く、今後の復興作業のために、可能な限りその保存が図られるように配慮をお願いします。

災害に備えて私たちができること

できればそのような事態に遭遇しないことが一番ではありますが、万が一大きな災害に遭ってしまった場合に大切なのは、「境界標」やその目印となるようなものを大切に保存するということです。

具体的には、倒れかかった境界杭を抜いたりしないこと、壁や塀の基礎や記憶にあるお隣さんや道路との境界の目印となるような物は保全するようにしましょう。

ちなみに既存の境界標を損壊・移動・除去し「土地の境界を認識することができないように」することは懲役刑もある大変重い罪(境界損壊罪)ですので、それはやめておいたほうがいいですね。

 

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坂爪 潤
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※2025年11月02日現在 本社・首都圏営業所の数値

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