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島崎 正輝(宅建士・リフォームスタイリスト)

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公開日:2024年2月26日

REDSエージェント、宅建士の島崎です。

不動産取引における「心理的瑕疵」とは、不動産自体には特に問題はないものの、購入して住む方に心理的な抵抗を与えることを意味します。不動産を売却の際に、売主は必ず心理的瑕疵があることを買主に告知しなければなりません。今回は心理的瑕疵の定義と、心理的瑕疵がある物件を売却する際に気をつけなくてはならない点についてお伝えします。

心理的瑕疵物件

心理的瑕疵について正しく理解しましょう

不動産における瑕疵(かし)とは、土地や建物にある「欠陥」のことを意味します。なかでも扱いが難しいといわれるのが「心理的瑕疵」です。不動産売却においては必ずトラブルの原因になるので、売主は買主に伝える必要があります。心理的瑕疵の定義についてあらかじめしっかり理解しておくことが大切です。

不動産取引における瑕疵の種類とは

不動産における瑕疵は心理的瑕疵も含め、おおまかに4種類に分けられます。それぞれ以下のとおりです。

心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、不動産が有する品質や設備に問題はないものの、住む人に心理的な抵抗や嫌悪な感じを与えることです。具体的には、物件の中で自殺や殺人、一定期間放置された孤独死、火災、忌まわしい事件・事故などが起こっていることを指します。これらが過去に起きた土地や物件のことを、一般的には事故物件と呼びます。

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、不動産そのものにある重大な欠陥や破損のことです。土地に対する瑕疵と建物に対する瑕疵に主に分類されます。

●土地の物理的な瑕疵
・地中障害物
・土壌汚染
・擁壁の倒壊

●建物の物理的瑕疵
・雨漏り
・壁のひび割れ
・シロアリ被害
・建物の傾き

不動産における4種類の瑕疵のうち、物理的瑕疵は最も分かりやすく、多くは修理や建て替えなどによって解決できます。

法的瑕疵物件

法的瑕疵とは、法律や条例などの制限によって使用・収益に関して阻害されることを指します。不動産が「建築基準法」や「都市計画法」に違反しているために生じる瑕疵で、主に下記のとおりとなります。

〇建築基準法:建築に関する基礎的な法律です。建築基準法に抵触する案件には、再建築不可なのに再建築できると謳われて売られているケースがあげられます。

〇都市計画法:都市を適正に発展させることを目的として作成されました。建築基準法と同じように、住民が快適に生活できるよう都市計画の基本を定められています。都市計画法に抵触する案件には、市街化調整区域のような「原則建物を建てられない土地」に、建物が「建築可能」な物件として売却されている、といったことが該当します。

環境的瑕疵物件

環境的瑕疵とは、不動産そのものに問題はないが、周囲の環境に問題があることを指します。具体的には、物件の近くに嫌悪施設(反社会的組織の事務所、墓地、送電線、下水理場など)がある物件がそれに該当します。

売却不動産にこれらの瑕疵が該当する場合、売主は買主へ告知する義務があります。告知をしない、買主の了解を得られないまま売却を行って後から発覚した場合、買主より修補請求や契約解除、損害賠償請求を受けることになります。

心理的瑕疵の判断基準

以上の4つの瑕疵の中で「心理的瑕疵」は、それがそもそも瑕疵なのかどうかを判断するのが絶妙に難しいといわれております。心理的瑕疵の基準はどうなっているのでしょうか?

先述のように、心理的瑕疵物件は過去に「自殺」や「殺人事件」、「火災」、「忌まわしい事件・事故」などが発生した物件のことを指します。一般的な人の「自然死」は原則で心理的瑕疵には該当しません。しかし特殊清掃が必要となるなどの「一定期間放置された孤独死」の場合は、心理的瑕疵に含まれます。

しかし、この心理的瑕疵は買主や借主の個人により、どの程度の瑕疵を許容するのかはそれぞれ違うため、心理的瑕疵に当たる基準がある意味曖昧です。どこまでを瑕疵とするか、その判断基準は難しいですが、判断基準がないというわけではありません。

「通常一般の人がどう感じるか」で、快適な住み心地を欠いて、居住物件として適さないと判断される物件が「心理的瑕疵物件」となる訳です。買主の個人的な主観によったりする、受け取る人の一方的な感情だけを基準だけで判断されるのは正しいとはいえません。

心理的瑕疵物件とほかの瑕疵物件の違い

心理的瑕疵物件はそれ以外の瑕疵と扱いが決定的に異なる点があります。

売買取引においては告知期間が明確ではない

心理的瑕疵物件以外の3つの瑕疵物件については、解消する方法があるため、「瑕疵が解消された状態」であればもう告知の必要はありません。

対して、心理的瑕疵の場合は告知期間が特殊です。法的効力はありませんが、国土交通省のガイドラインによれば、「賃貸」の場合は少なくとも3年間は告知義務があるとされています。

一方、「売買」に関しては、告知期間はガイドライン上で実は明確にはなっていません。売買に関しては過去の判例で必要とされた告知期間に幅があり、基準の期間を定めにくいからとされています。判例では7年で説明義務が不要になったものもあれば、50年も説明義務が求められたものもあります。

追完請求ができない

心理的瑕疵物件以外の瑕疵においては、「追完請求」をすることができます。追完請求とは瑕疵の解消を前提とした修理などの実施を後から売主に請求することを指します。一方、心理的瑕疵物件は物理的に解消することが不可能といえるため、個人間売買の場合は、「追完請求」以外に「契約解除」もしくは「損害賠償請求」での対応が求められます。

瑕疵物件に当てはまる場合の注意

所有する不動産が、瑕疵物件に当てはまる場合、売却リスクを伴うことがあります。売買でのトラブルを防ぐためにも、以下の注意点を必ず理解しておきましょう。

契約不適合責任を問われることがある

不動産売却の取引を行う際には、瑕疵があるなら売主は買主に対して必ず伝えなければなりません。売却する物件がどのような物件であるかを売買契約書に記載して、買主に契約不適合責任を問わないこととする具体的な了解を取ります。

告知義務を怠り、契約目的に適合しない物件を売ると「契約不適合責任」を問われます。「契約不適合責任」とは、契約目的に反する取引が行われた場合、その責任を売主が負うことをいいます。「契約不適合責任」を問われると、売主は「追完請求(修補請求)」や「契約解除」、「損害賠償」を請求されることがあります。

高値での売却が見込めない

瑕疵のある不動産は、通常の不動産に比べて価値が低くなります。特に心理的瑕疵の場合は解消することが困難で、価値が下がったまま売却せざるをえないのが一般的です。しかし、亡くなった理由やその後の経過期間、または事件当時の報道内容、場所の条件などによって度合いは変わってきます。

また、解体や再建築などを行うことで「瑕疵の影響が小さくなる」場合もあります。

今回は、心理的瑕疵を中心に、不動産における瑕疵や売却時の注意点などについて考察してみました。いかがでしょうか? お役に立てれば幸いです。

 

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