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小室 武稔(宅建士・リフォームスタイリスト)

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公開日:2023年9月22日

こんにちは、不動産流通システム、REDSエージェント、宅建士の小室です。

マンションは戸建てよりも寿命が長く、所有者は将来にわたって、所有不動産の価値を守っていかなければなりません。

安全・安心で、快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時・適切な修繕工事を行うことが必要ですが、マンションの共用部分の修繕工事は長い周期で実施されるものが多く、修繕工事の実施時には、多額の費用を要します。所有者は「修繕積立金」で蓄えることによって、将来の大規模修繕工事に備えます。

今回はマンションの長期修繕計画について解説します。

マンションの修繕

長期修繕計画の計画期間

新築マンションの場合は30年、既存マンションの場合は25年が長期修繕計画期間の目安とされていましたが、令和3年のガイドライン改訂で、新築・既存問わず、30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれる内容となりました。大規模修繕の周期は12年程度が目安とされています。

また、一度作成したとしても、30年そのままではなく、5年程度で見直す必要があります。

主な修繕の周期例

主な修繕の周期は以下のとおりです。

・屋上防水 補修12年・修繕24年
・コンクリート補修 12年
・鉄部塗装 雨掛かり部分4年・非雨掛かり部分6年
・建具関係 点検・調整12年・取り換え36年
・手すり 取り換え36年
・給水管 更新15年・取り換え30年
・配水管 更新15年・取り換え30年
・ガス管 取り換え30年
・昇降機 補修15年・取り換え30年

修繕積立金の積立方法

修繕積立金の積立方法には、長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間にわたって均等に積み立てる「均等積立方式」と、当初の積立額を抑え段階的に積立額を値上げしていく「段階増額積立方式」があります。このほか、購入時にまとまった額の「修繕積立基金」を徴収する場合や、修繕時に一時金を徴収する、または金融機関から借り入れることを前提とした積立方式を採用している場合もあります。

以前、私の担当するマンションで総会が開催され、多額の一時金徴収案が議題となったこともありました。その議案は、あまりにも負担の大きい金額(私個人の感覚です)のため、否決となりました。

段階増額積立方式や修繕時に一時金を徴収する方式など、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず、修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要です。将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。

新築マンションの場合は、段階増額積立方式を採用している場合がほとんどで、あわせて、分譲時に修繕積立基金を徴収している場合も多くなっています。このような方式は、購入者の当初の月額負担を軽減できるため、広く採用されているといわれています。

修繕積立金の額の目安

修繕費

計画期間全体における修繕積立金の平均額の算出方法(㎡当たり月単価)

1㎡当たりの月額修繕積立金を算出するには以下のようにします。

(算出式)計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)
Z=(A+B+C)÷X÷Y

A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
X:マンションの総専有床面積(㎡)
Y:長期修繕計画の計画期間(ヶ月)
Z:計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)

計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安

マンションの高さと面積別の1㎡あたりの月額修繕積立金の目安は以下のとおりです。

【20階未満】
5,000㎡未満:235~430円/㎡・月(平均値335円/㎡・月)
5,000~1万㎡未満:170~320円/㎡・月(平均値252円/㎡・月)
1万~2万㎡未満:200~330円/㎡・月(平均値271円/㎡・月)
2万㎡以上:190~325円/㎡・月(平均値255円/㎡・月)

【20階以上】
240~410円/㎡・月(平均値338円/㎡・月)

計画はあくまで計画

長期修繕計画の中で『●年後に大規模修繕』と予定されていても、その計画に従う必要はありません。

劣化度合いによって修繕を前倒しする場合もあれば、予定時期に建物診断をしたところ修繕の必要はなく先に延ばす判断も問題ない場合があります。そのため、長期修繕計画を見直す際、修繕の先送りは問題ありませんが、前倒しになった場合も想定して修繕計画を作成することが重要です。

万が一、不足が生じた場合は、一時金の徴収や借入の検討も必要です。

修繕積立金の値上げを先送りにしない

長期修繕計画の見直しをした際、計画に対して費用が不足する可能性があった場合は、修繕積立金の値上げを検討する必要があります。

しかし、増額の検討を行った際、修繕積立金の増額となると、所有者の賛同を得にくい場合が多く、本当に不足するまで先送りにしてしまう可能性もあります。結果、必要な修繕が実施できず、将来の懸念材料となります。

したがって、普段から修繕に対する意識を高め、マンション全体で状況を把握し、必要があれば、修繕積立金の値上げも視野に総会で話し合うことが重要です。

マンション購入の検討にあたって

今回紹介した長期修繕計画は、多くのマンションで書類として取得、もしくは閲覧することができます。マンションによっては、長期修繕計画を書類として作成していないケースもありますが、修繕履歴や管理会社の報告書によって、管理の内容・状況を確認することができます。

修繕の状況もマンション購入の判断材料の1つだと思います。不動産仲介会社に依頼すれば購入前に確認することも可能ですので、マンション購入の際は、お気軽にお問い合わせください。

 

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