皆様こんにちは、【REDS】不動産流通システムの木須陽子です。
今回も前回に引き続き、石綿含有建材、レベル3の石綿含有建材の用途別建材について詳しく解説します。

(画像はイメージです)
石綿セメント円筒
石綿セメント円筒(いしわたセメントえんとう)とは、アスベスト(石綿)とセメントを主原料として混ぜ合わせ、筒状に成形したパイプ状の建築材料です。
性質
石綿セメント円筒の特徴として、熱や火に対する圧倒的な強さがあります。アスベスト自体が1000℃の高温にも耐える鉱物であるため、ボイラーや風呂釜の排気ガスといった高熱に長期間さらされ続けても、変形や劣化を起こしません。
さらに、物理的な強さと扱いやすさを兼ね備えている点も大きな性質です。この繊維補強効果により「管の壁を薄く作っても十分な頑丈さを保てる(薄肉高強度)」という性質を実現しました。
軽量で省スペースに設置できるだけでなく、適度な柔軟性(しなり)も持ち合わせていたため、地盤沈下や地震の揺れに対しても破断しにくいという耐震性も。極めて高い耐久性と耐食性、そして原材料の安さによる経済性もありました。
寸法
製品によって多少の差はありますが、標準的なサイズは以下のとおりです。
- 内径(呼び径)・75〜300mm:主に「75, 100, 120, 150, 200, 250, 300mm」などのバリエーションがあります。一般住宅の風呂釜排気や煙突では、100〜150mm前後が最も広く普及していました。
- 管厚(厚さ)・約6〜15mm:内径が大きくなるほど、強度を保つために管壁が厚くなります(例:内径100mmの管で厚さ約8〜10mm前後)。
- 長さ(1本あたり)・1000〜2000mm:施工しやすいよう1m、1.5m、2mといったm単位の長さで製造されていました。これを現場で「エルボ(曲がり管)」などの継手とつなぎ合わせて延長していました。
形状
もし古い一戸建ての壁内や天井裏、ビルの機械室などで「外径がだいたい12〜17㎝前後(内径100〜150mm+厚み分)」のグレーの硬いパイプを見かけた場合、それは石綿セメント円筒である可能性が非常に高いです。
主な施工箇所
石綿セメント円筒は、水管や地下のケーブル保護管としても大量に導入されました。主に1937~2004年に建築された一般住宅、古い学校、ビル、工場などの「壁の内部」「天井裏」「床下(パイプスペース)」「地中」といった、普段の生活では目に見えない隠れた場所に多く使われています。
最も代表的な設置場所は、壁の中や天井裏を通る熱まわりの排気・換気ルートです。古い住宅やアパートにおいて、ガスや灯油式の風呂釜(バランス釜)やボイラーから出る高温の排気ガスを外へ逃がすための煙突(排気筒)として壁の中に埋め込まれました。
また、古い学校の調理室やビルの機械室における排気ダクト、さらにはトイレの臭気を屋上へと逃がすための通気管(臭気抜き管)として、各階を縦に貫くように壁の内部へ設置されています。室内から通してきたこれらの管は、最終的に屋根の上や屋上に突き出る煙突の先端部分(火口管や雨よけの笠)として、一部が建物の外側に露出していることもあります。
石綿セメント管
石綿セメント管(いしわたセメントかん)とは、アスベスト(石綿)とセメントを主原料とし、主に高圧の給水・排水やインフラ設備を地中に埋設するために製造された頑丈なパイプ状の建築・土木材料です。「アスベスト管」や「石綿管」とも呼ばれます。
先述の「石綿セメント円筒」が主に建物内の煙突や換気といった薄手・低圧の用途に使われたのに対し、石綿セメント管は「高い水圧や土の重み(土圧)に耐える」目的で、主に屋外の地下インフラとして使用されました。日本では1930年代から製造が始まり、2004年に全面禁止となる前の1970年代から1980年代前半にかけて製造・使用が終了しています。
性質
性質は、「土の重みや高い水圧に屈しない圧倒的な耐圧性と強度」にあります。セメントに鉄をも上回る引張強度を持つアスベスト繊維を緻密に練り込むことで、内部からの高い水圧や、地中深くへ埋設された際の強烈な土圧(土の重み)にも十分に耐える強靭さを獲得しました。
また、地盤沈下や軽微な地震リスクが低いという、地下埋設管として優れた性質を持っています。化学的な安定性、錆びない・腐食しにくい(耐食性)という点もあり石綿セメント管は酸やアルカリといった化学物質、さらには温泉水や土壌中の特異な成分に触れても管が侵食しない性質をもっていました。
さらに、管の内壁が非常に滑らかに成形されているため、長年使用しても内側に水あかやサビがこびりつきにくく、水の流れ(通水能力)を長期間スムーズに保ち続けられるという実用的な長所もありました。
寸法
- 内径(呼び径)・50〜1000mm超:街の水道配管(枝管)では75mm〜150mm前後、基幹となる本管や下水道管では300mm〜600mm以上の太いサイズが使われていました
- 管厚(厚さ)・約10mm 〜 50mm以上:水圧のランク(一種・二種・三種など)や内径によって厚みが細かく規定されています。高圧用の太い管では、壁の厚さだけで3〜5cm以上に達するものもあります。
- 長さ・(1本あたり)3000〜 5000mm:地中に効率よく長く敷設するため、3m、4m、5mといった長さが標準でした(建物用の「石綿セメント円筒」が1〜2mであるのに対し、倍以上の長さがあります)。
形状
石綿セメント管の形状は、基本的には「肉厚で直線的な円筒形(パイプ状)」をしていますが、地中で管同士を連結したり、ルートを曲げたりするために、独自の接続形状や専用の継手(つなぎ手)が存在します。
主な施工箇所
都市や住宅街の水道本管および給水管(上水道)に多く施工されました。昭和中期、水道網を全国へ急速に普及させる際、安価で大量に供給できる石綿セメント管が道路の下に爆発的な規模で敷設されました。
次に多い施工箇所が「下水道管」や「農業用水路・灌漑(かんがい)用の配管」としての地下埋設です。雨水や汚水を大量に流す下水道や、広大な田畑に水を供給する農業用水路では、水圧や土圧に耐える頑丈な管が必要とされます。
工場や発電所などの産業施設の敷地内も主要な施工箇所です。化学工場やプラントから排出される排水には酸やアルカリ、さまざまな化学物質が含まれていることが多く、薬品に対する抵抗力が極めて高い石綿セメント管が、工場敷地内の地下排水ラインとして使用されました。
同様の理由で温泉成分による腐食防止から、温泉街において温泉水を各旅館や浴場へ配るための「地中の送湯管」としても広く施工されています。
道路の下に電気や通信のケーブルをまとめて埋設する共同溝において、電線を保護するための「電線保護管(さや管)」として施工された例も多く存在します。
石綿セメント管の施工箇所は「道路や敷地の下の土中」に集中しています。そのため、古い工場跡地の解体や、昔からある宅地の造成、道路の掘削工事を行う際には、図面に記載されていなくても突然地中からこの管が姿を現すことがあり、土木・解体現場において今なお入念な事前調査が必要とされる場所となっています。
次回は、今回ご紹介したレベル3石綿含有建材に続き、石綿発泡体などの用途別建材について詳しく解説します。建物の各部位でどのように使われていたか、施工上の注意点や安全対策もあわせてわかりやすくご説明します。
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