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大西 進(宅建士・リフォームスタイリスト)

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公開日:2023年10月20日

こんにちは、REDSエージェント、宅建士の大西進(おおにしすすむ)です。私のブログをご覧いただきありがとうございます。

10月初旬、日本の長期金利が大きく上昇し、一時10年ぶりの高水準となりました。理由としてはアメリカでの長期金利の上昇を受け、その影響で日本でも長期金利上昇の圧力が強まったからだと思われます。食費だけでなく光熱費、ガソリン代など日常生活すべてにかかわるあらゆる物の値上がりも続く状況で、変動金利型住宅ローンを契約されて、毎月の住宅ローンのご返済をしていらっしゃる方の中には、今後の返済について不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

こういったタイミングで再度理解しておきたい、変動金利型住宅ローンのポイントを解説いたします。

住宅ローン

5年経過後の返済額上限は従前の125%まで(125%ルール)

元利均等方式の変動金利の住宅ローンは後述するいわゆる「5年ルール」により、たとえ金利が上昇しても5年間の返済額は変わらず、6年目にその時点の適用金利によって返済額が見直されます。このとき、その時点での適用金利がどれだけ高くなっていても、返済額の上限は125%までに抑えられる仕組みです。これを「125%ルール」と言います。

従前の毎月返済額が10万円だった場合、6年目の見直しの際の上限は月12万5000円。適用金利が大きく上がった場合でも家計への影響を抑えるための仕組みです。とはいえ、返済額がそれまでの25%増に抑えられるにしても家計への影響は必ずしも軽くはないのではないでしょうか。

例えば、月10万円の返済額であれば返済額が2万5,000円増えることになりますから、場合によっては教育費やその他の生活費などに影響が出る可能性もあると考えられます。対応するためには、変動金利で返済額が低いからといって目一杯の返済にするのではなく、あらかじめ家計にゆとりをもっておくことも大切です。

適用金利が変わっても毎月返済額は5年間固定(5年ルール)

元利均等方式の変動金利で借りた場合、半年ごとの金利見直しにより適用金利が上がったとしても、5年間は毎月の返済額は変わりません。これは、金利が上がっても家計への影響が抑えられることを目的に設けられた仕組みで、「5年ルール」と呼ばれています。

金利には短期金利と長期金利の2種類ありますが、基本的に変動金利型住宅ローンは短期金利に連動した金利が適用されています。具体的には、日銀が発表する「短期プライムレート(通称:短プラ)」を指標とするものが多いですが、その他の市場金利を指標とするものもあります。短期金利は、長期金利と比較してめったに動かないという特徴がありますが、動く局面も確かにあります。

一般的に変動金利型住宅ローンの金利見直しは半年ごとです。仮に半年ごとに金利が変動し、返済額も都度増減すればどうなるでしょうか。おそらく金融機関の事務手続き負担は増大し、家計は混乱することでしょう。そこで、金利変動時にも返済額の変動頻度が増えすぎないよう、導入されているのがこの「5年ルール」です。

5年ルールにより返済額は変わらなくても、元利割合は見直されている

5年ルールにより返済額は5年間変わらないものの、適用金利が変われば、返済額に占める元金と利息の割合は変わります(返済は利息が優先されます)。

例えば、毎月の返済額の合計が10万円で、元金返済額9万5000円、利息が5000円だったとします。適用金利が上がって支払利息が増えると、月10万円の返済額は変わらなくても、内訳が「元金9万円+利息1万円」などと変わる可能性があります。返済額の内訳について通知などはないため、借りている本人は気づいていないこともあります。

急激な金利上昇が続くと未払利息が発生する可能性も

変動金利で急激な金利上昇が続いた場合、「5年ルール」や「125%ルール」が裏目に出て、返済額に占める元金と利息の割合が逆転して返済額がほぼ利息、となってしまうこともあり得ます。

最も悪いケースとして、返済額がすべて利息になってしまうこと。さらには、返済額では返しきれない利息が発生すると、「未払利息」として払いきれない利息分、翌月以降の返済に繰り延べされることがあります。多くの場合、最終回の返済日に、未払利息分は残りの元金とともに全額を一括で返済しなくてはなりません。このことも心に留めておかなくてはなりません。

一部の金融機関では、「5年ルール」や「125%ルール」がなく、適用金利が上がればその時点で返済額がアップするタイプの変動金利を扱っているところもありますので、ご自身の住宅ローン商品をどのタイプか理解しておくことも大切です。

まとめ

住宅購入時に以上のような説明を、金融機関や取引にかかわった不動産業者から受けていらっしゃると思いますが、購入当時は住宅を購入することに精一杯で、うろ覚えの方も多いかもしれません。

変動金利を利用している場合、半年に一度と年末に残高証明が金融機関からの通知(圧着はがきやメールなど)が届いていると思います。住宅ローンのことばかり考えて生活するわけにはいきませんが、半年か年に一度程度で住宅ローンの内容を見直してみるのもよいかもしれません。ご一読いただきありがとうございました。

購入前に住宅ローンについて詳しく知りたい方は、お気軽に大西までご相談ください。

 

AFP 2級ファイナンシャルプランナー
住宅ローンアドバイザー
REDSエージェント 大西 進

 

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公開日:2023年10月13日

こんにちは、REDSエージェント、宅建士の大西進(おおにしすすむ)です。私のブログをご覧いただきありがとうございます。

今回は、お隣さんからの竹木の越境について、少しお話したいと思います。

隣の枝

民法改正前は根っこ○、枝×だった

夕方のニュースなどで、管理が行き届いていない住宅(空き家や廃墟も含む)の竹木が伸び放題になっていて、道路の通行に支障をきたしているようなケースが紹介されているのを、ご覧になったことがあるかもしれません。お隣さんの木の枝がのびて、自分の敷地内に越境している場合、声かけさえすれば「自分の敷地内に入っているのだから、切ってもよいのでは?」と思っていらっしゃる方も多いと思います。

ところが、これまで隣家から越境した枝に関しては「お隣さんに枝を切ってもらうようお願いをして切ってもらう」しか方法はなく、越境された土地の所有者が自ら枝を切ることはできなかったことはご存じでしょうか。

民法改定前は、隣の土地にある樹木の枝や根が、境界を越えてこちらに入ってきた場合、法的にどうだったのでしょうか? 当時の規定では「根っこは勝手に切ってもよいが枝は切れない」とされていました。枝に関しては隣家の所有者に「切ってください」と請求することができるだけで、どうしても応じてくれない場合は裁判で勝訴して強制執行を行うしかありませんでした。

2023年の民法改正で枝を切ってもOKに

切った後の枝

この規定が2023(令和5)年4月1日に改正され、一定の場合にはこちらが勝手に切ってもよいことになりました。

この改正では、民法のほか不動産登記法など関連法令の改正による、所有者不明土地管理制度の新設、相続登記の義務化、相続した土地の国庫帰属(相続土地国庫帰属法の新設)などが大きく話題となりました(前回のブログを参照ください)。

実はそのかたわらで、民法の相隣関係(お隣さん同士の法律関係)に関する規定も少し変わりました。その一つである、枝や根の越境に関する民法233条の改正について解説します。

切るように言っても応じないときの対処方法

改正前の民法の規定(~2023年)では、隣地の樹木の枝や根がこちらに越境してきた場合、通常は、まずは隣地側に何とかするようお願いすることが必要でした。では、相手がそれに応じない場合は法的にはどのような手段があるのでしょうか。

改正前の対処方法

適用されていた民法の規定は、次のとおりです。

【改正前】
民法233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
1、隣地の⽵⽊の枝が境界線を越えるときは、その⽵⽊の所有者に、その枝を切除させることができる。
2、隣地の⽵⽊の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

隣地の樹木(条文上は「竹木」)の枝や根がこちらに越境してきた場合、2項により根についてはこちらが(勝手に)「切り取ることができる」とされています。

これに対し1項によれば、枝については隣地側に「切除させることができる」となっています。といっても、この規定は「お隣さんを無理やり引っ張り出してきてノコギリやナタを持たせて切らせることができる」という意味ではなく、あくまで「相手に枝を切ってもらう権利がある」ということにすぎません。

他の権利と同様、強制的に実現するには勝訴判決を得たのち、強制執行手続を経なければならないのです。具体的には、隣地側に対して「この範囲で枝を切除せよ」という訴訟を起こしてその旨の判決を得た後に、強制執行により枝を切除します。

※強制執行は、具体的には代替執行(民法414条1項、民事執行法171条)という方法により行います。裁判所が手配した業者が枝を切り落とし、その費用を隣地所有者から取り立てることになります。

それにしても、木の枝を切り落とすだけなのに、訴訟や強制執行を行う必要があるとは、何とも迂遠な話です。とはいえ、法律上こちらには(根と違い)枝を切り落とす権利はないわけですから、勝手に切り落とせば器物損壊罪(刑法261条、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)に問われかねませんでした。

改正後の対処方法

2023(令和5)年4月1日に改正され、次のとおり変更されました。上記233条の規定はほぼそのまま残し(改正前の2項は4項に移動)、新たに2項と3項が加わりました。

【改正後】
民法233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
1、⼟地の所有者は、隣地の⽵⽊の枝が境界線を越えるときは、その⽵⽊の所有者に、その枝を切除させることができる。
2、前項の場合において、⽵⽊が数⼈の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3、第⼀項の場合において、次に掲げるときは、⼟地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 ⽵⽊の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、⽵⽊の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 ⽵⽊の所有者を知ることができず、⼜はその所在を知ることができないとき。
(現地調査に加え、不動産登記簿・立木登記簿・住民票など公的な記録を確認して調査を尽くす必要がある)
三 急迫の事情があるとき。
(台風によって折れた枝が建物を破損する恐れがある場合など)
4、隣地の⽵⽊の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

改定前の「根っこは勝手に切ってもよいが、枝は勝手には切れない」という大枠は基本的に残しつつも、枝については若干緩めた(例外を認めた)内容になっています。

すなわち、3項により、催告したが相当期間内に切除されない場合、竹木の所有者が不明あるいは所有者の所在が不明の場合、または急迫の事情がある場合には、裁判を起こさずとも勝手に枝を切除してよいこととなりました。この場合、切除費用は原則として隣地側に請求できる(※)ものと考えられます。
※不法行為に基づく損害賠償請求として。

もちろん(今までと同様に)1項に基づき裁判で切除請求をする(※)ことも可能です。
※隣地が共有の場合

細かいですが、隣地が共有の場合(※)、3項1号の催告は共有者全員にしなければなりません。ただし、一部の共有者が所在不明の場合には、3項2号によりその不明者に対しての催告は不要となります。
※正確には「竹木が」共有の場合ですが、多くは土地所有者が竹木の所有者なのでこのように表記しました。

要するに、判明している共有者全員には催告をする必要があるということです。

一方、裁判で切除請求をする場合(1項で請求する場合)には、共有者全員を相手にしなくともOKです。少し分かりづらいですが、2項の規定により共有者は誰でも切除することができると明記されたので、誰か一人に対し「切除せよ」という判決を取ればそれで強制執行ができることになります。

逆に訴えられないよう定期的に確認を

ご所有の不動産も定期的に確認が大切です。まずは所有地と隣地の状況が改正後の状況に当てはまるかどうか確認しましょう。

隣地との越境物に関する事件としては、令和3年9月に、東京都港区で発生した火災事故で、隣地から越境していた木の枝が燃え広がり、建物や車などに被害が出ました。この事故では、越境していた木の枝を切除するように隣人から求められていたものの、所有者が応じなかったことが原因とされています。

意外と自分の敷地から枝が越境していることに気づいていない土地の所有者も少なくありません。不要なトラブルを避けるためには、隣地だけではなく自身の庭木も越境していないか、自宅以外に所有している土地建物なども、定期的に確認することが大切です。

 

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