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『正直不動産』第4話を「正直宅建士」が解説。事故物件の増加と高齢者の入居拒否問題に斬り込む凄さ

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最終更新日:2022年5月2日
公開日:2022年4月29日

人気コミックが原作のNHKドラマ『正直不動産』第4話「いい部屋の定義」が4月26日(火)夜10時から放送されました。今回のエピソード、「正直宅建士」をモットーにこの道20年のキャリアを持つ不動産営業マンが、ドラマに出てきた専門的な話について解説します。

事故物件の増加と高齢者の入居拒否問題という不動産業界の宿敵もいえるテーマに真正面から斬り込んでいて、素直に「スゴいな」と思える内容でした。

※REDS「不動産のリアル」編集部では、どのメディアよりも早く、当日の放送直後にドラマの内容紹介と、作中で登場した不動産業界の商慣習や不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをまとめて、コラム記事として公表しています。こちらもご覧ください。

共用廊下を歩く高齢女性

(写真はイメージです)

「いい部屋の定義は人によって異なる」が今回のテーマ

第4話のタイトルは「いい部屋の定義」。不動産では、駅近・築浅・南向きなどが一般的に好条件とされ、賃料や売買価格は高めになります。逆に、駅から徒歩15分以上、築古、北向きなどの物件は条件が悪いとされ、賃料や売買価格が下がることが一般的です。

しかし、「いい部屋」とは人により考え方が異なります。

例えば、日常的に電車通勤をする人であれば、駅近物件が「いい部屋」です。一方で、自宅を事務所にして仕事をする人や近くに勤務先がある人など、日常的に駅を使わない人にとっては駅から離れていても問題がなく、逆に賃料が安くなったり専有面積が広くなったりして「いい部屋」となります。

このように、人の考え方や求めるものにより、物件の良しあしは変わっていくのです。例えば、ドラマの中では、事故物件、築年数が古い、保育園・幼稚園が近い物件は「条件が悪い」と敬遠する人の声がまず取り上げられていました。しかし、後半ではさまざまな理由で事故物件や築古物件、幼稚園が近くにあることをメリットとして感じる人が登場して、主人公の永瀬財地(演:山下智久)の逆転劇につながっていました。

なぜ事故物件がどんどん生まれるのか

さて、今回のドラマで取り上げられた事故物件。過去に室内で孤独死や自殺、殺人事件などが起きた物件を指します。大半の人が事故物件を嫌がります。その理由について法律の世界では「心理的瑕疵が強い」と言われます。心理的瑕疵とは、物件自体の設備などは問題ないものの、孤独死が起きたことによる気味悪さなどにより、心理的な抵抗が生じることを言います。

近年の日本では、単身世帯の増加により身寄りがない人が増えていて、不幸にも誰にも看取られずに最期を迎えてしまう人がいます。さらに、近所づきあいのない人は孤独死の後に発見が遅れるというケースも増えています。こうしたことから、以前と比べて事故物件の数はどんどん増えているのです。

賃貸オーナーも事故物件になることを嫌がり、高齢者の入居を断るケースが多く、これも社会問題となっています。ドラマでも、高齢の単身女性がどのオーナーにも入居を断られるシーンが描かれています。

事故物件以外にも、物件の近所に存在することで心理的瑕疵が生じる施設としては、墓地、火葬場、刑務所、工場、鉄塔、ガスタンクなどがあります。

事故物件の賃貸・売買で告知義務が定められたのは令和に入ってから

事故物件を賃貸や売却をするにあたって、オーナーや不動産業者に課せられている義務はあるのでしょうか。

まず、貸主・売主には告知義務があります。しかし、どのように告知するのかは最近まで非常にあいまいで、明確なガイドラインが決められたのは実はごく最近、令和3(2021)年10月8日のことでした。

国土交通省が発表した「人の死の告知に関するガイドライン」では、賃貸住宅の告知期間は事故が起きた日から3年を経過する日まで、売買の場合は経過期間に関わらず告知義務が残り続ける、と定められました。告知義務に違反すると、契約の解除はもちろんのこと、損害賠償を求められることがあります。

事故物件を閲覧できるサイトが生まれた理由

ドラマ内にて、事故物件を閲覧できるサイトが登場します。悪徳不動産会社の「ミネルヴァ不動産」は、永瀬が勤務する登坂不動産の取引を妨害するために、顧客が検討しているマンションで「練炭自殺があった」という偽情報を事故物件サイトに書き込みました。妨害された永瀬も、以前はその手法を行っていたと白状しました。これほどエグいことが不動産業界で実際にあったかは、業界にいた私にも分かりません。

一方、ドラマでも出てきた事故物件サイトは実在します。この事故物件サイトはミネルヴァ不動産のように他の業者の取引を妨害するのが目的ではなく、借主や買主が事故物件と知らずに契約を進めることを防ぐ、という大きな目的がありました。

先に述べたように、国土交通省のガイドラインができるまで、告知義務については不動産会社の裁量に任されていました。賃貸住宅においては慣例として、事故が起きたあと最初の入居者にのみ事故があった告知を行っていました。つまり、その次の入居者からは事故が起きた時からの期間に関係なく、告知を行っていなかったのです。

この慣例を悪用する不動産会社もありました。事故があった物件に不動産会社の社員を1カ月間だけ住まわせ、告知義務をなくした状態で次の入居者に貸すという手法です。事故物件となることで、オーナーが最も恐れるのは、賃料を安くしないと入居者がつかないということです。賃料を下げると、不動産会社の仲介手数料も下がります。このため、早期に正規の賃料に戻すことを目的にこのような手法が横行していたのです。

「カスタマーファースト」とはかけ離れたこんな商慣習の中で、賃借人や買主が知らずに事故物件をつかんで嫌な思いをしたり損失を被ったりしないように立ち上げられたのが、事故物件サイトなのです。

現代科学で事故物件をなくし、悲しむ高齢者が出ないように

ドラマでも描かれているように、高齢者が賃貸住居の入居を拒否されるケースは実際多くあります。これは高齢者を住まわせると事故物件になるリスク、事故後の風評被害で他の入居者にも退去されるリスク、賃料を下げて募集しなければならないリスクと、賃貸住居のオーナーにはリスクでしかないという風潮があるからです。

しかし、超高齢化社会を迎える中で、こんなことを続けていたのでは、社会は成り立ちません。ドラマの中で永瀬が言っていましたが、人感センサーなど見守りシステムを備えたマンションとすることで、住人の異変を早期に発見することも現代の科学では可能になっています。事故物件をリスクと考えず、事故物件を防ぐシステムを構築することで、事故物件の増加を防ぐことができますし、大きなビジネスチャンスともなるでしょう。

この問題は不動産業界全体でもっと議論されるべきトピックです。冒頭でも述べましたが、ドラマで不動産業界の宿痾ともいえるテーマに真正面から斬り込んでいたことに、本当に制作陣の作品にかける思いの凄さを感じました。事故物件が好奇な目で見られることで不動産取引が停滞してしまうこと、そして齢を理由に住居を持てないという風潮が一刻も早くなくなるようにと、不動産賃貸や売買を手がけてきた宅建士として強く願います。

 

戸田亜紀男(宅地建物取引士)
埼玉県出身。帝京大学理工学部卒。新卒で不動産業界に就職し、不動産業界歴20年の現役の営業マン。多くのメディアにて執筆活動を展開。現役営業マンならではのリアルな視点での解説には定評がある。

 

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