『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

最終更新日:2023年12月25日
公開日:2022年9月9日

埋蔵文化財包蔵地は意外と身近にある!~『正直不動産』をプロが解説(6巻 41・42話より)

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『正直不動産』は、小学館発行の「ビッグコミック」に連載されている漫画作品です。単行本は、現在第14巻まで発売されており、2022年4~6月にはNHKでドラマ化され大人気となりました。主人公の永瀬財地を山下智久さんが演じたこともあり、さらに若い女性ファンが増えた印象です。

そのドラマも2022年6月7日に最終回を迎え、「正直不動産ロス」「さいちんロス」の声があちこちから聞こえました。もちろん私もその声を上げた一人です。

ロスから立ち上がり最近は漫画を読んでいますが、その中で気になった「埋蔵文化財包蔵地」のテーマについて宅建士の視点で解説します。このエピソードは、ドラマの最終回で登坂不動産とミネルヴァ不動産が直接対決したクライマックスシーンで使われたので、読者の方にも既視感があるでしょう。

宅地造成地で活躍するショベルカー

(写真はイメージです)

そもそも埋蔵文化財包蔵地って何? 調査方法も解説

「埋蔵文化財包蔵地」とはどういうものかご存じでしょうか。文化庁のサイトに以下のように記載されていましたので引用します。

“埋蔵文化財とは,土地に埋蔵されている文化財(主に遺跡といわれている場所)のことです。埋蔵文化財の存在が知られている土地(周知の埋蔵文化財包蔵地)は全国で約46万カ所あり,毎年9千件程度の発掘調査が行われています。”
埋蔵文化財 | 文化庁

全国で約46万カ所もあるわけですから、埋蔵文化財包蔵地は特別な地域にあるのではなく、案外、身近な場所に存在していることがお分かりいただけるでしょう。

埋蔵文化財包蔵地に家を建てる場合、着工の60日前までに役所への届出が必要となります。土地を購入したらすぐ建築したくなりますが、埋蔵文化財包蔵地ではそうはいきません。このため、建築計画が予定どおり進まなくなる可能性もあるので注意が必要です。

埋蔵文化財包蔵地を売買する場合、不動産仲介会社は必ず重要事項説明書で取り上げて、買主にしっかり説明するべき事項のひとつとなります。以前は地図を片手に役所の教育委員会などに出向いて調査していましたが、最近では多くの都道府県、市区町村のウェブサイトで調査できるようになりました。購入しようとしている土地が埋蔵文化財包蔵地でないか気になる方はぜひ確認してみてください。
東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス

漫画『正直不動産」の中でミネルヴァ不動産の瀬戸は、縄文土器らしきものが見つかった際「ここは隣接こそしていますが、埋蔵文化財包蔵地ではないので、告知義務はありません」と説明していました。

一般的な重要事項説明書の書式では、「その他の法令に基づく制限」のところに30を超える法令が記されていて、該当する法令に丸をつけて備考欄で詳細を説明するようになっています。

「隣接地は届出が不要だから、文化財保護法の欄に丸をつけないし説明する必要がない」というのはグレーな気がします。私は実際に隣接する場合も説明していました。知り得た情報はすべてお伝えするスタンスでしたし、万が一のときに買主様が困るようなことはしたくないと考えていました。

ちなみにその他の法令に基づく制限には、建物の色彩や仕様に制限があり、新築や増築する際に届け出が必要な「景観法」や、がけ崩れや土砂災害が懸念されるエリアであることから一定の造成工事する場合に許可が必要な「宅地造成等規制法」などがあります。契約の際に説明されたのでは遅い内容の可能性もあるので、契約に先立って行われる重要事項説明は、なるべく早く受けるようにしたいものです。

私自身も埋蔵文化財包蔵地に該当する土地や建物を取引したことがあります。実際の調査方法は以下のとおりです。

まず役所(多くは教育委員会が担当)で、対象不動産が埋蔵文化財包蔵地に該当するのか否かを確認します。もし該当していたら遺跡名や時代、種別などを聞き取り、実際に家を建てる場合などの届出方法などを確認。そして、その自治体が発行している、埋蔵文化財包蔵地を開発する場合のマニュアルを受け取ります。現在はウェブサイトや電話などでも確認できる自治体がありますが、該当する場合は実際に役所にて聞き取り調査をすることをおすすめします。

サブリースは本当に賢い選択? 違法ではないけれど無理のない計画を!

そろそろ漫画『正直不動産』に戻りましょう。

跡取りがいない叔父の土地建物を相続した平尾晴哉は、当初売却を検討していましたが、ミネルヴァ不動産の瀬戸に説得されサブリース契約を結びます。そして叔父の葬式後10日で建物を解体してしまいます。通常は四十九日の法要を終えるまでは不動産の取引を控える人が多いのですが、この場面でカネに目がくらんだ平尾の浅はかさが浮き彫りになります。

サブリースとは、作中にも説明がありますが「不動産会社がオーナーから賃貸建物を一括して借り受け、一戸単位で入居者に転貸する、一定期間内の一括借り上げ契約」です。

平尾は瀬戸に「サブリース契約を結ぶほうが、節税面でもご子息に残す財産としても賢い選択だ」と説かれ、その計画を鵜呑みにしたのでしょう。確かに現金は額面どおりに相続税がかかりますが、土地は相続税評価額が時価の8割程度となるので、現金よりも不動産のほうが相続税対策にはなります。またローンは負債となりますので、所得が多い人にとっては節税効果が期待できます。

しかし、ここで問題なのは、無謀な資金計画です。契約時の家賃想定が相場よりも高く見積もられていたり、契約内容がオーナーにとって不利なものになっていたりするケースがあります。このため、1社の話を信用するのではなく、複数社に相談することをおすすめします。サブリースの不祥事は記憶に新しいと思いますが、不動産事情について詳しくない人が見破るのはかなり難しいことでしょう。

またアパートを複数名で相続する場合、分割が難しいので遺産分割協議が進まないケースがあります。あるいは相続税を払うために現金が必要になり、結局売却せざるを得ない場合などもあります。いずれにせよ事前によく検討してから契約するようにしましょう。

土器が出てきたら建築計画は白紙?

埋蔵文化財包蔵地がゆえに商業施設が撤退となった実例もあります。既存の建物がある場所ではなく、駐車場部分に新たに商業施設を新築するよう計画されました。

しかし、試掘により歴史的にも価値がある遺跡が発掘され、事業は中止となり最終的には商業施設自体が撤退してしまいました。元駐車場は現在遺跡を保存する施設となっています。商業施設の移転先だと思われたところに新店舗は今も建設されていないので、計画自体が頓挫してしまったのかもしれません。

このように、埋蔵文化財包蔵地は売買が伴わなくても、その包蔵地内で土木工事などの開発行為を実施する場合には届出が必要になるので、注意が必要です。

さて、作中では試掘調査の結果、いくつかの遺物が発見されますがミネルヴァ不動産の瀬戸は逃げ腰のままです。破産しかねない状態になり困り果てた平尾は、登坂不動産の永瀬に相談します。

契約上オーナーである平尾からは契約解除できないサブリース契約となっていましたが、永瀬はミネルヴァ不動産に乗り込み、鵤社長に違法性を指摘し、その上で契約解除時に支払う違約金の減額を求めます。

ここからが見せ場です。その交渉の場に登坂不動産の登坂社長と大河原部長が登場します。そして遺物を見たという解体業者らしき人物に口止め料をもらったことを証言させるのです。業務停止や免許取り消しを恐れたミネルヴァ不動産の鵤社長は、最終的には違約金なしでの契約解除を受け入れました。

平尾は永瀬が見つけてきた買主に土地を売却し、永瀬は仲介手数料を手にすることができ一件落着です。正直者である永瀬が報われ、物語はハッピーエンドとなりました。

 

桜木理恵(宅地建物取引士)
大学4年時に宅地建物取引士に合格。新卒で私鉄系不動産会社入社し約8年間、売買仲介担当として従事。その後出産・子育てのため、大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し、5年間勤務。信託銀行にて不動産調査や不動産管理会社にてPMの経験あり。保有資格は他に2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)。

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