最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年9月21日
テーコー不動産新宿支店の営業チーフ、三軒家万智(北川景子)が家を売って売って売りまくる痛快お仕事ドラマ「家売るオンナ」も第10回、いよいよ最終回を迎えることとなりました。奇想天外な発想と手法で家を売り、お客様ばかりか会社の同僚の生き様にまで影響を与えてきた万智です。最終回では、どんな家をどのような方法で売るのでしょう?また彼女や周囲の人間の今後は描かれるのでしょうか?
今回も、ストーリーに沿って、ドラマの中のウソ・ホントをいくつかご紹介したいと思います。
ビルのテナントを埋めて収益物件として売却しよう、とみんな頑張っていますけれど…
ある朝、屋代課長(仲村トオル)のもとに、行きつけのバーのママ珠城こころ(臼田あさ美)が泣きついてきます。ビルの解体で立ち退きを迫られている、とのこと。屋代課長は何とか力になろうと、ビルのオーナーと会い、ビルを売却できるのであれば解体してもしなくても構わないという確認をとります。そこで、既に立ち退き済みで空き室になったテナントを埋めて採算性を上げ、ビルの転売先を見つけようと課の方針を固めました。ビルは地上2階/地下1階建てで、1階は1店舗、2階は1住居、地下1階は3店舗の間取りです。現在の入居者は地下のこころのバーだけです。万智を除く課員が一丸となってテナントを探し、どうやら地下1階の空き店舗2つは埋められそうです。しかし、この努力の方向は的外れな気がしてなりません。
ビルの売買のポイントは再生による付加価値UPと収益性
テナントビルの売買で1番のポイントは収益性です。ネタバレになりますが、最終的にこのビルは10億円で売れましたので、オーナーの希望価格や周囲の取引価格も実際その程度だと仮定して、収益還元法といわれる方法から必要家賃を逆算してみましょう。
収益還元法というのは年間の収益を希望利回りで割り返して、不動産の査定価値を計算する方法です。
(収益)÷(利回り)=(査定価格)
収益は家賃収入のみとした場合、利回りを収益物件としては少し低めの表面利回り年8%、査定価格を10億円と仮定して逆算すると、月額の必要家賃収入は667万円となります。つまり、月額667万円の家賃収入がないと収益物件として10億円で売るのが難しい物件ということです。
このビルの間取りでその収益を得るために各階の家賃を2階:1階:地下で1:2:1の比率で設定すると、2階166万円、1階店舗334万円、地下1階のテナント1軒あたり55万円となります。こころのバーは10坪そこそこの小さいバーですから、それだけの賃料はとても払えないのではないかと思います
坪あたりで計算すると5.5万円程度となりますが、ある不動産会社の賃貸相場報告によると、新宿の1階テナントの最高額は約6万円/坪となっています。仮にこのビルが新宿最高レベルの立地条件だったとしても、1階の店舗で334万円の家賃を得ようとすると56坪の広さがなければいけません。ちょっと現実的ではないですね。2階の166万円/月の住居家賃も同様です。都心のタワーマンションでもなかなかここまでの家賃が取れる部屋は有りません。
従って、今の家賃レベルのままテナントを埋めても、収益性が低すぎてオーナーが満足する価格では売れそうもありません。屋代課長の提案に沿ってビルを売ることは、最初から非現実的なことだったといえます。更地にして周辺の土地と合わせて再開発する、ビルを建て替えて高層化する、あるいは建物をリノベーションして全く新しい価値を創造して提供する、という方法が現実的といえるでしょう。
元バレリーナと足の不自由な娘のための家探し
一丸となっている営業所の同僚とは距離を置き、万智は元バレリーナの望月葵(凰稀かなめ)から、事故で車椅子生活となった娘カンナ(堀田真由)と2人で暮らす家を探すよう依頼されます。葵の夫は資産家で、シンガポールで愛人とその子供と暮らしているとのことです。
万智は、こころの店が入っているビルのことも密かに気になっていたようです。1人で下見に行って、鍵の開いていた1階と2階にこっそり入り、壁紙を破ったり、ドンドンと飛んだり跳ねたりしています。そして一言「このビル、私が売ります」。その後、後輩の庭野(工藤阿須加)に、壁紙やカーペットを剥がすよう命じます。何やらいい案を思いついたのですね。
しかし、壁紙やカーペットを勝手に剥がすのは問題が有ります。自分の会社がテナント探しを依頼されたビルだからといって、勝手にビルの中に入って内装を変更するのは業務の範囲を超えています。会社として鍵を預かっていて業務(ご案内等)として建物に入ったのなら問題ありませんが、万智の場合は会社の誰にも言わずに入っていますから、会社としてその行為を認めることはないでしょう。無断で壁紙やカーペットを剥がすのは論外です。結果としてビルは売れましたからオーナーが訴えることはないでしょうけれど、この時点で気付かれていたら問題になったでしょう。
常務の命令に背き、ビルを売る万智、やっぱりクビになるの?
屋代課長に常務から電話が入り、本社が当該ビルを含めて再開発を進めているので、ビルの売却から手を引けと命じられます。「諦めよう」という屋代課長に、万智は「あのビルは私が売る。私が大切なのはお客様です。課長はこころの人生を背負ったのではないか、それを見放すのなら会社の犬だ。私はクビになっても構いません」と啖呵を切ります。
そして、1階をバレエスタジオに改築し、葵たちの夢をもう一度かなえるための家としたのです。壁紙やカーペットを勝手に剥がしたのはこのためでした。さらに、1人でシンガポールに行き、葵の夫にこのビルを10億円で買うことを提案します。葵たちは、夫に購入してもらうことを受け入れ、人生をやり直す決意をします。こうして、万智は見事に10億円でこのビルを販売しました。
ビルを売ったことを報告する万智に、屋代課長は命令に背いたことを怒るのではなく、仲良く辞表を出そうかと提案します。屋代課長も、覚悟を決めたようです。
でも、常務の命令に背いたことで、ホントに会社を辞めなくてはいけないのでしょうか?
万智はおそらく大丈夫、でも屋代課長には厳しい将来が
テーコー不動産がどの程度の規模の会社なのかはわかりませんが、新宿の再開発を計画するような規模の会社であれば労働組合があるのではないかと想定できます。万智はチーフとはいえ管理職ではないようですし、違法行為をしたわけでもなく、会社の方針とは違う販売をしただけですから、組合問題になることを恐れて会社は解雇することはないでしょう。万智の実績も捨てがたいものがあるはずです。
一方で、管理職の屋代課長の将来は暗いものになってしまいそうです。会社にとって莫大な利益をもたらすはずの開発計画の阻害要因を、上司からの指示があったにも関わらず、生じさせた罪は重いでしょう。管理能力不足を問われて、減給や降格、さらには実質的な退職勧奨を受けるなどといった厳しい処分があってもおかしくありません。
「サンチー不動産」
エンディングは、どこか田舎の海辺に設立された「サンチー不動産」で、万智と屋代が2人で家を売っています。2人が結婚したのかどうかはわかりませんが、どうやら万智が社長のようです。新宿営業所の面々も元気な様子です。どこにいても人が住む家がある限り、万智は家を売っていく、としてドラマは終わります。
平均視聴率10%を超える人気ドラマでしたので「帰ってきたサンチー」の続編を期待したいと思います。そしてまた、このコラムを再開できることを心待ちにしています(笑)。
(監修:不動産流通システム)
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最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年9月13日
北川景子が演じる、テーコー不動産の営業チーフ、三軒家万智の活躍を描く「家売るオンナ」(日本テレビ系)は、平均視聴率が10%台を楽々キープしている人気ドラマとなっています。めちゃくちゃ困難に見える不動産物件の売買を成功させる万智の奇抜な発想や、登場人物たちのコミカルな演技、結果的に家を買った人が自分なりの幸せを見つけるに至るストーリーなどが受けているようです。万智のキャラクターも受けているようですね。不動産会社に限らず多くの会社で、部下に仕事を命じるときに、「○○さん、GO!」と万智の決め台詞を使うオジサンが増えているのではないでしょうか(笑)。
今回もストーリーを追いながら、不動産の売買に関するトピックスやエピソードをご紹介していきましょう。
そんなにべらべら喋って大丈夫なの?
ダメ社員の白洲美加(イモトアヤコ)は、自分の生家を万智が販売したとき以来、万智を尊敬するようになっており、仕事にも前向きです。今日も自分から率先してポスティングに出かけます。すると、週刊誌の記者に声をかけられ、「デキる女特集」という企画のために万智のことを教えてほしいと頼まれます。カフェで奢ってもらいすっかり気をよくした美加は、万智が奇想天外な手法で販売した家について詳細に話してしまいました。業務で知りえたことを第三者にベラベラしゃべるなんて、社会人としてちょっと問題ですよねえ。
不動産会社の守秘義務
宅地建物取引業法では、
「宅地建物取引業者およびその従業者は、その業務上知りえた秘密は、正当な理由がなければほかに漏らしてはならない」(業法45条、75条の2)
とされています。
不動産会社は、不動産の売買における当事者の住所・氏名・年齢・職業といった基本情報から、資産情報やローンの状況、家族の情報までプライバシーの領域にまで踏み込んだ重大な情報を把握します。これらの重要な情報の漏えいを阻止し、利用者の利益を保護するための規定です。これに反した場合は、営業停止などの処分や罰金刑を受けることがあります。
また、テナントビルや1棟売りマンションなどの収益物件売買の際には、売り主側としては、売却を検討していることが風評に上ることを嫌ったり、店子に知られたくなかったり、空き室率や収益率を知られたくなかったりすることが普通です。このため、詳細検討のための資料を開示する場合、その条件として買主に対して、秘密保持契約の締結や守秘義務誓約書の提出を求めることは当然ある話です。
個人情報の取り扱いについては昨今、どの業界も非常に気を遣うようになりましたが、とりわけ不動産業界は業務上の秘密の保持にはとにかく神経質な業界です。尊敬する万智のことを褒めたいからといって、価格やお客様の情報を、他人に明かしてしまった美加の行動は、立派な業法違反です。会社の信用上も大きな問題となります。
案の定、会社で話をしたことがばれた美加は大目玉を食らいました。慌てて出版社に記事の差し止めに向かう屋代課長(仲間トオル)でしたが、記者は「美人悪徳不動産屋として記事を書こうとしたが、悪口をいう人が誰もいない、記事にならない」と言われます。胸をなでおろしたところに、「そんなに家を売るのがうまいのなら、自分が所有している2世帯住宅を売ってほしい」と依頼までしてくれました。「芸は身を助ける」とはこのことかもしれませんね。
外国人は家を借りるのが難しい?
万智の行きつけのラーメン屋で働くビクトル・ムサ(星野ルネ)が恋人の雨宮波留(八木優子)を連れて、万智を訪ねてきました。ビクトルはナイジェリア人の大学院生ですが、現在アパートを貸してくれる人がいなくて、何人もの留学生と狭い部屋で共同生活しているので恋人と住む家を探してほしいとのことです。「両親は外国人との恋愛を認めないだろうが、ゆくゆくは彼とナイジェリアに一緒に行くつもりだ」という波留の覚悟を聞き、万智はふたりのために賃貸アパートを探すことを約束します。このように、外国人が住む家を探すのは、やっぱり難しいのでしょうか?
「外国人お断り」が多いのは、残念ながら事実です
多くの賃貸アパートやマンションで、外国人の入居を断っているところが多いのは事実です。このことが日本に住んでいる、または日本に住みたいと思っている外国人の方には、大きな問題となっています。
理由は、様々なことがあります。まず、言語の問題。賃貸物件のオーナーや仲介する不動産会社の社員は、まだまだ英語や、ましてやその他の言語を話せる人は少ないといってよいでしょう。不動産会社には、借主に重要事項説明書や契約書を説明する義務があり、理解してもらう必要があります。日本語のできない外国人の場合にはその義務が果たせないことになります。また実際に入居した後の日常の意思疎通が簡単にできないかもしれないことに不安を感じるオーナーも多いのです。
日本では、賃貸借の場合に連帯保証人を立ててもらったり保証会社を立てたりして、家賃回収の保全をするのが一般的です。これが日本国民なら比較的容易なのですが、単身の外国人の場合、保証人を立てるのが困難なことが多いです。また、保証会社も外国人は対象外とする場合が多いようです。万が一、家賃を滞納して母国に帰られてしまえば、回収の方法がないからです。かくいう私も、韓国人の友人が日本に住んで起業した際に、どうしても日本人の保証人がいないと部屋が借りられないと請われて、保証人になったことがあります。
このほか、文化の違いも大きいです。下手をすればトラブルにもつながりかねません。室内での土足使用やトイレやお風呂の使い方などの違いから、部屋を汚したり傷つけたりすることがあるのではと心配したり、音や独特の香りが周辺住民に迷惑になるのではと懸念したりするオーナーもいます。昨今では、イスラム教徒や中東の方にテロとの関係を恐れるオーナーが増えています。
こうした、文化や宗教を理由とした入居拒否は、偏見や差別につながるので、決して褒められた話ではありません。しかし、仲介する不動産会社はオーナーが貸したくないという相手に、無理矢理契約を締結させることはできません。
国土交通省「宅地建物取引業者の社会的責務に関する意識の向上について」
国土交通省は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」という通達で、「賃貸住宅の媒介業務に係る不当な入居差別等の事態が発生している」としています。在日外国人のみならず障害者やその他の差別を巡る人権問題に対する意識向上を図り、不動産業者に対する周知徹底および指導を行う必要があるというのです。「外国人お断り」が横行する現状を打破するためには、不動産売買にかかわるすべての人の意識向上とともに、差別解消のための積極的な施策に取り組むことが必要だと思われます。
相手の文化を尊重することが大事
さて、雨宮波留の親夫婦と兄夫婦は折り合いが悪く、別々に家を探していました。しかし、万智は「違うようで似ているんだから」と説き伏せ、両者に二世帯住宅を販売しました。
そこに招かれたビクトルは、家族が壁に仕切られている様子を見て「ナイジェリアではこんな家はありえない」と怒ります。壁を壊せと騒ぎ出し、波留の母の智代(鷲尾真知子)は怯えてしまいます。そんなビクトルに万智は
「壁があり、いつもは顔が見えないからこそ相手を思いやる、奥ゆかしく思いやるのは日本の美徳です。そのような日本の文化を理解しなければ困ります。」
と一喝します。
それを理解したビクトルとともに、雨宮一家はホームパーティーを楽しむのでした。
家族であっても、外国人との関係であっても、異なる文化を持つ人たちと共存していくには、相手の文化を尊重すると同時に自分の文化を理解し尊重してもらう、という相互の関係がないと成り立たないことを、象徴するシーンだったともいえるでしょう。
次回が最終回
「家売るオンナ」も第10回の次回は、いよいよ最終回とのことです。万智を巡る人間関係は次第に好転し、万智の弁舌も徐々に人間味を帯びてきたような気がします。もうしばらく万智の勇姿を見ていたかった気もしますね。続編を期待するのは、気が早すぎますかね(笑)。
(監修:不動産流通システム)
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最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年9月7日
日本テレビ系ドラマ「家売るオンナ」(毎週水曜夜10時より放送)は、不動産会社の営業チーフ三軒屋万智(北川景子)が、毎回、奇想天外な手法で家を売りまくるドラマです。
最初は、彼女の強烈な言動を煙たがっていた職場の同僚たちですが、次第に彼女の「不動産屋の仕事は家を売ることです」という揺るがぬ信念と顧客への真摯な対応に心動かされ、シンパとなる人も増えてきたようです。エリート社員の足立(千葉雄大)、新米社員の庭野(工藤阿須加)、ダメ社員の白洲(イモトアヤコ)などの面々です。
職場の雰囲気も、彼女を中心に徐々に積極的な姿勢に変わってきています。課長の屋代(仲村トオル)も彼女を認めざるを得ない、といったところでしょう。
今回もドラマで語られる不動産営業について、気になった点をピックアップしてご紹介しましょう。
不動産会社の営業担当替えは簡単にしてもらえるの?
足立は、朝からテンションが上がっています。それもそのはず、今日は「日本一かわいいお天気お姉さん」「6:58の恋人」と呼ばれる人気急騰中の気象予報士、前原あかね(篠田麻里子)のアポがあるのです。庭野もあかねのフアンで、すっかり嬉しくなり、お茶出しを引き受けます。
ところが、マネージャーの津田順(和田正人)と現れたあかねは、禁煙のオフィスでいきなり煙草をふかし、ヤンキー言葉で啖呵を切るような傍若無人の振る舞いをします。しかも、実は津田と結婚しているというのです。
自分の出演するテレビ日本から徒歩10分以内の家を探せというあかねですが、足立と庭野はテレビで観るあかねと現実とのギャップにすっかり動揺して、ドギマギするばかりです。
話を終え会社を出たあかねですが、津田に電話をさせ、屋代課長に「あの二人が担当じゃ心許ない、家を買うことは重要なことなので、神経質になっている。担当を替えろ」と主張します。
屋代は「それではウチのNo.1の三軒家万智を担当にします」と、あっさりとそのクレームを受け入れ、担当を替えてしまいました。
でも、不動産営業は個人の成績やノルマが厳しい世界だと、このドラマでも何度も語られていますよね。現実の世界でも、顧客からのクレームで、こんなに簡単に担当替えが起こり得るものなのでしょうか?
担当は変えられます。不安や不満があれば、先方の上司に相談してみましょう
インターネットの不動産に関する相談コーナーなどでも
「不動産会社の担当が信頼できない、不満があるのだが、替えてもらえないものだろうか」
という悩みや質問は意外に多いものです。
でも答えは簡単。会社に希望を伝えれば、当然担当は替えてもらえます。
不動産会社の営業担当者の割り振りは、ドラマの様に来店予約を取った者が担当になる、と決められているわけではなく、
- その時点で一番担当案件が少ない者
- 来店時に在席した者
- 購入希望地域の担当の者
- 上長が権限で指名する者
など、各々の会社で千差万別のルールによって決められています。
しかし、それは各社の内部ルールですから、実際に購入を検討するお客様が、担当者に不安や不満があって替えてほしいと感じるならば、それは、はっきりと会社に伝えるのが正解です。
重要なことだからこそ、信頼できる人に依頼することが重要
あかねが言うように、家を買うことはまさしく重要なことですので、信頼に足る人を担当にしてもらいたい、というのは当たり前のことです。
その場合は、本人に言うのではなく、本人よりも立場が上の責任者に、そう思うようになってしまった事実とともに明確に伝えることが必要です。
それでも事態が改善しなければ、その不動産会社とはお付き合いを避けた方がいいでしょう
担当変更は、不動産会社側は真摯に受け止め対応すべき
もちろん、担当替えは、会社にとっても担当者にとっても屈辱的なことであるのは間違いありません。真摯に受け止め、その原因が何であるかを追究し、会社も担当者も改善していくことが必要です。
足立は、信頼に足ると思わせることのできなかった自分に不甲斐なさを感じて、新たな担当の万智に全面協力を誓います。
同じく庭野も全面協力を誓いますが、こちらは単に万智のことが好きなだけのようで、もう少し反省した方がいいような気もしますが…。
探偵みたいな身上調査 不動産営業ってそこまでするの?
万智は新担当者として、津田に会いに行きます。
すると津田は、実は自分も気象予報士で、あかねはアシスタントとして働いていたが、結婚後はあかねの人気が上がり、自分は失業。
今は主夫として、マネージャーとして、あかねの身の回りの世話をしているだけで、彼女はもう自分を必要としていないのかもしれない、と語ります。
そんな話の途中で、津田にかかってきた電話の様子から、万智は津田に浮気相手がいるのではないかと疑います。
会社に戻った万智は、全面協力を申し出た足立と庭野に「オンナがいるはずだ!旦那を探れ!」と命じます。
「それは不動産屋の仕事ではないのでは」と異を唱えた庭野に、万智は「家を売るためです」と言い放ち、2人に津田を尾行させます。
不動産営業は、そこまでやらないといけないのでしょうか?
「本人確認」は契約時には義務化されています
不動産業者は、不動産の購入希望者に住所・氏名・年齢・職業などの他に、配偶者や子供の数、購入の動機などプライベートなことも確認します。
これは、できるだけお客様のライフスタイルや希望、収入に見合った物件を紹介するために行うものです。
また売買契約締結時には、犯罪収益移転防止法に基づき、宅地建物取引業者は売買当事者の本人特定事項(住所、氏名、生年月日)、取引を行う目的、職業を確認し、確認記録と取引記録を作成して、7年間保存しなければなりません。
でもさすがに探偵まがいのことはしません!
しかし、足立や庭野のように何日もお客様を尾行するなんてことはしません。
ましてや、万智のようにお客様のデート相手(浮気相手?)に話しかけ、勝手に帰してしまうような真似などできるわけがありません。
こんなことがバレたら、重大なプライバシーの侵害として訴えられてもおかしくありません。ですのでこれはもちろん、ドラマならではの出来事です。
「ひとつ屋根の下で一緒に暮らすなら、それは家族です」
万智に浮気をとがめられた津田は、たとえ男と女としては終わった関係であっても、あかねが一番大切な存在だと気づきます。
結婚していたことを週刊誌にすっぱ抜かれて荒れるあかねに、万智は天窓がある家を紹介します。
気象予報士としての初心を思い出した2人に「人間としてお互いを必要としている2人は離れることができません」という万智の言葉が沁み渡り、成約に至ります。
そして一方で屋代は、成約の報告にきた万智が発した「ひとつ屋根の下で一緒に暮らすなら、それは家族です」という言葉にヒントを得て、バブル時代の遺物として売れ残っていた5SLDKの家を、元妻の理恵(櫻井淳子)に売ることに成功します。
実は、屋代は理恵から、2度目の離婚で得た家を売却して新しい家を購入したい、そして2人でやり直したいと迫られていました。
しかし、屋代は復縁を断り、理恵と理恵の離婚仲間3人に5SLDKの家をシェアハウスとして、家族のように暮らしてみてはどうだと提案し、受け入れられたのです。
流石、屋代課長です。だてに課長はしていません。一石二鳥の提案でした。
シェアハウスの現実
「テラスハウス」という番組のおかげで、シェアハウスは、一躍住居形態のひとつとして市民権を得ました。
都心部の20代から30代の女性がほぼ7割を占めるというシェアハウスの需要層ですが、今後ますます需要は広がると予想されています。その要因として大きいのは経済的な理由です。
4LDKの家を4人でシェアすれば、1人当たりの家賃が周辺の1DKよりも安くなり、しかもランクの高い物件に住むことができることが往々にしてあるからです。地方の空き家対策としても有効だといわれています。
近年では、ゴルフやサバイバルゲーム、テニスなどの趣味を共通とする人向けのシェアハウスや、ドラマの様にバツイチで将来に不安を持つ女性向けのシェアハウスなど、共通項を持つ人向けのものも増加しています。
シェアハウスのニーズはどんどん上がってきており、現在では専門の不動産会社や運営会社も設立されています。屋代課長の目の付け所もまんざらではありませんね
今回は、家を売ることよりも、あかねと津田、屋代と理恵、万智と足立と庭野、などの人間関係に重きを置いたドラマに仕上がっていたような気がします。
もっと硬派な万智を次回は観てみたいと期待しています。
(監修:不動産流通システム)
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最終更新日:2022年1月20日
公開日:2016年9月2日
そんな人気ドラマも7話目になりました。今回もドラマで描写される不動産営業について、本職の不動産業者からみたトピックスやエピソードをご紹介しましょう。
不動産屋の正念場は土日です!
屋代課長(仲村トオル)が営業で不在のため、代理で万智が朝礼を仕切っています。週末の顧客とのアポを確認すると、5件のアポを持つ足立(千葉雄大)以外は、皆3件以下しかアポがありません。万智は
「不動産屋の正念場は土日です。この土日に成果をあげられない者は、不動産屋ではありません。」
と、1件もアポを取れていないダメ社員の白州美加(イモトアヤコ)には3000枚のポスティングを、3件以下の者には顧客名簿を用いて電話をかけるように命じます。
土日のかき入れ時前の「気合い入れ」、不動産会社の朝礼ではよく見かける光景です。万智の指示も、極めて明快かつ具体的で、上司の指示はかくあるべきですね。でも土日もお仕事なんて、不動産会社も大変です。家族を顧みず仕事に邁進したあげくに家族に捨てられてしまった屋代課長の身の上もなんだか納得できるような気もしてきます。いったい、いつお休みを取っているのでしょう?
不動産会社の定休日が水曜日に多いのはなぜでしょう?
不動産会社の定休日は水曜日が多いです。今では、企業向けの土地や収益物件を主に扱う会社は、土日を定休日としているところも増えてきましたが、以前は水曜日を定休日としているところがほとんどでした。
では、なぜ水曜日が定休日の会社が多くなったのでしょう?
理由は、3つあるといわれています。1番目の理由は、業務サイクルの効率性です。サラリーマンの方など個人向けの物件のお客様は、土日がお休みの方が多いです。そのため、ご家族そろっての内覧や現地販売会、住宅展示場への来店や打ち合わせは、土日に集中することがどうしても多くなります。
また、万智の指示にもあるように、木曜日や金曜日は、その貴重な土日を無駄にしないためのアポ取りや宣伝活動といった準備に時間が割かれます。月曜日や火曜日は、土日の営業をフォローし、成果が上がるように、社内報告や承認作業、お客様へのフォローや契約、決済などが行われることになります。このように1週間の業務サイクルを考えると、水曜日を定休日とすることが、効率がよいといえます。
2番目の理由は、不動産仲介の仕事は、同業他社からの情報が極めて重要だからです。折角、お客様から引き合いがあっても、他社からの紹介物件の場合、問い合わせや内覧の手配をしようとしても、その物件を紹介してくれた会社がお休みで連絡がとれないのでは、どうすることもできません。そのため、同業他社の定休日に自社の定休日を合わせることが多くなり、水曜日に集約されたのです。
3番目の理由は、不動産業界が縁起を重んじる業界だからです。不動産の取引は、俗に「千三つ」、千の案件があっても3つ決まれば運が良いというほどで、なかなか成約に至ることは難しいものです。そのため、縁起やジンクスを気にする業界となったといわれています。「千三つ」には、別の意味もあって、千のうち三つしか本当のことを言わない、ようするに大ぼら吹き転じて「不動産屋」という意味も有ります。
昔の不動産営業は、本当にいい加減だったということですね(笑)。今はそんなことをしていたら、仕事になりませんので、全くそんなことはありませんのでご安心ください。
また「家を買う」「家を売る」といったことは、普通の人にとっては一生に一度あるかないかの大きな買い物です。少しでも幸福な取引となるように、契約や決済、引き渡しなどの日取りは、日の吉凶を定めた六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・関口)の中でも最もお日柄のよい「大安」を選ぶように配慮するのが常となっています。では、なぜ縁起を担ぐ業界が、水曜日を定休日とするのでしょう?
水曜日は、「水」という字が入っています。「水に流す」というのは、なかったことにする、という意味ですよね? 水曜日は、契約や取引を「水に流す」ことが多くなる、つまり商売がうまくいかなくなる、という理由で、水曜日を定休日としたということです。駄洒落のような話ですが、通説となっています。万智なら、「縁起は関係ない、私なら売れます!」とでもいうところでしょうか。
古い家の価値は0円?
美加の母親の貴美子(原日出子)が、父親の保(モロ師岡)と離婚して家を売りたい、とテーコー不動産を訪ねてきます。美加は家族の思い出の詰まった家は絶対に売りたくないと反対しますが、貴美子は聞き入れません。万智が対応することとなり、下見に行きます。
家は、貴美子が結婚する時に自分の名義で買った古い家です。万智は貴美子に「住宅の価値はほぼありません。解体して土地のみ5000万円でいかがでしょう」と提案します。貴美子は保と暮らした家などに未練はない、と言わんばかりに「いくらでもいいから早く売ってください」と同意します。
でも、自分の家を売ることを想像してみてください。高いお金を出して買った家、今現在もちゃんと住み続けている家、たくさんの思い出があって愛着もある家…。その価値が0円と言われたら、なんだか納得がいかない気がしませんか?
中古木造住宅の価値
一般に「築後20年を超えるような住宅の価値は評価されない」といわれています。これは住宅の査定方法が原価法という手法で行われるためです。
原価法での建物価額は
(再調達価額)-(減価額)
で表されます。
再調達価額とは、建物を改めて新築した時の推定価額です。減価額とは
(再調達価額)×(経過年数)÷(耐用年数)
で計算されます。今、仮に新築したとして想定される価格から、年数によって価値が減った分を差し引いたものが建物価額になる、という意味です。耐用年数と経過年数が同じになると建物価額は0になります。
実は、耐用年数は実際にその建物がどのくらい使用に耐えうるか、ということを厳密に計算したものではありません。木造住宅の場合、税法上の償却年数が22年であることを根拠に、20年か25年を便宜的に使用することが一般的です。ほとんどの金融機関の融資担保査定も、20年を耐用年数として採用しています。したがって、実質的に20年以上経過した中古住宅には建物価値がない、という評価になってしまいます。
国土交通省は、中古住宅の流通を促進するために、業界に対して原価法の査定価格に加え、痛みが多いか少ないか、修繕やリフォームをしているか、耐震性があるかどうかを価格査定に加算するように要請しています。しかし、そういったポイントが評価されて価額が上がることはないのが現実です。
ドラマでは、美加が自宅の売却を万智に志願し、認められます。美加は「家が売られるのは仕方ないにしても、せめて解体だけは避けて思い出の残る家を残したい」と、初めて真剣になっているようです。しかし、興味を持って現地販売に来てくれた見込み客も、「家がなければいいんだけどな」と誰も買ってくれませんでした。
これは現実世界でも同様です。家を買う人にとっては、他人の思い入れがこもった特殊な仕様や間取りに価値などなく、決して魅力を感じることはありません。
また、高度成長期に建てられた家は、狭い家が多く、キッチンやお風呂、トイレなどの仕様も現代のライフスタイルに合わないことが多く、解体が選ばれる大きな理由となっています。
私のようになるな
解体の当日、美加は家に立てこもり、体を張って阻止しようするという驚きの行動に出ました。ここで万智はひとり、金づちで入り口を壊して乗り込み、美加と対峙します。床に正座し、背筋を伸ばした万智は「私は昔、ホームレスだった」と切り出し、高校生のときに家を失った悲壮きわまる過去を打ち明けます。「過去にとらわれ、家を売ることで心の穴を埋めようとしているが埋まらない。私のようになるな。自分を解放しろ」と、訴えます。
美加を説得するために自分の秘密も暴露した万智ですが、次回の展開がますます気になるところです。
(監修:不動産流通システム)
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