『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

最終更新日:2023年12月25日
公開日:2022年12月26日

「任意売却」は人ごとではない? 競売との違いとは?(前編)~『正直不動産』をプロ宅建士が解説(6巻 43・44話より)

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『正直不動産』は、小学館発行のビッグコミックに連載されている漫画作品で、2022年にはNHKでドラマ化され、その際REDSも協力しました。契約のためなら平気で嘘をつく営業マンの「永瀬財地」が、地鎮祭を執り行うのに邪魔だった祠を壊したことがきっかけで嘘がつけない体質になり、もがきながらも正直営業で奮闘する痛快ストーリーです。

今回は「任意売却」について描かれたエピソードについて、宅建士の経験から解説します。

2022年は世界的に金利が上昇しています。長らく低金利が続いた日本でも、世界と足並みをそろえる段階にきているようです。今後、日本でも金利の上昇がすすめば、急激な金利の上昇は住宅ローンを組んでいる人にとっては負担増になり、家計を圧迫します。任意売却も人ごとではないと考えた方がよいかもしれません。

任意売却と競売

(写真はイメージです)

任意売却と競売の違いとは?

作中で永瀬は、6年前に仲介した中古戸建てが「配当要求終期の公告」に掲載されていることに気が付きます。それは永瀬が困ったときに世話になった他業種の友人、希志智久の家でした。

配当要求終期の公告とは、裁判所が「差押登記をした不動産に対し債権を有している人がいれば、申し立ててください」という公告です。つまり、この公告が出された後、平均3~6カ月後に競売になることを意味します。

永瀬が家を訪ねると外壁にはツタがはい、希志は無精ひげを生やして疲れた様子です。病気を理由に仕事を辞めて、妻と子供とは別居状態。話を聞けば、早ければあと2カ月から3カ月で競売による入札が行われるということでした。

永瀬自身、学生時代に父親が連帯保証人になっていた友人の会社が倒産し、実家が任意売却になる経験をしています。そのときに希志の実家に住まわせてもらった恩もあり、何とか助けたいと考えて任意売却ができるように奔走します。

競売も任意売却も、住宅ローンが支払えなくなったときの自宅の売却方法です。しかし市場価格に近い価格で売れる可能性がある任意売却と、市場価格の5~7割程度でしか売れないといわれる競売では家を失った後の債務者の生活に、雲泥の差があると永瀬は月下に説明します。

競売と任意売却、それぞれの流れを解説します。

競売とは?

住宅ローン返済が数カ月にわたり滞った場合、債権者である金融機関が裁判所に競売を申し立てます。抵当権を設定している不動産を強制的に入札形式で売却し、融資したお金を回収するのです。裁判所が入札を受け付け、最も高額だった人が落札することになります。

〈一般的な競売の流れ〉

(1)債権者(金融機関など)から債務者に督促状(内容証明郵便)や催告書が届く
(2)債権者が裁判所に強制競売の申し立てをする
(3)裁判所により差押登記がされる
(4)競売開始決定通知が債務者に届く
(5)裁判所執行官と不動産鑑定士が不動産の状況を調査する
(6)入札が開始され、最も高額で入札した者が落札
(7)残債から落札された金額を除いた金額が残債になる
(8)買受人が決定(売却許可決定の確定)、債務者の立ち退き、不動産の引き渡し

任意売却とは?

任意売却は、一般の買主に不動産を売却するという点においては一般的な売却と変わりません。ただ、不動産を売却しても債務(住宅ローンなど)が残ってしまう場合に、金融機関などに対して債権の減額を交渉し、抵当権を抹消してもらい、残債を完済もしくは減額する方法です。

〈一般的な任意売却の流れ〉

(1)債権者(金融機関など)から債務者に督促状(内容証明郵便)や催告書が届く
(2)任意売却の相談を不動産会社や弁護士とする
(3)債務額や不動産の査定により販売価格を暫定的に設定する
(4)債権者と残債について減額の交渉をする
(5)不動産会社が買主を探す
(6)売買契約締結
(7)売買代金で残債を完済もしくは一部返済
(8)債務者の引越し・不動産の引き渡し

任意売却なら売却後も住み続けられる?

作中で希志は永瀬に「この期に及んで我が儘を言って申し訳ないが、俺はどうしてもここに住み続けたいんだ。手放すには家族の思い出が詰まりすぎている」と心の内を打ち明けます。永瀬はここで覚悟を決めます。

永瀬は保証会社との残債の減額交渉で、残債4,500万円のところ4,200万円まで下げることに成功します。保証会社も競売になるより任意売却のほうが損失は少ないと説得したのです。なぜ保証会社にとっても任売にメリットがあるのでしょうか。

もし希志の家が競売になって残債が多く残った場合、希志は一括返済することができず自己破産することが予想されます。その場合は相場に近い価格で売却される任売の方が、抵当権者の保証会社が手にする金額は通常、多くなるからです。

残された時間が少ないうえに、家に住み続けたいという友人の願いをかなえるために、永瀬は早急に投資目的で購入する買い手(賃貸物件のオーナーとなる人)を見つけなければなりません。競売となった場合には立ち退きとなり、希志は住み続けることができないどころか自己破産の道をたどるでしょう。

競売も任意売却も人ごとではない

最後に実際の体験談を紹介します。

任意売却を希望している、他社が受け持つ中古戸建物件にお客様をご案内したことがあります。それはある分譲地内の300坪を超える敷地に大きな家が建つ、いわゆる豪邸でした。私自身もどんな建物かと期待していきましたが、中は物にあふれ、足の踏み場もないような状態でした。

売主である高齢の男性は一人暮らしで、豪邸に似つかわしくない風貌。ある会社の代表だったが事業に失敗したと聞きました。金融機関との交渉はこれからという話で、お客様が気に入ったとしても残債について折り合いをつけるのは難しい印象でした。

他社の物件だったため詳細は分りませんが、その後、競売になったそうです。そしてその大きな敷地には、建売物件が数棟建ちました。住宅ローンが払えなくなれば、誰もがたどる末路です。任売や競売は別世界の話ではありません。

永瀬は任意売却するためにギリギリまで奔走します。希志の願いはかなえることができるのでしょうか。この続きは後編で解説します。

 

桜木理恵(宅地建物取引士)
大学4年時に宅地建物取引士に合格。新卒で私鉄系不動産会社入社し約8年間、売買仲介担当として従事。その後出産・子育てのため、大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し、5年間勤務。信託銀行にて不動産調査や不動産管理会社にてPMの経験あり。保有資格は他に2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)。

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