『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

最終更新日:2023年12月25日
公開日:2022年8月19日

建築確認は戸建てを新築する際に超重要! でも昔はいい加減で今に影響も~『正直不動産』をプロが解説(12巻 93・94話より)

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ビッグコミック連載の漫画作品で、「クロサギ」を生み出した夏原武氏が原案を手掛ける『正直不動産』。不動産取引における一般消費者と業者の情報格差にスポットを当て、不動産業界の暗い現実を浮き彫りにしている話題作で、NHKでドラマ化され大ヒットしました。

建物を建築する際、管轄の役所(区役所の建築指導課などが一般的)に届け出を行う必要がありますが、届け出をした結果「この設計で建築してください」と渡される公的な書面が「建築確認済証」といわれるものです。

今回は、元・不動産エージェントの経験から、建築確認について解説します。

住宅イメージ

(写真はイメージです)

建築確認済証とは?

建築基準法では、建物の建築を行う際には、工事に着手する前にその建築予定内容が建築基準法に適合しているかどうか、建築主事(通常、役所の「建築指導課」のような名前の付いた部署)の確認を受けなくてはならないとしています。この確認作業を「建築確認」といいます。

そして、この「建築確認」が終わると、「建築確認済証」が交付されます。建築物の工事は、この建築確認済証の交付を受けて初めて着工できます。銀行にもよりますが、住宅ローンの審査などでも必要な書類ですので、建築を行う上では最も重要かつ一般的な書面といえます。

住宅建築の流れ

建物の建築にあたっては「建築確認」と「完了検査」という2つの大きな審査をクリアしなければなりません。まず、全体像は下記のような流れです。

(1)図面や設計・建築計画の作成
(2)事前審査
(3)建築確認 ←※ここで建築確認済証が発行
(4)着工
(5)(ある場合は中間検査)
(6)工事完了
(7)完了検査 ←※ここで建築検査済証が発行

漫画の作中でもありましたが、ある一定条件に該当する場合、増築やカーポート(車入れ)など、家そのものでなくとも「建築」にあたることもあり、注意が必要です。届け出にあたっては建築確認申請書というものを提出しますが、特段の不備がなければ建築確認済証が3週間ほどで交付されます。

また、建築確認申請書と一緒に建築計画概要書というものを申請します。これは、通常は建築会社が施主(建築主)の代わりに作成し、申請してくれますので、お客様は心配しなくても問題ありません。

敷地面積、床面積、構造、高さ、階数などの建物の概要や見取り図、配置図などが細かく記載してあり、何とこれは申請すれば役所で誰でも閲覧可能です。プライバシーが以前よりも強く主張されるようになった昨今ですが、やはり不動産は公共の利益のために、謄本などと同じように公に付されているのですね。

最後に、建築検査済証が発行されます。これは「建築確認申請時に申請されたとおりに建物が建っていますね」ということの証明をするものです。施主は、建物が完成したら4日以内に工事完了届を提出しなければなりませんが、この検査を「完了検査」と呼び、完了検査をクリアした証明書として出されるのが検査済証です。

検査済証がない物件

建築確認済証がない物件というのはありえません。そもそも着工ができないためです。

一方、「検査済証がない」という戸建て物件は本当にたくさんあります。というのも、費用や手間の関係で、2005年ごろまでは、戸建て住宅の場合、ほとんど検査済証が取られていませんでした。

建築確認申請が通らないと、そもそも工事に着工できないので、確認申請は法律に則った設計で通しておいて、その後の工事で、法律で規定された上限の広さよりも大きくしたりすることが、慣例としてよく行われていました。完了検査を受けなければ発覚しない、というのが理由です。

しかし、2005(平成17)年の耐震偽装事件を機に、取得率が急速に上昇し、現在ではほぼすべての物件が建築検査済証を取得しています。2000年ごろに検査済証が出ている物件は40%以下、それよりも前は20%程度という感覚値です。

検査済証がないことのリスク

検査済証がない建物は、違反建築物でないことを証明する手段がないだけでなく、実際にも建築確認の内容と異なる違反建築物であるケースがあります。比較的よくあるのが、容積率オーバーや建ぺい率オーバーです。完了検査を受けないことが横行していた時代には、建築工事を発注した施主からすれば、少しでも建物の床面積が広いほうがよいため、完了検査により発覚しなければ多少大きめに建物を建てたいと考えたようです。

これが建物の売却や増改築などのハードルとなることがありえます。建物の場合、登記簿謄本に記載されている登記面積が建蔽率・容積率からして適切であれば問題になることは少ないですが、実際に増築してしまっていて、その内容が法規から外れていたり、申請された概要書と異なったりすると、住宅ローンがおりにくいなど、苦戦する場合がありますので、注意が必要です。

近隣における建築の窓の位置などの調整について

本論とは外れますが、作中で「隣家の人と目が合って困る」といった描写がされていました。この点、民法には、境界線から1メートル未満に他人の宅地を見通すことのできる窓や縁側やベランダを設ける者は、目隠しを付けなければならないと規定されています。

(民法235条1項)
境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。

民法では、このように規定されており、原則はこの規定を守らなくてはなりませんが、「私法」ですので当事者双方の合意があれば1メートル未満にすることもできます。大規模分譲地で、注文住宅として建築をする場合、隣地間の建築業者どうしがよくこうしたやり取りをします。

窓に関しても、お互いに気まずくならないように互い違いの場所に窓を付けるように調整するということもよく行われます。ただし、基本的には先に建築計画が先行しているほうが優先されますし、建築確認が出てしまっていれば変更できないため、後から建築計画を作成するほうが歩み寄ることがほとんどです。

隣地が空き地の場合

作中でもありましたが、隣地が「空き地」の場合の注意点についても解説します。

土地や戸建て住宅購入当初、隣地が駐車場だったり、マンションの駐車場だったり、畑だったりする場合があります。その時は「お、空き地だから気持ちよくていいじゃないか」と思うかもしれませんが、要注意です。

特に、駐車場や小さな畑の場合は注意が必要です。当然、持ち主は個人の場合が多いのですが、なぜそのような状態にしているかというと「将来相続するため」「特段売る必要もないのでコインパーキングなどにして当面の収益を得ている」という場合が多いのです。

そうした場合、持ち主の死亡や相続が終わるとすぐに売り出されることもあります。当然、取得者は収益のためにビルを建てたり、家を建てて一般の人に売ったりするわけですから、10~20年のスパンで見れば、そこに建物が建つ可能性は高いといえます。土地の所有関係は登記簿謄本を取得すればだれでも確認できますから、仲介事業者にヒアリングしたりお願いしたりして、隣地の状況については確認しておくべきだといえるでしょう。

一方、隣が「公園」や「私道の一部」「公的な建物の一部」である場合は安心してもいいでしょう。基本的に、公的な土地はよほどのことがない限り売りに出ませんし、道路として利用している場合、その土地の地権者が同時に合意したり、その他に特殊な事情がなかったりする場合、道路が通常の土地として利用が開始されるというのは考えにくいことが通常だからです。もちろん、どんな場合でも大丈夫だということはありませんが。

以上、建築確認について解説してきました。建築確認に関する書類は住宅建築に際しては非常に重要な書面になりますので、しっかりと理解したうえで建築業者との打ち合わせ、住宅購入を決定することをおススメします。

 

松村隆平(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、不動産業界に転身。その後不動産企業のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。

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