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公開日:2024年9月18日

空き家は火災保険に加入できない? 保険料は一般の2倍も!

REDSエージェント、宅建士の由里拓也です。

2023年10月現在のわが国の空き家数は、900万戸で過去最多を記録しました。

【令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果】

そのうち、賃貸や売却の予定がなく、別荘でもない個人の空き家は385万戸とこちらも過去最多となりました。

放火されて損害を受けたり、住宅の損壊によって第三者に損害を与えたりして賠償請求されるおそれもあることから、空き家でも火災保険は不可欠です。ただし、空き家は住宅向けの火災保険には加入できず、必要な課題もいくつかあります。今回は空き家と火災保険の関係について解説します。

空き家と火災

(写真はイメージです)

空き家が火災保険に加入できない理由

空き家は住宅向け火災保険には加入できません。その理由は、建物が損害を受けるリスクが住宅よりも高まるためです。

建物が住宅として使用されている場合は、火災を起こさないよう、所有者が日々注意して生活されることと思いますが、他方で放置され適切に管理されていない空き家は、放火のリスクが高まったり、侵入者が入り込んで火事を起こすリスクが増したりします。建物の老朽化によって、自然災害による損害も受けやすくなります。

こうした理由から、空き家は「住宅物件」とはみなされず、住宅向けの火災保険に加入できません。

空き家の保険料は一般住宅の2倍超えも

火災保険上、空き家は店舗や事務所などの用途で使用される「一般物件」として、企業向け火災保険に加入しますが、負担する保険料は損保会社により異なります。複数の損保会社による保険料の試算によれば、一般物件として特に差異を設けることなく引き受ける損保会社もあれば、保険料が住宅の2倍超となる損保会社もあります。

なお、別荘または一時的な転居の間の空き家など、家具が備えられ住宅として機能する建物であれば、常に人が居住していなくても住宅用の火災保険に加入できます。ただし、取り扱いは各社で異なります。

火災保険には、契約者の「通知義務」があります。そのため空き家になったら、保険会社に速やかにその旨を通知しなくてはなりません。通知を怠ると、損害を受けても保険金が支払われなかったり、契約が解除されたりするおそれがあります。

管理が悪いと保険金が支払われないことも

また、火災保険約款には「保険契約者、被保険者またはこれらの者の故意もしくは重大な過失または法令違反」によって、生じた損害には保険金を支払わないと記されています。よって適切な管理がなされず放置され事故が起きた場合、保険契約者の重大な過失を問われ保険金が支払われないことも考えられます。

過去には実際、電力会社から漏電の可能性を指摘されながら漏電火災防止措置をとらずに起きた火災、施錠せずに長期間放置していた空き家が侵入者に放火された事例で保険会社の免責が認められています。空き家を維持する以上、適切な管理は不可欠であり、それなしでは火災保険も役立てられないことがありうるのです。

損保業界は赤字続き

自然災害の多発により、損保業界の火災保険収支は2011年度以降赤字続きです。こうした状況への対応として、大手損保は2024年10月に保険料を引き上げる決定をしています。

一方で、火災保険の引き受け審査を厳格化する損保会社も出てきました。損害を受けるリスクが高いとみられる空き家は50万円くらいの高額の免責金額が設定されたり、補償の範囲が限定されたり、状態によっては、火災保険の契約自体が難しくなったりすることもあります。

空き家は被災しても公の支援は対象外

住宅物件でないため、空き家は地震保険を付帯できません。り災証明書の区分に応じて受けられる300万円限度の現金支援「被災者生活再建支援制度」はもちろん、住宅の公費解体支援などの公的支援も受けられないことがあります。

【被災者生活再建支援制度の概要】

これらは被災した生活者に向けたものだからです。それでも損壊建物は放置できませんし、修理するにせよ解体するにせよ、費用がかかります。

また、空き家の損壊などで近隣の住宅や他人の身体に損害を及ぼせば、所有者が法律上の損害賠償責任を負うことになります。ただし、空き家所有者の個人賠償責任保険では対応できません。一般に、管理する建物(施設)が原因で生じた賠償責任には施設賠償責任保険で対応することになりますが、昨今、空き家の加入引き受けをしない損保会社も複数あります。

ただし、解体費用の支払い対象は火災・落雷・破裂・爆発が原因の事故に限られ、火災保険を代替するものではありません。

空き家の今後は

日本の空き家数は、1968年以降一貫して増え続け、1993年から2023年までの30年間で約2倍となりました。他方で日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少が続いており、世帯数も2030年の5773万世帯をピークに減少に転じると見込まれています。そうなれば、空き家は今後さらに増えていくことになりそうです。

また、2023年12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が改正施行され、適正管理されない空き家は、特定空き家のみでなく、管理不全空き家の敷地も、固定資産税軽減が受けられなくなりました。もはや放置は許されない、ということでしょう。

これまで述べてきたように、空き家のリスクをカバーできる火災保険は必要ではあるものの、加入のハードルは高まってきています。今後は住宅を所有する段階から、将来の住宅の利活用について、大まかな方向性を持っておく必要があるかもしれません。

 

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由里 拓也
(宅建士・リフォームスタイリスト)

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