人気コミックが原作のNHKドラマ『正直不動産』第6話「仕事をする理由」が5月10日(火)夜10時~放送されました。

 

今回の物語は、登坂不動産の社長、登坂寿郎(演:草刈正雄)が、主人公の永瀬財地(演:山下智久)と、売上ナンバーワンの桐山貴久(演:市原隼人)の2人にとある大型案件を任せるところから始まります。それは、竹鶴工務店が売主となる「建築条件付き土地」。343.5㎡の土地を2億8,080万円で売って、6棟の住宅を建てるという計画です。

 

私は売買仲介担当を8年、ハウスメーカーのリフォームアドバイザー5年の経験があります。その経験を交えて『正直不動産』6話に出てきた建築条件付き土地の売買、建築業界の問題点などを解説します。

 

※REDS「不動産のリアル」編集部では、どのメディアよりも早く、当日の放送直後にドラマの内容紹介と、作中で登場した不動産業界の商慣習や不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをまとめて、コラム記事として公表しています。こちら『正直不動産』ドラマ第6話最速レビュー~売建住宅、完成までの裏側もご覧ください。

 

家の模型

(写真はイメージです)

 

建築条件付き土地とは?

 

建築条件付き土地とは、文字どおり土地を売る相手に条件をつける売地のこと。「一定の期間内に、特定の建設業者にその土地の上に家の建築を依頼すること」が条件になります。

 

ここでいう「一定の期間内」は3カ月であることが多いです。売主としては早く現金化したいので、期間を区切っています。また「建築を依頼すること」とは、特定の建設業者と建築工事請負契約を締結することを意味しています。

 

特定の建設業者とは、売主の工務店や建築会社であることが多いですが、中には売主とつながりのあるハウスメーカーの場合もあります。売主は土地を販売した利益に加えて、家を建築することで発生する利益の一部(紹介料など)を得ることができ、作中でも「大もうけ」と表現されていました。建築条件付き土地でよくあるのは、広い土地をまとめ買いすることで相場よりも安く仕入れ、造成工事や道路整備をして売るケースです。

 

作中では、建築条件付き土地に建てられている家が欠陥住宅とされていました。しかし、建築条件付き土地には欠陥住宅しか建たないというわけではありません。ただ、ミネルヴァ不動産の西岡のように「土地だけとりあえず契約しましょう」と契約を急かされたら、危ないと思ったほうがいいでしょう。

 

作中では、建築条件付き土地に対しての考えが、永瀬、桐山、月下の3人で見事に分かれていました。月下咲良(演:福原遥)は、間取りや設備が自分のセレクトでできるから、「理想の家が建てられる」という考え。「カスタマーファースト」を信条とする月下ならではの発想です。

 

一方、桐山は、竹鶴工務店の業績や書類の情報から「営業するだけ時間の無駄。絶対売れない」と言い切ります。永瀬は桐山を現場へ誘いますが、断固として譲らない桐山に「現場を見てから判断する」「絶対に売れない物件はない」というスタンスでした。

 

欠陥住宅を生み出す元請けと下請けのいびつな関係

 

話を元に戻します。当初の計画では、343.5㎡の土地に6棟の家を建てるということでした。1区画57.25㎡(17.31坪)ですから、もう普通の家が建たないことは想像できます。2018年に住宅金融公庫が住宅ローン「フラット35」申込者に対して行った調査によると、建売住宅の平均面積は100.8㎡(約30坪)でした。作中の計画ではこの6割未満ですから、桐山が説明するように、「遮光制限や日影規制を考えたら建てられたとしても極細のペンシルハウス」ということになります。

 

竹鶴工務店が買主に説明なく下請けの工務店に建築を丸投げすることを、桐山は突き止めます。これは建設業法違反です。また、国土交通省より、元請けと下請けが請負契約の際に守らなくてはならないルールとして「建設業法令順守ガイドライン」が定められています。

 

ガイドラインには以下のような内容があります。

 

・見積もり依頼は工事内容、工期などの契約内容をできる限り具体的に提示して行わなければならない
・請負契約の締結に当たっては、契約の内容を明示した書面を作成し、相互に交付しなければならない
・自己の取引上の地位を不当に利用し、通常必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を締結してはならない

 

作中の竹鶴工務店は全部アウトですね。

 

木造家屋に使う金物を減らしてはいけない理由

 

建築中の建物を見た桐山は即座に、木造建築であれば必要なはずの金物を1~2本減らしていることに気付きます。明らかに欠陥です。下請け会社は「こっちはできるだけ安く造れと指示されている。普通だったら3カ月の工期を1カ月半に短縮しろってな」と反論します。欠陥住宅が生み出される仕組みがよく分かるシーンですが、どんな理由があっても欠陥住宅はいけません。

 

ところで、木造家屋に金物はなぜ必要なのでしょうか。また、どのように使われているのでしょうか。

 

木造住宅を建てる際、多くの工務店や建設会社が「木造在来工法」という建築方法を採用しています。木材を継ぎ足して長くする接合を「継手」、木材同士が直交もしくは斜交する接合を「仕口」と呼びますが、その接合する部分を接合金物で補強する工法です。地震や台風などで木造の家に外力が加わった際、最も力が集中する場所がこの金物でつながる接合部です。この部分にしっかり金物を使った建物は強いといえます。

 

もちろん、ただ金物を取り付ければよいというわけでなく、やり方は建築基準法でしっかり定められています。以下、建築基準法47条(構造耐力上主要な部分である継手又は仕口)の条文を見てみましょう。

 

「構造耐力上主要な部分である継手又は仕口は、ボルト締、かすがい打、込み栓打その他の国土交通大臣が定める構造方法によりその部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない。この場合において、横架材の丈が大きいこと、柱と鉄骨の横架材とが剛に接合していること等により柱に構造耐力上支障のある局部応力が生ずるおそれがあるときは、当該柱を添木等によって補強しなければならない。」

 

まず、「構造体力上主要な部分である継手と仕口は、その存在応力を伝えるように緊結しなければならない」というのは、作中で桐山が指摘していますが、継手と仕口のすべてを金物(ボルトやかすがいなど)で補強しなくてはならないということです。1~2本足りないのでは基準を満たしていることにはならず、欠陥住宅になります。また金物による補強で足りない場合は、添え木などによって補強しなければならないとあります。

 

こうした補強部分は、家が完成してしまうと外から見えるものではありません。だから、作中のように手抜きしコストカットする業者がいるのは事実です。私も、建築中の現場をよく見ていました。釘の打ち方がそろっていなかったり、道具や資材の整理整頓ができていなかったりする建設会社の建物は、お客様に紹介するのを敬遠していました。表には出てこないところでいい加減な業者は、目に見えない部分で手を抜く可能性があるからです。

 

建築現場を見れば、信頼できる仕事をする会社なのか、丁寧に施工する棟梁なのかなど、専門知識はなくても十分に判断できます。ご自宅を建てる際は一度と言わず、二度三度と現場に足を運んでみて、棟梁と仲良くなることをおすすめします。

 

 

桜木理恵(宅地建物取引士)
大学4年時に宅地建物取引士に合格。新卒で私鉄系不動産会社入社し、約8年間売買仲介担当として従事。その後出産・子育てのため、大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し、5年間勤務。信託銀行にて不動産調査や不動産管理会社にてPMの経験あり。保有資格は他に2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)。