人気コミックが原作のNHKドラマ「正直不動産」第5話「優しい嘘」が、5月3日(火)夜10時~放送されました。

 

今回の物語は、主人公の永瀬財地(演:山下智久)の後輩、月下咲良(演:福原遥)の失踪していた父親(演:加藤雅也)が8年ぶりに姿を現したところから始まります。悪質な不動産会社に無謀なローンを組まされたことが理由で昌也は離婚したのですが、登坂不動産のライバル会社、ミネルヴァ不動産にまたしてもだまされ、危うく欠陥マンションを購入契約させられそうになってしまいます。契約寸前、月下と永瀬が割り込んでなんとか食い止め難を逃れますが、それは永瀬がマンションの床の異変に気づいたことがきっかけでした。

 

私は売買仲介担当を8年、ハウスメーカーのリフォームアドバイザー5年の経験があります。その経験を交えて『正直不動産』5話の解説をするとともに、「欠陥住宅の見分け方」もお伝えします。

 

※REDS「不動産ホームインスペクションのメディアよりも早く、当日の放送直後にドラマの内容紹介と、作中で登場した不動産業界の商慣習や不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをまとめて、コラム記事として公表しています。こちら「『正直不動産』ドラマ第5話最速レビュー~欠陥住宅にバールで穴を開ける永瀬と月下」もご覧ください。

 

家の内見をする日本人女性不動産営業職

(写真はイメージです)

 

タワーマンションのデメリットとは?

 

ミネルヴァ不動産の店舗前で、掲示されている物件情報に足を止めた昌也。そこに花澤涼子(演:倉科カナ)が現れ、「ここに出していない優良物件が今日入ってきた」「資料をご覧になるだけでも」と言葉巧みに店内へ誘い込みます。

 

「これから内見に行くことになってしまった」と昌也から連絡をもらった月下は、そのタワーマンションについて調べ、永瀬に相談します。

 

永瀬は、「俺なら住まない。管理費・修繕積立金がバカ高い。情弱の大バカだ」と言いのけます。タワーマンションは成功者の象徴のようにもてはやされていますが、デメリットをきちんと把握してから購入するなり借りるなりしてほしい、という警鐘のように感じました。

 

タワーマンションの高層階からの眺望や豪華な共用施設はたしかにお金に代えがたいメリットです。物件価格や管理費、修繕積立金も一般のマンションよりも高く設定されていますが、毎月問題なく払っていける人にとっては価値があるものでしょう。

 

しかし一方でデメリットもあります。まず挙げられるのは維持費の高さです。毎月支払う管理費や修繕積立金もタワーマンションは大規模修繕の際、高層であるために資材の搬入に手間がかかり、費用が割増しになります。また上層部は足場が組めないため、クレーンやゴンドラを利用するなど、一般的なマンションに比べてコストがかかります。そのため大規模修繕工事をしようと計画したときには、積み立てられた修繕積立金では足らず、追加で徴収されるケースもあるそうです。

 

また、記憶に新しい2019年10月の台風19号では、武蔵小杉のタワマンで大規模停電が発生し、エレベーターやトイレが使えなくなったことが大きく報道されました。国内ではタワマンの大規模火災はまだありませんが、海外では数多く発生しています。もちろん屋内にスプリンクラーが設置されるなど対策は取られていますが、万一の場合は消防車の放水が届かないこともあるかもしれません。

 

タワーマンションを検討される場合は、デメリットについてもきちんと把握されることをおすすめします。デメリットを考えず、流行りモノを買うように購入してしまう人に対し、永瀬は「情弱(=情報弱者)の大バカ者」と言っているのです。

 

媒介契約→内見→重要事項説明→売買契約の手続きは絶対

 

タワーマンションを内見した昌也は、花澤の巧みな営業テクニックにより、その場で不動産売買契約書にサインをしようとします。ギリギリのところで、駆け付けた永瀬と月下が契約をやめるように説得し、永瀬は「証拠はないが欠陥住宅に違いない」と言ってしまいます。

 

これは明らかに商談の妨害なので、訴えられても仕方がない状況です。それよりも住宅の購入の手続きを熟知している宅建士として驚いたのは、内見の段階で売買契約書を用意していることでした。その前に、媒介契約(不動産会社を通じて物件を購入する際、不動産会社に物件探しを依頼するという契約)を交わしているのかも不明でしたし、実にいい加減だなと感じました。

 

さらに売買契約書の前には、買主様に対して宅建士が重要事項説明書を示して物件について説明しなければならないと宅建業法にも定められているのに、これらの経緯はいっさい省略されていました。悪徳な不動産会社なら「物件を止めるために」などとうそを言って、契約書にサインさせることもあるかもしれません。

 

こうした行為は明らかに宅建業法違反です。媒介契約や重要事項説明を省略して売買契約書にサインさせられそうになったら、一刻も早くその場から離れてください。

 

インスペクション(住宅診断)とは

 

月下は昌也に「費用を自分が払うからインスペクションを受けよう」と提案します。インスペクションとは、住宅を売買する前にインスペクターという専門技術者が第三者的な立場で住宅の劣化状況についての診断を行うことです。例えば建物に傾きがないか、また雨漏りや漏水の形跡がないかなどをチェックします。欠陥住宅であれば、何かしらの兆候がありますので、欠陥住宅を見分けるには有効な手段だと言えるでしょう。

 

2018年4月の法改正により、不動産会社が中古住宅の売買を仲介する際、売主・買主に対してホームインスペクション制度の説明と、希望する人に対してはインスペクターを斡旋(あっせん)することが義務化されました。

 

費用は5万~8万円が相場で、所要時間は戸建ての場合3~5時間、マンションであれば2時間程度です。もちろん売主の承諾は必要ですが、購入する前にインスペクションを行うことをおすすめします。

 

永瀬のように欠陥住宅を自力で見抜く方法とは

 

実は、費用をかけなくても、ある程度の欠陥の有無は作中の永瀬のように自力で確認することができます。その秘訣をお教えしましょう。

 

私は部屋のゆがみがないか確認するために「部屋の隅から中央へゆっくり歩く。またその逆を歩く」というのをやっていました。特に木造住宅だと、床がたわんで部屋の中央部分が下がっていることがあります。建具の開け閉めがスムーズにいくかを確認するのも有効です。こうすることで土地の地盤沈下などによる傾きまで確認できる可能性があります。

 

また、天井に雨漏りの跡がないか、壁のクロスにはがれがないかも確認しましょう。雨漏りは一度でもあると、クロスがはがれやすくなります。壁が湿気を帯びていないか触って確かめましょう。

 

居住中の物件を内見する場合は、ここまで確認しづらいかもしれません。家具を移動させたりクローゼットを開けたりされることを嫌がる売主様もいます。しかし、自分が住むかもしれない家ですから、売主に了承をもらったうえでしっかり確認することをおすすめします。

 

作中では月下と永瀬はバールでフローリング材をはがしてしまいます。売主であるミネルヴァ不動産の花澤が「はがしてください。どうぞ調べてください」と言ったため、この場合は問題ないですが、通常は売主の了承なしにこうしたことをしたら修理費用を請求されますのでお気をつけください。

 

次回、第6話は5月10日(火)夜10時からです。正直営業をすると決めた永瀬はミネルヴァのスパイの疑いがある桐山とともに大型案件を担当することになります。永瀬はどう立ち向かうのでしょうか。次回の展開がますます気になります。

 

 

桜木理恵(宅地建物取引士)
大学4年時に宅地建物取引士に合格。新卒で私鉄系不動産会社に入社し、約8年間売買仲介担当として従事。その後出産・子育てのため、大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し、5年間勤務。信託銀行にて不動産調査や不動産管理会社にてPMの経験あり。保有資格は宅建士のほかに2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)。