公開日:2022年5月3日
『正直不動産』ドラマ第5話最速レビュー~欠陥住宅にバールで穴を開ける永瀬と月下
ある日突然、うそがつけなくなってしまった不動産仲介会社の営業マンが、独特の商慣習で動く不動産業界で奮闘する姿を描いたNHKドラマ『正直不動産』。第5話が2022年5月3日(火)夜10時に放映されました。
〝うそをもいとわない〟セールストークで売上ナンバーワンの地位を維持する不動産営業マンの永瀬財地(演・山下智久)が〝うそがつけない〟営業マンになった今、どのように家を売っていくのか。話題のドラマ第5話のレビューをお届けします。
今回は福原遥が演じる月下咲良が大活躍! 「まいんちゃん」ファンなら必見の内容です。
※REDSは原作漫画『正直不動産』(小学館ビッグコミック連載中)のシナリオ作成に協力し、ドラマ化の際も代表の深谷十三が不動産考証にかかわったほか、REDSエージェントが取材協力をしています。REDS「不動産のリアル」編集部では、いち早くドラマの内容紹介のほか、作中で登場した不動産業界の商慣習、不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをプチ解説します。
(不動産のリアル編集部)
(写真はイメージです)
行方不明になっていた月下の父、登場
永瀬が担当していた売却物件を、ミネルヴァ不動産に頼むことにした(媒介契約をし直した)と、客から電話がありました。ミネルヴァ不動産といえば、前回、事故物件をでっち上げて永瀬の契約を妨害しようとした会社です。永瀬は情報漏えいと社内スパイの存在を社長の登坂寿郎(演・草刈正雄)に報告します。登坂不動産VSミネルヴァ不動産のバトルに新たな展開です。
そんな雰囲気の中、登坂不動産のビルの外でたむろする怪しい男の姿が。ミネルヴァの関係者か? 永瀬が声をかけると、男性は「月下さんはいらっしゃいますか?」と意外な回答。その男は行方不明になっていた月下の父、昌也でした。
月下は以前、不動産業界に飛び込んだのは、悪質な不動産会社に無理なローンを組まされたために8年前に両親が離婚したことがきっかけ、と語っていました。その父親が不意に現れたわけですから、動揺を隠しきれません。月下は父親との対面の場に永瀬も連れて行きました。長い沈黙で重い空気の中、月下を見つけた経緯をポツポツと話す昌也に月下は「ずっと会いたかった」と伝えます。昌也は連絡先を渡してすぐに立ち去りました。
帰宅後、狭いキッチンで母と食事を作る月下。「咲良、なんかあった?」と母に虚をつかれます。「あんた、昔から隠し事があるとき、目をそらすから。お父さんもそうだったの」。この言葉は後の伏線になります。
登坂不動産・永瀬 VS ミネルヴァ不動産・花澤
場面が変わって、永瀬は取引銀行の榎本美波(演・泉里香)を通じて、ミネルヴァ不動産の花澤涼子(演・倉科カナ)を呼び出します。未公開物件の情報が漏れていることに関して「おたくがうちにスパイを送り込んでいる」と詰め寄りました。
水掛け論の末、永瀬に風が吹きます。「あなたもいいのは顔だけで、中身は腐りまくってますよね。だってそうでしょう。自分が勤めている会社が悪徳企業だと分かっているのに平然と働いて。恥ずかしくないんですか? それとも何か社長に弱みでも握られているんですか? あの社長、写真を見ましたが、どう見ても反社丸出し――」。ここまでまくし立てたところで花澤にビールをぶっかけられ、ゲームセット。案の定、翌日ミネルヴァ不動産からクレームが入り、大ごとになりそうです。
一方の月下は父の昌也に連絡を取り、引っ越し先を探しているという昌也に、家探しを任せるよう持ちかけます。「絶対にいい物件、見つけるから」と声を弾ませる月下。再び家族が一つ屋根の下で過ごすことを夢見ているのでしょうか。
娘に家探しを任せた昌也ですが、ふとミネルヴァ不動産に貼っている物件情報に目をとめたとき、花澤に声をかけられます。「ここに出していない優良物件がある」「資料をご覧になるだけでも」と迫る花澤を断ることができず、そのまま内見に出ることになってしまいます。
月下の父に紹介されたタワマンの怪しさに気づく永瀬
昌也は月下に電話し、内見先のマンション名を告げます。資料を見た永瀬は「俺は住まないな。築5年で人気は高いけど管理費や修繕積立金もバカ高い。オマケにエレベーターがたりなくて、朝は大渋滞。あんな所買うヤツは情弱の大バカだ」と吐き捨てます。
これは一般にタワーマンションの隠れたデメリットとも言えます。たくさんの人が住むタワーマンションでは、エレベーターは大渋滞です。朝はワンフロアずつ止まるため、1階まで降りるのに5~10分くらいかかってしまうことも珍しくありません。これだけで、駅まで「徒歩5分」だったはずの物件は、「徒歩15分」の物件に変わってしまうのです。
また、フィットネスルームやプール、展望カフェなど豪華な共用施設が充実したタワーマンションは管理費が高くなるのは当然ですし、巨大なマンション全体を重機を用いて行う大規模修繕ではかなりの費用がかかり、修繕積立金に跳ね返ってきます。タワーマンションは「成功者の証」ともてはやされる傾向にありますが、こうしたデメリットに対する作者の警鐘が、永瀬のセリフに込められているのでしょう。
さらに、「18階の3LDK、9,180万円、リノベーション済み」と聞き、永瀬は相場よりも高いと指摘します。「そもそも築5年でリノベーションするなんて、何かの問題があったとしか考えられない」と言い、扱っているのがミネルヴァ不動産と知ると、すぐに現場に向かいます。
内見の現場では、花澤と西岡が小手先の策を弄して、すぐにでも売買契約書にサインするよう仕向けています。昌也が売買契約書にサインしかけた瞬間、永瀬と月下が飛び込んできました。
「正直不動産」、ミネルヴァに訴えられる?
「月下さん、ここを買うのは待ってください」という永瀬。だんだん風が吹いてきます。「(まずい、この流れはヤバい。下手なことを言えば訴えられる可能性がある)」。確かに、他社の商談を根拠なく妨害しているわけですから、訴訟に発展するのは当然といえる場面です。しかし、強い風に吹かれた永瀬は「ここが欠陥住宅だからです! 証拠ですか? ありません」と言い放ちます。西岡とは取っ組み合いのケンカ寸前!
ここで月下が「お父さん。こちらの方々からインスペクションの説明聞いた?」と振ります。インスペクションとは住宅購入前に建物に不具合がないかを住宅診断士(ホームインスペクター)と呼ばれる専門家に調べてもらうこと。本来、住宅診断士は客観的に建物診断をすることが使命であり、調査の内容は正直に伝えなければなりません。2018年4月の法改正で、不動産会社が中古住宅の売買を仲介するときに、客に対して「建物状況調査(ホームインスペクション)」の制度の説明と、希望に応じてあっせんを行うことが義務化されています。
なのに、ホームインスペクションについてはなんら説明されていませんでした。しかもこのケースでは、昌也はミネルヴァ不動産と媒介契約を結んだかどうかも描かれていませんし、売買契約前の重要事項説明も済んでいるようには見えません。このへんは、フィクションだと理解しましょう。
西岡は「調査済み」と言い張りますが、月下は引き下がらず、「でしたら費用はこちらで出しますので、もう一度改めて我々が指定する業者に調査させてください」と迫ります。
西岡は「言っておくが、日本じゃ売主が拒否したら調査自体ができない」とどこまでも反論してきます。しかし、月下は「ですから、もし売主であるミネルヴァさんがインスペクションを拒否するなら、やましいことがあるとみなし、父は購入を見送りますが、どうしますか?」とひるまず切り返し、交渉は成立。昌也の契約は保留になりました。
床板にバールを振り下ろす月下と永瀬! 床下には水
作業服姿のホームインスペクター町村を迎え、改めて現場に集合した面々。部屋の傾き、水回り、と次々に調べては問題のないことが告げられます。焦りの色が隠せない永瀬ですが、最後は寝室だけとなりました。
寝室に足を踏み入れた永瀬、床がわずかに凹んだのを見逃しませんでした。ところが、サーモグラフィーで確認した町村の答えは「特に問題ない」でした。町村は事前に西岡に懐柔されていたのです。
花澤は「永瀬さん、裁判の準備を」と言い、西岡は昌也に売買契約書にサインを求めます。一方、永瀬の顔には風が吹いています。「町村さん、このままだとあなたのインスペクター人生、今日で終わりますよ」と言い放つと、町村は黙り込んでしまいました。「ミネルヴァ不動産に何を吹き込まれたか知りませんが、あなたのやるべきことは、家の欠陥を見つけるだけでなく、その家で暮らす人々の生活を守ることじゃないんですか?」とたたみかけると一同、沈黙してしまいます。
そのとき、月下がいきなり道具箱からバールを取り出し、バールを床板に振り下ろしました。「この床を剥がして調べるの。父が住むかもしれない大事な家だから調べるんです!」。何度も振り下ろしますが、華奢な月下ではなかなか床板は破壊できません。見かねた永瀬がバールを思い切り振り下ろしているうちに、やがて穴が開きました。
そこには完全に浸水した痕跡が。花澤もがくぜんとした様子です。観念して調べ直した町村は「内部にまだ水が残っているようです。断熱材の腐食で最悪、床が抜けてもおかしくはありません」と告げました。
永瀬は「床が抜けたら命の危険だってあった。あなたたちに不動産会社を名乗る資格はない」とミネルヴァの2人を一刀両断。事ここに至っても西岡は「手抜き工事をした業者に修繕工事費用を払わせるので売買契約を」と食い下がりますが、花澤は深く頭を下げて引き下がりました。町村も非を認め謝罪します。
このマンション、前の住人がウオーターベッドにタバコで穴を開けて水浸しとなったのですが、それを聞きつけたミネルヴァが住人から安く買い取り、中途半端に修繕工事をしたために欠陥が残ったというのが真相でした。
「正直不動産」を差し置き、全部持っていった月下の嘘と涙と笑顔
「咲良、たくましくなったな。昔はあんなに泣き虫だったのに」とねぎらいの声をかける昌也に、「いい先輩に鍛えられてるから。じゃあ、お父さん、改めて私が家を探すからね」と返す月下。「咲良、そのことなんだけどな」と昌也が言いよどんでいる間に、永瀬に風が吹きます
「月下、お前のお父さん、再婚するんだ。さっき相談を受けた。申し訳ない。家族の事に口を挟んで」。しかし、「正直不動産」の出番はここまで。今回は〝月下劇場〟なのです。
「新しい家は、新しい家族と住むつもりだ。だから、お前に探してもらうわけには」という昌也に、気丈にも「知ってたよ。お父さんが会いに来た瞬間、なんとなく分かった。お父さん、昔から隠し事してるとき、目そらすでしょ。だからそうじゃないかなって」
月下もこう言いながら、昌也からは目をそらしています。精いっぱいのうそをついているのです。「この前、私が不動産屋で働いているとは思わなかったって言ってたよね。分かるよ、だって私たち、家族をバラバラにしたの、不動産屋だもんね」「今、私とお母さんが住んでるマンション、古いし、キッチンも狭いけど、二人ですごい幸せに暮らしてるよ。だからお父さんも幸せになれる家に住んでほしい。豪華じゃなくても、お父さんと、新しい家族が幸せになれる家に……。だって、お父さんは私にとって、いつまでも大切な人だから」
去って行く昌也を見送る月下に、「本当は知らなかったんだろう、お父さんが再婚すること」と永瀬。月下は涙を浮かべて答えないままでいます。それでも笑顔を振りまき「カスタマーファースト!」と仕事に戻る月下でした。ちょっぴり切ないシーンでしたが、月下を演じる福原遥のとびきりの笑顔に救われた視聴者も多かったのではないでしょうか。
さて、ドラマもここでやっと折り返しです。登坂不動産の内部に潜んだスパイは誰なのか。ミネルヴァ不動産との戦いの行方はどうなるのか。5月も毎週火曜22時は予定を入れずに茶の間に戻りましょう!
(不動産のリアル編集部)
※この記事は2022年に放映されたNHKドラマ『正直不動産』に関するものです。記事中に出てくるデータや内容は放映当時のものです。2022年『正直不動産』の記事一覧はこちら。
過去の放送内容はNHKオンデマンドやAmazon Prime Videoで有料視聴できます。2024年1月3日(水)夜9時からは『正直不動産スペシャル』が、続いて『正直不動産2』が翌週1月9日から毎週火曜、夜10時に全10回が放映されます。
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