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『正直不動産』第2話を「正直宅建士」が解説。気が済むまで内見させるのは本当にカスタマーファースト?

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公開日:2022年4月15日

人気コミックが原作のNHKドラマ『正直不動産』第2話「1位にこだわる理由」が4月12日(火)夜10時~放送されました。今回のエピソード、不動産営業職としての経験も交えて解説します。

私も不動産仲介の営業ウーマンだった当時、毎月発表される売上の順位を見るのが楽しみでした。不動産業界は年齢・勤続年数に関係なく評価されるのでやりがいがありました。そして月が変わればゼロからのスタートですが、ある程度コンスタントに成績を上げられれば、歩合(インセンティブ)も上がるので、それをモチベーションに頑張っていました。

不動産営業の厳しい点は、新規顧客を開拓し続けなければいけないことでしょう。売買であれば一生に1度の買い物であることが多いですから、必然とそうなります。また千のうち三回しか成立しない意味で「千三つ」とも言われる仕事ですから、「1位になる!」と宣言するぐらい強い意志を持たないとモチベーションが下がり、簡単に成績は落ちていきます。頑張るのはお金のためでもありますが、自分を鼓舞するためでもありました。

さて私の昔話はここまでにして、ドラマの解説をいたします!

※REDS「不動産のリアル」編集部では、どのメディアよりも早く、当日の放送直後にドラマの内容紹介と、作中で登場した不動産業界の商慣習や不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをまとめて、コラム記事として公表しています。こちらもご覧ください。

内見

(写真はイメージです)

営業マンが予算オーバーの物件に決めさせるあの手この手

いつもトップの永瀬財地(演・山下智久)を抜き、成績1位となった桐山貴久(演・市原隼人)は、手狭になった1LDKから引越しをしたいと来店した三浦夫妻に、予算を超える13万円2LDKの部屋を紹介します。そして内見もしていないのに、預り金を受け取ってその物件を押さえてしまいます。一方、新人の月下咲良(演・福原遥)も別のお客様に同じ物件を紹介しますが、「予算オーバー」とあっさり断られてしまいます。

なぜ桐山は案内もしていない部屋を「預かり金」をもらい、押さえることができたのでしょうか?アンカー効果(初期値)、欠点をあえて言う、メリットの強調、お客様との共通点……。桐山(市原隼人)はいろいろなテクニックを使っていました。

「アンカー効果」とは、人は最初に与えられた数字を基準にし、その後に提示された数字を判断するという心理効果です。月下は「ご予算を少しオーバーしますが……」と前置きします。一方の桐山は「相場なら15万円するのに……」と前置きします。月下の紹介の仕方だと、お客様は検討することをあきらめてしまいます。一方、桐山の提案の仕方だとお得感があり、その先の話を聞きたくなります。

しかも、そのアンカー効果がご主人に対しては効いていないと分かると、桐山はすかさずデメリットを説明します。「不動産営業マン=嘘つき」というイメージを覆し、「信頼できる人」と思わせるためです。信頼してもらえればあとは簡単です。メリットを説明すればそれがすべてプラスに働きます。

最後のダメ押しは「トイプードル、私も飼っています」と言いたげな写真を見せ、三浦夫妻に共通点を意識させます。人はなぜか共通項があると、親近感がわき、その人のことがいい人に思えるのです。営業マンはよく、名刺の裏や話題のネタに出身地や出身校を使いますが、その効果をねらったものです。

不動産賃貸で「預り金」は返してもらえるお金

そうやって獲得した見込み客だったのに、桐山は契約寸前と思われた三浦夫妻の担当を永瀬に譲ります。大家さんが急に家賃を1万円上げたため、契約が難航しそうだと判断したからです。それを知らない永瀬はありがたく引き受けます。永瀬(山下智久)は嘘がつけないため、家賃が1万円値上げになるのであれば、借りるのをやめると言い出した三浦夫妻に「預り金はお返しします」と謝罪します。

不動産売買契約時の手付金とは違い、賃貸契約前の預り金は、成約に至らない場合は返還しなければならないことになっているからです。仮契約などと言って、一定額を要求する不動産会社も存在しますが、預り金は必ず払わなくてはいけないものではありません。

預り金は成約に至らない場合は返還されるのか、事前に確認することをお勧めします。悪徳営業マンでも知識がある相手をだますのは難しいでしょう。ちなみに成約になった場合、預り金は家賃や敷金などに充当されます。

一般媒介推しの永瀬だが、それだけは疑問

マンションをできるだけ高く売却したいと来店されたお客様に、永瀬(山下智久)は嘘がつけず、複数の不動産会社に依頼できる「一般媒介契約」を勧めます。それを聞いていた桐山(市原隼人)はうまく永瀬に席を外させ、高く売りたいなら「専任媒介契約」がお勧めだと話します。そして信頼を得た桐山は担当を横取りしてしまいます。

永瀬は一般媒介の方が、複数の不動産会社から少しでもよい条件を選ぶことができると思っているため、正直にそう説明していますが、本当にそうでしょうか?

もちろんケースバイケースですが、一般媒介は専任媒介や専属専任媒介に比べて不動産会社の中で優先順位が低い物件となる可能性があります。必ず仲介手数料を得ることができる専任媒介の物件を、不動産会社が広告活動などすべてにおいて優先することは十分想像できます。高く売りたいのであれば、早く売却するのが先決です。売れ残り感が出ると、値下げせざるを得なくなります。

3種類の媒介契約について一覧にしてみました。

  一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
契約できる不動産会社 複数の不動産会社と契約可能 契約できるのは1社のみ 契約できるのは1社のみ
不動産流通機構への登録 登録する義務なし(依頼は可能) 7日以内に登録の義務あり 5日以内に登録の義務あり
販売状況の報告 定めなし 14日に1度以上の報告義務あり 7日に1度以上の報告義務あり
自己発見の買主 不動産会社を介する必要なし 不動産会社を介する必要なし 必ず不動産会社を介する必要あり
媒介契約期間 定めなし。一般的には3カ月程度。更新可 最長で3カ月。更新可 最長で3カ月。更新可

真のカスタマーファーストとは?

月下はお客様が納得するまで内見することがカスタマーファーストだと思い、靴ズレができるほど案内します。しかしそれを見かねた永瀬は、いかに少ない内見件数で多く成約するかが重要で、それができるのがいい営業マンであると諭します。

一見お客様が納得するまで物件を紹介し、内見してもらうのは正しいことのような印象を受けますが、私の経験上、ある意味正しく、ある意味違うと私は思っています。

たとえば10件内見する場合、物理的に1日で案内するのは難しく、数日かかる可能性があります。いい物件は本当に1日で決まってしまうことが多く、すべて見て迷っているうちに他のお客様で成約となってしまうことがあります。年度末などの繁忙期の賃貸物件がまさにそれです。気に入った物件が他社で決まってしまうと、お客様も意気消沈してしまうので考えものです。よって効率のいい内見は必ずしも悪ではありません。

私も以前お客様が決心するまで待とうと思っていたら、別のお客様が申し込みを入れてしまったため購入できず、「もっとプッシュしてほしかった」と言われたことがあります。不動産はいいと思ったら早く決断するほうが吉と出ることがあることは肝に銘じておきましょう。

また、私は見当違いの物件ばかり紹介する人だと思われないために、お客様の希望条件に合う物件を厳選して紹介していました。そのために希望条件のヒアリングに時間を割いていました。それは正解だと思っています。こうすることで、気に入った物件を決めるまでのスピードが早くなり、お客さんにとっても大きなメリットになるからです。

次回第3話は4月19日(火)夜10時から「信じられるパートナーとは」です。嘘をつかずとも営業成績を上げることができるのか、永瀬の今後が気になります。個人的には銀行員の榎本(泉里香)との恋模様にも注目しています。

 

桜木理恵(宅地建物取引士)
大学4年時に宅地建物取引士に合格。新卒で私鉄系不動産会社入社し約8年間、売買仲介担当として従事。その後出産・子育てのため、大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し、5年間勤務。信託銀行にて不動産調査や不動産管理会社にてPMの経験あり。保有資格は他に2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)。

 

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