ある日突然、うそがつけなくなってしまった不動産仲介会社の営業マンが、独特の商慣習で動く不動産業界で奮闘する姿を描いたNHKドラマ『正直不動産』。第2話が2022年4月12日(火)夜10時に放映されました。

 

〝うそをもいとわない〟セールストークで売上ナンバーワンの地位を維持する不動産営業マンの永瀬財地(演・山下智久)が〝うそがつけない〟営業マンになった今、どのように家を売っていくのか。海千山千の不動産業界をどのように生き抜いてくのか。話題のドラマ第2話の最速レビューをお届けします。

 

※REDSは原作漫画『正直不動産』(小学館ビッグコミック連載中)のシナリオ作成に協力し、ドラマ化の際も代表の深谷十三が不動産考証にかかわったほか、REDSエージェントが取材協力をしています。REDS「不動産のリアル」編集部では、どのメディアよりも早く、ドラマの内容紹介のほか、作中で登場した不動産業界の商慣習や不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをプチ解説します。

 

(不動産のリアル編集部)

 

不動産とビジネスマン

(写真はイメージです)

 

「石ころみたいな物件に妖しい光をまとわせ、売りさばいてこそ営業」

 

タワーマンションの一室で2人の女性から「どっちが好きなの?」と迫られ、「ただの遊びだし」と口走ったために、2人に包丁で刺されてしまう永瀬。そんな夢オチで始まるオープニングから、永瀬が勤務する登坂不動産の朝礼へと場面が移ります。今回も大河部長(演・長谷川忍)のクイズ。

 

大河「ダイヤモンドはなぜ売れると思う?」
月下「キラキラ輝いているから!」
大河「半分正解。いいか、男にとってダイヤなどただの石ころだ。だが女からすれば、あの怪しい光が女心をくすぐるんだ。石ころみたいな物件に妖しい光をまとわせ、売りさばいてこそ営業だ」
月下「でもどうやって売るんですか?」
大河「よし、特別にオレのテクニックを教えてやる。物件の情報を小出しにして、客の知りたい欲求を刺激しろ。おしゃべりなやつより、無口でミステリアスなほうがモテるだろ。オレみたいにな」

 

不動産会社の本音が垣間見えるこの場面で、また永瀬に風が吹いて「クソしょうもないテクニック」と言ってしまいます。しかし、部長の言葉は当たらずとも遠からずであることが、次の場面で語られます。

 

心理学を駆使して予算超えの部屋を契約させるテクニック

 

賃貸アパートへの入居を考えている人が2組、登坂不動産を訪れます。ここで、先ほどの大河部長が口にしたセールストークを駆使して、新人の月下咲良(演・福原遥)では無理だった家賃13万円の部屋を営業成績1位の桐山貴久(演・市原隼人)があっさり成約してしまいました。

 

そのテクニックとは……。まず「予算は12万円以内」と聞けば「掘り出し物です。ここ相場なら15万するのに、13万円なんです」。これは後に永瀬が説明する心理学の「アンカー効果」という手法です。

 

さらにちょっと難色を示していることを察知すれば「ただ、ちょっと駅から遠いところだけが欠点で。でもご心配いりません。物件の目の前にバス停があって……」、犬を飼うことを希望していることに気づけば、すかさず犬種を聞き出し、スマホに保存している写真を見せて「近くに動物病院があるんですよ」とたたみかけるのです。

 

これは「どうせ不動産屋はいいことしか言わない」という客の心理を突いたもので、直後に「バスが多い」と欠点を打ち消し、「動物病院が多い」とメリットを強調するという手法です。いずれも大河部長の言葉どおり、「情報を小出しにして欲求を刺激」しています。

 

客はここで内見もせずに入居を決めてしまいますが、ここで注目したいのが、客が支払った「預り金」というお金です。

 

不動産売買では購入者が契約成立時に「手付金」を支払うことが一般的です。契約を解除するとき、解除の理由が買主都合なら買主は手付金を放棄し、売主都合なら支払われた手付金の倍額を支払うというルールになっています。売主と買主の間の売買契約を安定させるためのもので、法的根拠を持ち、上限額もあります。

 

ところが、賃貸契約ではこの手付金は存在しません。預り金はそれに似たものといえますが、入居希望者と不動産会社とでのやりとりであり、法的根拠はありません。支払うことで、希望物件の入居者募集を一時的にストップさせることができますが、審査の通過が約束されたものでもなく、金額に上限もありません。契約が成立すれば、敷金や礼金などの初期費用と相殺するのが一般的ですが、契約不成立の場合は返還されるべきお金です。

 

しかし、番組では永瀬のセリフで「悪質な営業マンだと(返さない)ね。そういうこともさりげなく書類に明記したりする。別にだましたわけじゃない」と説明されていました。しかし、宅地建物取引業法では預かり人の返還を拒む行為は明確に禁止されています。にもかかわらず、トラブルはしばしばあるようです。預り金を求められたときは、キャンセル時に返還してもらえることを確認し、預かり証を発行してもらうようにすると安心です。

 

マンション売買、不動産会社との契約方法に3種類!

 

場面が変わり、永瀬と月下は自宅マンションを売却したいという笹原吾郎と対面。不動産会社に売却や購入を依頼する際、まず締結する「媒介契約」について説明しています。作中でも出ていたように、媒介契約には以下の3種類があります。それぞれの違いを表にまとめました。

 

  一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
契約できる不動産会社 複数の不動産会社と契約可能 契約できるのは1社のみ 契約できるのは1社のみ
不動産流通機構への登録 登録する義務なし(依頼は可能) 7日以内に登録の義務あり 5日以内に登録の義務あり
販売状況の報告 定めなし 14日に1度以上の報告義務あり 7日に1度以上の報告義務あり
自己発見の買主 不動産会社を介する必要なし 不動産会社を介する必要なし 必ず不動産会社を介する必要あり
媒介契約期間 定めなし。一般的には3カ月程度。更新可 最長で3カ月。更新可 最長で3カ月。更新可

 

それぞれの違いについて「簡単に言うと不動産屋1社と契約するか、複数と契約するかという違いがあります。それもお客様のニーズに合わせて選択するのが賢明です」と説明する月下に対し、永瀬は心の中で「うそがつけるなら『お勧めは専属専任』って断言するのに」と毒づきますが、次の瞬間、また例の風に吹かれ、正直モードに。

 

永瀬「私は『一般媒介契約』をお勧めします。これですと、複数の不動産屋と契約を結んで、比較検討しながら、より好条件な売却先を決めることができるので」。

 

ここまで話した瞬間、永瀬に電話が入ります。離席すると、入れ替わりでなぜか桐山がお茶を持って入ってきて、「お客様でしたら『専任媒介』か『専属専任』のほうが間違いなく有利ですね」と永瀬と真逆の説明をします。一同驚きますが、これは正直モードではない永瀬の心の声と同じ答えでもあります。「永瀬さんはうそをついたってことですか?」と問われた桐山は「申し訳ありませんが、そういうことになります」と答え、激怒した客は担当を桐山にチェンジしてしまいます。

 

媒介契約と第一話に出た「両手」の関係

 

実は、先の永瀬への電話は桐山がかけたもので、永瀬の商談を妨害するためだったことが明らかになります。問い詰める月下に対し、桐山は「一般媒介契約はもうからない」と説明します。

 

桐山「一般媒介を結んだ後、他の不動産屋がうちより好条件の買い手を見つけたら、こっちには1円の手数料も入らない。ただ働きもいいところだ。その点、専任か、専属ならマンションがいくらで売れようと売り手から確実に手数料が入る。さらに買い手もこっちで見つければ、両方から手数料が入る」
月下「前に言ってた『両手』ってやつ……」

 

「両手」とは第一話にも出てきました。売却物件を預かった不動産会社が、他の不動産会社を通じて家を探している人に仲介すれば、仲介手数料は売り手からしか入りません。しかし、買い手を自分で探して仲介すれば、買い手からも仲介手数料をもらうことができます。こうして少ない手間で2倍の収入となることから、多くの不動産会社が「両手」を目指していることは不動産業界の常識となっています。

 

ただ、「両手」を目指すあまり、売却物件をなかなか市場に出さないという商慣習がまかり通っているのも事実。これを業界では「囲い込み」といいます。囲い込まれると、売却物件は売れにくくなったり、値下げに追い込まれたりすることも珍しくなく、お客様にとっては何のメリットもないのです。

 

一般媒介のメリットを力説する月下に桐山は「おめでたいヤツ」と切り捨てます。

 

桐山「いいか。一般媒介契約のような売ったものだけが総取りするゼロサムゲームに本気で参戦する会社はなかなかない。だから専属や専任に比べて、どこも本気で売らず、優先順位が低い案件になる。その結果、いつまでたっても売れない状況が続く。それがお客様を優先に考えていることになるのか?」

 

こう言われ、「あ……」と絶句するしかない月下。ドラマはここでこの議論は終わってしまいます。

 

契約の仕組み上、不動産会社は桐山のいうような動き方をせざるをえない面も確かにあります。では、専任か専属のほうが圧倒的に優れているかといえば、「囲い込み」に巻き込まれる可能性もあるため、必ずしもそうとはいいきれません。

 

そうなると、一般か専任・専属のどちらを選ぶにせよ、結局は良心的な不動産会社に出合えるかどうかが鍵といえそうです。

 

成約間際の案件を永瀬に渡した桐山、その真意は

 

さて、場面が変わり、永瀬は桐山が契約をほぼ確実にした先の家賃13万円の賃貸マンションの案件を譲り受けます。しかし、入居希望の夫婦はご立腹の様子。なんでも、家賃の1万円の値上げを桐山に打診されたというのです。

 

永瀬は桐山に「はめたのか?」と電話で問い詰めますが、桐山は「急にオーナーさんが値上げしたいと言ってきたんですよ。これくらいのトラブル、楽勝でしょ。ライヤー永瀬なら」と言ってガチャ切り。夫婦と対面した永瀬に例の風が吹きます。

 

夫婦「ちゃんと説明してください」
永瀬「つまり、おふたりはあと一歩で騙されるところだったんです」
夫婦「はあ?」
永瀬「(……終わった。だったら全部ぶちまけよう)。こちらのスクエアマンションは立地やリフォーム直後であることを考えると、13万円というのは破格と言っていい物件です。おそらくオーナーは最初から値上げするつもりだったと思われます。(略)おふたりがキャンセルしても値上げに応じる人はいくらでもいるでしょう」
夫婦「そんな、オークションじゃないのよ。納得できない」
永瀬「貸す貸さないの判断をするのはオーナーですから。残念ながら借主のほうが、立場が弱いんです」

 

このあと、預り金の説明をすると、交渉決裂。頭を下げるしかない永瀬でしたが、妻は「どうしてもあきらめきれない」とつぶやきます。妊娠中のお腹を愛おしそうにさすりながら「なんとかならないんですか」と懇願する妻に、永瀬は「なんともなりません」と言いかけます。

 

そこに例の風が吹き、「なんとかいたしましょう。この永瀬財地にお任せください」と言ってしまいます。

 

「正直不動産」、値上げしたオーナーとのきれいな決着

 

いよいよオーナーとの直談判に乗り出す永瀬。聞くと、オーナーは本当は終の棲家にする予定だったのが、田舎の母親が倒れたため介護が必要になったということでした。売却するまでの間、賃貸に出して家賃収入を得るよう桐山からアドバイスされ、入居者が早くつくように相場以下の価格で募集したものの、母の病気が悪化して治療費がかかるようになったため、桐山が1万円の値上げを提言。桐山とオーナーの母は高校時代の教師と教え子という関係で、桐山は何度も見舞いに行くほど懇意にしていたということでした。

 

永瀬は「(無理だ。こんなことを聞いたら、値段を下げろなんていえるわけない)」と迷いながら、深く頭を下げます。その結果、家賃の値上げは半額の5,000円で、しかもそれは管理費という項目にしてもらったため、敷金や礼金にかかわる家賃には含まれないことになりました。

 

さらに、オーナーが介護に迫られたことから値上げしたこと、子育てしやすいようにと細部にまでこだわったリフォームをしたことなどを包み隠さず話したところ、夫婦は契約に至ることになりました。

 

めでたし、めでたしの結末ですが、これまでは何かとヒール役としての存在に徹していた桐山にも人間らしい一面が垣間見ることができました。しかし、食えないヤツであることには変わりなく、「なんで一位にこだわるんですか?」と聞く月下に「一位を取って実績を残せば、次につながる。こんな会社、オレには通過点でしかない」と意味深な言葉を返していました。

 

さて、今回の最後の場面、取引先の銀行員、榎本美波(泉里香)と永瀬はアクシデントで体が密着してしまいます。その状況を見つめる月下。今をときめく山下智久と泉里香の取り合わせですから、ドキドキする視聴者も多いでしょう。ロマンスは生まれるのか、次回も楽しみです。

 

(不動産のリアル編集部)