ビックコミックに連載中の人気漫画『正直不動産』。2022年春には山下智久主演でドラマ化されることが決まり、今から話題を呼んでいます。主人公の 永瀬財地は、客に不動産を買わせるためにどんな手でも使ってきた成績トップの営業マンでしたが、ある日突然、嘘がつけない体質になってしまいます。

 

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産の営業マンとしてはある意味で致命的なハンデを背負いながらも、逆に「正直な営業スタイル」を武器に、果敢に不動産業界の悪しき商慣習に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

 

今回、取り上げるのは「欠陥マンション」に関するエピソードです。

 

マンション群

(写真はイメージです)

 

欠陥マンションといえば……

 

欠陥マンションというと、20世紀末頃から「住宅の手抜き工事」がマスコミで取り上げられ始め、21世紀に入ってまもなく、いわゆる「姉歯事件」に発展する耐震偽装問題が発覚します。最近は「レオパレスの施工不良」問題がありました。

 

地震国ニッポンでは、強度の弱い建物は致命的です。また、一生に一度の大きな買い物をするわけですから、いい加減なものを買わされたのではたまったものではありません。

 

作中では、床下に水漏れがあり、断熱材の腐食から床が抜けてもおかしくないという欠陥住宅だったにもかかわらず、そのまま売り払ってしまおうとする悪徳不動産会社が登場。主人公の永瀬は、有無を言わさずバールでフローリングを剥がし、水漏れを暴いてしまいました。

 

マンションにおける欠陥の種類

 

欠陥マンションとは、本来あるべき安全性や住宅機能が欠けているマンションのことを指します。かなり広い概念であり、「瑕疵」(今でいう契約不適合責任)と明確な線引きはありませんが、「瑕疵」が建築後の事後的な要因によるものであるのに対し、「欠陥」は施工時からの問題で、回復が難しいもの、というようなニュアンスがあるように思います。

 

過去に実際に例のある欠陥マンションの一例としては下記のようなものが挙げられます。

 

・基礎工事の欠陥や傾きなど耐久性、耐震性に問題がある
・法的に求められる強度の躯体となっていない、材料が不足している
・雨漏りや壁の亀裂、はがれなど耐火性や断熱性、遮音性に問題がある
・契約書や設計図に違反がある
・契約書にある設備が搭載されていない

 

こうした欠陥については、中小規模のデベロッパーに限った話ではなく、大手でもありえることなので厄介です。

 

欠陥マンションを買ってしまったら

 

買ったマンションが欠陥マンションだと判明した場合、どうすればいいのでしょうか。まずは「住宅品質確保法」に基づき修補請求することが基本です。住宅品質確保法で修補請求できるのは「構造耐力上主要な部分」の「雨水の浸入を防止する部分」に欠陥が生じた場合で、買主はこの場合、売主に対して修補請求ができることになっています。

 

「構造耐力上主要な部分」というのは、住宅の基礎、基礎杭、壁、柱、小屋組、土台、筋交等の斜材、床版、屋根版または梁・桁などの横架材と広範囲にわたります。

 

宅地建物取引業法による契約不適合責任(瑕疵も含まれる)では、契約後に生じた「認識できなかった損害」が中心で、「修補請求」がないため、欠陥を修復してもらうことはできません。そのため、欠陥部分を修復し、今の家に住み続けたい場合には、住宅品質確保法に基づき修補請求することになります。

 

欠陥マンションを買わないためのチェックポイント

 

実際のところ、マンションの場合は危険が及ぶとか、売却価格に影響するようなレベルの「欠陥」がある例は少ないでしょう。前述の耐震偽装が行われたマンションは雑誌などでは「殺人マンション」とまでいわれましたが、東日本大震災などの地震でも倒壊したという話はありません。

 

戸建ては木造が多く、水漏れや傾き、シロアリなど注意したいポイントはありますが、鉄筋コンクリート造のマンションの場合、そこまで神経質になることもないというのも事実です。実際に、マンションは戸建てと比べて購入後の瑕疵というのも少ない傾向にあります。『正直不動産』で取り上げられているのはどちらかというと、瑕疵に近い問題です。

 

もっとも、前売主の不注意による水漏れなどは認識した時点で説明すべきことなので、水漏れの存在について知っていた場合は瑕疵というよりはむしろ、説明義務違反、告知義務違反が問われることになります。

 

欠陥マンションを買わないための主なチェックポイントは以下のとおりです。

 

・コンクリートのひび割れはないか
・塗装にひびや剥がれがないか
・鉄部(手すりなど)のサビがないか
・雨漏りの痕跡はないか
・屋上の防水にふくらみなどはないか
・外壁のタイルなどに剥がれがないか

 

上記のどれかひとつにでも欠陥が見つかった場合、検出された部分以外にも雑な施工がなされている可能性があります。

 

水浸しの原因はウォーターベッドの寝たばこだった

 

作中では、床が水浸しとなったのは、前のオーナーがウォーターベッドを使用しており、寝たばこが原因で水が漏れ出してしまったことが原因でした。ウォーターベッドといえば、数十年前に流行し、そのよさから根強い人気があるようです。一方で、寝たばこが原因で水漏れがあったり、メンテナンスが必要だったりと、それなりに維持するのに手間もかかるようです。

 

前のオーナーが工事費に数百万円かかると言われて途方に暮れていたところ、悪徳不動産会社がかなり安く買いたたき、再販したものでした。

 

永瀬たちはインスペクションを提案し、自分たちで手配したインスペクターに診断をさせます。ところが悪徳不動産会社はそのインスペクターまで「今後、優先的に仕事を回すから不利な結果を出さないでほしい」と懐柔しようとしていました。しかし、インスペクターは「誰に何を言われようが言われまいが、私は私の仕事をするまでです」と懐柔をきっぱりはねつけました。

 

欠陥マンションを建て、欠陥マンションであることを隠して売りつけようとする業者がいる一方で、不動産周りで正直に生きる人間の姿が描かれていることに救いを感じたエピソードでもありました。

 

 

松村隆平(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。