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「再建築不可」の戸建ては絶対に買ってはいけないのか?~『正直不動産』をプロが解説(5巻 37・38話より)

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公開日:2022年2月16日

ビックコミックに連載中の人気漫画『正直不動産』。2022年春には山下智久主演でドラマ化されることが決まり、今から話題を呼んでいます。主人公の永瀬財地は、客に不動産を買わせるためにどんな手でも使ってきた成績トップの営業マンでしたが、ある日突然、嘘がつけない体質になってしまいます。

 

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産の営業マンとしてはある意味で致命的なハンデを背負いながらも、逆に「正直な営業スタイル」を武器に、果敢に不動産業界の悪しき商慣習に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

 

今回の記事のタイトルにもある「再建築不可」について解説します。

 

住宅NG

(写真はイメージです)

 

再建築不可の物件とは?

 

住宅を建築する際は建築基準法を遵守することが義務付けられています。違反すると役所から「建築確認」が下りず、建築ができません。

 

建築基準法の中でも最も基本的で重要なものの一つに「接道義務」があります。接道義務とは「原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していない土地には建物を建てることができない」という決まりで、違反している状態になっている物件は「再建築不可」と呼びます。

 

「再建築不可」物件は、その名のとおり、今ある建物を取り壊した後に、建物を新築することができません。

 

なぜこんなルールがあるのかというと、火災が起きたときに消防車や救急車といった緊急車両が建物の近くで消火活動や救助活動をスムーズに行えるようにするためです。木造建築の多い日本ならではの法規制ともいえます。

 

まとめると、再建築不可となるのは、以下の3パターンです。

 

(1)道路に接していない場合
(2)道路に接していても、その道路が4mの幅がない場合
(3)道路と土地が接している幅が2mに満たない場合

 

このうちどれか1つでも該当していると、再建築不可です。

 

再建築不可の土地はなぜ存在する?

 

漫画『正直不動産』では、こういった事実を隠して戸建て住宅を売ってしまおうとした不動産屋が描かれており、まさに「悪徳」といえます。当然、通常の土地より「半値八掛け」の価格で、資産価値はかなり乏しいものです。

 

では、なぜこのような物件が存在するのでしょうか? 基準を満たしていなかったのに、なぜ当時は家を建てることができたのか、疑問に感じる人も多いでしょう。

 

これが、「既存不適格」の問題です。建築基準法ができたのは1950年のことであり、これ以前に建てられた家の中には接道義務を果たしていない物件が存在し、そのため「家はあるけど、今の法律だと家が建築できない」というわけです。

 

再建築不可物件を買ってはいけない3大理由

 

とはいえ、再建築不可物件というのは意外にもかなりたくさんあります。東京都では、全767.1万戸のうち、4.7%にあたる36.1万戸が該当します(総務省・平成30年住宅・土地統計調査)。

 

全体の5%(20戸に1戸)にも迫るというのはかなりの割合ということができます。

 

『正直不動産』にも描かれていましたが、再建築不可の土地は大きく以下の3つの理由で買ってはいけません。

 

建て替えができない

 

今まで見てきたとおり、再建築不可物件は建て替えができません。このため、非常に資産性が低いです。駐車場に用途を変更したところで、そもそも道幅が狭いため車が入れず、駐車場としての利用価値も乏しくなります。

 

住宅ローンが組めない

 

再建築不可物件を買おうとしても、銀行は融資をつけてくれません。これが最も大きなデメリットです。自分が買いにくいだけでなく、将来その土地を売却する際にもそういった条件がつきます。つまり、買う人も住宅ローンが組めないということです。それでは買い手はなかなか現れないでしょう。

 

倒壊や火災で消失すると住めなくなる

 

どんな建物でも倒壊や火災の不安はついて回りますが、倒壊や滅失となっても建て替えができません。だからこそ、作中でも永瀬の後輩の月下は「再建築不可の物件を仲介したくはない」と断固反対したのですね。

 

再建築不可物件が絶対にダメなわけではない

 

どんな場合でも再建築不可が絶対にダメかというと、必ずしもそうではありません。以下のように、事情によっては再建築不可物件であってもチャレンジしてもいいケースがあります。

 

一括許可基準が認められている場合

 

かなりトリッキーな取引にはなりますが、管轄の役所が「ここは再建築不可ですが、特別に○○という条件をみたしているため、許可します」というふうに例外措置が取られている場合があります。

 

代表的なのが「水路またぎ」とよばれる土地です。昔の名残で、見かけ上はどうみても道路なのに、法律上はそこが「水路」といったように道路以外に接していることになっている場合があります。そのような場合、役所が特別に許可を出している場合があります。

 

こうした場合、銀行に書面を提出すれば住宅ローンが下りる場合がありますし、通常の土地と同様に建築が可能です。ただし、建築業者や銀行と綿密な打ち合わせが必要になるため、難易度は高めです。

 

リフォームやリノベーションは可能

 

再建築不可物件でもリフォームはできます。近年は新たな価値を加えて修復するリノベーションも普及してきました。費用しだいでは老朽化していても別物といえる物件に生き返らせることができるため、その分を見込んだうえでも割安と感じるのであれば、選択肢に入れることも可能です。

 

ただし、前述のとおり「再建築不可物件は建築確認が取得できない」ということは忘れてはなりません。下記の場合には、リフォームであっても届け出が必要です。

 

・増築:延床面積が変わってしまう場合
・改築:構造が変わる場合(屋根の高さ、柱の位置、躯体の構造)

 

少々話が細かくなりますが、これに対して大規模修繕(フルリノベのイメージ)の場合も原則は届け出が必要ですが、一般的な住宅の場合(延床面積500㎡以下、かつ木造2階建)は例外として「届け出が不要」となっています。

 

このため、増築・改築にあたらないリフォームなら、2階建て木造住宅であればほぼ可能ということになります。このあたりは、実際に施工を依頼する工務店に相談が必要ですが、経験がある工務店であれば建築確認についても知識を持っているので、必要以上に怖がることはありません。

 

隣地の土地を譲ってもらえることが分かっている場合

 

『正直不動産』の作中で出てきた大逆転パターンです。隣地が土地の一部を売ってくれることで、建築基準法をクリアできることがあります。これで建築可能になり、資産価値も跳ね上がる場合があります。

 

実は不動産の業者間ではしばしば行われる取引です。隣地の持ち主としても、数センチ売ったくらいでは特に問題ない場合も多く、お互いに非常にメリットが多くなることがあります。

 

作中の業者の不正はややオーバーか

 

以上みてきたように、再建築不可の土地というのは絶対にダメ、ということではありませんが、購入にあたっては相当な注意が必要です。できることなら避けるべきですが、費用的に、あるいは場所的にメリットを感じてどうしてもチャレンジしたい場合は、不動産会社や建築業者とよく打ち合わせをすることが重要です。

 

最後に作中のエピソードにひとつコメントを。不動産業者がメジャーでの測定値をごまかし、買主を騙して売ろうとしている場面がありましたが、現実にはそこまでひどい小細工をすることは想定しづらいです。

 

というのも、もし買主が知らずにこうした取引をしてしまえば「契約不適合(=瑕疵)」の問題になりますし、また重要説明義務違反、告知義務違反、心裡留保(意思表示を行う者が自己の真意と表示行為の内容との食い違いを自覚しながら行う意思表示)など、売主および仲介業者はさまざまな法的責任を問われるからです。こうなると、訴訟を起こされたときに勝つことは不可能でしょう。

 

 

松村隆平
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。
趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。

 

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