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「契約不適合責任」に変更された瑕疵担保責任。2020年4月以降の契約なら話の展開も変わる~『正直不動産』をプロが解説(2巻 11・12話より)

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公開日:2022年2月16日

『正直不動産』は小学館発行の「ビッグコミック」に連載されている漫画作品です。2022年4月にはNHKドラマ10(金曜夜10時)で、山下智久さんを主役としてドラマ化され、今から話題を呼んでいます。

 

売土地にあった古ぼけた祠を蹴飛ばした、というまるで漫画のようなきっかけでで(漫画ですけどね)嘘が吐けない身体になってしまった不動産会社の営業マン「永瀬財地」が、ぼやきながらも開き直り、「正直な」営業スタイルで不動産業界のドロドロとした生臭い商慣行に対抗していくという、涙あり笑いあり学びありの素敵なストーリーが展開されています。

 

今回は、「瑕疵担保責任」についてのお話です(2020年の民法改正で「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」という言葉に置き換えられ、中身も変更されました)。

 

カレンダーと住宅模型

(写真はイメージです)

 

『正直不動産』では排水リスクでもめる内容

 

「瑕疵担保責任」と題したストーリーはこんな内容です。

 

永瀬の後輩で新人営業ウーマンの月下が、永瀬の直属の上司である瀬戸課長に、商談への同席を命じられます。商談相手は、建売住宅の購入契約にハンコを押す直前にゴネ出した買主。月下は場を和ませる要員ですから「一切しゃべるなよ」とまで釘を刺されてしまいます。

 

ところが、買主が「瑕疵担保責任は2年間」という特約を不安視していることを明かすと、「カスタマーファースト」をモットーとする月下は「新築の場合は、『品確法』により、住宅の基本構造部分や雨水の侵入を防ぐ壁や屋根は、売主が10年間保証することになっている、それ以外の部分も2年から最大20年まで延長が可能だ」と教えてしまいます。

 

買主は、期間の延長の話に飛びつきますが、瀬戸課長が間に入って「売主と交渉してみます」とその場を収めます。買主が帰った後、売主にとって不利になることを発言した月下は瀬戸課長から大目玉を食らいます。出費の可能性が高まる期間の延長を売主が簡単に受け入れるはずがない、建売住宅は4軒中3軒がすでに特約期間2年間で成約済みのため、不公平感が居住者に生まれてしまうし同じ条件での契約修正を要望されても対応できない、とネチネチと説教されてしまいます。

 

それを見ていた永瀬は、正直に「部下のケツも拭けねーのに、上司面するんじゃねーよ」とたんかを切ってしまいました。しかも、それを社長にも聞かれ「お前がケツを拭け」と言われる始末です。永瀬は、瀬戸課長に帯同して売主の稲増建設社長に謝りに行き、なんとか、3年間の特約期間で譲歩する言質を得ました。数日後に、売主・買主、不動産会社が一堂に会し、契約締結となりました。買主も「保証が1年延びた」とご満悦です。ところが永瀬は、品確法の説明をしたときに、売主と瀬戸課長がにんまりとほくそ笑んだことから、黙っていられずに契約の先延ばしを提案してしまいます。

 

永瀬は独自に調査を進め、建売住宅の用地が以前、用水路であったことを突き止めます。そして契約会場に他の3世帯も集めた上で、「土壌改良はされてはいるものの不完全で大雨が降れば問題発生のリスクがある」「排水に関しての問題は品確法では責任を問えず、保証期間は瑕疵担保責任の特約期間内のみである」「特約期間は他の購入者は2年で現買主だけは3年となっていること」などを暴露してしまいます。

 

紛糾する現場に永瀬の勤務する不動産会社の社長が現れ、一切の責任は仲介業者にあると謝罪しました。改めて排水整備をしたうえで再契約をすることで、一応は丸く収まりました。しかし、会社に与えた損害は工事費や売主の不興を買ったことなど計り知れないと思われ、永瀬の将来が危惧されるものとなったのでした。

 

契約不適合責任と瑕疵担保責任。その違いは?

 

漫画の世界では「瑕疵担保責任」という言葉が当たり前のように使われていますが、法律や不動産の世界と縁が薄い人には、なにやら難しい言葉に聞こえてしまうかもしれませんね。

 

まず、「瑕疵担保責任」とは2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」と改称されました。現在では一部の保険の商品名などに使われるだけの言葉となっています。この漫画の発表時期は2017年で、法改正前だったという大前提を覚えておきましょう。ここでは、まず改正前の「瑕疵担保責任」について簡単に説明し、その次に「契約不適合責任」になってどのような点が改正になったかを説明します。

 

「瑕疵」とは、欠陥を意味します。民法では、「隠れた」瑕疵があった場合は、「善意無過失」の買主は損害賠償の請求ができ、契約の目的を達成できない場合は契約を解除することができる、としていました。これを売主の「瑕疵担保責任」といいます。売主は隠れた瑕疵を損害賠償や契約解除によって保証しなければならない責任がある、ということです。

 

これに対し改称された「契約不適合責任」とは、「売買契約の際に売買の目的物に契約の目的に適わない欠陥があった場合に買主を保護するために売主の責任を規定するもの」です。言葉の意味そのものは「瑕疵担保責任」とあまり変わらないのですが、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更になったことで、適用される要件が広がり、買主の保護がより分かりやすく、手厚くなったといえます。

 

瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わって変更されたこと

 

具体的には以下の変更点があります。

 

「隠れたる」という要件がなくなったこと

 

従来の瑕疵担保責任においては、瑕疵(欠陥)として成立する要件であり、買主の善意(知らなかったこと)無過失(知らなかったことが買主の責任ではないこと)を意味するとされていました。契約不適合責任では、「隠れたる」の文言は外されて、契約の内容に適合するかどうかのみを要件としています。

 

権利行使の方法に「追完請求」と「代金減額請求」が加わったこと

 

従来の瑕疵担保責任では、「契約解除」と「損害賠償請求」が認められていました。契約不適合責任については、その2つに加えて、契約不適合部分の修理や補修をするように売主に要求する「追完請求」と、商品に欠陥がある場合には代金の減額で処理することも多いため「代金減額請求」が認められています。

 

権利行使期間が知ってから1年以内の「請求」から「通知」に変更

 

民法では、瑕疵担保責任の追及について「瑕疵を発見した時から1年以内に行われなければいけない」と定められていました。

 

一方、不動産業者の業務を規定する宅地建物取引業法では、宅建業者が売主で宅建業者でないものが買主となる場合は「瑕疵担保責任の期間を物件の引き渡しから2年以上とする」特約を認めています。つまり不動産業者が売主で一般のお客様に販売する場合は、瑕疵担保責任を2年以内とする特約は無効となります。

 

さらに、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、新築の住宅は、基本構造部分(ア.構造耐力上主要な部分、イ.雨水の侵入を防止する部分)について、瑕疵担保責任期間を10年(起算点は引渡し時、もしくは建築工事終了時)とし、それよりも短い特約は無効になり、合意によって20年まで伸長できる、としています。漫画の中の月下の主張は、この品確法の定めを基にしています。

 

この責任期間の定めも、民法改正による「契約不適合責任」への変更により、以下のとおり改正されています。

 

買主は、従来は、瑕疵の内容を知ってから1年以内に「請求」をしなければなりませんでした。「請求」とは「欠陥の具体的な内容とそれに基づく損害賠償請求をすることを表明して損害額の算定根拠を明示して売主に伝えること」を意味します。これでは買主側の負担が大きいとして、改正民法では、おおまかな不適合の範囲を明らかにすればよいとされています。

 

また、「引き渡しから10年で時効」と定められたことも、あいまいだった規定を明確にし、買主の保護につながっています。

 

また、売主が知っていた場合や重大な過失のために売主が知らなかった場合は、「買主の知ってから1年以内の通知の義務」は免除されるとしています。

 

漫画本編のような案件の場合、売主と仲介業者が土壌改良の不十分な工事という事実を知っているので、仮にそれが原因で排水などに問題が発生した場合、「2020年4月以降の売買契約であれば、契約不適合責任は免れない」、というのが筆者の見解です。

 

広がった売主責任を「特約による免責」で調整

 

契約不適合責任は、買主の保護のため、従来の瑕疵担保責任と比較して、売主側の責任範囲が大きくなっています。新築物件では、品確法の規定もあるので、かなり安心できると思われます。また、中古物件でも売主が宅建業者(不動産業者)の場合は、宅建業法でも買主保護の規定があります。

 

しかし、特に売主が一般の方の中古住宅の場合、「契約自由」の原則があるため、従来の瑕疵担保責任と同様に、免責とすることが可能です。

 

建物そのものについては、通常契約不適合責任についての条文があり、その免責や通知期間の短縮を売主が求めた場合、特約事項として記載することが一般的です。

 

しかし、付帯設備(配管・配線関係、暖房・冷房、家電・照明・調理器具など)については、現況渡しで修理は免責を希望条件とする売主も多いため、特記や特約事項とせず、条文としてそのまま契約書に記載されている場合がむしろ一般的です。

 

特に耐用年数を重ねた中古住宅については、付帯設備のチェックとともに、契約書のチェックは欠かせないものとなるでしょう。仲介業者も不動産取引のプロとして法的なリスクを助言することがますます求められています。

 

中古住宅では、付帯設備を中心にある程度の経年劣化は仕方ありません。そのため新築住宅よりも割安になっているという側面もあります。

 

買主のリスクを減らすことと、価格の適正化というバランスを取るためにも、専門家である宅地建物取引業者の物件調査や相場価格の助言が必要だといえます。

 

インスペクション(建物状況調査)を実施して、将来的なリスクや修繕・リフォーム計画の目安に利用することも重要だと思われます。筆者は、お客様が実需として中古住宅を購入する際には、インスペクションの実施を強く推奨しています。

 

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

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