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所有権より安い借地権、検討する際のポイント~『正直不動産』をプロが解説(3・4巻 23・24話より)

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公開日:2022年2月18日

ビックコミックに連載中の人気漫画『正直不動産』。2022年春には山下智久主演でドラマ化されることが決まり、今から話題を呼んでいます。

 

主人公の永瀬財地は、客に不動産を買わせるためにどんな手でも使ってきた成績トップの営業マンでしたが、ある日突然、嘘がつけない体質になってしまいます。

 

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産の営業マンとしてはある意味で致命的なハンデを背負いながらも、逆に「正直な営業スタイル」を武器に、果敢に不動産業界の悪しき商慣習に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

 

今回は、単行本3・4巻の23・24話で繰り広げられた「借地権」をテーマとしたエピソードを取り上げます。一般に、「所有権=底地+借地」といわれますが、底地と借地の単独売買より、同時売買の方が大きく価値が出ます。そうしたことから、不動産業者が話をまとめ、一括してスーパーに売り渡すことで巨富を得る、というシーンが作中で描かれていました。元・不動産エージェントの経験から、借地権や底地権の基礎的なポイントについて解説します。

 

一戸建て

(写真はイメージです)

 

借地権とは

 

借地権とは、自分の建物を建てるため、他の人の土地を借りる権利を指します。この点、土地を貸す人を「底地権者」、借りる人(借地権購入者)を「借地権者」といいます。戸建て住宅の広告には、土地について「所有権」もしくは「借地権」の記載があります。「この建売物件、やけに安くないか?」と感じる場合、借地であることもしばしばです。

 

借りる権利、と聞くと「所有権のほうがいいのかな」と感じる人もいるかもしれません。しかし、必ずしもそういうわけではありません。借地であることは調べなければ他人には分からないし、何より所有権より安く取得できることもあります。長期的な資金計画は必要になりますが、しっかり理解して購入するのであれば、悪い選択肢ではありません。

 

例えば都内でも比較的お寺の多い地域では、底地権者がお寺さんであることがあり、比較的安い地代で運営することが多くなっています。住宅ローンと毎月の地代がランニングコストになり、将来的に建物を建て替えるときには建替承諾料というものがかかります(購入時に契約書で取り決めます)。これらの条件についてしっかりと確認ができれば、借地権のほうがお得にマイホームを手に入れることが可能です。

 

借地権取得とその後にかかる費用

 

借地権には、大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があり、住宅の場合は「普通借地権」が通常です。普通借地権だと基本的に更新が認められ、住み続けることができます。

 

今回は、「普通借地件」を中心に説明します。借地権は借りている土地なので、所有権よりも土地の取得金額が安くなる代わりにいくつか独自の別費用がかかります。

 

借地権の購入費用

 

借地権の購入費用の相場は「更地価格×借地割合」と一般的には考えられています(借地権割合は、国税庁ウェブサイトの「相続税路線価」で公開)。しかし、借地権には賃料や所有権ほど決まった相場はなく、長期的な支払いをベースにお得感を確認するということも有効です。

 

例えば、所有権で5,000万円の建売があったとして、月々の支払いが35年ローンで12万円だとします。35年で支払う家賃総額は12万円×12カ月×35年で5,880万円となります。

 

一方、同じエリア、同じ程度の借地権の建売の購入価格が3,000万円、月々の支払いが8万円だとすると、総支払額は8万円×12カ月×35年で3,360万円となり、「安い」となるわけです。しかし、借地の場合はこれ以外に毎月の地代、そして借地期間を超えるたびに更新料がかかります。例えば毎月の地代が3万円、更新料が200万円だとすると、地代が35年で1,260万円、更新料200万円で35年間の総支払額は4,820万円となります。

 

話はここで終わりません。借地権のデメリットは、売却する場合に所有権よりも売りにくいことです。理由は「買う側として判断が難しいから」「借地権には抵当権が設定できないため、更地のままで売却することがほぼ不可能だから」です。このため、売却するときにいくらで売れるかまで考えておく必要があります。

 

更新料

 

借地権の更新料に法律上の規定はありませんが、地主と借地人の間で合意している場合、契約の際に決めた更新料を支払う必要があります。更新料の金額は地域によって異なりますが、借地権価格の5%前後が相場のようです。

 

建替承諾料

 

借地権のある土地上の建物を建て替える際に借地人が地主に支払います。更地価格の3%程度とされます。

 

譲渡承諾料

 

借地の場合、借地人は地主の承諾を得なければ、その地位を第三者へ譲渡(つまり借地権の売却)することはできません。譲渡の際は、地主に対して「譲渡承諾料」を支払います。相場は借地権価格の10%程度とされます。

 

底地権とは?

 

次に、「底地権」について見ていきましょう。よく、「所有権(いわゆる普通の土地の売買契約の場合)=借地権+底地権」といわれます。底地とは、所有する土地に建物の所有や利用を目的とする借地権や地上権が設定されている、まさに「(権利の)底」です。つまり、地主が、その土地を第三者に貸して地代収入を得ている土地のことともいえます。

 

法律上、底地は「物権」であり、抵当権(つまり担保のこと)の設定ができます。一方、借地は「債権」となるため、担保設定ができません。少しテクニカルな内容になりますが、そのため、例えば借地権の売買を行う場合、土地が更地のままでは住宅ローンが設定できません。というのも、銀行が住宅ローンの保証の根拠となる抵当権を設定できるものが、居住者から得られないためです。

 

一方、上に建物がしっかり建っていると、建物は借地権者の所有物となり、「所有権」は物件ですから、抵当権が設定でき、住宅ローンが「借地+建物」の総額に対して許可される、ということになります。このため、一般の人の場合はよほど現金を持っていない限り建物が建っていない状態で借地を買う、ということはかなり難しいことになります。

 

底地+借地の同時売買

 

単独売買のデメリット

 

底地や借地権は売却しにくい不動産として知られています。ひとつの土地に対して複数人の権利が存在するため、それぞれを単体で売却する場合には価値が下がってしまい、買主が見つからない事態も少なくありません。そこで借地と底地をまとめて「同時売却」という方法で不動産を売却することがあります。

 

前述のとおり、底地や借地権はそれぞれ利用に制限があるため、単独の場合では扱いにくく、買主がなかなか見つからないという問題があります。また、底地は建物を建てるなどの土地利用が一切できません(その権利が借地権ということだからです)。

 

このような事情から、単独の底地や借地権には以上のようなデメリットがあるため、売れにくいだけではなく、不動産としての価値も下がってしまう傾向があるのです。

 

同時売買のメリット

 

底地と借地権を同時売却する場合、権利関係が解消され通常の土地と同じように、つまり所有権として売り出すことができます。このため単独売却と比べて、土地の価値が高くなり買主獲得が楽になります。ただし、同時売却を行うには地主と借地人の双方が合意する、もしくは誰かが一度買い上げて、転売する、という形をとる必要があります。

 

借地権者にとってのチャンス

 

これは現実的に珍しくないことですが、地主が借地権者に「底地を買わないか?」と持ち掛けてくることがあります。前述のように単独売買の場合は、更地の相場価格より大きく下回るケースがほとんどです。逆に、借地人に譲渡する場合、借地人は借地権だった土地が所有権として取得できることになるため高く買っても十分な見返りがあるし、地主としても底地の単独売買よりは高値での売却が期待できる、というわけです。

 

借地権のメリット・デメリットをふまえて検討しよう

 

以上、借地権について説明してきました。借地権の最大のメリットは安く取得できるということです。長期的に見た場合でも所有権より安価に取得できる場合が多く、また取得時の費用・ローン額が所有権より安価に抑えられるため、「所有権では届かない家のレベルに借地権であれば届く」という場合があります。

 

一方のデメリットとしては、購入に少し難易度があるということです。しっかり内容を理解したうえで、長期的な支払い額全体をとらえる必要があります。また、将来の売却にあたって「売れにくい」ということも理解しておきましょう。

 

 

松村隆平(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。

 

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