『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

最終更新日:2023年12月25日
公開日:2021年11月19日

「建築条件付土地」は買っても大丈夫なのか? ープロが解説『正直不動産』(2巻 9・10話より)

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「正直不動産」は、大谷アキラ作、夏原武原案のビッグコミック連載の漫画作品です。TBSでドラマ化され大ヒットした「クロサギ」も夏原氏が原案を手掛けています。

不動産取引における一般消費者と不動産業者の情報格差にスポットを当て、不動産業界の現実を浮き彫りにしている話題作です。今回ご紹介するのは、単行本第2巻の 9・10話の「建築条件付土地」のお話についてです。戸建ての物件を探している方は「建築条件付土地」という記載を目にしたことも多いと思いますが、どのようなものか詳しく解説します。

住宅

(写真はイメージです)

条件が良いように見えても、しっかりウラがある

主人公の永瀬財地は、不動産取引の契約を取るためにはどのような手でも使ってきた成績トップの不動産営業担当でした。しかし、地鎮祭の準備で祠を破壊してしまったことから、嘘がつけない体質になってしまいます。

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産営業としては致命的なハンデを背負いながらも「正直な営業スタイル」で果敢に不動産業界の闇に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

コミック第2巻 第9・10話では、「最高の条件に見える建築条件付土地が、実は不動産業者の利益にしかならない詐欺まがいの土地だった」という話が展開されています。

実際の住宅用不動産売買の現場を知る宅建士の立場から、この建築条件付き土地の実態について詳しく解説してみたいと思います。

「建築条件付土地売買」とは?

建築条件付土地売買とは、簡単に言えば、土地の売買契約時に次のような条件(特約)をつけて不動産売買を行うことです。

① 家の建築にあたっては、指定された建築業者としか建築請負契約を結べない。
② その建築請負契約が○ヵ月以内に成立しなければ、売買契約は解除となる。

通常、土地売買後に建築請負契約成立まで設定される期間は3カ月ですが、上記②のとおり、この期間内に特約で指定された業者と建築請負契約に至らない場合は、土地の売買契約も白紙契約となり、手付金等、契約にあたり売主が受け取ったお金が全額買主に返還されるというのが一般的な契約内容です。

正直な永瀬は全く売ることができない! 建築条件付土地売買で困ること

作中では、土地の安さや「フリープラン」の甘い(どころか嘘ともいえるほどの)宣伝文句に引き寄せられたお客さんが多数やってきます。

悪徳な不動産営業担当は、その先の事実をうやむやにすることで契約までもっていこうとしますが、主人公の永瀬は全く嘘がつけないことから、買主にとって不利なこともすべて伝えてしまうため、土地を売ることができず苦戦を余儀なくされます。

実際のところ、建築条件付土地というのは、販売を行う不動産業者・建築業者には大きなメリットがあります。作中でも紹介されていましたが、一番大きなところは、土地の粗利(仕入値と販売値の差額。「儲け」のこと)だけでなく、建物分の粗利も一度に得ることができる点です。

また、最初から建物を建てた状態で販売する建売住宅と異なり、建物の請負契約が成立するまでは土地として保有していれば良く、売れるかどうかわからない建物を先に建てるというリスクを回避することができます。

もし、建築条件付土地の状態で売れなくても、建築条件を外して再度売り出す、または別の建築業者に買い取ってもらうなどの選択肢を残すことができるのです。

一方、買主(この場合は一般消費者)にとっては、メリットとデメリットの両方が存在します。その解説は以下の通りです。

買主から見たときのメリット

・間取りや仕様などをある程度自由に選べる場合がある
・割安で土地を取得できる場合がある

建築条件付土地に建てる家のプランは、ある程度決まっていることが多いのですが、「プラン相談可」などとして、間取りや仕様をある程度自由に選べる場合もあります。

しかし、作中で「ほぼ、建売と同じです」という永瀬の一言で「バカにしないで!」と怒ってしまった買主が描かれていたように、間取りの変更が全くできず、せいぜい壁紙の種類が選べる程度だけということもあります。そのような場合、「プラン相談可」という謳い文句であっても、ほとんど嘘と同じことだといえるでしょう。

他方、建築条件付土地の中には、そこまでガチガチに決められているのではなく、「外枠は決まっているが、各部屋の大きさは自由」や「設備はラインナップから選べる」など、柔軟な対応をしている場合があるのも事実です。

買主にとっての建築条件付土地のもう一つのメリットは、通常よりも土地を割安で取得できる場合があるという点です。

売主側としては建物分の利益が見込めるため、土地の金額が相場より若干安く出される場合があります。

買主自身に土地の相場観が有る場合には、建築条件付土地は良い選択肢の一つにできるかもしれません。

買主から見たときのデメリット

・建築業者を選べない
・仕様を決めるまでの期間が短い
・建物の建築費用の妥当性が分かりにくく、分かったとしても業者の変更不可

一見しただけでもかなりのマイナスがあることが分かりますが、土地の購入時に最も気を付けなければならないのが、2つ目の「仕様を決めるまでの期間が短い」という点です。

初めての住宅購入の場合は思い至らなくて当然なのですが、ある程度自由に間取りや仕様を決められる場合、建築条件付土地の特約で標準的な3カ月間という期間は、仕様決定まで考えた場合、非常に厳しいものとなります。

それこそ、壁紙を選ぶだけなら話は別ですが、通常は仕事があり、週末に少しずつ打ち合わせをして進めるような状況だと「これでいいのだろうか」というモヤモヤ感を持ったまま決断しなくてはならないこともあります。

そして、さらに大きなリスクとして、建築条件付土地の場合、建築請負業者間の相見積が取れない(取ったとしても、当然ですが業者を変更できない)ため、価格交渉において買主が弱い立場となります。

結局、建築条件付土地は買ってはいけないのか?

先に述べた通り、ある程度自由が利く建築条件付土地もありますし、土地が安く取得できるという可能性もあるため、一概に「買ってはいけない」とは言えません。

「正直不動産」の作中では、極悪な建築業者である「竹鶴工務店」が劣悪な施工をするという、建築条件まで劣悪な土地が問題となっていましたが、実際には大手のハウスメーカーが一括で土地を取得し、比較的良い条件となっている建築条件付土地も存在します。

また、これは不動産業者でないと当然知らないことですが、土地の買値を上げることで建築条件を外すという交渉に応じる売主もいるので、何か特別な事情があってその土地がどうしても欲しい場合、選択肢として知っておいてもいいかもしれません。

建築条件付土地は、基本的に売主業者側にメリットが多い販売方法です。ひと昔前ほどではないにしろ、グレーな業界慣習が多く、一般消費者と事業者の情報格差の激しい不動産業界ということを考えると、購入する場合は入念な検討するに越したことはありません。

悪い例としては、建築請負契約を締結しなかった場合には買主に何らかのペナルティを課す契約になっている場合もあります。

後から「こんなはずじゃなかった。聞いていなかった」と裁判になっても、重要事項説明書や契約書にしっかりと明記されていれば、契約書通りの履行をせざるをえません。契約当初から専門の弁護士に契約書のリーガルチェックを受けるのなどの対策を講じない限り、一般消費者が契約時に全てのリスクを検討することは不可能です。

このような点からも、売主となっている業者がどのようなところか、よくチェックすることは非常に重要です。もし、信頼できる知人・友人で不動産購入に成功している人がいれば、その人から不動産会社の担当を紹介してもらうことは一定の安心につながります。

何よりも、自分が間違った判断を下さないために、「あなたを信頼して買います」などという甘い考え方は捨てて、自分で良し悪しを判断できるように、最低限の不動産知識をつけることが、良い不動産取引の実現の一歩です。

不動産営業の現場では「嘘をつく必要は無いが、都合の悪いことをあえて言う必要はない」などと言う上司がいることがあります。モノは言いようで、積極的に嘘をついているわけではありませんが、「知っていることを開示せず、買主に完全な情報を与えない」という状況を作り出し、情報格差を利用している点では嘘をつくのと本質は変わりません。

昨今の不動産の現場ではIT技術が進歩し、不動産取引の有り方がどんどん変化しています。不動産業に関わる身として、透明な情報提供が当たり前のフェアな不動産業界が実現されることを願っています。

 

半沢隆太郎(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。実家が建設・不動産会社を経営。新卒で大手機械メーカー、その後コンサル会社を経て、現在は不動産業種の上場会社の経営企画部門に勤務。

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