ビックコミックに連載中の人気漫画『正直不動産』。2022年春には山下智久主演でドラマ化されることが決まり、今から話題を呼んでいます。主人公の永瀬財地は、客に不動産を買わせるためにどんな手でも使ってきた成績トップの営業マンでしたが、ある日突然、嘘がつけない体質になってしまいます。

 

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産の営業マンとしてはある意味で致命的なハンデを背負いながらも、逆に「正直な営業スタイル」を武器に、果敢に不動産業界の悪しき商慣習に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

 

今回は土地の売買でトラブルになりがちな「公簿売買」について解説します。

 

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(写真はイメージです)

 

土地の売買は公簿売買と実測売買の2種類

 

土地の売買には、公簿売買と実測売買の2種類の方法があります。その違いはどこにあるのでしょうか。両者のメリット・デメリットなども紹介します。

 

公簿売買

 

公簿売買とは、土地の売買に関する契約方式のひとつで、土地の登記簿に表示されている面積を基準に売買価格を確定することを指します。のちに面積が違っていることが分かったとしても、金額を変更しないことが基本です。

 

一般的に、大規模な土地の売買は公簿売買によって行われていますが、住宅地でも公簿売買を行うケースが見られます。土地の面積が実態と違っていることがある売買があっていいのか、と思う方もいるかもしれませが、売主と買主の合意があれば基本的には問題なしとされています。公的データを使った取引ですし、何より早い取引が可能だからです。

 

実測売買

 

一方、土地の測量を行ったうえで正確な面積を出し、その実測面積によって代金を確定する方式を「実測売買」といい、こちらの方が一般的ですし納得感が高いです。

 

また、登記簿に記載の公簿面積が信頼できる場合や仮測量を行っている場合などは、とりあえずその面積で契約し、後に実測面積との差額を精算する方式(実測清算)を取ることもあります。もちろん測量には費用がかかり、作中では「法的信憑性のある境界確定測量の場合、およそ60万~80万円ほどかかります」とし、「負担は売主側」と説明されていました。

 

仮測量とは土地の現状の状況をざっくり把握するための測量です。ブロック塀や既存境界標などの現地に存在する地物を測り、対象土地のおおよその寸法・面積・高さ・越境物の有無を知りたいときに行う測量です。道路境界や隣地境界との立会いを行いませんので、境界確認書は交わしません。この点が、確定測量と異なります。

 

公簿売買にはリスクがある?

 

公簿売買でも「両者が納得していればいいじゃないか。それに、以前に測定しているのだから、土地の面積なんて変わらないだろう」という方もいるかもしれません。しかし、公簿売買にはやはりリスクがあります。

 

登記簿の面積と実際の面積が異なることが多い

 

登記簿は、不動産取引の上で重要な公示手段です。「地積」欄に記載されている面積とは、登記簿上に掲載されている面積(公簿面積)を指します。この公簿面積は実測面積と一致し、正確であると思われがちです。

 

しかし、この面積が正しいものとして公に認証されているわけではなく、むしろ、区画整理や耕地整理されたところを除き、実測面積と公簿面積が異なるのが一般的です。『正直不動産』作中でも「登記簿面積と実測面積は実は、別物なのです」というセリフから物語が始まっているくらいです。

 

「縄伸び」「縄縮み」はなぜ起こる?

 

実測面積が公簿面積より大きい場合を「縄伸び」、逆に、実測面積が公簿面積より小さい場合を「縄縮み」といいます。これらの用語は、昔は土地の計測を、目盛りを打った縄で行っていたことからきています。土地に対する税金を軽減するため、実際よりも長めに目盛りを打った縄を使って、地積を小さめに測量したことに由来しているのが「縄縮み」です。一方で売る土地をたくさん持っている人は、少しでも大きく見せかけるために「縄伸び」をさせたわけです。

 

公簿面積という仕組みはかなり昔に作られたこともあり、当時の測量の技術水準や測量器械の精度、測量方法が現在に比べてかなり稚拙だったことが原因で、面積が異なることがあります。

 

公簿売買のリスク低減方法

 

公簿面積は実測面積より小さくなるケースが多いのですが、『正直不動産』の作中では公簿面積より実測面積が小さいという逆のパターンになっていました。こうなってしまうと、どんなリスクがあるのでしょうか。またトラブルを回避する方法はあるのでしょうか。

 

計画どおりの家が建てられない

 

2つの意味で大きな損があります。30坪で3,000万円だと思っていたのに、実際は29坪しかなかったとすると、割高に買ってしまっただけでなく、計画していた広さの家を建てることができなくなるのです。

 

特に後者が致命的です。『正直不動産』作中でもこのパターンで、登記簿上では200㎡の土地が実際には180㎡しかなく建ぺい率が60%では、120㎡の広さで計画していた家を108㎡に縮小しなければならなくなっていました。そこで6畳の和室を削るか15帖の予定だったリビングを半分に減らすしかなく、「私専用の和室を作るのが同居の条件だったでしょ」という姑と「広いリビングに友人を呼んでもてなすのが夢だって説明しましたよね」という嫁の間で収拾がつかなくなった様子が描かれていました。

 

結局、測量し直すのが最良の選択

 

最悪「思った通りの土地ではないから、そもそも土地を買った目的が達せられない」と、民法でいうところの「錯誤」を前面に出して、契約解除を主張することもできますが、相当な労力やストレスがかかります。

 

そのため、実測売買(もしくは実測清算)とすることがおススメです。通常、測量費用は売主側が売却に当然かかる費用として負担することが通例です。実測清算の際の注意点としては、思った以上に清算金額が増す(土地が登記簿上のデータよりもかなり広かった)場合に、資金計画が狂ってしまい、家の建築に回す資金が少なくなってしまうことです。

 

土地によっては1坪で100万単位ともなるため、余裕をもった資金計画、銀行との調整が必要です。ただ、そこまで極端なことはまれです。

 

それほど警戒する必要はありませんが、土地の購入をする段階で敷地境界があるかどうかなど、最後にいつ測量が行われたのかについては確認しておくと安心でしょう。

 

正直になるべきは営業マンだけではない

 

『正直不動産』作中では、主人公の永瀬財地の正直さから我に返った売主が実際よりも小さい面積しかなかったことを認め、買主には損にならなかったばかりか、売主から別の土地の専任媒介契約を勝ち取るなど、ハッピーエンドに終わりました。

 

正直になるべきなのは、不動産の営業マンだけでなく売主も同じであり、買主をだませば利益になると安易に考えることを戒めるエピソードでもあったように思います。

 

 

松村隆平
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。
趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。