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『正直不動産』最終回を「正直宅建士」が解説。土器が出たら、管理委託とは。それより○○ロス!?

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公開日:2022年6月10日

大人気漫画の実写ドラマ化「正直不動産」は、山下智久さんを主演にしてNHKで放映され、春の大ヒット作として人気を集めていました。そして2022年6月7日には、ついに最終回である第10話「正直不動産、誕生」が放映されました。

うそがつけない主人公永瀬の体質はそのまま治らないのか? ライバル会社のミネルヴァ不動産との確執の行方は? 銀行員の榎本美波(演:泉里香)やミネルヴァ不動産の花澤涼子(演:倉科カナ)、部下の月下咲良(演:福原遥)などの永瀬を取り巻く女性たち、いわゆる正直不動産ガールズと永瀬の関係に進展はあり得るのか? などなど、最終回ならではの展開に期待は嫌でもふくらみます。

それでは今回も、ドラマの中で気が付いたことを、宅建士の視点からご紹介していきましょう。

※REDS「不動産のリアル」編集部では、いち早く当日の放送直後にドラマの内容紹介と、作中で登場した不動産業界の商慣習や不動産売買を考えている方が知っておきたいポイントをまとめて、コラム記事として公表しています。こちら『正直不動産』ドラマ最終回最速レビュー~激闘! 「うそがつけない不動産屋」勝利の日 | 仲介手数料無料、割引での不動産の売却・購入はREDS(レッズ)をご覧ください。

住宅建築現場

(写真はイメージです)

土器が出るとドキドキ! 文化財保護法は不動産屋の敵?

永瀬と月下は、このところ経営状態がよろしくない登坂不動産を盛り立てようと、「街の長老」といわれる平尾氏の家に情報収集に行きます。しかし、忌中の提灯が掲げてあり、平尾氏は一昨日に亡くなっていました。応対したおいの晴哉は、身寄りは自分しかおらず土地・建物は自分が相続するが、すでにミネルヴァ不動産が訪ねてきた、といいます。

晴哉はミネルヴァ不動産のセールストークにコロッと説得されて、1Kの10部屋、2階建てのアパートを建ててサブリース手数料20%でミネルヴァ不動産に一括賃貸する契約を結んでしまいました。10日後には解体工事も済んで更地になっているというスピードです。

取らぬ狸の皮算用で、新車まで買って浮かれている晴哉に対し、永瀬は、この契約がいかにずさんでリスクが高いものかを説明します。サブリースの甘い罠については、第1話でも説明しました(『正直不動産』第1話を「正直宅建士」が解説。業者も客も、不動産をなめてはいけない!)が、ちょうど永瀬がその説明をしているときに、子供がこの空き地で拾ったと土器を月下に見せます。「土器が出たとすれば発掘調査が必要で、その間アパートは建てられない」と説明され、晴哉は大あわてです。

ここで、敷地から土器などが出土した場合の規定について、もう少し詳しく説明しましょう。

地面に埋まっている大昔の土器や建造物などの文化財を「埋蔵文化財」と呼びます。具体的には縄文時代の土器や弥生時代の石器、飛鳥・奈良時代の彫刻や工芸品などです。平安時代の書籍や典籍、鎌倉・室町時代の古文書や貨幣などもあります。こうした文化財を保存・活用することを目的として「文化財保護法」が制定されています。

政府は、これまでの発掘調査から埋蔵文化財の存在が知られている地域を「周知の埋蔵文化財包蔵地」として、全国で約46万カ所指定しています。各市町村はその周知の徹底を図るために「遺跡地図」「遺跡台帳」に記載しており、一般に公開しています。

不動産の売買の際には、対象の土地が「周知の埋蔵文化財包蔵地」に指定されている場合は、不動産会社は買主に重要事項として報告する義務があります。また「周知の埋蔵文化財包蔵地」に指定されている土地で土木工事等の開発行為などを行うには、着手する日の60日前までに文化庁に届け出なければなりません(文化財保護法第96条)。

また、ドラマのように「周知の埋蔵文化財包蔵地」に指定されていない土地で土器などが見つかった場合も、「土地の所有者・占有者は、出土品の出土等により貝塚・古墳・住居跡などの遺跡を発見した場合には、その現状を変更することなく、遅滞なく文化庁長官に対して届け出なければならない」とされています(文化財保護法第96条)。実際には、市町村の文化財担当窓口(教育委員会)に届け出ることになります。

その後、3日から1週間程度の試掘調査が行われ、文化財が確認された場合、長期に及ぶ本発掘調査と遺物の保護が終わるまで工事を再開することはできません。また出土した文化財は、拾得物(いわゆる落とし物)扱いとされるため、警察署に届け出ることとなります。

このため、提出せずに拾得物をそのまま自分のものとした場合、刑法254条の占有離脱物横領罪に該当します。占有離脱物横領罪の法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」となっています。また、埋蔵文化財保護規定により各自治体で「重要要文化財を損壊し、き棄し、又は隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する」等の罰則を規定している場合があります。

ドラマの後半で、ミネルヴァ不動産の指示で更地工事の際に出土した土器を隠ぺいした事実を、登坂社長(演:草刈正雄)が突きつけたことでミネルヴァ不動産が急に態度が変わったのも、隠ぺいの罰則が重いことを彼らが知っていたからでしょう。

埋蔵文化財の試掘調査、本発掘調査の費用は、事業者負担が原則となっています。個人が営利目的ではない居住用住宅を建設する場合には、国や地方自治体の補助制度があり、実質負担はありません。しかし、ドラマのように営利目的のアパート建設などは、個人でも事業主とみなされ、費用を負担しなければならなくなることには注意が必要です。

いずれにせよ、土器の出土などがあると、大幅に建設時期や費用に影響を与えるため、不動産屋にとっても、歓迎できない事態なのは間違いありませんね。

不動産経営の三本柱の一つの管理委託契約とは?

藤堂という新宿のマンションオーナーが、登坂不動産に管理委託契約の解約を申し入れてきて、大河部長(演:長谷川忍)は「全40戸の契約がなくなれば、いよいよわが社の危機」と大騒ぎです。神社で祈願したことが効いたのか、再びうそがつけるようになった永瀬は、「今の俺ならなんとかなる」と藤堂の元へ向かいます。

登坂不動産の経営にそれほど大きな影響を与えるという、管理委託契約とはいったいどのようなものなのでしょうか。

管理委託契約とは、賃貸住宅や分譲住宅の管理業務を、物件のオーナーや管理組合が自身で行わずに、管理会社や不動産会社に委任することをいいます。

管理委託は、大きく分けて「一般管理委託」と「サブリース(一括借上管理)」の2種類があります。一般管理委託は入退去管理や入金管理、設備管理など、業務範囲を定めて委託をします。一方、サブリースは管理会社が一括で借り上げて全て管理会社の責任で管理することとなります。ここでは、一般管理委託について細かく説明していくことにしましょう。

<管理委託契約の業務範囲>

賃貸住宅の管理業務は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の5つです。

(1)会計業務…賃料の請求及び徴収、未収金の督促、月次報告書の作成など
(2)運営調整業務…近隣及び入居者のクレーム・苦情対応、空室管理、諸官庁届出業務
(3)清掃・設備管理業務…建物・共有部分の清掃、植栽・除草管理、電気・給排水・エレベーター設備および保守管理、消防等保守管理
(4)更新時業務…入居者賃貸借条件改定・更新手続き
(5)解約明渡時業務…退去者の解約清算書の作成および報告、敷金返還代行、原状回復に関する助言、退去に伴う修理・工事手配

賃借人にもいろいろな人がいますので、(2)や(5)の業務には専門家として日常的に業務に当たっている筆者でも、かなり心を削られることが多いです。

これらすべての業務を委託することもあれば、一部を選んで委託する場合もあります。このほか、入居者募集や賃貸契約代行業務を、管理業務と一緒に委託するケースが多いです。

管理委託料の相場は意外に安い?

管理委託料は、毎月の家賃の3~5%が相場とされています。家賃が10万円の部屋だとひと月3千円~5千円ということですね。ドラマの中では、藤堂氏が任せている新宿のマンション全40戸の管理委託料は5%ということでしたから、仮に家賃が10万円だとすると、月にせいぜい20万円ということになります。「その程度の収入がなくなることで、登坂不動産の危機とか大騒ぎしているの?」と疑問に思う方もいるのでしょう。

管理委託業務の仕事量や費やす時間などを考えると、ドラマで永瀬が言うとおり、5%の管理委託料ですら、一度トラブルが起こってしまえば収支が見合うものではなく、ましてやミネルヴァ不動産がいう2%やそれに対抗する1.5%などという料率では、管理をする人件費すらままならない状態になるのは目に見えています。

管理自体で収益を上げるには相当数の管理を受託して1件あたりの管理コストを下げたり、清掃や設備保守業務をグループ企業で請け負うことで収益性を向上させたりする企業努力が不可欠になります。

それでも、月々や季節によって収益が変動してしまう売買や賃貸と比べて、管理は安定した収益が見込めます。管理している物件に入居している賃借人が持ち家を持ちたいとか、空き室が出たとか、物件を売却したいとか、オーナーが別の投資物件を探している、などの有益な情報をいち早くつかむことも可能となります。

前述のように、入居者募集業務や賃貸借契約代行業務を請け負うことができれば、その分の収益向上も期待できます。永瀬が1.5%への値下げ財源として考えた、オーナーの投資戦略などに関するコンサルティングを実施し、料金を請求することも可能でしょう。

不動産業の業務は、「売買」「賃貸」「管理」が三本柱といわれています。オーナーに物件を買ってもらい、入居者を募集して、管理をお手伝いする。すべての分野で収益を上げることは、不動産屋にとって真っ当な経営方針ともいえます。ドラマの中で大河部長も、経営の柱の一つが危機に追い込まれたので大騒ぎしていたのでしょう。

永瀬は、1.5%への値下げをして別の名目で請求しようかと逡巡したものの、うそをつけるようになったにもかかわらず、永瀬自身の意思で正直に「マンションの住民が快適に暮らすために、5%で登坂不動産と契約させてください」と藤堂に懇願します。

そして、ここで、第1話で永瀬の正直営業にほれ込んだ石田(演:山崎努)が登場。「こいつほど正直な奴はいない」と永瀬を後押し、契約継続に成功することができました(いや、山崎努、かっこよかった)。

正直不動産ガールズロスに陥るおっさん急増か?

ミネルヴァ不動産の花澤さんは、社長に「辞めるか?」と問われ「いえ、辞めません。実績を上げて、いずれ会社の株の半分を取得して、あなたと対等に話せるようになります」と不敵に囁きます。これからも登坂不動産を苦しめるライバルとして活躍することでしょう。

永瀬に結婚を前提とした交際を迫っていた榎本さん、永瀬が「結婚なんて1ミリも考えてないけど、まずは体の相性を」なんて正直に言ったものだから、〝ギャラクティカ・マグナム〟炸裂。多分、永瀬の人生にもう二度と現れることはないんだろうなあ。

月下さん、「今日から俺をこう呼べ、『正直不動産』永瀬財地と」と言う永瀬に、「だって正直なのは当たり前だし」とサラッと受け流して、二人で歩いていきます。本当の主人公は、いつでも自然に「カスタマーファースト」と言うことができた月下咲良だったのかもしれませんね。お客様の人生に寄り添うだけじゃなく、いつか永瀬の人生にも寄り添って二人で歩いていくような予感がします。

終わっちゃって寂しいな。そんな視聴者は山Pファンのみならず多いのではないでしょうか。筆者はぜひ、大人の決意と哀愁が満載、酔うと可愛い花澤さん主演のスピンオフ作品を作ってほしいと願っています。

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

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