REDSエージェント、宅建士の大柿です。
「マンション価格って高くなっているのですか?」
ここ数年、度々お客様から質問を受けるフレーズです。マンション価格は本当に高くなっているのでしょうか? また、その背景は何なのでしょうか? 一緒に考えていきましょう。

(写真はイメージです)
マンション価格高騰の背景
マンション価格高騰の背景は主なものに5つあります。
人口集中と需要の増加
東京23区は日本の政治・経済・文化の中心地であり、全国各地から人が流入しやすいエリアです。東京都の資料によると、1997年以降は社会増(転入者数>転出者数)の状況が継続しており、コロナ禍で一時的に転入者の減少、転出者の増加が見られたものの、既に回復しています。このような人口集中による世帯数増加が、マンションをはじめとした住宅需要を押し上げていると考えられます。
マンションの新規供給不足
新規マンションの供給が不足する背景には、東京23区内の土地不足や地価高騰があります。都心では新規に開発可能な土地がほとんどないため、再開発や大規模プロジェクトが中心となりがちで、小規模マンションの供給数が伸び悩んでいるのです。また、建築資材の高騰や人手不足による人件費の上昇も要因となり、新築マンションの数が需要に見合わないまま価格が上がる傾向が続いています。
建設コストの高騰
コロナ禍からの回復局面による需要の拡大や、ロシアのウクライナ侵攻の影響による資源価格の高騰などによるグローバルなインフレの進行が、建設コストの拡大をもたらしています。建設コストが上昇すると、建設業者は利ざやを確保するために新築マンションの価格を引き上げる必要があります。
低金利環境
日銀の政策金利が長期間にわたり低水準に抑えられていたことも、価格高騰に拍車をかけました。低金利環境下では、住宅ローンの借入コストが低く抑えられるため、多くの人が高額なマンションを購入しやすくなります。これにより、需要が高まり、価格が上昇したのです。
外国人投資家の需要
中国人をはじめとするアジア圏の富裕層の需要拡大も、価格の下支え要因となっています。円安により、日本の不動産が外国人投資家にとって割安に見えるため、投資先としての魅力が高まっています。特に、治安が良く、地政学リスクが低い日本の都市部の不動産は、投資先としてだけでなく、別荘や居住先としても人気があります。
【参考データ】
東京23区のマンション価格推移: 東京23区のマンション価格は、2010年代後半以降ほぼ一貫して上昇傾向にあります。特に2023年には新築マンションの値上がり率が大きく、初めて1億円の大台を突破しました。
2024年の東京都の公示地価の平均坪単価は約400万円で、全国平均を大きく上回っています。
【参考事例】
三田ガーデンヒルズ:2023年に港区に竣工した超高額マンション「三田ガーデンヒルズ」は、最高額が45億円に達し、東京23区の新築マンションの平均価格を2億円超に押し上げました。
中古マンション市場:都心部の中古マンションも高価格で取引されており、築年数が古くても価格が高騰するケースが見られます。
これらの要因が複合的に作用し、都心部の不動産価格が高騰しているのです。
金利上昇が与える不動産市況への影響について
さて、これまでマンション価格高騰の背景について考えてきました。2025年に入り金利上昇の兆しが見え始めています。この金利上昇はマンションの不動産市場に影響はないのでしょうか? 過去の実例を基に考えてみたいと思います。
2025年における金利上昇の背景には、世界的なインフレ圧力や経済成長の回復が挙げられます。日本銀行は2024年にマイナス金利政策を解除し、2025年1月には政策金利を0.50%に引き上げました。この金利上昇は、住宅ローン金利や不動産投資に直接的な影響を与えることが予想されます。
以下に、金利上昇が不動産市場に与える影響を2つ挙げます。
住宅ローン金利の上昇
住宅ローン金利の上昇は、住宅購入者にとって大きな負担となります。変動金利型の住宅ローンは、政策金利の動向に敏感に反応し、金利が上昇すると返済額も増加します。
2025年4月以降、各金融機関で変動金利が引き上げられる見込みです。これにより、住宅購入を検討している人々の購買意欲が低下し、不動産市場の需要が減少する可能性があります。
不動産価格への影響
金利上昇は不動産価格にも影響を与えます。住宅ローン金利の上昇により、購入者の負担が増えるため、需要が減少し、不動産価格が下落する可能性があります。特に、都市部以外のエリアや中古物件の価格は頭打ち感が出てくるのではないでしょうか。
過去に金利動向が不動産市場に影響したケース
1990年代のバブル崩壊
1990年代のバブル崩壊時には、金利の上昇が不動産市場に大きな影響を与えました。当時、日本銀行はインフレ抑制のために金利を引き上げ、不動産価格が急落しました。この経験から、金利上昇が不動産市場に与える影響の大きさが理解できます。
2008年のリーマンショック
2008年のリーマンショック時には、世界的な金融危機が発生し、金利の上昇とともに不動産市場が冷え込みました。特に、アメリカでは住宅ローンの返済が困難になり、多くの住宅が差し押さえられ、不動産価格が大幅に下落しました。このような過去の実例からも、金利上昇が不動産市場に与える影響は無視できないことがわかります。
2025年の不動産市場の見通し
都市部の不動産市場
都市部の不動産市場は、引き続き堅調に推移する可能性があります。特に、都心部や駅近のマンションは高い需要を維持し、価格も上昇傾向が続くでしょう。富裕層や投資家の需要が集中するため、金利上昇の影響を受けにくいと考えられます。
郊外や地方の不動産市場
一方で、郊外や地方の不動産市場は、金利上昇の影響を受けやすいといえます。住宅ローン金利の上昇により購入者の負担が増えるため、需要が減少し、価格が下落する可能性があります。特に、人口減少や高齢化が進む地域では、不動産価格の下落が顕著になるでしょう。
データ分析で見る今後の不動産市場
不動産価格指数
国土交通省が公表している不動産価格指数によれば、2024年も不動産価格は大きく上昇しました。特に、マンションの上昇率は著しく、2010年平均を100とした場合の不動産価格指数は200を超えています。しかし、金利上昇により、2025年以降は価格の上昇が鈍化する可能性があります。
空き家率の推移
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、2023年10月時点の全国の空き家数は900万2000戸、空き家率は13.8%と過去最高値に達しています。空き家率の増加は、不動産市場における供給過剰を示しており、価格下落の要因となるでしょう。
まとめ
2025年の金利上昇は、不動産市場に多大な影響を与えることが予想されます。特に、住宅ローン金利の上昇により、購入者の負担が増え、需要が減少することで、不動産価格が下落する可能性があります。都市部の不動産市場は堅調に推移する一方で、郊外や地方の不動産市場は金利上昇の影響を受けやすく、価格が下落するリスクが高いと考えます。
今後の不動産市場の動向に引き続き注視していきましょう。
この記事を執筆した
エージェントプロフィール
大柿 貴彦
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