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タワーマンションは成功者の証?~『正直不動産』をプロが解説(6・7巻 47・48話より)

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公開日:2022年2月16日

ビックコミックに連載中の人気漫画『正直不動産』。2022年春には山下智久主演でドラマ化されることが決まり、今から話題を呼んでいます。主人公の永瀬財地は、客に不動産を買わせるためにどんな手でも使ってきた成績トップの営業マンでしたが、ある日突然、嘘がつけない体質になってしまいます。

 

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産の営業マンとしてはある意味で致命的なハンデを背負いながらも、逆に「正直な営業スタイル」を武器に、果敢に不動産業界の悪しき商慣習に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

 

今回は、庶民の憧れの住まいとして人気を集めるタワーマンションについてのエピソードを解説します。

 

タワーマンション

(写真はイメージです)

 

タワーマンションとは?

 

私たちがタワーマンションと呼んでいる建物には定義はあるのでしょうか。また建築にあたってはどんな義務があるのでしょうか。

 

高さ60メートル、20階建て以上の住居用建築物

 

実は、タワーマンションという用語自体に法的な基準はありません。建築基準法上の用語でもなく、階数による定義などもありません。しかし、建築基準法や消防法などでは、31メートル、60メートル、100メートルと、建物の高さによって異なる建築基準が設けられています。

 

このうち「高さ60メートル以上の建物が超高層建築物とする」考え方が広まっており、タワーマンションはこれに該当するというのが一般的な理解です。

 

高さ60メートル以上のマンションは、その多くが20階建て以上になります。このため、タワーマンションとは、およそ20階建て以上の住居用建築物と考えておけばいいでしょう。

 

建物高度が高いほど建築基準が厳しい

 

建築基準法では、高さ60メートル以上の超高層建築物に対し、建物の構造耐力についてかなり厳しい基準が設定されています。高さ100メートル以上になると、消防法によって緊急時用のヘリポート設置義務なども生じ、これらをクリアするには莫大な費用がかかります。

 

そのため、タワーマンションは一般的なマンションに比べ、建物の構造的にすぐれている点が多いといえるでしょう。また、それだけのコストをかけて建築することから、立地、利便性などの条件においても事前に検討されており、不動産としてハイパフォーマンスだ、ということが想定できます。

 

タワーマンションのいいところ

 

『正直不動産』の作中で主人公の永瀬は「これほど虚栄心を満たしてくれる居住空間を、俺はほかに知らない」と言い切ります。このほかにも「日当たりはよく、上層階ほど虫が少ない。防犯面は安全ですし、プライバシーが守られる。それだけじゃない。相続税対策にもなりますし、値崩れしない場合も多い。何より、高層階からの眺望は、何物にも代え難い」と語っています。

 

それほど魅力的なタワーマンション、どんないいところがあるのでしょうか。

 

建物の設備・サービスの充実

 

多くのタワーマンションで、ジムや多目的ルーム、ラウンジなどの共有施設やスペースが完備されています。これらの共有施設は入居者であれば誰でも使用することができるため、タワーマンションに住む魅力の一つといえます。

 

ジムやキッズルームなどは一般の施設などを使うと意外とお金がかかってしまいますし、何よりそこにたどり着くまでに時間がかかります。大きなタワーマンションであれば入居者も多いため、共有施設の使用料や管理料も意外と安く抑えることができます。

 

ステータス

 

タワーマンションは、やはり住んでいることで高いステータスを味わえます。住まいというのは家族が住むだけではなく友人を呼んで交流する場でもあります。それがタワマンだと、自慢にもなるということが正直なところで、好む奥様も多くいるようです。

 

ほかの住まいにはない眺めやサービス、高い資産価値によって、一種のブランド品のような価値を感じる人もいます(『正直不動産』の作中、永瀬のライバルである神木はこれを「拡張自我」と呼んでいました)。

 

眺め

 

何といっても最大のメリットは眺望でしょう。周辺を遮るものがないので、都心から富士山が見えたり、都市の夜景が一望できたりと、その眺望は他のマンションとは大きく違います。タワーマンションの間取りは眺望のよさを活かすように作られており、昼間は空と一体になっているような眺望、夜はきらびやかな夜景の眺望とともにお酒などを飲みつつ過ごす空間はほかの住居では得られません。

 

作中では、こういったタワーマンションのメリット、すばらしさを最大限にアピールしてタワーマンションを売ろうとしている不動産業者の姿が描かれていましたが、実際に多くのメリットがあり「買えるのであれば多少は無理してもその価値がある」というのも事実です。

 

一方で、当然デメリットもありますので、以下説明していきます。

 

住んでみてがっかり。タワーマンションの不都合な真実

 

『正直不動産』では「ウソがつけないモード」になった主人公の永瀬が「タワマンにもデメリットはあります」と、見込み客に対して以下のようなことを口にしてしまいます。

 

「そもそもタワマンは割高です。当然、通常のマンションより柱や梁はより太くなるので、同じ70㎡のマンションでも有効面積・有効容積は小さくなります。朝はエレベーターが大混雑しますし、高層階では洗濯物が干せません」

 

「タワマンは戸数が膨大で人間関係が複雑になり、トラブルが起きやすいともいわれています。何より、歴史の浅いタワマンの大規模修繕工事は、まだ前例が少なく、いくらかかるのか分かりにくい。想定していた修繕積立金では足りないことが多く、100万円オーバーの追加徴収があったりもします」

 

こんな話を聞かされた見込み客はそっと去って行くのですが、改めてデメリットについて考えてみましょう。

 

ベランダに洗濯物を干せないことが多い

 

高層階からの落下物は、たとえ小さなものであっても危険です。そのため、高層階では洗濯物や布団を干すことを禁止しているタワーマンションが多くあります。安全面のほか、マンションの美観面からどの階であってもベランダで洗濯物を干すことを禁止している物件もあります。

 

タワーマンションの中には洗濯乾燥機や浴室乾燥機がついていることが多いので、この点は問題ないかもしれませんが、布団などは陽の光に当てておきたい、プランター栽培を楽しみたいなど、ちょっとした屋外空間が必要な人には不便を感じることがあるかもしれません。

 

平日の朝、エレベーターが混雑する

 

最近のタワーマンションでは住戸数とエレベーターの台数を計算したうえで設計が組まれているため、混雑緩和も進んでいます。しかし、築年数がたっているものでは、平日朝の通勤・通学時間帯にエレベーターが混雑し、なかなか乗れないということがよくあるようです。せっかくの駅近物件なのに、わが家の玄関からマンションを出るまでに10分くらいかかってしまって、高層階に住んだことで朝の時間が苦しいなどというのはよく聞く話です。

 

管理費や修繕積立金が高く、共用施設は使わないとメリットがない

 

マンションでは管理費や修繕積立金といったマンションを維持していくための費用が毎月かかります。設備が豪華なタワーマンションは一般的なマンションよりも金額が高くなります。そのため、特に館内設備を使わない人にとっては、その分見込まれている管理費はもったいないといえるでしょう。駐車場代も高額です。

 

タワマンのメリットばかりにとらわれない

 

今回の『正直不動産』のストーリーでは、「不良物件を騙して売る」というよりは、タワーマンションのメリットばかりを強調しすぎてオーバートーク、といった性質のものだったように思います。今回はタワーマンションでの日常生活の話にフォーカスしましたが、あまり注目されないメリットとして「相続上、有利に働くことがある」「人気の立地であれば値崩れせず、賃貸に出すこともできる」ということもあります。

 

いずれにしても、自分で確認して分かる部分と、仲介する不動産業者や売主の協力なしには知りえないこともあります。不動産購入にあたってはやはり、会社で選ぶというより、「この人は信頼できる」という担当者と出会えるかどうかが大事です。

 

作中でも、取引には負けたものの「一番紹介したい営業マン」として最終的には勝利した主人公の姿も描かれていました。タワーマンション購入の際には、ぜひ今回の話を思い出してみてください。

 

 

松村隆平
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。
趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。

 

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