『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

最終更新日:2023年12月25日
公開日:2022年2月16日

『正直不動産』主人公も憧れるタワーマンションが売れている理由~『正直不動産』をプロが解説(6・7巻 47・48話より)

ビッグコミックに連載中の人気漫画『正直不動産』。2022年春には山下智久主演でドラマ化されることが決まり話題を呼んでいます。主人公の永瀬財地は、客に不動産を買わせるためにどんな手でも使ってきた成績トップの営業マンでしたが、ある日突然、嘘がつけない体質になってしまいます。

そこから一転、「嘘がつけない」という、不動産の営業マンとしてはある意味で致命的なハンデを背負いながらも、逆に「正直な営業スタイル」を武器に、果敢に不動産業界の悪しき商慣習に立ち向かう痛快劇が繰り広げられます。

今回は、元・不動産エージェントの経験を元に、首都圏から地方都市に至るまでタワーマンションの動向を概観しながら、タワーマンションの買い時について説明します。

東京風景

(写真はイメージです)

近年のマンション相場の市況感

東京23区の新築マンション相場はここ5年間で見ても堅調に上昇し続けています。

2021年11月には、不動産経済研究所の集計結果により、首都圏の新築マンションがバブル期を上回り、平均価格で高値更新という報道が出ました(2021年11月19日読売新聞より)。

マンションの中でも特にタワーマンションの過熱度は高く、中古市場も活況です。マンションリサーチの調査結果によれば、2021年に値上がりした中古マンションランキングのトップ3は以下のようになっていました。

1位 ワールド・シティータワーズ ブリーズタワー(港区港南4丁目)
2位 アウルタワー(豊島区東池袋4丁目)
3位 プラウドタワー東雲キャナルコート(江東区東雲1丁目)
(マンションリサーチ株式会社調べ:【東京都23区】2021年上半期中古マンション値上がりランキングTOP10(2021年7月18日公表資料より))

以下トップ10は全てタワーマンションとなっており、軒並み10%以上の値上がりを見せるという盛況ぶり。当然、空室も少ない状況です。

東京都心のタワーマンション

都心ではどのようなマンションが人気なのでしょうか。人気のタワーマンションとして住友不動産の「シティタワー」や野村不動産の「プラウドタワー」、東京建物の「ブリリア」など、いわゆる「ブランドマンション」も多く値上がりランクインしています。中古マンション価格が高騰する中で、将来の売却を見すえて資産価値の維持に重きを置いた方も多かったのではないでしょうか。

一方で、駅までの距離が徒歩10分を超え、立地があまりいいとはいえないマンションも人気が出てきました。テレワークや在宅時間が増えたことにより「駅近」以上にマンションの室内で過ごす快適性や周辺環境の開放感を重視する層が増えたのでしょう。駅徒歩10分以上であっても人気があるマンションに共通しているのは、開放感が享受できる立地であるようです。

なぜこれほどタワマンが売れている?

コロナで経済が打撃を受けているにもかかわらず、なぜタワマンの販売は絶好調なのでしょうか。中国人が買い漁っているとか、投機目的で購入しているといった報道もありますが、居住目的の購入が多いというのが実態のようです。

というのも、首都圏の人口はコロナ禍とは関係なく増加が続いていて、マンションの供給が不足している状況です。しかも、立地条件のよい低層マンションはすでに開発され尽くしているため、供給される物件の多くはタワマンにならざるを得ないのです。タワマンが売れているのはこうした側面も少なからずあると思われます。

地方都市のタワーマンション

最近、地方都市でタワーマンション建設が相次いでいるのをご存じでしょうか?

たとえば山形県では、今年に入って大型のタワーマンションが山形市内で2棟完成し、かなり好調な売れ行きです。「コロナ禍で自宅にいる時間が長くなったことで、中心部でより快適に過ごしたい、リモートワークに取り組める書斎的なスペースが欲しいという客が増えてきた」という不動産事業者のインタビューにあるように、ライフスタイルの変化が大きな要因のようです(ビジネス特集:2021年6月22日NHK報道)。

おどろいたことに、田んぼの真ん中にポツンと立つタワーマンション(山形県)なんてものもあります。

田舎のタワーマンションは駐車場が月3,000円だったり、断熱効果の高さにより一軒家に比べても光熱費が抑えられたり、地方ならではの眺めがあったりなど、都心のタワーマンションとは違ったメリットがあるようです。

まとめ

マンションの新築価格がバブル期超えで高騰し、中古価格も引きずられている2021年時点では、タワーマンション価格も同様に高騰しています。しかし、東京の不動産は海外から見れば割安であり、実際に海外からの資金が流れこんでいることが価格高騰の一因と見るのであれば、このまま堅調に推移していくと考えるのが自然かもしれません。「買い時かどうか」というと、非常に難しい時期といえるでしょう。

いずれにしても、タワーマンションが住宅用として売れていることを考えれば「今買っておいて問題ない」と考えている人が多いことも事実だと考えられます。購入を検討するのであれば、住みやすさとともに「資産価値」の観点も重視することをおススメします。

 

松村隆平
中央大学法学部法律学科卒。新卒で住友電気工業に入社し、トヨタ自動車向けの法人営業、および生産管理に従事。その後、株式会社ランディックスに入社し不動産業界に転身。その後同社のIPO準備責任者となり、経営企画室長を兼任。2019年に東証マザーズへ上場、2021年に執行役員。
趣味は司馬遼太郎の小説を読むこと。経営学修士(MBA)、認定IPOプロフェッショナル、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、統計調査士。

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