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最終更新日:2025年10月30日
公開日:2025年5月18日  REDS編集部

非居住者が売主の場合における買主の源泉徴収義務とは

非居住者が日本国内の不動産を売却する場合に関わる「源泉徴収制度」は、日本国内の税金制度の中でも特に重要な位置を占めます。この制度は、非居住者による所得が日本国内で確実に課税・納税されることを目的としたもので、主に買主に対して税の徴収義務を課す制度です。

本稿では、非居住者による不動産譲渡に際して適用される源泉徴収制度の概要、法的根拠、実務上の手続き、注意点、例外規定などを含めて詳しく解説します。

不動産と税金

(写真はイメージです)

源泉徴収制度とは?

源泉徴収制度とは、支払い者(この場合、買主)が、支払いを行う前に一定額の税金を差し引き(=源泉徴収)、これを税務署に直接納付する制度です。これは、税務当局が税金を取りはぐれないようにするための「前取り課税」ともいわれています。

日本国内の不動産を非居住者が売却した場合には、その譲渡所得に課税される可能性があり、支払いの確実性を担保するために、買主が源泉徴収を行う必要があります。

法的根拠と制度の目的

非居住者が日本国内の不動産を売却する際に源泉徴収を義務づける法律の根拠は、所得税法第212条にあります。

【所得税法第212条(概要)】
非居住者が国内に所在する資産(不動産を含む)を譲渡し、その譲渡対価を日本国内の者が支払う場合、支払者(買主)は、その対価の一定割合を源泉徴収し、翌月10日までに納付しなければならない。

この制度の目的は、非居住者が国外に住んでいることにより、課税・徴収が困難になる事態を回避することです。

適用対象者

▷ 売主:非居住者

  • 日本に住所または居所がない個人、または国内に恒久的施設(PE)を持たない法人。
  • 永住者や中長期滞在者であっても、一定期間を超えて海外に移住していれば非居住者となります。

▷ 買主:日本国内の個人または法人

  • 不動産を購入する個人や企業で、日本国内に居住もしくは設立されている者。
  • 特に個人が買主である場合、源泉徴収義務があることを知らないまま手続きを進めてしまうこともあり注意が必要です。

源泉徴収が必要なケースと不要なケース

源泉徴収が必要な場合

  1. 売主が非居住者であることが確認された場合
  2. 譲渡の対価(売買価格)が1億円を超える
  3. 対象資産が日本国内にある土地・建物・借地権など

※ 買主が売主の居住状況を確認せずに購入し、後日非居住者だったことが判明した場合、買主側に遅延納税や過少申告加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。

源泉徴収が不要な場合

以下の要件をすべて満たす場合には、源泉徴収が免除されます(所得税法施行令第320条)。

  • 譲渡代金が1億円以下
  • 買主が個人
  • 買主が購入不動産を自己または親族の居住用として使用する目的で取得

この場合でも、売主が非居住者であることが事前に把握されている必要があります。

源泉徴収額の計算方法

非居住者から不動産を購入する際、買主は以下の金額を計算して源泉徴収します。

◇源泉徴収税額 = 売買代金 × 10.21%

(例)
・売買価格:1億5,000万円
・源泉徴収税額:1億5,000万円 × 10.21% = 1,531万5,000円

この金額を差し引いた後、残りを売主に支払います。

源泉税の納付方法

源泉徴収された税額は、以下の手順で税務署に納付します。

手続きの流れ

  1. 税務署から「所得税徴収高計算書(納付書)」を入手(インターネットまたは窓口)
  2. 納付書に必要事項を記載
  3. 売買代金の支払日の翌月10日までに、金融機関または所轄税務署で納付

必要書類

  • 所得税徴収高計算書
  • 不動産売買契約書の写し
  • 売主の非居住者証明または住所証明書(海外パスポートコピーなど)

売主による確定申告と過不足の調整

源泉徴収された金額は、売主(非居住者)が翌年の確定申告で最終的な税額と照合されます。

  • 実際の譲渡所得税額が源泉徴収額より少なかった場合 → 差額が還付
  • 実際の譲渡所得税額が多かった場合 → 売主が追加納税

売主は日本国内において納税管理人を選任し、その者が代わりに確定申告を行います。

実務上の注意点とリスク

▷ 買主側のリスク

  • 売主が非居住者であることを確認しないまま売買契約を結ぶと、源泉徴収義務違反に問われる可能性があります。
  • 税務署からの指摘により、本来源泉徴収すべき税額に加えて、延滞税や加算税が課せられる場合があります。

▷ 売主側の注意点

  • 売却益がなかった場合でも、源泉徴収は行われるため、確定申告を通じて還付を受ける必要があります。
  • 取得費の証明資料(購入契約書・領収書など)を準備しておかないと、不利な課税がされることがあります。

よくある質問(FAQ)

Q1:源泉徴収された税金は売主の負担?

→ はい。買主が一時的に税を預かるだけで、最終的な負担者は売主です。確定申告を行うことで税額の過不足を調整できます。

Q2:売買価格が分割払いの場合は?

→ 初回の支払いが「譲渡対価の支払い開始」と見なされ、その時点で源泉徴収が必要です。以後の支払い時にも同様に10.21%を徴収・納付します。

まとめ

非居住者が日本国内の不動産を売却する際に適用される源泉徴収制度は、課税を確実に行うための仕組みであり、買主にとっても重要な義務です。以下のポイントを押さえておきましょう。

ポイント 内容
適用条件 売主が非居住者、売買価格が1億円超など
税率 売買代金の10.21%
納付期限 支払日の翌月10日まで
手続き 納付書記入・税務署または銀行で納付
還付・追加納税 売主の確定申告により清算
注意点 確認不足による延滞税・加算税のリスク

 

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