2016年夏の人気テレビドラマ「家売るオンナ」。
テーコー不動産営業マン・ウーマンたちの人間関係に少しずつ動きが出てきた第5話。今回も中古マンションの売買にまつわる業界の裏話をご紹介していきます。

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「マンション買うのやめます」揺れ動く顧客の気持ち

一般の消費者にとって、不動産購入は人生で一番大きな買い物で、初めて購入するという方がほとんど。無事に引き渡しを終えるまで、とにかく不安でいっぱいです。

なので、昼には満面の笑みで「絶対に買います!」と言っていたお客様から、夜遅くに断りの電話をいただいたことは何回もあります。
われわれ不動産仲介業者にとっても、契約締結までは一時も気を抜けないのです。

申し込みまでは購入に前のめりになっていた詩文と歩子ですが、心境の変化から、2人とも庭野に断ることを伝えます。

自信と喜びに満ちている庭野に、「本契約まで気を抜くな!」と叫ぶ万智はここまで見越していました。断りが入ることなど想定内なのです。

本当の営業はここから。不安に飲み込まれたお客様をどのように安心していただけるまでお導きするかが、営業マンの腕の見せどころです。よく言われる「断られてからが営業」というやつです。

「アリとキリギリス」、お客様はどっちのタイプ?

歩子と詩文それぞれに対し、万智は「アリとキリギリス」のイソップ寓話を引用し、まったく異なるアプローチで最後の営業攻勢をかけます。

校閲部で真面目にこつこつ働く歩子には「あなたは勤勉なアリだ、日本の美徳そのものだ」と。
一方の詩文に対しては「歌うべき歌を歌い、誇り高く使命を果たし、今この瞬間、命を謳歌するキリギリスだ」と語ります。

アリとキリギリス

相手によって価値観を柔軟に言い換える万智の営業トークは、頭の中だけで都合よく考えているのではなく、彼女自身の幸せを心の底から希求する人生観に基づいたものなのかもしれません。

人の生き方に優劣はなく、それぞれがいろいろな事情を持ち、自分なりに一生懸命生きている中で、心の底から「家が欲しい」と思っている。
そんな一人一人の気持ちを、万智は決してないがしろにはしません。

全ての人の生き方に価値を見出すことができる柔軟性は、万智の営業姿勢の大きな礎となっているところです。

庭野との帰り道、店の軒先で雨宿りをしているときに万智はふと、自身に辛い過去があったことを明かします。
「何があってもあの時以上に辛いことはない」。
こんな信念から生まれた万智の前向きさは、客に懐の深さを感じさせ、心を打つのかもしれません。

営業マンを育てるのは社内の先輩・上司だけではない

庭野は詩文に「何とかしろ」と迫られて、同じマンションに売り物件がないかを探しに行きます。
同行していた白洲美加(イモトアヤコ)は、居住者のおばあちゃんに雑用を頼まれますが、途中で投げ出し庭野に押し付けてしまいます。
庭野はけなげにおばあちゃんに言われるままに雑用をこなし、雑談につき合うのですが、おばあちゃんは突然、「この家を売りたい」と言いだします。

この場面には、われわれ営業マンにはとても感じるものがありました。

「ウソかホントかわからないけれど、あんたからなら買うよ」。お客様との信頼関係を構築できた結果、こんなふうに言ってもらえた経験が蓄積するたび、それらは営業マンの人間的魅力となり、営業力を重厚なものにしていく。

この仕事の醍醐味が、ドラマでしっかり描かれていることに大きな感動を覚えました。

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不動産営業を通じて成長する姿も見ものです

「家を売ること」への強い思いの理由が徐々に明かされていく万智、そんな万智のことが気になる庭野。その気持ちは庭野をどこへ引き上げていくのでしょうか。

当たりの客にたまたま出会うなど何かと「引き」が強いのに、自分で全く生かせていない白洲。
知らず知らずのうちに万智の影響を受けている屋代課長(仲村トオル)。
トップの座から転落中の足立(千葉雄大)は、全員が帰った後も遅くまで仕事をしていますが、回を追うごとに大きくなってくる万智の存在感に明らかに焦りとストレスを感じています。

オーバーな表現や、テレビドラマならではのご都合主義的な展開ながら、営業マンや客の心理描写については些細な部分にリアリティが差し込まれていて、われわれ本職もうなる「家売るオンナ」。今後の展開も見逃せません。

(監修:不動産流通システム 高坂拓路)

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