公開日:2016年8月4日
「家売るオンナ」【第2話】にみる不動産業界のウソ・ホントー長所・短所は見方しだい

売却物件の査定方法は簡単ではありません!
平日なのに4件もアポが取れている万智(北川景子)ですが、週末でもないのにこれだけの商談があるというのは、並大抵のことではありません。すごいですね…。
サクッと査定を終える万智ですが…
アポのうちのひとつは、お付き合いのあるお客様からの売却依頼物件2部屋の内見。家の中を軽く確認し、2LDKを2,500万円、1LDKを2,000万円と査定します。あれくらいスピーディーにできれば物件査定も楽ですが、このくだりは完全にフィクションです。
実際の査定は調査を重ねます!
確かに、現地の確認だけであればものの数十分で終わります。しかし実際に売却物件を預かる際には、不動産営業マンは専門的な立場から物件が売れそうな価格を査定します。
そしてそれ以外にも法務局で権利関係、役所では法規制の確認、さらに類似した取引事例などを調査したうえで総合的な判断に基づき査定価格を報告するのが一般的です。
このように、価格の査定は様々な専門的調査の結論なのです。決して現地の内見だけで直感的に出せるものではありません。
物件の短所は長所に。
新しい魅力、価値観の提案が大切
不動産物件は工業製品と違い個別性が高く、また利用する目的によって長所も短所も変わってきます。
誰かにとっては魅力のない物件であっても、他の誰かにとっては条件にぴったりの運命の物件だった…まるで小説のようですが、そんなことが日常的にあります。
今回のストーリーは、不動産会社の営業マンに求められる重要なスキルである「価値の解釈の提案」がテーマとなっていました。
ヨシキのひきこもりの城マンション
売却の相談を受けた部屋を内見した三軒家万智(北川景子)は、物件の特徴をざっと把握します。
2つの部屋が隣接した特殊な物件。ですがこの点を、ひきこもり大家ヨシキ一家にとってはこれ以上ない最高の物件として説明します。
短所→長所の転換ポイント
- 1階の共用エントランスに近い物件は、人の出入りが落ち着かない、音がうるさいなどと敬遠するお客様も多い。
- 玄関から出てすぐに荷物を受け取ることができる。
- 家の外と中をつなぐ玄関が雑然としていて印象が悪い。
- 奥様の意向に配慮しつつ、部屋の中への期待が膨らむようホームステージングを提案。
- 前に住んでいた人の造作が残っている。
- ボルタリングの壁はひきこもりの運動不足解消に最適であり、さらに壁厚が防音にもつながることを伝え、前に住んでいた人の気配を物件の魅力に転換。
墓地の隣の中古マンション
もうひとつの物件は、なんと墓地の隣の1,590万円のイケてない中古マンション。しかしこちらについても、求めるお客様によってはセールスポイントとしてアピールできることを、新人の白洲美加(イモトアヤコ)に伝授します。
注目したいのは、その発想の転換です。
短所→長所の転換ポイント
- 墓地の隣。
- 将来、高いビルや大きな建物が建つ可能性が低いため、日当たりが保証される。
- 西向きは午後の日差しがきつい。
- 朝はゆっくり起きることができる。また、山の稜線に落ちる夕日の景色もすばらしい。
- 隣で飼っている犬がよく吠える。
- 番犬代わりになって下着泥棒が減った。
- 駅からの道のりは交通量が多くて危ない。
- 夜も交通量が多いため、女性の独り歩きでも安心。
- ヤモリが出る。
- ヤモリは「家を守る」守り神ともと言われていて、家内安全のためにわざわざ飼う人もいるくらい。
一見、短所とも思われる物件の状況でも、見方を変えれば長所にもなり得ます。だからと言って、決してウソを伝えている訳ではありません(ヤモリについてはあえて言わなくても良いかもしれませんが…)。
足立(千葉雄大)の物件説明が素晴らしい!
初めの美加の母娘に対する物件説明は、すべてが短所に聞こえるように話して失敗してしまいます。
ところが、タイミング良く戻って来た足立(千葉雄大)が、上記のようにまったく見方を変えた説明をすると、母娘の気持ちは一変し、大いに盛り上がるのです。
機転を利かせた言い換えで快適な暮らしのイメージを与え、お客様の気持ちの後押しをすること。これは営業マンの大変重要で、なおかつやりがいのある仕事です。

二日酔いで出勤する屋代課長=実際はNG!
ドラマでは、万智のパリッとしたファッションや足立のお洒落なスーツも一つの見どころですが、現実の世界でも営業マンは身だしなみに気を使っています。
営業は接客業なので、夜遅くにお客様から連絡が入り翌朝早々に商談となることなど日常茶飯事です。だからこそ意識の高い営業マンは、クシ・汗拭き・ブレスケアを常に携行しています。
また最近は嫌煙志向のお客様も増え、不動産会社の中でも分煙が進んでいます。タバコのにおいがするだけで気分を害する方もいるため、特に喫煙者の営業にとってにおい対策は必須です。
行きつけの飲み屋「ちちんぷいぷい」で深酒して二日酔いのまま出社する屋代大課長(仲村トオル)。突然の接客だってあるかもしれないのに、部下に気付かれるような深酒をするようでは失格です。
「チラシなんか捨てちゃえば」と言う、ベテラン社員の布施(梶原善)
万智からチラシの投函を命じられふてくされている美加に、ベテラン営業マンの布施(梶原 善)は「チラシなんか配らないで捨てちゃえば、便所とかに」と耳打ちでアドバイス。もともと気が乗らず出発した美加は、チラシを紙袋ごとトイレのごみ箱に捨ててしまいます。
チラシを捨てるのは、あってはならないこと!
しかし、考えてみましょう。美加の配るチラシの売却物件にも誰か売主がいるわけです。その売主が自分だったらどうでしょう?
みなさんが家を売るとき、任せた業者が自分の物件の価格や写真を載せたチラシを、公衆トイレやゴミ箱に捨てていたらどう思いますか?こんなことをするテーコー不動産に家の売却を任せたいでしょうか。
そう、チラシを捨てるという行為は絶対にしてはならないことなのです。
不動産業界の人材の育て方もテーマになっていました
チーム主義の屋代課長、個人主義の万智と足立
さて、美加はチラシを捨てたことをとがめられ「私、会社を辞めます」と泣き出します。
そんな彼女を引き留めるでもなく「それは自由だよ」と微笑む足立(千葉雄大)。
万智は会社では浮き気味で人を振り回すチーフですが、果たしてこの二人は家を買いたい人、売りたい人にとって、ひどい営業マンでしょうか?嫌なやつでしょうか?
第1話でも「君のやってることはパワハラだぞ!」、「パワハラが人を育てることもあります」とグレーなテーマでたびたび衝突している屋代課長と万智。
「時代は変わってる」と、「今どきの教育方針」とチームで夢を追うことを主張する屋代課長ですが、部下たちの反応はいまいち薄く、ぼんやりとクールです。
美加のような新人をうまく使って優しく育てていきたい屋代課長と、教えるものではなく自分でもぎ取っていけば良いと言わんばかりの万智。こういった考え方の対立の構図は、不動産業界のみならず社会のあちらこちらに実在するように思えます。
「教育は必要と思いません」万智と足立の考え方は間違い?
良い意味で、不動産売買仲介の営業はチームワークではありません。足立の言う通り一人一人が個人商店、事業主のような意識が求められます。
そして、人の一生を左右するような高額商品である不動産を扱うには、一人ひとりがプロとしてお客様の要求に応えられる力を備えていなければなりません。
「売れない営業マン=能力を備えていない営業マン」だとするなら、売れない営業マンは、会社はもちろんお客様にとっても困った存在になってしまうのです。
ですので、「教育が必要ない」というのは極論だとしても、「教えてもらえる」という他人任せな姿勢ではなく「進んで学びにいく」という、仕事に対する積極的な姿勢は欠かせないのではないでしょうか。

エリート足立の接客に触れ自分との差に落ち込み、万智からの「物件に何度も通え」という指示に嫌々ながらも忠実にこなしている美加。
そして、お客様の希望をちゃんと聞き取りせずに予算以上の物件を紹介してしまう、相変わらず「売れない営業マン」として描かれている庭野。
彼はもしかしたら、このドラマが終わるまでに、万智に認められる営業マンに成長していくのではないか?と予感させるような伏線もあり、今後の展開が楽しみです。
第三話もお楽しみください!
(監修:不動産流通システム)