『正直不動産』宅建士のプロはこう見る!SHOJIKI-FUDOSAN

最終更新日:2023年12月25日
公開日:2023年3月23日

価格交渉、不動産会社はホントにしてくれるの?(前編)~『正直不動産』をプロ宅建士が解説(15巻 113・114話より)

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『正直不動産』は、小学館発行の「ビッグコミック」に連載されている漫画作品です。2022年4~6月には、山下智久さんを主役としてNHKでドラマ化され大人気となりました。単行本は、2023年2月現在で第16巻まで発売されており、発行部数累計270万部と、まさにベストセラー作品となっています。

主人公は、契約のためなら嘘もいとわない「永瀬財地」、登坂不動産の営業マンです。しかし、ひょんなことから嘘がつけない体質となってしまい、最初は仕方なく「正直な」営業スタイルで不動産業界の商慣行にまつわるトラブルや、お客や大家のわがままに対応していくというストーリーです。

不動産売買は高額ですし、一般の方には機会が頻繁にあるわけではありません。だからこそ、不動産にまつわる事件は時折世間を賑わせてしまうものです。そうした興味深い問題をタイムリーに取り上げ、ドラマ仕立てにして、わかりやすくしているところも人気の原因なのでしょう。

また、徐々に永瀬が「正直」営業に魅力ややりがいを見出していくという一人の青年の成長譚としても、消費者に寄り添う不動産業界とはどうあるべきかといった骨太のテーマをはらむ社会派ドラマとしても、大いに見どころがある作品だといえます。

今回ご紹介するのは、第15巻第113~114話の「価格交渉」についてのエピソードです。家を売りたい人にとっても買いたい人にとっても興味深い話でしょう。不動産会社は本当に価格交渉をしてくれているのでしょうか?

不動産価格交渉

(写真はイメージです)

希望どおりの物件が見つかった後、値引き交渉はうまくいくのか?

永瀬は、友人の希志智久から、弟の俊介が結婚することになり中古マンションの仲介を依頼されます。永瀬と希志は、大学時代からの長い付き合いです。永瀬は希志の実家に1年半ほど居候、希志が病気で自宅の住宅ローンを払えなくなったときに競売にかかる寸前で相談に乗り、折り合いが悪かった希志の実の父親に任意売却させて自宅が人手に渡ることを食い止めています。

※このエピソードは、以下のコラムをご覧ください。
「任意売却」は人ごとではない? 競売との違いとは?(前編)~『正直不動産』をプロ宅建士が解説(6巻 43・44話より)
任意売却が急増中? 住宅ローンのある人全員が読むべきエピソード(後編)~『正直不動産』をプロ宅建士が解説(6巻 43・44話より)

さて、友人の頼みということで親身に相談に乗ることとなった永瀬は、希志の弟の俊介に希望条件のヒアリングをします。予算は5,000万円、手付金は500万円として残り4,500万円を住宅ローンで、物件価格の約10%(500万円相当)かかるという諸費用は現金で貯金から払う、というものでした。

永瀬は、俊介に「人との出会いと一緒で、物件との出合いも運に左右される部分が大きい」「希望以上の物件に、すぐ出合えることもあれば、いくら時間をかけても、理想どおりの物件が現れないこともある」と諭します。

この言葉からすると、俊介は運がよかったのでしょう。永瀬が俊介に紹介した物件は、価格が5,300万円と予算オーバーなことを除けば、まさに俊介の希望どおりです。

「値下げ交渉は可能かと聞く俊介に対し、永瀬は「売り出し価格は値下げ交渉を前提に設定されていることがほとんど。物件価格のおおよそ3%~5%程度が値引き相場とされている」と説明します。俊介は「5,300万円の6%引きで4,982万円なら即決めてもよい」といい、永瀬は「6%は少し厳しいかもしれないけど可能性はあるな、売主に打診してみるよ」と価格交渉を請け負います。俊介は「永瀬さんに頼んで、マジで良かったよ」と大喜びです。

この展開、「マジでそんなに調子よく値引きなんかしてくれるわけない!」って、なるに決まっていますね。

売出価格の基礎となる「価格査定」の決め方とは

中古マンションの値引き交渉について解説する前に、マンションを売りに出す場合、どのように売り出し価格が決まるかを説明します。売り出し価格の設定の仕組みを理解していれば、自ずと値引き交渉のポイントも理解できることでしょう。

一般に、中古マンションの売主は、いくらで売りに出せばよいかわかる人は、そう多くはいません。そこで不動産会社にどのくらいで売れそうなのか見積もってもらうように相談します。このように不動産会社が物件の「市場価格」を判定することを「価格査定」といいます。また、この価格は「売り出してからおおむね3カ月以内」が目安とされています。

「価格査定」について、不動産業者の業務に関する法律である宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)では、「売買すべき価格または評価額について意見を述べるときには、必ずその根拠を明らかにしなければならない」としています。これを「根拠の明示義務」といいます。

「合理的」とされる不動産価格を判定する方式は、大きく分けて3種類あります。

(1)原価方式

主に建物で使われる方式。対象の不動産を建設する際の現在のコストを調べて(再調達原価)、そこから経年劣化分や形式の旧式化、ライフスタイルの変化に伴う設備の過不足などにより価値が下がる分を減価して差し引く(減価修正)方法。

(2)収益還元方式

主に投資用・事業性不動産で使われる方法。対象不動産の月々の家賃や権利金・更新料などの総収益と、維持管理費や固定資産税などの公租公課などの総費用を控除した純利益から、対象不動産の価値を試算する方法。

(3)取引事例比較方式

主に土地や中古マンションで使われる方法。売却の依頼を受けた同じマンション(物件)や、近隣のマンション(物件)の売買取引事例を集め、該当住戸の位置や階数、専有部分の状況そのほかの条件を判定し、価格補正をして算定する方法。

中古マンションの場合は、(3)の取引事例比較方式で査定される場合がほとんどです。個別状況の捉え方や地域の得意不得意なども影響しますが、どんな不動産会社が査定しても、査定価格はある程度の幅に収れんすることになります。だからこそ、査定価格に合理的な根拠を提示することが可能なのです。

一括査定サイトや不動産広告の「査定無料」は当たり前のこと

国土交通省の定める宅建業法の「解釈・運用の考え方」では、根拠は「合理的な説明のつくもの」であることとされるとともに、「査定」のために行った調査にかかる費用は法律上の義務であるため、「無償」とするべきものであり、依頼者に請求できないものである、とされています。

「一括査定サイト」や不動産会社の査定の広告で、「当社の査定は無料!」と謳っているものがありますが、無料・無償なのは当たり前なのです。ありがたがってはいけません。また、「一括査定サイト」の広告などでは「なん百万円も高く売れた」などと不動産会社を選ぶ際に査定価格が著しく変わるから高い査定をしてくれる会社を選べます、というようなことをほのめかすものも見かけます。

しかし、査定は本来、「合理的な根拠」が必要なのです。そして市場はひとつです。他の会社と比べて〝なん百万円も高い〟査定を提示する会社は、本当に「合理的な根拠」を提示することができるのでしょうか? 筆者には甚だ疑問です。

後編に続く

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

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